私のMarshall〜SAKI編

不定期連載企画“俺のマーシャル”。
今回、登場して頂いたのは、2022年12月にセカンド・アルバム『Seize the Fate』をリリースした絶好調のネモフィラからSAKIの登場だ。
世界でも珍しいタトゥー柄のマーシャル JVM410を愛用している彼女から、その“マーシャル愛”を聞き出してみた。


マーシャルならではの音を継承し続けてほしい!

SAKI:2014年の楽器フェアで、今も使ってるタトゥー柄のJVMを見て欲しいって思ったんです。
もちろん、それ以前からスタジオとかでは、マーシャルを使うことが多かったですね。他のメーカーのアンプを使ったこともありますけど、やはり音の抜け感や存在感からJVM410がいいなってなりました。
スタジオやライヴ・ハウスによってはJCM2000も多い時代だったんですが、2000よりもJVMのモダンな歪みのほうが自分のやってる楽曲の方向性やキャラクターにも合ってるのでJVMを使うようになりました。
JVM410はチャンネルも多いし多機能なので昔からのマーシャル・ファンにしてみると“難しい!”と思う方もいらっしゃるかと思うんですが、私にとってはそれが便利でいいなって。もともとマルチ・エフェクターを使っていて、あまりコンパクト・エフェクターは持っていなかったんですね。なので、アンプを導入しようとなった時に、JVMならいっぱいチャンネルもあるし音色も使い分けられるから便利だなって思って(笑)。
マルチを使ってた時は、歪み自体もエフェクターで作っていて、PA卓に直接、ラインの音を送ったり、ローランドのJCのようなクリーンなアンプから出してたりもしていたんですよ。そこから真空管アンプのJVMになったので、音圧が違うじゃないですか。そこをどうやって制御して弾いたらいいんだろうかという部分で、最初は悩みましたけど、それでも自分のスタイルには合ってると思ったんです。それに、なによりも、あのペイントがかわいすぎて、あれが欲しいって(笑)。
タトゥー・アーティストとコラボしたJVMだったんですね。このシリーズは日本にはほとんど入ってきてなかったみたいで……コンボ・タイプで他の柄とかもあったと思います。もともとJVMを購入したいと思っていたタイミングだったし、この絵柄ががかわいすぎたので、その場で“これ欲しいです!”と言って購入しました(笑)。早いもので、あと数年で10年ぐらい使ってることになるんですね〜。
最近のギタリストって、デジタルのマルチ・エフェクターやDAWのプラグインではキレイに弾けても、本物の真空管アンプだと弾き心地が違うと感じたりするみたいじゃないですか。ちゃんと弾かないとキレイに鳴ってくれないというか。私もデジタルのマルチやプラグインでの歪みに慣れていたので、そういう部分もありましたけど、弾きこんでいくことで徐々に解決していきました。もちろん、今でも、音作りはライヴやレコーディングその時々で、つねにギター・テクニシャンやPAさん、ディレクターの方々と話して研究しています。
世の中、ケンパーやフラクタルなどデジタル・アンプも出てきて、私も空間系のエフェクトとしてフラクタルを使ってるし海外のライヴなどではデジタル・アンプのほうが便利な場合もあったりしますけど、やっぱりライヴの時に大音量で鳴らした時の抜けてくる感じは本物の真空管アンプに勝るものはないと思うんですよね。ライヴにJVMを持っていけない時は、フラクタルでJVMに近づけた音を作って持っていったりしますけど、できればJVMで鳴らしたいです。JVMを使う時でもフラクタルを空間系のエフェクトだけを使ったりしてるので、けっこう贅沢な使い方ですよね(笑)。
コンパクト・エフェクターをいっぱい並べるのも悪くないんですけど、いいものを揃えるとなると高価なものになってきて結果的にお金がかかってしまうなって。ふだんから使っているエフェクターもフラクタルに入れてるので、フラクタルのみで弾く時も戸惑わないでセッティングができるんです。
それでも、歪みをJVMで作る理由は、ミッド〜ハイ・ミッドのマーシャルならではの抜け感とコシの強い音、張りのある音……これはデジタルでは出せないと思うんです。いろいろなデジタル・アンプも試しましたが、ライヴで演奏した時にいちばん伝わるのはマーシャルなんです。昔、マルチ・エフェクターを使っていた感覚が残ってるのでフラクタルを使うのも楽なんですが、歪みだけはマーシャルを使いたいんですね。
ネモフィラのアルバム『Seize the Fate』では、自宅で素の音を録ってリアンプをする方法をとりました。いろんなアンプを使いましたが、JVMが多いんじゃないですかね。そのあたりの音色の方向性は、葉月(ネモフィラ/g)ちゃんと秋山(健介/共同制作者)さんと3人で相談しながら、JVMでもいろんなチャンネルを試しながら決めています。そういう時にも、チャンネルがいっぱいあって音色が選べるというのもいいんですよね。
ライヴでは、メインのバッキングがOD2のレッド、ソロはOD1のレッド・モードを使ってます。とくにブースターや歪みエフェクターは使わず、JVMのみの歪みですね。音を制御するために、ノイズ・ゲイトを使ったりはしてます。他のチャンネルもクランチだったり、クリーンだったり、曲によって全チャンネルを使ってます。激しめに歪ませたトーンじゃなくてクリーンでも、コードを弾いた時の押し出し感だったり分離のよさがマーシャルならではなんです。
いちばん気に入ってる点は、この柄ですね(笑)。女子っぽいし、弾いてる後ろに、このJVMがあってくれるとうれしい。もちろん音も気に入ってるので、歪み系のエフェクターもいらないんです。先日、いろんなブースターやオーバードライブを試したんですけど、やっぱりいらないなって。
今後、マーシャルへのリクエストですか!? 音も気に入ってるので、とくにないんですが、この柄のマーシャルがもっとあったらいいな〜と(笑)。この1台しか持ってないので、また違うチャレンジしてる柄があったら欲しいです! それに、マーシャルの音って確立していると思うんですね。いろいろなアンプを試してみても、けっきょくマーシャルに戻ってくるので、変わらずにこの音を作り続けてほしいし、古き良き音も継承していってほしいですね。

▲すっかりおなじみとなったSAKI愛用のタトゥー柄のJVM 410Hと1960A

SAKIのセッティングを公開!
(メインの歪み=OD2 レッド・モード/ソロ=OD1 レッド・モード

▲メイン・バッキングで使用しているのはOD2チャンネルのレッド・モード。ソロでは、OD1チャンネルのレッド・モードを使用している。
とくに歪み系エフェクターは使わず、アンプ直の歪みだ!
その他のチャンネルも、クリーンやクランチでも使用。410の利点を駆使して音作りしている


▲ネモフィラ/アルバム『Seize the Fate』(通常盤)


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