キラー ファシストの系譜

ヘヴィ・メタル/ハード・ロックを弾きたいけど、変形ギターは少し苦手かなあというメタラー諸君!
そんな諸君にオススメなのが、キラーのファシストだ。
すでにご存じの読者は多いと思うが、誕生から25年以上を経過し、スタンダード・モデルとしてのポジションも確立している。
今回は、そのファシストの魅力を多角的に探ってみた。


キラーギターズの証言
〜オールマイティに使える形と弾きやすさが特徴です

キラー:ファシストは、22フレットで2ハムバッキング・タイプのプライムと共通の仕様も多いですが、ボディの外周形状によりジャンルを問わないモデルになっているかと思います。
ロック式トレモロ・ブリッジがボディに埋め込まれたセッティングになっているため、ボディ表面からの弦高が抑えられていることが特徴ですね。また、6弦側のボディ・トップにカットが入っていて、ピッキングがスムースにできるのもポイントだと思います。
現在、新製品を含め、5機種のファシスト・ヴァイス、ファシネイターをラインナップしています。ギター本体側をシンプルなコントロールにすることで音抜けを重視した仕様となっていますので、エフェクターやアンプ側で音作りしたい方にオススメします。また、コントロール部分はシンプルにはなっていますが、スイッチ付きポットを使用したりミニ・スイッチの配線変更など、カスタマイズの幅は最低限持たせているのでアイディアしだいで本体側のコントロールのヴァリエーションは広がると思います。
そして、新製品のファシスト・ヴァイス SEは、組み込みまでの生産を海外にてすべて行なっているのに対し、は海外で木工塗装したものを国内にてセット・アップしています。これまでのサーペントやファシスト・ヴァイスとは違い外形部分がSEとともに同じ形状に変更になっています。
SEはそのままでも癖のないベーシックな機種かと思います。材料や生産国、パーツの仕様が価格差になっていますがSEはパーツ変更などのベース・モデルにしていただいて気に入った仕様にするのもおもしろいかと思います。は従来モデルのファシストの仕様変更としてネックの半艶仕上げなど手触り部分などを上位ファシストに近づけています。ウエスト部分のバックカットもSE、ともにファシストと同様に大きいアールに変更になっています。
ルーク篁参謀やSAKIさん、Shuさんが愛用していることでも知られていますが、参謀からは24フレットでリヴァース・ヘッドのリクエストがありますね。最近のスペルバインドの仕様を盛り込まれているようです。マホガニー・ボディのものが存在するので低いほうの音質に重点が置かれているかもしれません。
SAKIさんからは参謀が使っていたのでファシストを使いたいというのと、ご自分でもファシストのグレイヴ・ストーンを購入されていたのでその流れでファシストのモデルを作りました。歯車が見えるイメージとEMGピックアップの6弦、そして後日7弦も使いたいとの希望をいただきました。7弦のヴィジュアル面ではギャラクシー・ブラックに桜の花びらというアイディアをいただきましたね。他はお任せだったように思います。
Shuさんは弦高低めのセッティングでピックアップのダイレクト・マウントの固定方法などに重点を置かれていたように思います。それに応えるため、ピックアップのロウ付け、ピックアップ下のダイレクト・マウントに固定用のスペーサーなど製作しました。
ファシストは取り回しやすくオールマイティに使えそうな形状で、24フレット・モデルのヴァリエーションの希望があるようなので、今後22フレットと合わせて少しづつ派生ヴァリエーションをモデル化したいと思います。 


試奏!
〜最新モデルのファシスト・ヴァイスⅡとファシスト・ヴァイスSEを弾き比べ!

キラー KG-Fascist Vice Ⅱ
¥242,000(税込)

【仕様】
●ボディ:アルダー、2ピース
●ネック:ハード・メイプル、セミ・ディープ・インサート・ジョイント
●指板:ハード・メイプル、22フレット
●ピックアップ:キラー LQ-500(フロント)、キラー LZ-510 Dyna-Bite(リア)
●コントロール:ヴォリューム、ピックアップ・セレクター、ダイレクト・スイッチ(ヴォリューム・キャンセル)
●ブリッジ:フロイド・ローズ 1000
●カラー:ギャラクシー・ブラック(写真)、デリシャス・レッド、メタリック・ブルー

■キラー KG-Fascist Vice Ⅱの詳細■
https://www.killer.jp/guitar/kg-fascist-vice-ii.html

 

キラー KG-Fascist Vice SE
¥121,000(税込)

【仕様】
●ボディ:バスウッド、2ピース OR 3ピース
●ネック:ハード・メイプル、セミ・ディープ・インサート・ジョイント
●指板:ハード・メイプル、22フレット
●ピックアップ:キラー オリジナル・ハムバッキング×2
●コントロール:ヴォリューム、ピックアップ・セレクター、ダイレクト・スイッチ(ヴォリューム・キャンセル)
●ブリッジ:フロイド・ローズ・スペシャル
●カラー:ギャラクシー・ブラック、デリシャス・レッド(写真)、メタリック・ブルー

