和嶋慎治(人間椅子)が最新マーシャルを試奏!

マーシャルの名機、JCM800と1959を20wで再現し、数多くのギタリストが注目しているスタジオ・シリーズ。
WeROCK 070では、Masha(サイレックス)とTORU(ティアーズ・オブ・トラジディ、サウザンド・アイズ)による弾き比べレポートをお届けしたが、今回は和嶋慎治(人間椅子)の試奏記をお送りしよう! スタジオ・シリーズから、和嶋はどんな印象を受けるのだろうか!?
※WeROCK 071の掲載記事より。

マーシャル スタジオ・シリーズ

▲左より、1×12インチ・キャビネット:Studio Classic SC112(¥70,000+税)、Studio Classic SC20H(¥140,000+税)+2×12インチ・キャビネット:Studio Classic SC212(¥95,000+税)、Studio Classic SC20C(¥160,000+税)、Studio Vintage SV20C(¥160,000+税)、Studio Vintage SV20H(¥140,000+税)+2×12インチ・キャビネット:Vintage  SV212(¥95,000+税)、1×12インチ・キャビネット:Studio Vintage SV112(¥70,000+税)。
アンプ部の基本的なスペックは以下のとおり
【SC20】●出力:20w/5w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2 ●チャンネル:1 ●コントロール:プリアンプ・ヴォリューム、マスター・ヴォリューム、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス ●入出力端子:ハイ・インプット、ロー・インプット、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2)。
【SV20】 ●出力:20w/5w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2 ●チャンネル:1=ハイ・トレブル/2=ノーマル ●コントロール:ラウドネス1、ラウドネス2、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス ●入出力端子:ハイ・トレブル高感度入力、ハイ・トレブル低感度入力、ノーマル高感度入力、ノーマル低感度入力、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2)
コンボのスピーカーは、10″ Celestion V-Type×1発となっている。

 

