ルーク篁が最新マーシャルを試奏!

マーシャルの名機であるJCM800と1959を20wで再現し、数多くのギタリストが注目しているスタジオ・シリーズ。そこに2017年初頭に発売されたミニ・ジュビリー・シリーズも現在はスタジオ・ジュビリーとして統合されている。そこで、今回はそのスタジオ・ジュビリーも含めてチェック! 試奏してくれたのは、ルーク篁(CANTA)!! はたして、ルークはどのモデルをもっとも気に入ったのだろうか?
※WeROCK 074の掲載記事より。

マーシャル スタジオ・シリーズ

▲左より、JCM800を継承したスタジオ・クラシック、中央がスタジオ・ジュビリー、右が1959を継承したスタジオ・ヴィンテージ。いずれもコンボ・アンプとヘッド・アンプ、そして1発入りと2発入りのスピーカー・キャビネットがラインナップしている。
スタジオ・クラシックは、手前から後ろにかけて、Studio Classic SC20C(¥160,000+税)、1×12インチ・キャビネット:
Studio Classic SC112(¥70,000+税)、Studio Classic SC20H(¥140,000+税)+2×12インチ・キャビネット:Studio Classic SC212(¥95,000+税)。
スタジオ・ジュビリーは、左前がStudio Jubilee 2525C(¥140,000+税)、右前が1×12インチ・キャビネット:Studio Jubilee 2512(近日発売)、後方がStudio Jubilee 2525H(¥140,000+税)+2×12インチ・キャビネット:Studio Jubilee2536A(¥93,000+税)。
スタジオ・ヴィンテージは、前から後ろにかけて、Studio Vintage SV20C(¥160,000+税)、1×12インチ・キャビネット:Studio Vintage SV112(¥70,000+税)、Studio Vintage SV20H(¥140,000+税)+2×12インチ・キャビネット:Vintage  SV212(¥95,000+税)

アンプ部の基本的なスペックは以下のとおり
【SC20】●出力:20w/5w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2 ●チャンネル:1 ●コントロール:プリアンプ・ヴォリューム、マスター・ヴォリューム、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス ●入出力端子:ハイ・インプット、ロー・インプット、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2)。コンボのスピーカーはセレッションV-Type(10インチ)×1発。
【Studio Jubilee】 ●出力:20w/5w ●真空管:ECC83(プリ管)×2、ECC83(フェイズ・スプリッター)、EL34(パワー管)×2 ●チャンネル:クリーン/オーバードライブ ●コントロール:アウトプット切り替えスイッチ、プレゼンス、ベース、ミドル、トレブル、アウトプット・マスター(プルでオーバードライブ・チャンネル)、リード・マスター、インプット・ゲイン(プルでリズム・クリップ) ●入出力端子:インプット、フット・スイッチ・イン、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2。コンボのスピーカーはセレッションG12M-25(12インチ)×1発。
【SV20】 ●出力:20w/5w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2 ●チャンネル:1=ハイ・トレブル/2=ノーマル ●コントロール:ラウドネス1、ラウドネス2、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス ●入出力端子:ハイ・トレブル高感度入力、ハイ・トレブル低感度入力、ノーマル高感度入力、ノーマル低感度入力、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2)コンボのスピーカーはセレッションV-Type(10インチ)×1発。

