令和を彩る新世代アンプ〜ベース編&番外編

令和を彩る新世代アンプの試奏紹介レポート、3本目はベース編&番外編だ。
※WeROCK 074の掲載記事を3回にわけて掲載します。
ギター編その1はこちら!
ギター編その2はこちら!


■ベース編■


数々のギャリエン・クルーガーの名機を再現!

ギャリエン・クルーガー
BPLEX Preamp
¥60,000+税

仕様〉
コントロール:ベース/バンプ、ロー・ミッド/コントゥアー、ハイ・ミッド/ハイ・カット、トレブル/プレゼンス、マスター/ヴォイス、レベル/ドライヴ、レベル/アタック、スレッショルド/レシオ、トリム/クリップ、オーバードライブ・スイッチ、コンプレッサー/チューナー・スイッチ
入出力端子:インプット、アウトプット、エフェクト・ループ、DIアウト(リフト/グラウンド切り替えスイッチ、プリ/ポスト切り替えスイッチ)、USBAUXイン、ヘッドフォン・アウト
外形寸法:135.6(幅)×55.2(高さ)×142.3(奥行き)㎜ ※突起物を含まず
重量:約856g
電源:9vDC(アダプター付属) 

BPLEX Preampが通販で購入可能■
神田商会オンライン・ストア
https://store.kandashokai.co.jp/c/gr264/gr277/00113-00105773
御茶の水楽器センター
https://www.gakkicenter.com/SHOP/00113-00105773.html

近年、さまざまなメーカーからさまざまなベース用プリアンプが発売されているが、その混戦状態のところに、今年、日本に上陸してきたのがギャリエン・クルーガーのBPLEX Preamp。ギャリエン・サウンドと言えば、ヌケのいいミドルに特徴があるイメージだが、はたしてこのBPLEX Preampのキャラクターはどうだろうか?
まず、基本のサウンドとなるのが、5つのヴォイス。ギャリエン・クルーガーの名機と呼ばれる“800RB”“Fusion 550”、小型軽量で人気の現行モデルの“MB 800”、コンパクト・ベースの“MB 150”という4タイプのキャラクターとEQを通さないフラットなヴォイスが選べる。それぞれを試してみたが、共通して感じるのはギャリエンらしいミッド感だ。そのヌケのいいミッド感を軸に、例えば、Fusion 550のヴォイスではバランスのとれたローからロー・ミッドで存在感を出してくれる。また、Fusion 550はプリ部に真空管を積んでいるのだが、その真空管らしいふくよかさを持ったキャラクターもしっかりと出せて、ハード・ロックにも向いている印象を受けた。いっぽう、MB 800のヴォイスでは、明るいハイやくっきりとしたローが特徴になるだろうか。今のメロディアスなロックには、このMB 800のヴォイスが合うかもしれない。こうした多彩なキャラクターを核にイコライザーでさらに好みの音を作り込んでいけるのだが、このイコライザーもすごい。
ギャリエン・クルーガー伝統のヴァリアブルQ”と呼ばれる4バンド・イコライザーを、このBPLEXにも搭載。もともとの効きがしっかりしているので、これだけでも充分だと感じたが、さらにすごいのが、例えばベースのツマミを押すとLEDが白から青に変わりバンプという低域のブースト・コントロールが行なえるところ。これは、ロー・ミッド、ハイ・ミッド、トレブルのツマミも同様で、各帯域で、より細かい音作りが行なえる。まさにかゆいところに手が届くというか、ここまでできるのかと驚かされる。
さらに、このBPLEXはオーバードライブを内蔵していて、歪みの強さによって5タイプから選べるようになっている。その幅もブースター的なタイプから暴力的なファズのような歪みまで広い。歪みの量を真ん中ぐらいにセットすると、ナチュラルさも暴れ具合もいい感じでブレンドされたような印象で、バンド・サウンドの中でも個性を発揮するだろうと感じた。
さて、次はコンプレッサーに注目してみた。ベーシストのマスト・アイテムといえるコンプレッサーだが、このBPLEXではアタックとレシオ、それぞれ5タイプから選んで設定できるようになっている。効き方としては基本はナチュラルな感じだろうか。ピック弾きでのアタック感を損なわない程度にうっすらとかけたり、指弾きでの粒を揃えるためにしっかりとかけたりすることができ、どんなタイプの奏法やサウンドにも対応できそうだ。
他にもチューナーも付いていたり、AUXインやヘッドフォン・アウトの搭載と、本来のプリアンプとしての機能だけでなくベーシストをしっかりと支えてくれるペダルだと感じさせてくれた。さすがギャリエン・クルーガーのペダルだ! 名機のサウンドを現在にアップデートした、まさに新時代のプリアンプと呼ぶにふさわしい1台であろう。

