大橋隆志がマーシャル スタジオ・シリーズを試奏!

1959とJCM800、そしてJubileeを20wで再現し、そのサウンドが話題となっているスタジオ・シリーズ。WeROCKでは、さまざまなプロ・ギタリストにこのスタジオ・シリーズを試してもらってきたが、今回は大橋隆志にチェックしてもらった! オールド・マーシャルを愛する大橋は、どのモデルに惚れるのだろうか?※WeROCK 075の掲載記事より。

マーシャル スタジオ・シリーズ

▲左より、JCM800を継承したスタジオ・クラシック、中央がスタジオ・ジュビリー、右が1959を継承したスタジオ・ヴィンテージ。いずれもコンボ・アンプとヘッド・アンプ、そして1発入りと2発入りのスピーカー・キャビネットがラインナップしている。
スタジオ・クラシックは、手前から後ろにかけて、Studio Classic SC20C(¥160,000+税)、1×12インチ・キャビネット:
Studio Classic SC112(¥70,000+税)、Studio Classic SC20H(¥140,000+税)+2×12インチ・キャビネット:Studio Classic SC212(¥95,000+税)。
スタジオ・ジュビリーは、左前がStudio Jubilee 2525C(¥140,000+税)、右前が1×12インチ・キャビネット:Studio Jubilee 2512(近日発売予定)、後方がStudio Jubilee 2525H(¥140,000+税)+2×12インチ・キャビネット:Studio Jubilee2536A(¥93,000+税)。
スタジオ・ヴィンテージは、前から後ろにかけて、Studio Vintage SV20C(¥160,000+税)、1×12インチ・キャビネット:Studio Vintage SV112(¥70,000+税)、Studio Vintage SV20H(¥140,000+税)+2×12インチ・キャビネット:Vintage  SV212(¥95,000+税)

アンプ部の基本的なスペックは以下のとおり
【SV20】
●出力
:20w/5w
●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2
●チャンネル:1=ハイ・トレブル/2=ノーマル
●コントロール:ラウドネス1、ラウドネス2、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス
●入出力端子:ハイ・トレブル高感度入力、ハイ・トレブル低感度入力、ノーマル高感度入力、ノーマル低感度入力、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2)
コンボのスピーカーはセレッションV-Type(10インチ)×1発。
【SC20】
●出力:20w/5w
●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2
●チャンネル:1
●コントロール:プリアンプ・ヴォリューム、マスター・ヴォリューム、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス
●入出力端子:ハイ・インプット、ロー・インプット、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2)。コンボのスピーカーはセレッションV-Type(10インチ)×1発。
【Studio Jubilee】
●出力
:20w/5w
●真空管:ECC83(プリ管)×2、ECC83(フェイズ・スプリッター)、EL34(パワー管)×2
●チャンネル:クリーン/オーバードライブ
●コントロール:アウトプット切り替えスイッチ、プレゼンス、ベース、ミドル、トレブル、アウトプット・マスター(プルでオーバードライブ・チャンネル)、リード・マスター、インプット・ゲイン(プルでリズム・クリップ)
●入出力端子:インプット、フット・スイッチ・イン、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2
。コンボのスピーカーはセレッションG12M-25(12インチ)×1発。

スタジオ・ヴィンテージ(SV20)