■キラー KG-Fascist Vice SEの詳細■
https://www.killer.jp/guitar/kg-fascist-vice-se.html

今回、試奏したのはファシストのコスト・パフォーマンス・モデルである2機種だ。ファシスト・ヴァイスはボディ材の仕様を変更し、“”となって再登場している。
まず、外観だが、どちらも見分けが付かないほどファシストを継承している。もともとオーソドックスなシェイプを現代的にアレンジしている形状なので、ライヴ時にも弾きやすく、どんなジャンルにも対応してくれているモデルだ。操作性もシンプルで、持って悩むことなくすぐに弾けるのがファシストの特徴ともいえる。

SEから手にしてみた。“お〜、軽い! 疲れない! 弾きやすい!”というのが第一印象。
ボディは、バスウッドでフィニッシュされているので、ヴァイス
と見かけ的な違いがまったく感じられない(指板が、ややSEのほうが明るめの色か)。アンプを歪ませて弾いてみると、フラットな音色から少しハイに寄ったアメリカン・ハード・ロックに合いそうなカラっとしたトーンを出してくれる。弾き心地としては、通常のファシストと差を感じさせないところが素晴らしい。セミ・ディープ・インサートで、ハイ・ポジションの弾きやすさもそのままだ。この価格で、このクオリティは、ホント、驚かされる。

さて、価格的には倍になるヴァイスⅡにいってみよう。持ってみると、SEより、ほんの少し重量感を感じるボディはアルダー2ピース仕様だ。
同じく、歪ませたアンプで音を出してみると、SEよりも音に太さを感じる。SEに比べると、ミッド・レンジが豊かになっているようで、これはピックアップの違いも影響しているようだ。SEがアメリカンなら、こちらはブリティッシュというところだろうか。ひじょうに音の立ち上がりが早く、もはや最上位モデルであるファシストとの違いを感じられないほどで、音の抜けも抜群だ。
ネックがSEよりもしっかりとした握りに感じるのは、ネックのフィニッシュの違いなのだろうか。ただ、しっかりと感じられるぶん、SEのほうが握りやすいと思う人もいるだろう。各パーツの違いが価格に出てはいるのだろうが、音的に2倍の違いは感じられなかった。というか、それほど両モデルともクオリティが高いギターといえる。おそるべし、ファシスト!

▲ファシスト・ヴァイスのブリッジは、フロイド・ローズの1000を搭載

ファシスト・ヴァイスのストラップ・ピンには、ESPのストライプ・ロックが採用されている

ファシスト・ヴァイスSEのブリッジは、フロイド・ローズのスペシャルだ

▲ネック・ジョイントはキラー独自のセミ・ディープ・インサートだ。左がファシスト・ヴァイス、右がファシスト・ヴァイスSE


ルーク篁参謀(聖飢魔Ⅱ)の証言と愛機
〜マホガニー・ボディのファシストはバランスがよかった

参謀:キラーを使い始めたのは、当時悪魔寺(所属事務所のようなもの)のアースシェイカーのSHARA氏の紹介がキッカケで、初めて弾いたのはSHARA氏のKG-Scaryだった。“軽いなー”というのが第一印象だった。
ファシストは本活動時に愛用していたが、なかでもマホガニー・ボディの紫色のモデル(写真下の⑤)は音のバランスがいちばんよかった印象がある。
Grave Stoneは俺の代名詞になったし、メイプル材の音の特徴がよく出ていておもしろかった。前述の2機種の中間的でオールマイティだったGalaxy Blackの使用頻度がいちばん高かったと思う。
現在、KG-Spellbindを愛用しているが、貴重なマホガニーを使用していることやピックアップがパッシヴなので、反応がナチュナルなところが気に入っている。自分のギターを製作する時に、こちらから特に指定することはないが、現状ですごく満足している。

◎参謀の歴代のファシスト&ファシスト・ヴァイス。
①参謀にとって初めてのキラーであるKG-Fascist(デリシャス・レッド)。ボディはアッシュ。ヴォリューム、ピックアップ・セレクター、ダイレクト・スイッチというコントロールは、その後のファシストに継承される。
②2号機であるKG-Fascist(ギャラクシー・ブラック)。本解散前の参謀の愛機としての印象が強い1本。ボディはアッシュ。
③こちらも本解散前の参謀の愛機として印象深いKG-Fascist(GRAVESTONE MEN)。墓石をひっかくような立体的な加工が特徴で、こちらはメイプル・ボディ。ピックアップがEMGに交換されている。
④GRAVESTONE MENのサブとして製作されたKG-Fascist(GRAVESTONE WOMEN)。右下に見える手が女性のものになっている(WeROCK 048での取材時にはピックアップが外された状態だった)。
⑤4号機となるのが、このKG-Fascist(パープル)。ファシストでは珍しくボディがマホガニー製。で、Dチューナーが搭載されていることも特徴となっている。ピックアップはEMGに変更されている。
KG-Fascist Vice(ミルキー・ウェイ)。こちらもファシストとしては珍しい24フレット仕様で、さらにアルダー・ボディ、エボニー指板という点も他と異なっている。こちらは聖飢魔の「Masquerade」のレコーディングにおいて24フレットのギターを使用したため、黒ミサでも24フレットのギターが必要となり製作されたものだ。
KG-Fascist Vice(カメレオン)も、ミルキーウェイと同じアルダー・ボディで24フレット仕様だが、参謀のリクエストに応えて指板がローズウッドとなっている。
⑧現在のところ、最新の参謀のファシストとなるKG-Fascist type 24F(プロトタイプ)。近年、24フレットのKG-Spellbindをメインに弾かれる参謀のために、魔暦23年(2021年)に製作されたモデル。その音のよさから、同年に行なわれた“悪チン集団接種”のヴィデオ収録でも使用されている。ファシストとしては珍しい、マホガニー・トップ+メイプル・バックというボディ、リヴァース・ヘッドが特徴で、ピックアップはセイモア・ダンカンのSH-6n Distortion(フロント)とTB-5 Custom(リア)となっている。


