ナデシコドール、結成15周年記念作を語る!

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2010年に札幌で結成された女性2人組ロック・ユニット、ナデシコドールが、結成15周年を記念するセカンド・アルバムをリリースした。
これまでの彼女達ならではのハードな楽曲はもちろん、重厚なナンバーからポップなものまでヴァラエティに富んだこの作品について、2人が語ってくれた。

MV「月下絶麗」


15年歩んで積み重ねてきた
こだわりの部分を感じてほしい

——フル・アルバムとなると、かなり久しぶりだよね?
ユズハ
:フル・アルバムに限ってしまうと、2019年の『撫子的カラクリ論』以来になります。そこからはミニ・アルバムとシングルを中心にリリースしていました。
——リリースでいっても2023年にシングル「音鳴-onmei-」を発表して以来だから、少し空いてるよね。
ユズハ
:今回のアルバムに入っている「閃光」という曲があるんですけど、これは今から1年前にライヴで披露した曲なんですね。その時点ではとくにリリース予定はなく、単純に結成14周年主催イヴェントで披露しただけだったんですね。
そのまた半年後ぐらいのイヴェントでもライヴ限定で新曲を披露したというのもあるので、ライヴでは半年に1回ぐらいのスパンで新しい曲は発表していたんですね。
どちらの楽曲もリリースはしなかったんですけど、「閃光」はレコーディングを去年の秋にすでに済ませていて、MVをYouTubeでフル配信しました。なので、CDにはなってないんですけど、音源にはなっていたんですね。
——今回のアルバムには、リレコーディングされている2曲の他は、すべて新曲で?
ユズハ
:「青ノ輪廻-ray force-」と「月下絶麗」は、2017年にリリースしたミニ・アルバム『月下麗音』に入っていた曲で、それをリレコーディングして、あとは新曲ですね。
リエ:この2曲は、私達の活動の中でも代表になるような曲だし、飛び抜けて人気があるんですけど、もう手に入らない音源なんです。2017年の曲を今の私達だったら、違ったアプローチで生まれ変わらせられるんじゃないかと思いましたし、15周年の集大成アルバムっていうのも大きいです。このタイミングで入れておきたい、この曲があるからみんなも安心して聴ける部分もあると思うんです。
——これまでのナデシコドールより、さらに幅広くなった印象を受けるよね?
リエ
:今回、バンド結成15周年という集大成のアルバムなので、いろんなジャンルを入れてみたかったというのはあります。これまでもロック・バンドとして活動してる中で、いろんなジャンルの曲を作ってきたんですね。今回のアルバムにも、私達ができうるあらゆるジャンルの路線から攻めてたら、聴いて頂いた方に1曲でも刺さるんじゃないかと。いろんなジャンルの曲を入れてみようっていうところで冒険した曲もありますし、その中で私達らしさを出した曲もあるかと思います。
ユズハ:トータルで聴いたら、最後には“ナデシコドールとしてまとまる”みたいな感じを出しつつ、いろんなジャンルを入れてみました。「閃光」はライヴ向けのロック・チューンだったので、わかりやすいロックな曲調は「閃光」と「青ノ輪廻-ray force-」と決めていました。その2曲がロック・チューンとして軸にあるからこそ、新しい曲はちょっと冒険してみてもいいんじゃないかなっていう気持ちはありましたね。
——ふたりで、幅を広げたアルバムにしようと話していた?
ユズハ
:たとえば、ちょっとハードな曲とか、すごく明るくてエクササイズできる曲とか、曲のテーマを2人で相談してから曲作りに入ってますね。まずはリエちゃんがカラオケみたいな状態まで作ってくれて、そこに私がメロディと歌詞を乗せてデモを作ります。そこからサポート・メンバーに“こういう感じのベース・ラインを”とかけっこう細かく要望を出して弾いてもらいますが、基本的には2人で作ってる感じです。
リエ:私が元曲を作る時点では、好き勝手にやらせてもらえてるんですね。たとえば“ライヴで暴れられる曲を作ろう”とか“拳を振れる曲にしよう、タオルを回せる曲にしたい”というテーマだけ決めて作っていきます。ライヴのイメージとかは少しすり合わせますが、シンセとかも入れた状態で作らせてもらったものにユズハが歌メロを載せていくので、ユズハはちょっと大変じゃないかなと思うんですけど(笑)。