▲左下のマスター/ヴォイスのツマミを押し込むと、LEDが白から青に変わる。さらに押すことで、LEDの数字が変化し、ヴォイスを選ぶことができる。
3
MB 800のヴォイスだ

▲イコライザーもツマミを押し込むことで、より細かな音作りが行なえる。
ベースのツマミを押すとLEDが青く変わりバンプが選び、さらにツマミを押して、バンプのタイプを選べる

▲下段左から2番目のツマミを押すとオーバードライブ機能がオンになり、そのタイプを5種類から選べる。
オーバードライブ自体のオン/オフは左下のスイッチで行なう。

問:株式会社神田商会
http://www.kandashokai.co.jp/flos/gallien_krueger/effectors/bplex_preamp.html


歪み系エフェクターも搭載した、
王道のアンペグ・サウンド

アンペグ
SCR-DI
オープン価格(市場想定価格 24,000+税)

仕様〉
コントロール:〈プリアンプ部〉ヴォリューム、ベース、ミッド、トレブル、AUXレベル、ウルトラ・ロー・スイッチ、ウルトラ・ハイ・スイッチ 〈スクランブラー部〉ドライヴ、ブレンド
入出力端子:インプット、AUXイン、スルー・アウト、ライン・アウト、XLRアウト(グラウンド・リフト・スイッチ付き)、ヘッドフォン・アウト
外形寸法:193(幅)×56(高さ)×110(奥行き)㎜
重量:約1.2kg

ハード・ロック/ヘヴィ・メタル、いやジャンルを問わず、国内外のプロ・ベーシストが愛用しているアンペグ。とくにチューブを搭載したヘリテイジ・シリーズやSVTなど、そのサウンドに憧れるベーシストは多いが、サイズなどの面で入手に二の足を踏むということもあるだろう。その憧れのアンペグ・サウンドを手のひらサイズで鳴らせたら……そんな夢のようなプリアンプ・ペダルが、このSCR-DIだ。
ベースをつないでみると、アンペグらしいウォームさを伴った太いサウンドが得られる。とは言え、ヴィンテージに寄っているというわけではなく、現代のバンド・サウンドの中でもヌケてくるキャラクターに仕上がっている。
アンペグのアンプと同様にコントロールがシンプルなのもポイントだろう。ヴォリュームとベース、ミッド、トレブルという4つのツマミ、そしてウルトラ・ローとウルトラ・ハイというスイッチだけなのだが、それぞれの効きがしっかりしていて、狙いたい音域をわかりやすくコントロールできる。補足しておくと、ローでは40Hzを、ミッドでは500Hzを、トレブルは4kHzを、それぞれブースト/カットできるようになっているとのこと。そして、アンペグならではのウルトラ・ローとウルトラ・ハイという2つのスイッチにも注目だ。SVT-VRなどにも付いているスイッチで、オンにすることで、文字どおり、高域と低域をブーストしつつ、中域をカットしてくれるもの。これにより、簡単にメリハリを加えたり、重みを足すことができた。
さらにSCR-DIにはオーバードライブ・エフェクトが独立して搭載されている。本体左側のSCRAMBLERと呼ばれるのがその歪みで、タイプとしてはけして激歪みという感じではない。もちろんフルに上げるとかなりのものだが、ファズ的なものではなく、同社のアンプ、SVT系統の太いオーバードライブ・サウンドが加わっていく感じだ。また、クリーン・トーンとのブレンド量もツマミで簡単に調整できるので、生音でのコシの強さや太さを保ったまま、歪みを加えられるのも特徴だ。
ちなみに、WeROCK 047で山下昌良が試奏してくれているのだが、その時のコメントを紹介しておこう。
「(ライヴで使っているんだけど)音の粒立ちがいいからエンジニアも大絶賛している。ズクズクズクっという速いフレーズでも、音のヌケがいいから。最近は友達が作ってくれたブースターを気に入ってて、それをかましてかなり歪ませているけど、ブースターをかますだけだと粒立ちがよくないからね。このSCR-DIを入れると粒立ちがよくなる。以前に使っていた他のDIと比べても、粒立ちも音ヌケもいいよ。その代わりというわけじゃないけど、以前使っていたDIのほうが音にいい意味での荒さがあって、ガツンとした感じはあったかな。そこは好みだと思う」。
DI
としてはもちろんのこと、自宅録音しているベーシストにも向いているし、使い方が簡単なので初心者ベーシストにも向いている。外部音源プレイヤーを接続できるAUXインやヘッドフォン・アウトも付いているので、練習にも最適。プリアンプのみ、あるいはオーバードライブのみを使うということも可能だし、とにかく小さく軽いので持ち運びにも便利。
バンド・サウンドに埋もれない、王道のアンペグ・サウンドを求めるならば、チェックしてみて損はないはずだ。