——Studio Vintage 20(以下、SV20)のヘッドからチェックしてもらいました。第一声として“弾きやすい”“歪みを多く感じる”と話されていましたが?
和嶋:いつも僕が使っている50wの1987だったり、スタジオによく置いている100wのマーシャルよりもサチュレーションしている感じがする。ギタリストは、歪みが多いほうが弾きやすく感じるからいいよね。
歪みの質としては声に近いというか中域がしっかりある。それも弾きやすく感じる要因だと思う。自分はリフを中心とした音楽をやっているけど、そのセッティングでソロも弾くので、中域は大切だと思っているから。そういうところで、ふだん使っている1987とかの流れで、そのまま使えるなと思った。
——和嶋さんが1987をメインに使い続けている理由は?
和嶋:音がいいということになるんだけど……100wの1959も持っていてレコーディングで使ったこともあるけど、出力があるぶん音がデカすぎる気がして、歪みもキメが荒く感じて。自分のプレイ、人間椅子のサウンドには1987のほうが合うなと思って使っている。SGとの組み合わせもいいなと思っているし。ハイ・ゲイン・タイプのアンプも買ったことがあるけど、自分達には合わないなということで、けっきょくは使わずだったり。
——20wということで、音量はどうですか?
和嶋:SV20を弾く前に比較のために50wを弾いたから最初は小さいかなと感じたけど、20wをずっと弾いているとデカく感じたんだよね。マーシャルならではの音圧感があるからだと思う。僕、他社の20wの真空管アンプも持っているけど、それは音量を上げてもSV20ほどの音量を感じないから。
——20wと5wを切り替えられるという点についてはどうでしたか?
和嶋:20wでの音質がそのままに、ちゃんと落ちてると思った。自分達でも音量を下げるために、アッテネーターを使ったりもしたことあったけど、そうすると音像が遅れて聴こえるというか、なまって聴こえる気がして。でも、このSV20は、5wに下げても、弾いたままのマーシャルの音が出てくれる。自宅や弾き語り的な空間で使うのにいいと思う。あと、5wでもちゃんとフィードバックしてくるのが気に入った。
——次にチェックしてもらったのが、Studio Classic 20(以下、SC20)のヘッドになります。SV20とハッキリと違いましたね。
和嶋:こっちはパキッとした、明るい音だなと感じた。SV20がウェットな感じだとしたら、SC20は明るく聴こえる。
——和嶋さんにとって、JCM800というのはどういうイメージですか?
和嶋:オジー・オズボーン・バンドかな。80年代のハード・ロック/ヘヴィ・メタルというイメージ。荒っぽい音という印象がある。あと、あの時代のギタリストは、マーシャルの前にディストーションなりオーバードライブをかけていただろうけど、それを含めての刻みがガツンとくるイメージ。あと、ピッキング・ハーモニックスも出しやすいというイメージがある。
——そうしたイメージは、今回のSC20にも感じました?
和嶋:感じた、感じた。これがJCM800か、という音だった。ハーモニックスもきれいに出るし、細かい刻みも弾きやすいと思う。あと、中域の感じが明るい方向に行っている。
——音作りのポイントの発見もありましたね。
和嶋:マスターを6〜7ぐらいにして、プリアンプのツマミで歪みを作っていくというね。そうすると、JCM800のおいしい音が出せるというのを知った。JCM800は所有したことがなくて、スタジオにあるアンプだったり、ゲストで呼ばれる時のレンタル機材でしか弾いたことがなかったんだけど、いつもプリアンプをフルにして、マスター・ヴォリュームで音量を調整するという方法でしか使ったことがなかった。
それも間違いじゃないんだけど、教えてもらった設定で弾いてみると、ああ、JCM800ってこんなにいい音なんだと思った。これまで自分の中では、JCM800って荒い音だなという先入観もあったんだけど、それはなくなった。
——続いて、コンボ・タイプです。SV20のコンボから試してもらいました。
和嶋:いいなあと思った。スタックは、マーシャル特有の“目の前で弾いているとうるさくてしょうがない”という、それがいいところなんだけど、そういうガツンとくるものがあるでしょ。でも、コンボにはそれがない、どこか物足りないなというのを感じていた。でも、このコンボにはそうした物足りなさがない。あと、コンボは後ろの空間が大切なんだなというのを初めて知った。
——後ろの空間というのは?
和嶋:たぶん、すごい基礎的なことなんだろうけど、後ろのハーフ・オープンになっているところからも出ている音が、コンボの後ろの壁とかに反射して前にも響いているんだよね。その音も響くことでふくらみが出ている。ヘッド+キャビネットは前にガツンとくる感じで、コンボの場合はその音に後ろからの音がふくらみを加えて、広がって聴こえる。それが気持ちいい。ずっと弾いていられる感じがある。
——そうした音像の広がりは、SC20のヘッドとコンボを比べた時にも感じましたか?
和嶋:SC20の独特のシャリシャリ感というか、荒々しさみたいなものが、コンボだと少し取れているというかバランスがとれていて、自分にとっての弾きやすさは感じた。だから、このSC20のコンボもすごくいいなと。
——あと、今回はSV20のヘッド、SC20のヘッドに1960AX(12インチ×4発)のキャビネットをつなげても弾いてもらいました。
和嶋:ザ・マーシャルの音って感じがした。安心するもん(笑)。音量も大きく感じる。ただ、基本的なキャラクターは、1960AXでもSV112やSC112でも変わらないかな。マイクで拾ったら、同じキャラクターになると思う。で、どっちのヘッドも小さくて軽いから、ライヴ・ハウスとかに持ち込んで、キャビネットはライヴ・ハウスにあるものを使うという使い方ができる。そう、持ち運びしやすいというのも大きいかもしれない。
——それぞれ、どういったタイプのギタリストにオススメだと思いますか?
和嶋:SC20は、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルのギタリストでしょう。これは間違いないでしょう。じゃっかんドンシャリと言ってもいいかと思うんだけど、低音弦を使うリフの刻みにすごく合うし、ハイもガンとくるから高音弦でのフレーズにも合う。ハーモニックスも出しやすいし。
SV20は、古いマーシャルそのものの音がすると思った。古いマーシャルって、中域に特有の色気があると思っていて、そのとおりの音がする。だから、ソロを大切にしているギタリストにはSV20がオススメだと思う。今の時代、ギター・ソロがどんどん減っているけど、歌を引き立てるためのソロというのは残っていくと思うし、ソロは肉声に近いほうがカッコよく、感動的に聴こえると思う。そういう意味で、ハイ・ゲイン・アンプを使って、中域の落ちた音でソロを弾かれると、僕にはヘンに聴こえてしまう。だから、ソロを大切にしているギタリストには、SV20がいいかなと思う。ギターが美しく聴こえると思う、とくに単音がね。
——音作りのポイントとしては、どういったことが挙げられますか?
和嶋:バンド・サウンドにマッチすることを考えると、SV20もSC20もあまりローを上げすぎないことかな。ローはベースがいるし、上げすぎるとブーミーになってしまうから。あとは、色気のある中域。SV20もSC20も中域がしっかりあるので、そこをいかにコントロールできるかだと思う。けしてドンシャリではないんだよね。
——和嶋さん個人は、SV20のコンボに惚れたようですね。
和嶋:うん。ふだんから、アンプのチャンネル切り替えも使わず、同じセッティングでバッキングもソロも弾くし、音的な好みも含めて、SV20のほうが使いやすいと感じたし、好き。ただ、リフを大切にするヘヴィ・メタル・ギタリストはSC20のほうがいいと思うよ。
でも、どれかは選べない(笑)。1987と1959は持っているので、正直、タイプが違うというところでSC20も欲しいなと思ったし(笑)。大きなスタックと比べての話だけど、どれも持ち運びに便利だし、使い勝手がいいと思う。モダンとかオールドとか関係なく、そもそもロック・ギターの音ってマーシャルが基本だし、マーシャルこそ永遠のモダンだと思っている。そういう音が出せるよ、どれも。