——スタジオ・シリーズをイッキに試してもらいましたが、とくに印象に残ったモデルはどれでしたか?
大橋:このコンボ(スタジオ・ヴィンテージのSV20C)が、特に気に入ったよ。
——1959を、20wで再現したモデルですね。
大橋:俺、大量の機材を所有してて、今、それらを減らしつつ、新しい機材は増やさないように心がけている。だけど、このコンボは欲しい(笑)。
——どういったところが大橋さんのツボなんですか。
大橋:ギターが持っているポテンシャルに合わせて、どんなトーンでも引き出せるところ。もう少しローが欲しいなと思ったら2のインプットを使ったりできるし、微妙なニュアンスが出せる。どんな音楽……それはもちろんマーシャルの音が合う音楽なんだけど、何にでも使えると思うよ。
今回は自分のセミアコで鳴らしたけど、テレキャスをつなげばテレキャスのポテンシャルを引き出せるし、ハムバッカーの音はマーシャルが得意とするところだし、すばらしいアンプだと思う。
——今の多機能なアンプに比べると、コントロールがシンプルだから、あまり幅広いトーンが出せないのでは、という印象を受けるギタリストがいるかもしれないですが?
大橋:そんなことはないよ。プレイヤーが求めるのは“いい音”なわけでさ、SV20Cのようにシンプルにドンといい音を出してくれるのであれば、それで充分だよ。で、トーンを追い込んだ時に、細かいニュアンスまで表現されればOK。俺がいいアンプだなと思う条件は、そういうところなんだよね。立ち上がりが速いということ、レンジが広いということ、トーンを追い込めるというところ。
——弾きながら、“マーシャルらしいね”と話していましたが、その“マーシャルらしさ”とは?
大橋:オールド・マーシャルを使った人にはわかると思うけど、スタジオ・ヴィンテージは、あの時代のマーシャルが持っているニュアンスがちゃんと出てる。音が塊になって飛び出てくる感じと言ったらいいのか、ガツンと来るのは、これはやっぱり本物、“THE マーシャル!”って感じがする。
——スタジオ・ヴィンテージは4インプットというのも継承しています。
大橋:そこも大きいよね。
——大橋さんがオールド・マーシャルを使う時はどこにつないでいるんですか?
大橋:アンプによって違う。いくつか持っているんだけど、1のハイにつなぐだけでいいアンプもあれば、リンクさせたほうがいい音のするアンプもあるし、2のローにつなぐといい音がするヤツもあるしね。
だから、決まった使い方はないよ。今回もいろいろ試してみたけど、1と2の音のニュアンスの違いがよく出てて、おもしろいなあと。よくできているし、それだけ幅広いトーンを取り出すことができるよね。
あと、オールド・マーシャルはある程度、ヴォリュームを出さないと魅力を引き出せないというところがあるんだけど、スタジオ・ヴィンテージは20wと5wで切り替えられるし、扱いやすい音量で好みのトーンを追い込めていけるのもいい。
——コンボとヘッドとでの違いはどうですか?
大橋:もちろん基本は同じだけど、コンボは10インチのスピーカー、ヘッドはスピーカーを選べるからヴァリエーションはあるよね。キャビによってニュアンスが変わるから。
——キャビネットでは、12インチ×1発にアグレッシヴさを感じたとのことですが?
大橋:そうだね。何をもって“アグレッシヴ”なのかは微妙な表現なんだけど、タイトでいて暴れ馬のようで、2発入りと比べるとワイルドだよね。逆に、2発入りはキメが細かくなり、ロー・エンドも補なわれてクリーンな印象があった。箱鳴りによる音圧も2発入りのほうがある。20wという出力と12インチ×2発というバランスもいいと思うよ。それは、その後に試したスタジオ・クラシックにも感じた。

大橋隆志のお好みセッティング
SV20

▲写真上がヘッド、下がコンボの音作り例。
“レコーディングでバッキングに使える音”というテーマで作ってもらった。
2のハイにギターをつなぎ、1のハイと2のローをリンクさせた状態での音作り例だ

▲1959を継承しているSV20は4インプット仕様。
大橋は、今回、左上の2のハイ(左上)にギターをつなぎ、右上の1のハイと左下の2のローをリンクさせての音作りも試してくれた。※写真はコンボのSV20C

 

▲スタジオ・シリーズは、全モデルとも出力を20wと5wで切り替えられる。
5wでヴォリュームを上げて使えるというところも大橋が気に入ったポイントだ。※写真はコンボのSV20C

 

スタジオ・クラシック(SC20)

——では、そのスタジオ・クラシック・シリーズは全体的にどうでしたか?
大橋:“800”の音だったね。JCM800って、ハイのエッジ感に特徴があったんだけど、それがこのスタジオ・クラシックでもしっかりと感じられる。しかも、当時の800よりコントロールしやすいのがいいよね。スタジオ・ヴィンテージと同じく音の立ち上がりも速いよ。で、音が立ち上がった後は、スタジオ・ヴィンテージはミッドがグッと押されてくるイメージ、スタジオ・クラシックはハイのギラッとしたところが塊になって出てくるイメージかな。どちらも当時のアンプのキャラクターがしっかりと再現されていると思う。
あと、スタジオ・クラシックも20wと5wで切り替えられるけど、5wで鳴らせるのがいいよね。音がデカすぎるとコントロールしきれなくなるところがあるんだけど、5wで使えるでしょ。とくに800らしい音を5wで作れるのが大きい。出力の切り替えは、スタジオ・クラシックではとくに有効だと思う。
——音のキャラクターとしてはどうですか? やはり、ハード・ロック向きですか?
大橋:そうだね。ハード・ロック、ハイ・ゲインな音楽にピッタリでしょ。しかも、そのサウンドがすごくコントロールしやすくなっているのがいい。マーシャルって、大きな音で鳴らしつつ、それをどうコントロールするかというのがスタジオやステージでのテーマだったりするんだけど、これは20w/5wでしょ。ライヴで試してみないとわからないけど、レコーディングではかなり威力を発揮すると思うよ。
——スタジオ・クラシックの音作りは、プリアンプ・ツマミがポイントかなと試奏中に話していましたね。
大橋:うん。俺の場合、まず、クリーンな音の立ち上がり、フル・コードで弾いた時に、全部の弦の鳴りが聴こえるくらいにオーバードライブしてるのが重要なんだけど、スタジオ・クラシックの場合はマスターとプリアンプのコンビネーションでかなりそこを追い込むことができたよ。
——あと、コンボを5wで弾いた時に、スタジオ15と近いニュアンスを感じたそうですが。
大橋:そうだね。スタジオ15を所有してて、レコーディングでよく使う小さいコンボなんだけど、そのアンプにちょっと近い印象を受けた。スタジオ15も真空管アンプで、当時の800シリーズと近い年代に作られていたからニュアンスが近いのかもしれないね。
——ちなみにライヴでは何がメインなんですか?
大橋:1973年製の1959。リー・ジャクソンが改造したヤツね。もうずーっと使っているよ。