▲本体の内部には、アクティヴ・ベースを使用する時に信号を-15dB下げられるジャンパー・スイッチが備えられている。
ここも活用したいポイントだ

▲アンペグならではのウルトラ・ローとウルトラ・ハイ・スイッチ。
ウルトラ・ローでは低域をブーストしミッドをカットし、ウルトラ・ハイでは高域をワンタッチでブーストしてくれる

▲本体左側は、独立したオーバードライブ・セクションだ。歪み量を決めるドライヴとクリーン・トーンにどのぐらい歪みを混ぜるのかを決めるブレンドという2つのコントロールを搭載

問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
https://ampeg.jp/products/pedals/scr_di/


■番外編■


アンプにスピーカー・シミューレーターを組み合わせろ!

トゥーノーツ
T
orpedo C.A.B. M
¥オープン

仕様〉
インプット:アンプ・イン=バランス:TRS 1/4フォン端子(IN LEVELスイッチで入力感度とインピーダンスを設定)、AUXイン(ミニフォン・ステレオ端子。モノラルに変換):スピーカー・アウト(アンバランスTS 1/4フォン端子)、ライン・アウト(バランスTRS1/4フォン端子)、DI OUTXLRバランス)、ヘッドフォン出力(ミニフォン・ステレオ端子)
最小レイテンシー:2.2ミリ秒 (LINE INLINE OUT)
電源:専用電源アダプター付属(2.1mm、センター・マイナス)、入力電圧12V DC
外形寸法:100(幅)×121(奥行き)×60(高さ)mm(突起物含む)
重量:450 g

C.A.B. Mが通販で購入可能■
イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/664234

WeROCK 073で、ガルネリウスのSYUも絶賛していたトゥーノーツのトーピド C.A.B. M。この機種はアンプではないのだが、アンプがあってのC.A.B. Mなので、ここで番外編として、おもしろい使い方を伝授しよう。
まず、このC.A.B. Mの説明を。これは、いわゆるスピーカー・シミュレーターで、32種類のキャビネットに、8種類のマイク、さらにはパワー・アンプも8種類モデリングされた音色が搭載されている。
WeROCK 073
で試奏した方法は接続例①のパターンで、ギターからプリアンプに行き、C.A.B. Mを通してオーディオ・インターフェイスやモニターに返すというやり方。今回、試奏したモデルでいえば、シナジーなどと組み合わせて使えば、パワー・アンプとキャビネット、さらにはマイキングのシミュレートを、このC.A.B. Mが担当して、本物のスタックを鳴らしているようなトーンを出してくれる。

▲ギターならば、プリアンプとC.A.B.Mを使えば、パワー・アンプ+キャビネット+マイキングというプロ仕様のレコーディング・シミュレートができる

さてさて、じつは、このC.A.B. M、ギターのキャビネットだけではなく、ベースのキャビネットも5種類搭載されているのだ。今回の企画で、ギャリエン・クルーガーとアンペグのプリアンプが登場しているが、そのプリアンプと組み合わせれば、スピーカーから出てる音までレコーディングできるのだ。また、スルーのライン音とプリアンプ+キャビネットの音を2系統に分けて取れば、最近ではめっきり少なくなってきてしまった、スピーカーとラインの音、両方をレコーディングできるというわけ。ラウドネスの山下昌良をはじめ、まだまだスピーカーの音もレコーディングするベーシストはおり、なにより、あの極太なサウンドはラインだけ、あるいはDAWのプラグ・インではそう簡単には再現できない。やはりアンプとキャビネットあってのサウンドであり、そのトーンの再現に一役買ってくれるのがC.A.B. Mというわけだ。

▲ベースの場合なら、プリアンプに2系統のアウトがあれば、C.A.B.Mを通したキャビネット+マイキングのサウンドと、なにも通らないスルーの音を録音することができる

さらに、C.A.B. Mを購入するとダウンロードできるプラグ・インが秀逸で、これまたプリアンプと組み合わせると作業をラクにしてくれる!

 

▲購入すると、DAW用のプラグ・インである“Torpedo Wall of Sound”が使用可能になる。これが、かなり秀逸! 写真は、ベース用に使用し、キャビネットを選択

▲こちらは、前号でガルネリウスのSYUが、タブレット専用アプリでセッティングしてくれたSYUサウンド!

問:日本エレクトロ・ハーモニックス株式会社
http://www.electroharmonix.co.jp/twonotes/torpedo-cabm.html


ギター編 その1
ギター編 その2 もご覧ください。