SYUとShuがお互いのシグネイチャー・ペダルを試奏!

ギタリストのシグネイチャー・エフェクターも近年では数多く存在している。
WeROCKの試奏会でもおなじみのガルネリウスのSYUは、みずから製作したモデルを発売している。
さらに、そのSYUと仲良しであるTSPのShuも、マニアックにバッファーのシグネイチャー・モデルを発表。
では、ここで、ダブル・シュウによる試奏会を開催します!
VORVADOS ENGINEERING
VORVADOS OVERDRIVE
¥35,200(税込)
■仕様■
●コントロール:レベル、ゲイン、バーン、エッジ
●電源:DC9Vセンター・マイナス
●外形寸法:63(幅) x 58(高さ)x 118(奥行き)mm
——ダブル・シュウさんは、よく機材の話をするとのことで?
Shu:はい、よく機材に関してもお世話になっていて、僕のモディファイされたSD-1の修理をしてもらったり、もちろんSYU製作のオーバードライブやブースターも数台持っていて愛用してます。
SYU:こないだShuさんのご自宅で試奏会やったりしましたよね。
Shu:ただ、ヴォルヴェイドス・ブランドのエフェクターを弾かせて頂くのは、今回が初めてで。その前に製作していたエフェクターも、僕好みのものが多かったので、すごく興味深かったです。この赤いほうが、ヴォルヴェイドス最初のモデルなのかな?SYU:ですです。
Shu:それまで作っていたモデルって、わりとシンプルなタイプが多かったでしょ? なぜ、記念すべき初号機が4コントローラーなの?
SYU:いろいろ作っていくうちに自分のブランドで最初に出すオーバードライブは、ツマミが4つがいいなって思っちゃったんです。今となってはどうでもいいことなんですけど(笑)。で、いろいろ作ってる中、いちばん気に入ったサウンドが出てたので、これを第1号にしようと。ヴォルヴェイドスが始まるまでは、ロックエコーズというショップで、テスト機みたいな感じで発売していたんです。
Shu:そのテスト機のテスト機みたいな試作品をいろいろ試させてもらったし、ライヴでもレコーディングでも使ってました。よく使ってたのは、中身はなにを目指したかわからないけど赤いオーバードライブ。このヴォルヴエイドス・オーバードライブも赤いけど、あの時のとは違うよね?
SYU:違いますね。これは、最初、ボスのOD-1っぽさを目指したんです。
Shu:そうなんだ。弾いてみると、そんな感じはしないというか、OD-1のイメージって、もっと中域が出すぎるぐらい出てくれる感じかと思っていて、そうではないよね?
SYU:これは、そうなんですよ。後段に、ブースターをかますことによって、そのキャラが強く出るようになったんです。ブーストのツマミは歪みの少ない状態でもつねに効いてる感じなんですね。
Shu:結果としては、OD-1とは違うものになったと。ちゃんとOD-1を弾いたことがないからわからないけど、個人的にはこちらのほうが好みだし扱いやすいと思った。原音を変化させることなくブーストしてくれるし、ゲインとかブースト・ツマミのセッティングでトーンの方向性が変わるね。◯◯風オーバードライブというよりも原音を大切にしてくれるブースター的なオーバードライブという印象。
SYU:そうですね。あと、音の立ち上がりがめちゃくちゃ速いんです。その速さが売りではあるんですけど、速すぎるっていうギタリストもいたりと。チューブ・スクリーマーなどと弾き比べるとわかるんですが、速弾きする時に感じてもらえるかと。
あと、ライヴでワイヤレスを使ったりするギタリストなら、やっぱりワイヤレスってレイテンシーが少なからずある中で、これはそこを軽減しするにも役立ちます。
Shu:ギタリストの中には、ちょっとしたコンプ感を望んでる人も多いでしょ。そのコンプ感で、少しアタックが遅れるみたいに感じる人もいると思うのね。今、弾いた印象だと、本当に弾いた瞬間、ストレートに音が出てくれる。オーバードライブで音色変化を求めない人には、これがいいんだよね。
SYU:エッジというツマミがトーンの役割ではあるんですけど、全体的なサウンド・キャラクターを変化させるコントローラーでふつうのトーンとは違って、絞り切ってもコモらないんです。あくまでもトーン・キャラクターが変わるっていう。
Shu:あ、ホントだ! ハイが落ちることなく変化してくれる。
SYU:右に回せばハイは出てくるけど、それはキャラクターとして変わってる感じですよね。
Shu:絞っていくと、ハイが削れずにローが出てくれるのはうれしい。
SYU:周波数帯が変わる感じです。
Shu:ギタリストが欲しいトーンがわかってる人が開発した感じ(笑)。
SYU:で、ハード・ロック、ヘヴィ・メタルに特化してると。
Shu:ふつうのオーバードライブって、トーンを全部しぼっては使わないかと思うんだけど、これは全しぼりでも使えるね。というか全しぼりでもいいぐらい!