——現在、ライヴのメインで使われているマーシャルはJVM410Hですか?
ルーク:そうだね。以前はCANTAのライヴでも、ランディ・ローズのシグネイチャーの1959RRを使っていたけど、音が大きすぎるんだよね(笑)。それで、マスター・ヴォリュームが付いていてコントロールがしやすいJVM410Hに変えて、MASAKI(b)にも出音を絞ってもらって……もう何年になるかな? けっこう長い間、JVH410Hを使っている。
——JVM410Hは、どのあたりがお気に入りで使っているんですか?
ルーク:いろんな音が出るところ。1959的なニュアンスもJTM45的なニュアンスもJCM800的なニュアンスもあれば、これまでのマーシャルにはなかったきれいな歪みも出せるし、マーシャルらしさを感じる強い歪みも出せる。使い勝手がいいんだよね。
——そうした、いろんなマーシャルのニュアンスを知っているルークさんですが、あまりコンボは弾いたことがないと取材前に話してましたよね。
ルーク:うん、試奏とかはあるけど、ちゃんと弾き込んだことは皆無に近い。
——でも、今回のラインナップで最初に興味を持たれたのが、スタジオ・ヴィンテージ(以下、SV)のコンボでした。
ルーク:カッコいいでしょ、コンボって。モデル名とかを詳しく覚えていないんだけど、10年ぐらい前に、50wのカッコいいコンボがあったんだよ。当時、あのコンボが欲しかったんだけど、CANTAでは使い道がないしなあ……と逡巡している間になくなっちゃって。ブルースブレイカーは欲しいとは思わなかったけど、その限定のコンボは欲しかったし、今でもコレクションとして持っておきたいぐらい。だから、コンボに対しての印象は悪くないんだよね。
——そんなルークさんにとって、SVのコンボはどうでしたか? 弾かれての第一声が“うるさい”でしたが(笑)。
ルーク:(笑)。もちろん悪い意味じゃないよ。まず5wに落として弾いてみたんだけど、いつも100wとかを爆音で弾いているでしょ。それと比べると、5wだと音量も小さいのかなと思ってた。でも、鳴らしてみるとまったくそんなことなくてね。元気のある音だよね。自宅で鳴らすのも困るぐらいかも(笑)。音自体も“ああ、昔のマーシャルの音だ”という。1959や1987は僕の世代より少し上の世代が弾いていたアンプで、その音を聴いてきた世代なんだけど、今までいろいろ体験させてもらってきた中で、僕がいちばん好きなマーシャルの音がじつは1959とかになる。その音がこの(SVの)コンボにはある。20wで鳴らしてみたら、ちゃんとその音、キャラクターのまま、音も大きくなるしね。
——ルークさんが考える、“昔のマーシャルの音”とはどんなものなんですか?
ルーク:いい意味でうるさい音。耳に飛んでくるハイ・ミッドが印象的で、あと弾き手にしかわからないところだけど、スピード感がある。レスポンスがいいんだよね。今のマーシャルもレスポンスはいいけど、昔のマーシャルのほうが音がさらに速い。ブラッシングとかチョッピングを混ぜた奏法だとそのニュアンスが出しやすいし、力を込めて弾くと、ちゃんと音にそれが出てくる。歪みの具合も右手のヴォリュームでコントロールしやすいよね。その感覚が好きだし、このコンボにもそれを感じた。
——それは、SVのヘッドにも共通して感じましたか?
ルーク:うん。もっと言うと、その感覚は今のマーシャルにもあるんだけど、右手の力の入れ具合、抜き具合が出やすいのが、1959とか1987、いわゆるプレキシと呼ばれるタイプのアンプだと思うんだよ。あと、スタックで鳴らすと同じSVでもコンボと比べるとローの出方が太いよね。ハイもスタックで鳴らしたほうが出ているから、きらびやかな印象がある。スタックのほうが自分にとって弾きやすい音で鳴ってくれるかな。2発入りのキャビネットにつないでも鳴らしてみたけど、よりローの締まった感じがして1発入りより好みだったよ。コンボは後ろが開いていることもあって、ローが後ろから回ってくる感じがして、いい意味でルーズな感じもある。それはそれで大好きなポイントだけど、ヘッドと2発入りの組み合わせも好きかな。