ユズハ:ギター、シンセなど全部入った状態で来るので、それにぶつからないようにうまいこと絡め合わせたメロディ・ラインを作るのは好きなんですよ。それにリエちゃんのデモで鳴ってる音がなければ、この歌メロは生まれないだろうなっていう部分がたくさんありますね。
リエ:“このセクションではこうしてほしい”とか私の中でイメージが具体的に固まってるところは伝えますが、それを飛び越えて“お、こうきたか!?”というのが今回のアルバムでも何曲もあるんですね。そこがおもしろいし、2人の化学反応がすごく好きなんです。
——歌メロを乗せる時に、個性を出そうとか他と変えようとしたりはする?
ユズハ
:キャッチーな感じにしようと言ってた曲だったら、耳に残るようなメロディにしたり最低限のことを意識しつつ作ります。でも、“この曲は、きっとワンマンでしかやらない!”みたいなアルバムを彩る曲として存在するようなものは、自分のやりたいようにやります。今回のアルバムでいえば「鎧」は、キャッチーさを意識せず楽曲の雰囲気重視で作りました。
リエ:「鎧」は、アルバムの中でもユズハが率先して“ジメジメした曲を作りたい”と要望を出した曲で、“ジメジメしたもの”を私が噛み砕くとこうなったんです。そこに、さらにユズハがジメジメしたメロディを乗せて出来上がった曲ですね。
ユズハ:今までにないよね。
リエ:このアルバムを作る前から、ずっと“ジメジメしたの作りたい”って言われていたので、ユズハのイメージをなるべく再現できるような気持ちで作ってます。なので、わりと自由に作らせてもらってはいるんですけど、ふだんの私の自由というよりもユズハの好きそうなところを狙って作りました。
ユズハ:「め」もすごくダークな曲なんですけど、アルバムに1曲はダークを入れたいっていうのは強めに言っていて。昔から定期的にダークな曲は作るんですけど、“「めというタイトルのダーク・ソング作りたいよね。今じゃない?”と言いました。
リエ:ダークな曲はユズハが好きって思われがちなんですけど、私もわりとダークなのも好きなんですね。なので「め」に関しては、私のイメージで作らせてもらったんですね。自分の中でストーリーを考えて、こういう主人公がいて、こういうお話の曲っていうのを作ってから手掛けて、それをユズハにこういうストーリーで作ってるからそれをユズハなりに落とし込んでほしいという要望を伝えてやってもらいました。
——この話をしているとダークなアルバムかと思いきや、「No!レイジー魔法」というポップな楽曲もあったり、ホントに幅が広い作品になってるよね?
ユズハ
:これの兄弟ソング的な立ち位置のミニ・アルバム『撫子冒険劇』(2022年)があったんです。それは、もう全部冒険した曲みたいな感じで、今までにやったことないような楽曲ばかりでした。その中に「拒絶Aging」という曲があって、けっこうぶっ飛んでいてライヴだとずっと振り付けがあって“曲が終わるまで一緒にエクササイズをしたら若返っちゃうよ”っていう曲だったんです。そしたら、お客さんが一緒にエクササイズするのが楽しかったみたいで“今日は若返りの曲ないの?”って言ってもらえるようになったんですよ。意外とみんなピコピコしたダンスしながら一緒にエクササイズみたいな曲が好きなんだなって。ハードなロックを好きな人達でも、こういう曲がライヴであると楽しいんだなって思ったんです。だったら、そういう新曲を書いてみようかということで、今回は怠けるんじゃないぞというテーマの「No!レイジー魔法」を作りました。
リエ:シングルで出すのは勇気がなかったんですけど、アルバムだったら好きにできる中で、1曲そういう曲も作ろうかっていうのは2人で相談してね。
ユズハ:なんか、バンド変わったのかなって思われちゃっても困るんで(笑)、あくまでエッセンスですね。こういう面もあるんだよっていうのをアルバムだからこそできる配置で、ど真ん中に入れました。
——「閃光」とは、また対をなす曲で。
リエ
:「閃光」は、こういうロック・チューンが好きなファンの方も多いしライヴでもすぐに盛り上がってくれるようになったので MVを作ろうという流れになったんです。“これぞナデシコ!”って安心して聴いてもらえる曲になったという印象ですね。