SYU:ちなみに、クラシック・ゲインのチャンネルでもいいんですよ。※試奏にはマーシャル JCM2000を使用。
Shu:個人的に、2000のクラシック・チャンネルは音が太くなりすぎて音作りが難しいと思ってるんだけど……あ、ホントだ! これは、このチャンネルのほうが合うかも。ゲインをフルにして、ヴォルヴェイドスで少しブーストすると、めっちゃいい感じになる。
SYU:もし、ウルトラ・ゲインのチャンネルでやる時は、オーバードライブのゲインを下げ目にしたほうがいいです。音量が出るんで。
——そして、最新のヴォルヴェイドスから発売されるのが、こちら。
VORVADOS ENGINEERING
FORTIS OVERDRIVE
¥31,900(税込)
■仕様■
●コントロール:ドライヴ、トーン、レベル
●電源:DC9Vセンター・マイナス
●外形寸法:63(幅) x 58(高さ)x 118(奥行き)mm
SYU:こちらはいわゆるチューブ・スクリーマーに影響を受けて製作したモデルです。こっちのトーンは、TS系の効き方をして右に回すと歪みも増す感じがすると思います。
Shu:(弾きながら)あ〜、これはぜったいに欲しくなるやつ(笑)。たまらない中域が出てくれる。
“やっぱり歪みはアナログだよな〜”と改めて思わせてくれるオーバードライブですね。でも、TS系の長所であり好みがわかれるところでもあるローがなくなるタイプではないよね? これは一家に一台なタイプだし、たぶん明日には僕のボードに入ってると思われます。うんうん、ゲインを上げていっても音痩せしないね。
——2機種目をTS系にしようとした理由は?
SYU:単純に好きな音だったのといいうのが強いですね。
Shu:これまで、SYUから何台かご提供いただいた試作品はSD-1系だったりTS系だったりが多かったから、てっきりヴォルヴェイドスの1号機もそっちなのかと思ったら、2機種目で来たんだね。エフェクター専門家にぜひ聞きたいんですけど、どこで何系とかって決まるのかな?
SYU:中の回路構成ですね、定型文みたいな回路があって、そこからみんなアレンジをしていく感じではあります。
なので、この構成にするとTS系の音になるっていういう回路があって、例えばザック・ワイルドのオーバードライブはSD-1寄りではあるんですけど、SD-1とTS-9は回路構成が同じなんです。ただ、定数が大幅に違っているだけで、あれだけキャラが違ってくる。回路定数が少し違うだけで、大幅な音の違いがあったりします。それに、同じパーツでも中の回路の数値が違うことでもかなり変わってきます。さらに、中の配線をしてるのが配線材を使ってるのか、一体型の基盤を使ってるのか、ジャックやスイッチの違いもあるし……。
量産するのと完全ハンドメイドでは変わってきますよね。一体型基盤にすることで失われるものっていうのもあるんです。配線材を使った時のアナログ感であったり、基盤の特性が出たりするんです。だから試作で作ったものと量産型で作ったもので音の違いが出てくることもあって、もう1回、最初からやり直すこともありますからね。
Shu:それ、わかる。僕のバッファーも中身は同じで筐体が変わったり、今回の量産するにあたっての変化で音は違って。なので、発売するまでは1号機から考えると4〜5年たってるはず。ただ、おもしろいのは量産型のほうがトーンが好みだったりすることもあって、量産型と初期型を比べてみると好みがわかれたりしてね。
SYU:同じ音にするためには、同じ音が出るまでやるしかないんです。それが、どこの部分をいじればいいのかというのも、その答えによって異なるんです。もしかしたら、筐体からやらないといけないのかとか、アースの取り方なのか、もしくはその基盤内の定数を変えるべきなのかとか。ローが失われるパターンが多かったりするんですよ。逆に言うとハイが出すぎちゃうっていうか。
Shu:どちらがいい悪いではなく、好みの音も関係してくるよね。
SYU:けっきょく初めて弾く人には、その違和感はないじゃないですか。ただ、製作してる方からすると前のほうがよかったって思っちゃうんですよね。
Shu:製作者の意向と、弾く人の好みはまた違うからね。結果的にこういう音になったけど、そっちのほうがいいなっていう人もいるってことだよね。
SYU:そうなんですよ。僕の場合は、弾き手と製作の両方担ってるから、どっちの音がいいのかわからなくなることもあるんです(笑)。
Shu:僕のバッファーは、試作機と発売されたもので塗装が違うんだけど、それによる音の違いもあったりする?