——そして、SVは1959と同じく4インプット仕様になってます。
ルーク:ふつうは1のハイにギターをつないで、2のハイと1のローをリンクさせるんだけど、そうすると1につないだだけのサウンドにローやミッド感、歪みが後ろから付いてくる印象になるんだよね。ブースターをつなげた時とはまた違った、ローやミッド、歪みの加わり方なんだ。ただ、個人的にはリンクさせず、1につないだ時の音の“直進感”が好きなんだよね。リンクさせたほうが厚みや歪みが出るし、弾きやすさがあるからハード・ロックではリンクさせて使う人が多いけど。
——今日は2のハイにつないでのリンクも試してもらいました。
ルーク:新たな発見だったね。このリンクのやり方はやったことがなかったんだけど、いい音だなって思ったよ。2につないだだけだと、丸いというかモコモコした音になるんだけど、リンクさせることで、1のキャラクターであるハイ・トレブルのキラキラした歪みを加えられる。きれいな倍音が増えたような印象があるよね。独特だけど、弾きやすい音が出せる。歪み的にも、このリンクのほうが満足かもしれない。
——全体的なサウンドメイクに関してはどうですか?
ルーク:イメージとしては、現代のアンプと比べてEQが効かなそうだけど、そんなことはなかったね。ハイもミッドもローも欲しいところ、削りたいところをちゃんとコントロールできる。レスポンスもいい。
——スタジオ・クラシック(以下SC)のほうはいかがでしたか?
ルーク:SCのほうも、まずはコンボから試してみたけど、“ザ・800!”って感じだったね。
——“ザ・800!”というと?
ルーク:ジャキンとしたトーンや前に音が出てくる感じ、トレブリーなところとかがね。SVと比べると、歪みもあるよ。EQもSVより効きやすい印象がある。あと、SVもSCも共通しているけど、ツマミを6より上げるか下げるかで効き方がちょっと変わってくるのかなという感じがする。音のニュアンスが変化するというか6から上でグっと変わっていく印象がある。
——コンボに続いてヘッドも鳴らしてもらいました。
ルーク:もちろん、基本的なキャラクターはコンボと同じだけど、やっぱりスタックで鳴らすぶん、ハイとローの出方がしっかりしているよね。SVの時も感じたけど、2発入りはいわゆるAキャビみたいに上段がスラントしているでしょ。ローやハイの出方に加えて、そこもいつも聴き慣れているニュアンスもあって好みかな。そのスラントならではの音もマーシャルらしさのひとつだと思うしね。だから、このヘッドだけ手に入れて、ライヴ・ハウスとかに持ち込んで12インチ×4発を鳴らすというのもオススメだと思う。20wだけど、まったく問題ないと思う。それだけ張りのある音がするからね。
——それぞれどういったギタリストにオススメですか?
ルーク:SVは、手元のニュアンスを出したいギタリストにオススメかな。SCも手元のニュアンスを出せるんだけど、それに加えて、メタリックなサウンドを出したいというギタリスト。どちらにもセンド/リターンも付いているし、今の音楽にも対応できると思うよ。
——ちなみにルークさんが、もっとも気に入ったのはどのモデルですか?
ルーク:SVのコンボかな。後ろが開いていることならではの、いい意味でのルーズな感じやローやミッドのニュアンスがよかった。リンクの方法で、新しいキャラクターも見つけることができたし、何と言ってもカッコいいからね。置いているだけでもカッコいい(笑)。コントロールが上側に付いているのも好きなデザインなんだよね。だから、SVのコンボがいちばん気に入ったよ。