——後半にハードな曲が並んでるでしょ。曲順によって、だいぶイメージが変わるアルバムでもあるよね?
ユズハ
:曲順に関しては、いろいろ考えたんですけど、わりとライヴ感を意識して最初と最後にナデシコらしさを入れつつ、どこを聴いても飽きない流れになってるし、ワンマン・ライヴでやってもいいと思えるような流れにしました。
リエ:いろんな要素があるジャンルを今までも作ってきたりしてたし、お客さんからしてもどれを聴いてもナデシコらしいねって言ってくれそうなアルバムになってると思うんです。初めてアルバムを手にして聴いてくれた方からすると、“どれが彼女達の本性なんだろう?”みたいに少し悩むアルバムかもしれないんですが、私達の中ではどれも自分達らしいと思っています。
ユズハ:どれも、“これがナデシコドール15周年の証だ”みたいな気持ちで書いた曲ばかりなんですよ。いろんな側面がありつつ、“真骨頂的なのはハードなんだな”って1枚を通して聴いた時に思ってもらえればうれしいですね。
——最後に、2人だけで15年やってきて、思ってることを教えてもらえる?
ユズハ
:組んだ時に15年やるとは、もちろん想像はできてなかったので、長かったような感じもするけど、あっという間だったとも思えるし……。長くやることを目指そうと思ってたわけじゃなかったんですけど、活動を積み重ねてくうちにこんなに長い月日がたって大きなケンカとかトラブルもなく、メンバー増やそうとかも1回も話に出ることなく……。
いつも2人で作業に追われてるんですけど、それでもやっぱりバンド活動が楽しいっていつも笑いながらできてるのはリエちゃんが相方だからというのがすごくあるんです。作業量が多くてたいへんでもふたりでガンバって励まし合ったほうが楽しいし、充実感もあるし、達成感もすごいよねって。そういう考えとかベクトルが一致していける相方に出会えたのがすごく大きいなって思うし、リエちゃんが作る曲あってのナデシコドールなので出会えてよかったなと思います。
リエ:う〜、泣いちゃう(涙)。けっこうたいへんなことも活動してると多いけど、ふたりで笑いながら“辛いね、たいへんだね”と言いながらも楽しくできてるのはユズハの気遣いとかがすごく大きい。15年一緒にやっていても、ユズハの才能の部分に飽きさせられることがないんですよね。ライヴも曲作りに関しても、毎回、新たな刺激をもらえたりとかして、人間的な部分とか私生活も曲作りも切磋琢磨できる相手だなと感じているんです。15年続けてこれたのって、お互いに尊敬し合ってるというのがあると思うんです。2人だからできてきたことが本当に多くて、すごく感謝しています。
ユズハ:お互いに“私達、天才じゃない?”と褒め合うんですよ。あんまり細かいところを人は褒めてくれないじゃないですか。だから、お互い欲しい言葉を言い合うんです。“リエちゃんの曲、天才だ。ユズハちゃんのメロも天才だよ”って言い合って、励まし合ってここまで来たんです。今回のアルバムが完成した第一声も“うちら天才じゃない?”でしたからね。
リエ:そんな新作をすみずみまで聴いてほしいですね。音ひとつ、メロディひとつ、歌詞ひとつ、すべてにこだわってる作品なので、15年の歩んで積み重ねてきた部分を感じてほしいなと思います。

▲ユズハ(vo)

▲リエ(g)

アルバム『華舞台-hanabutai-
¥3,300(税込) 2025年3月25日
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②閃光
③凛と咲いて淑女
④め
⑤鎧
⑥青ノ輪廻-ray force-
⑦No!レイジー魔法
⑧永遠のうた
⑨月下絶麗
⑩破壊女神
⑪豪歌絢爛
⑫忘れない

■ライヴ予定■
6月7日(土)=札幌クレイジーモンキー
6月14日(土) & 15日(日)=名古屋・柴田アヒル
6月22日(日)=札幌VyPass.
6月29日(日)=吉祥寺クレッシェンド
8月3日(日)=吉祥寺クレッシェンド
8月30日(土) & 31日(日)=札幌クレイジーモンキー
9月23日(火・祝)=札幌キューブガーデン

■ナデシコドール 公式サイト■
http://www.nadeshikodoll.com/