SYU:大いにあります。今回の僕のモデルを無塗装にしたのも、塗膜によっての音の変化を避けるためというのもあるんです。塗ったものより塗ってないケースのほうが、なんか開放感のある音がしてくれるんですよ。大音量で試さないとわからないぐらいの差なんですけどね。
Shu:それはあるよね。開発されている方って、大音量だったりバンドのスタジオ、それこそライヴで試してるわけじゃないから、僕らの感覚とはまた違うところで音を作ってるというか。
SYU:だいたいハイの出方が変わるんですよね。だから、そのへんは恐怖なんですよ。何回も何回も試さないとなんです。
——では、今度はShuバッファーをSYUさんに試して頂きましょう。
Jackman
Tone Screamer Pro
¥25,000(税込)
■仕様■
●電源:DC9Vセンター・マイナス
●消費電流:最大5mA
●サイズ:47mm(幅)×47mm(奥行き)×35mm(高さ)
SYU:(弾きながら)いい感じですよね。音をまとめてくれる感じで、さらにモチっとさせてくれます。
Shu:ちなみに、この試作品のほうも試してもらえる?
SYU:あ、こっちはミドルの密度が違いますね。もちろんトーン・キャラクターは一緒なんですが、たしかに違います。
どちらも、音を中央にまとめてくれるのを強く感じます。弾いた時の感覚をそうとう大事にしてそのニュアンスのままバッファーをかけたいみたいな。オケの中で音のまとめ方っていう点は、青いほうがあるかもしれないですね。
Shu:もともとはケンタウルスのオーバードライブに入ってるバッファーを抜き出したくて、それをオマージュして作ってもらったのね。その時に、ジャックマンさんがピート・コーニッシュ・タイプのバッファーと切り替えられるようにしてくれて、そしたら今度はピート・タイプのほうが気に入ってしまって、そこからいろんな筐体、ジャンクション・ボックスだったりに入れてもらって実験したんだ。ところが、やっぱり中身は同じでも音が違うって僕が言い出して、けっきょく行き着いたのがこの形。
SYU:ケースによって、ぜったいに音は変わりますからね。
Shu:ところで、バッファーって、今ではエフェクターにも入ってるし、それこそワイアレスだったりスイッチャーにも入ってるでしょ。そういう中で、さらに、外付けのバッファーを通すと“バッファー過多”になったりしないの?
SYU:悪いことではないどころか、むしろそのほうがいいんと思いますよ。
レコーディングやライヴで、使う時のバランスを考えてあげればぜんぜん問題はないです。エフェクターやスイッチャーにもバッファーは入ってますが、こうやって個体化してやってあげることによって、その回路が持つ能力を最大限に出してくれるんですよ。他に回路があるということは、多くの道を通ることになるので、バッファーとしては単体のほうが機能しやすいはずなんですよね。
Shu:いろいろな人に使ってもらったんだけど、最近のいわゆるアンプ・シミュレーターの前に使ってもらうとデジタル臭さを消してアナログ感が出てくれるらしい。
SYU:ギターの出音自体を、キレイにまとめてくれる存在だなっていうふうに思いましたね。
▲右が試作機。こちらは世界に1台だが、現在、Shuの弟子が使用してるとのこと
■TONE SCREAMER PROの詳細■
http://jackup.co.jp/buffer/