大橋隆志のお好みセッティング
SC20

▲写真上がヘッド、下がコンボの音作り例。
こちらも“レコーディングでバッキングに使える音”というテーマで作ってもらっている

 

スタジオ・ジュビリー(2525)

——そして、最後に弾いてもらったのがスタジオ・ジュビリーです。
大橋:オリジナルのジュビリーって、ほとんど弾き込んだってことはないんだけど、このスタジオ・ジュビリーの音は、当時の時代性みたいなものが再現されていると思う。かなり歪むよね。あと、弾いてみてあらためて感じたのは、ミッドからミッド・ハイにかけてのキャラクターが強いなということ。真空管アンプのワイルドさというより、音がよくまとまってる印象も受けたんだよね、スタジオで録音した音をモニター・スピーカーで聴いてるような。2チャンネル仕様ということでいろいろな音が作れるし、マイクのりもよさそうで、他の楽器の音ともよく馴染む、レコーディングではかなり扱いやすい音なんじゃないかな。
——それぞれ、どういうギタリストにオススメしたいですか?
大橋:スタジオ・ヴィンテージは、60年代〜70年代のサウンド……ジミ・ヘンドリクスとか、そういうのにも合うと思う。ヴィンテージ・サウンドにはそこに新しさもあるからモダンな音楽にも合うんじゃないかな。楽器の鳴りが重要な音楽をやりたいというギタリストにいいと思う。スタジオ・クラシックは、もっとヘヴィにリフを刻みたいギタリスト向けだと思う。サスティンもあるし、80年代や90年代のハード・ロックにいいと思う。スタジオ・ジュビリーはね、ライヴよりもスタジオで威力を発揮するという気がした。いい歪みをレコーディングしたいというギタリストには、とても扱いやすいと思う。
——そんな中でも、大橋さんがいちばん気に入ったのはスタジオ・ヴィンテージのコンボでしたね。
大橋:うん。マーシャルの大好きなサウンドがこんなに手軽に。すごいねって。

大橋隆志のお好みセッティング
2525

▲2525で、“レコーディングでバッキングに使える音”というテーマで作ってもらった音作り。
写真上がヘッド、下がコンボだ。

 

◎WeROCK EYESの過去記事で、スタジオ・シリーズの試奏レポートを掲載!
合わせてチェックしてみてください!!

○ルーク篁(CANTA)が最新マーシャルを試奏!
http://rockinf.net/eyes/?p=3638

○情次2号(元・犬神サアカス團)が最新マーシャルを試奏!
http://rockinf.net/eyes/?p=3165

○和嶋慎治(人間椅子)が最新マーシャルを試奏!
http://rockinf.net/eyes/?p=2687

○【試奏動画連動】大注目のマーシャル スタジオ・シリーズを弾き比べ
http://rockinf.net/eyes/?p=2563

○マーシャル最新アンプは、JCM800と1959を20wで完全再現!!
http://rockinf.net/eyes/?p=2301

問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
http://www.marshallamps.jp/

大橋隆志:聖飢魔のジェイル大橋代官としてデビュー。その後、渡米し日米混成バンド、キャッツ・イン・ブーツを結成、EMI-USAより世界デビューを果たす。日米を拠点に精力的な活動を展開、ハード&ブルージーなロックからアコースティックなスタイルまで多彩なスタイル、オールド・マーシャルを駆使したサウンドでファンを魅了している。また、魔暦22(2020)年聖飢魔の地球デビュー35周年記念 期間限定再集結にジェイル大橋代官として参加、こちらも注目を集めている。

最新アルバム:Independent Souls Union LIVE!』/TAKASHI O’HASHI & STEPHEN MILLS
R&P RECORDS DDCR-7011/7012

大橋隆志 公式サイト
http://www.takashioohashi.net/