 

和嶋慎治のお好みセッティング
SV20

写真上がヘッド、下がコンボ。
“ハムバッキングだけど、ソロではシングルコイルのようなアタックが欲しい”という和嶋のお好みのセッティング。
ローを上げすぎるとブーミーになってしまうので、とくにローは絞り気味にして、色気のある中域が出せるポイントを決めている。とくに単音が気持ちよく響くセッティングになっているとのことだ

SC20

写真上がヘッド、下がコンボの音作り例だ。
音作りの狙いとしては、上で作っているSV20と同じ。ただ、心地いい歪みを作るために、インタヴュー中にもあるようにマスター・ヴォリュームを7あたりに設定しているのがポイントだろう。
また、SV20と同じく、コンボでの広がり感にフィットするようにプレゼンスを上げ目にしているのがわかる

 

今回の試奏で、和嶋がつかんだSC20の音作りのポイント。
マスターを6〜7ぐらい、あるいはそれ以上に上げて、プリアンプで歪みを作っていく。おいしい音が作り出せる

1959をダウン・サイジングしたというSV20は、4インプット仕様。
和嶋は左上の1につなげてチェックしてくれたが、もちろんリンクして使うこともできる

コンボ・アンプはともにハーフ・オープンとなっているが、それぞれ形状が異なっている。ちなみに左がSC20、右はSV20だ

▲SV20(写真)、SC20ともに出力を20wと5wで切り替えられる。
音色、キャラクターを変えることなく、そのまま音量を下げられる

 

◎WeROCK EYESの過去記事で、スタジオ・シリーズの試奏レポートを掲載!
合わせてチェックしてみてください!!

○マーシャル最新アンプは、JCM800と1959を20wで完全再現!!
http://rockinf.net/eyes/?p=2301

○【試奏動画連動】大注目のマーシャル スタジオ・シリーズを弾き比べ
http://rockinf.net/eyes/?p=2563

 

問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
http://www.marshallamps.jp/

 

 

わじましんじ:87年に高校の同級生だった鈴木研二と人間椅子を結成。90年に『人間失格』でデビューを飾る。ブリティッシュ・ロックやプログレなどを吸収したうえでの個性的なプレイで高く評価されている。バンドは、6月5日にアルバム『新青年』を発表し、12公演の全国ツアーも行なう。

最新アルバム:『新青年』
徳間ジャパンコミュニケーションズ
TKCA-74791(初回盤)/TKCA-74782(通常版)

人間椅子 公式サイト
http://ningen-isu.com/