ルーク篁のお好みセッティング
SC20

SV20

▲それぞれ写真上がヘッド、下がコンボの音作り例だ。
今回は、“ギター1本で、あえて歪みすぎていない”というテーマでお好みの音を作ってもらった。手元でニュアンスをしっかりとコントロールでき、ブーミーになりすぎない音が出せるという。
ヘッドは2発入りのキャビネットにつなげた場合のセッティング。また、SV20は、写真のようなリンクで鳴らした場合の好みのトーンだ

コンボはハーフ・オープン・バックとなっている。左がSC20C、右がSV20C。それぞれ空け方が異なっているのがわかる

1959を継承しているSV20は4インプット仕様となっている。一般的にはヘッドの場合は、1のハイ(左上)につなぐ。また、リンクさせる際は、1のロー(左下)と2のハイ(右上)をつなげる

今回、ルークは一般的ではないリンクの方法も試してみた。写真はコンボだが、2のハイ(左上)にギターをつなぎ、1のハイ(右上)と2のロー(左下)をリンク。新しいキャラクターを発見できた

スタジオ・シリーズは全モデル、出力を20wと5wで切り替えられる。出力を下げても、マーシャルならではのトーンを鳴らせるのがうれしい

スタジオ・クラシックは、ギターの入力を2つ備えている。ハイにつなぐとゲインが高くなるので、基本的にはハイにつないで鳴らそう

現代のロック・シーンにもマッチするよう、スタジオ・シリーズには、オン/オフ・スイッチ付きのエフェクターのセンド/リターン端子も備えられている


シルバー・ジュビリーを小型化したStudio Jubileeもチェック!
1987年に、マーシャル社の創業25周年を記念して発売されたシルバー・ジュビリー。そのシルバー・ジュビリーを小型化したモデルが、現在のStudio Jubileeで、ヘッドのStudio Jubilee 2525Hとコンボの2525Cがラインナップ。こちらもルークにチェックしてもらった。
ルーク:自分の中では、オリジナルのジュビリーって歪み感がじつはあまり好みではなかった覚えがあったんだけど、今回、試奏してみたらEQで、そこはある程度解決できるんだなと感じた。トレブルとミドルを6前後にして調整することで、自分の好みに近づけられたよ。そこかポイントかな。
——歴史的に見ると、当時はJCM800とJCM900との間に発売されたものですが、サウンド・キャラクター的にはどちらに近いと感じました?
ルーク:歪みとかトーンのキャラクターとしては900に近い感じがした。とくにミドルの感じとかね。そのうえで、歪み方やEQの使い方で、JCM900よりも音楽を選ばない感じがした。今の時代にも対応できる。便利なマーシャルだなって。手元のニュアンスも出せるし、歪み自体もSCやSVより強く出せるよ。2チャンネルだし、いろんな音楽に使えると思うよ。

Studio Jubileeは2チャンネル仕様。左のアウトプット・マスターをプルするとドライヴ・チャンネルとなる。また、右側のインプット・ゲインをプルすると、トレブリーでヘヴィなキャラクターとなる

 

◎WeROCK EYESの過去記事で、スタジオ・シリーズの試奏レポートを掲載!
合わせてチェックしてみてください!!

○情次2号(元・犬神サアカス團)が最新マーシャルを試奏!
http://rockinf.net/eyes/?p=3165

○和嶋慎治(人間椅子)が最新マーシャルを試奏!
http://rockinf.net/eyes/?p=2687

○【試奏動画連動】大注目のマーシャル スタジオ・シリーズを弾き比べ
http://rockinf.net/eyes/?p=2563

○マーシャル最新アンプは、JCM800と1959を20wで完全再現!!
http://rockinf.net/eyes/?p=2301

◎WeROCK2月15日発売号の誌面では、大橋隆志さんによるマーシャル スタジオ・シリーズの試奏レポートを掲載します! そちらもお楽しみに!!
http://rockinf.net/index%20075.html

問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
http://www.marshallamps.jp/

ルーク篁:聖飢魔IIの本解散後、インスト作品の発表を経て、2002年にヴォーカル&ギターとして、CANTAを始動。ハード・ロックを基軸としたプレイでファンを魅了する。並行して、高見沢俊彦のソロ・プロジェクトへの参加、自身のソロなど、多彩な活動を展開。

最新アルバム:『Did I make it?』/CANTA
ワードレコーズ GQCS-90714

CANTA 公式サイト
http://www.canta.jp/