SAKI(ネモフィラ/メアリーズ・ブラッド/アマヒル)の証言と愛機
〜弾きやすく、音にガッツがあります!

SAKI聖飢魔を知りギターに興味を持ちましたのがきっかけでキラーを知りました。初めて持ったのはファシストのGrave Stoneです。当時は音のことはよくわかっていませんでしたが、とても音の輪郭があって抜ける音だという印象でした。
自分のモデルの製作を依頼する時に重視するのは、弾きやすさと音の太さです。材質が自分に合っていると思ったので、アルダーをメインでリクエストしています。現在は7弦(KG-Fascinator Seven the Empress galaxy black petals)をメインで使用していますが、とても弾きやすいところが気に入っています。それでいて音のガッツがあるところもいいですね。
最近は、キャラクターの違う音を要求されることも増えたので、シングルコイルの7弦とか、変わったものがあっていいかもしれないですね……需要がわからないですが(笑)。キラーには、このままいつまでも日本のハード・ロック/ヘヴィ・メタル界の音を牽引し続けてほしいです!

左側の2本(①と②)は、ネモフィラで大活躍しているKG-Fascinator Seven the Empress galaxy black petals。①がプロトタイプ、②が製品版で、ともにネモフィラの最新作のレコーディングでも活躍している。
KG-Fascist Vice カスタム。ピックアップをEMGに交換、またクリア・ピックガードの下に歯車を、というリクエストに応え製作。
④はメアリーズ・ブラッド加入前より愛用していたKG-Fascist(GRAVESTONE WOMEN)。※写真提供:SAKI


Shu(TSP)の証言と愛機
〜自宅でもライヴでも弾きやすい最高の形状!

Shu:白いファシスト・プロトが最初に作って頂いたモデルです。その後、555というモデルを継承して、03モデル→フェニックスとなります。白いプロトや青のプロトは、じつは今のファシストとバックの形状が微妙に異なっていたり、フェニックス以外はトラスロッドの調整がネック・エンドでできなかったりしていて、そのあたりは同じファシストでも進化しています。
ピックアップは、いろいろ実験していて、どのモデルも素直な鳴りなので、ピックアップの特性が生かされますね。とにかく、ライヴでもレコーディングでも自宅でも弾きやすくて疲れない最高の形状だと思います。

左から、ファシスト・プロト、ファシスト・ヴァイス、ファシスト×2本、ファシスト・プロトという合計5本のファシスト。
ピックアップはそれぞれ異なっており、プロトは1ハム+1シングルという、特別仕様になっている。なお、いちばん右は、KG-Saraswatiだ


ファシスト&ファシネイターの現行モデルを紹介

キラー KG-Fascist Vice BIB
¥231,000(税込)

■キラー KG-Fascist Vice BIBの詳細■
https://www.killer.jp/guitar/kg-fascist-vice-bib.html

 

キラー KG-Fascinator Seven the Empress galaxy black petals
¥313,500(税込)

■キラー KG-Fascinator Seven the Empress galaxy black petalsの詳細■
https://www.killer.jp/guitar/kg-fascinator-seven-the-empress.html

 

キラー KG-Fascist Vice Seven
¥281,600(税込)

■キラー KG-Fascist Vice Sevenの詳細■
https://killer.jp/guitar/kg-fascist-vice-seven.html

 

今回試奏紹介している2モデルの他、現在入手できるのは、この3本だ。

最上段はボディやパーツなどが黒で統一されたファシスト・ヴァイス BIBモデル。ピックアップにはレース・センサーのアルミトーン・ハムバッカー(フロント)とアルミトーン・デスバッカーを搭載。
中段は、SAKI(ネモフィラ、他)の愛用の7弦モデルを市販化したファシネイター。ラメの入ったギャラクシー・フィニッシュに桜の花びらをあしらったボディが印象的だ。ピックアップはセイモア・ダンカン。
下段の7弦モデルは、ピックアップにセイモア・ダンカンのセンティエント(フロント)とナズグル(リア)を採用。なお、この3機種とも24フレット仕様であることも付け加えておこう。

 

■キラーギターズ株式会社 公式サイト■
https://www.killer.jp/