俺のMarshall〜和嶋慎治 編

アンプの王者“マーシャル”が、今年で創立60周年を迎えた。
これを記念して、本誌では“俺のMarshall”をアーカイヴ&追加取材でお送りしているが、このWeROCK EYESでも公開したい!
今回は和嶋慎治(人間椅子)編だ!!


艶やかで色気のある音がするなと思うとだいたいマーシャルだから

和嶋ギターを始めたのはジミー・ペイジがキッカケで、真空管アンプというものを鳴らさないとあの歪んだ音にはならないということ、真空管アンプを持っていないアマチュアはオーバードライブとかディストーションを使うということを中学生の時に知ってね。
マーシャルは、ジミ・ヘンドリックスもリッチー・ブラックモアも使っているのは知っていたけど、やっぱり別格で高価だったしアマチュアが買えるものではないと思ってた。東京に出てきてからも、練習スタジオとかでマーシャルを弾くと、やっぱりいいなと思いつつも、鳴らし方がイマイチわからなかったのも大きかったかな。でも、人間椅子を本格的にやろうという時に、自分が持っているディストーションじゃダメだと思い、ちょうどマーシャルから出たガヴァナー(ディストーション)を買って、しばらくやっていたよ。イカ天に出た頃もライヴ・ハウスやスタジオにあるJCM800にガヴァナーをつないでいたかな。デビュー・アルバム『人間失格』(1990年7月)のレコーディングは100wの1959をレンタルして、でも歪みが足らなかったので、ガヴァナーか何かをつないでね。アルバムは古くさい音で録ろうと思ったから、JCM800じゃなくてヴィンテージの1959をレンタルしたんだ。

自分の機材として、マーシャルを手に入れたのは、そのファースト・アルバムの後。やっぱり自分のマーシャルがないとダメだなって、印税で買った。新宿にアンプだけを売っていたヴィンテージの楽器屋さんがあってさ。アンプを買いに行く前に、筋肉少女帯の橘高君と対談することがあって、その時にアンプはやっぱり50wだよって話をしていて、実際に楽器屋で弾いたら、50wのほうが歪んでさ。で、1987が2〜3台あったんだけど、その中で自分的にいちばんしっくりくる、シルキーな音のアンプを買った。それが今もメインで使っている1987。73年から75年ぐらいのモデルらしいけど、よくわからない(笑)。
1987を買った後、キャビネットはライヴ・ハウスとかにある1960をふつうに使っていたんだけど、キャビネットもないとダメだなと思って、今度は渋谷にあったヴィンテージ屋さんで買ったと思う。知り合いが新しくヴィンテージ屋さんを開いたと聞いて、そこに行ったらキャビネットがたくさんあって、いいのが入ったよと言われてみたのが1960TVだった。リイシューじゃなくて、ヴィンテージのね。でも、スピーカーだけは入れ替えてあったのかな。そこに自分のヘッドを持ち込んで弾いたら、ローの出方とかすごいよくてさ。これは、他のキャビネットより自分のヘッドに合ってると思って買ったんだ。それが、セカンド・アルバム『桜の森の満開の下』(91年3月)を出した後かな。サード・アルバム『黄金の夜明け』(1992年6月)の頃には持っていたから。
それ以来、ライヴは今まで1987と1960TVの組み合わせ。ただ、一時期レコーディングでのヌケをよくしたほうがいいかなと思って、1959を借りた時期もあった。9枚目の『怪人二十面相』(2000年6月)で使ったし、もしかしたらその前の8枚目の『二十世紀葬送曲』(99年3月)も1959で録ったかもしれない。その借りた1959も結局、今、自分のサブとして持っているよ。1959はヌケはいいなと思っていたけど、歪みが足らないということで、やっぱりレコーディングも1987に戻るんだよね。
今は、1987で満足しているから、他のアンプにあまり興味がなくて。でも、JCM2000はよくスタジオに置いてあるから弾いたりするし、あのクラシック・チャンネルはわりといいと思った。でも、1987のほうが好き。最新のJVMも使い勝手はいいんだろうけど、どうも興味がなくて(笑)。あとね、JCM800の50wは買いたいなと思っている。1987とかよりザラっとしていて80年代のメタルって感じだけど、いい音がする。そんな感じだから、マーシャル以外のアンプは全然気にならない。

マーシャルの魅力はね、ハード・ロックのアルバムってほとんどマーシャルで録音されていること。マーシャルが発展して、ハイ・ゲイン・アンプとかいろんな音が生まれてきたけど、自分が聴いて艶やかで色気のある音がするなと思うとだいたいマーシャルだから。
マーシャルとフェンダーは別格だと思う。あとね、形がいい! 筆記体のロゴだけでロックという感じがする(笑)。ロックがある限り、ロックとともに歩み続けるアンプという気がする。
マーシャル60周年、すごい! 還暦ですね。ロック・ギターの音といえばマーシャル、マーシャルがなければロックが生まれなかったといっても過言ではないよね。

長年、和嶋を支えてきているマーシャル。最上段がサブの1959(100w)、その下がメインの1987(50w)。
キャビネットは1960TVだ(
写真:牛澤滋由貴)

和嶋慎治のセッティングを公開!(メインのセッティング)

※WeROCK 047(2015年6月発売号)での特集をもとに追加取材しています。