令和を彩る新世代アンプ〜ギター編 その1
WeROCKでは、どちらかというと、真空管だったりアナログなアンプを紹介することが多いのだが、時代はそうも言っていられない。どんどんデジタルの波が押し寄せ、プロ・ミュージシャンでも使用者は多いのが現実だ。そこで、令和という新時代を彩るにふさわしい、気になる機種を試奏してみた。
※WeROCK 074の掲載記事を3回にわけて掲載します。
ギター編その2はこちら!
ベース編&番外編はこちら!
■ギター編 その1■
卓上アンプでいながら、
驚きのサウンドを実現したベストセラー・モデルが
さらに進化!!
ヤマハ
THR Ⅱシリーズ
¥オープン
THR10 Ⅱ Wireless/THR10Ⅱ
〈仕様〉
●出力:20w(10w+10w)/THR10Ⅱのバッテリー駆動時は15W(7.5W+7.5W)
●コントロール:アンプ・タイプ(ギター用15種類/ベース用3種類/アコースティック用3種類/フラット3種類 ※THR Remoteアプリを使用することですべてのサウンドが使用可能)、ゲイン、マスター、ベース、ミドル、トレブル、エフェクト、エコー/リバーブ、アウトプット(ギター&オーディオ)、タップ&チューナー・スイッチ、ユーザー・メモリー・スイッチ x 5、ブルートゥース・スイッチ(ユーザー・メモリー・スイッチの4&5を同時押し)
●搭載エフェクト:コーラス、フランジャー、フェイザー、トレモロ、エコー、エコー/リバーブ、スプリング・リバーブ、ホール・リバーブ、コンプレッサー※、ノイズ・ゲイト※(※の印がついているエフェクトはTHR Remote上でのみ使用可能)
●入出力端子:インプット、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ・ジャック)、AUXイン(ステレオ・ミニ・ジャック)、USB、DC IN
●スピーカー:8cmフル・レンジ×2
●電源:ACアダプター、充電式バッテリー(駆動時間:約5時間)
●外形寸法:368(幅)×183(高さ)×140(奥行き)mm
●重量:3.2kg(TR10Ⅱ Wireless)、3.0kg(THR10Ⅱ)
THR30Ⅱ Wireless
〈仕様〉
●出力:30w(15w+15w)/バッテリー駆動時は15w(7.5w+7.5w)
●コントロール:アンプ・タイプ(ギター用15種類/ベース用3種類/アコースティック用3種類/フラット3種類、サウンド・モード・切り替えスイッチ(モダン/ブティック/クラシック)、ゲイン、マスター、ベース、ミドル、トレブル、エフェクト、エコー/リバーブ、アウトプット(ギター&オーディオ)、タップ&チューナー・スイッチ、ユーザー・メモリー・スイッチ×5、ブルートゥース・スイッチ
●搭載エフェクト:コーラス、フランジャー、フェイザー、トレモロ、エコー、エコー/リバーブ、スプリング・リバーブ、ホール・リバーブ、コンプレッサー※、ノイズ・ゲイト※(※の印がついているエフェクトはTHR Remote上でのみ使用可能)
●入出力端子:インプット、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ・ジャック)、AUXイン(ステレオ・ミニ・ジャック)、USB、DC IN、ライン・アウト(L/R標準フォン・ジャック)
●スピーカー:9cmフル・レンジ×2
●電源:ACアダプター、充電式バッテリー(駆動時間:約5時間)
●外形寸法:420幅)×195(高さ)×155(奥行き)mm
●重量:4.3kg
日本が誇る楽器メーカーであるヤマハが、新たに作り出したカテゴリー“デスクトップ・アンプ”。それが、2011年に発表されたTHRだ。発売と同時に、大ヒットとなったこのモデルが、さらに進化して発表された。
これまで、これまで、デスクトップ・アンプ・シリーズとして、THR 10、ハイ・ゲイン・タイプのTHR 10X、ブティック&ヴィンテージ系のTHR10Cという3モデルがあったわけだが、その3機種の特徴を継承しつつ、さらなる機能をプラスして発表されたのが、THR Ⅱシリーズだ。ヴィンテージなゲイン、現代的なハイ・ゲイン、さらにはアコースティックからベースまで対応したアンプなのだ。
そして特徴的なことが、もうひとつ。
“Wireless”と付くモデルは、Line 6のRelay G10T(トランスミッター:別売)を使えば、本体にレシーヴァーが内蔵されているので、ケーブルを使うことなくギターが弾ける! “自宅なんだからワイアレスじゃなくても……”と思う方もいるだろうが、じつはこれ、すごく便利で、逆に家で弾く時のほうがケーブルがジャマになったりするものなのだ。もちろん、まだまだ便利な機能を搭載している。まずは、エフェクター。モジュレーション系ではコーラス、フランジャー、フェイザー、トレモロを搭載。さらに、空間系としてエコー、エコー+リバーブ、スプリング・リバーブ、ホールという4種類を搭載している。
さあ、それでは試奏していこう。今回、他のギター・アンプが比較的大きいサイズのものが多いのだが、小型ながらいちばん弾きたくなるような……すなわち自宅に欲しくなるようなモデルである。
まずは、THR 10Ⅱ Wirelessから試奏してみよう。大きさ的に、すごく手頃で、まさに机に置いておきたくなる筐体だ。アンプ・タイプは表向きには5種類で用意されており、タイプというよりもクリーン、クランチ、リード、ハイ・ゲイン、スペシャルとあるのでチャンネルと捉えたほうがわかりやすいだろう。THR 30Ⅱ Wirelessでは、3種類のアンプ・モードを上部スイッチでセレクトできるのだが、THR 10Ⅱでは専用アプリ“THR Remote”を使ってモードを選択する。そうすると全モデルともアンプ・タイプは3モード×5タイプで合計15種類となる。
クリーンは、暖かみのあるトーンが出せる。クリーン・チャンネルでのトレブルの効きがいいので、トレブルを上げていくとハイの出方が段違いに変化してくる。クリーン・チャンネルで、すごいと思ったのはコーラスをかけた時だ。音の広がり感が、ハンパないのである。文章で例えるのが難しいのだが、アンプを正面にして弾いてみると、アンプの後ろから回り込むように音が広がってくれるのだ。これは、弾いたものにしかわからないたまらないが、クセになるほどいい。歪みは、リード・チャンネルがJCM800あたりの印象か。それが、ハイ・ゲイン・チャンネルやスペシャルというチャンネルだとゲインも強くなり、かなり歪んでくれる。
THR 30Ⅱ Wirelessのアンプ・モードを使った場合と比べてみたいので、今度はTHR 30Ⅱ Wirelessのリード・チャンネルを、まずはクラシック・モードで弾いたみた。なるほど、クラシック・モードだと、ロー・ゲインなアンプを再現してくれてるようだ。ブティック・モードにすると中低域の出方が変わり、モダン・モードだと、ローがグッと持ち上がり、イッキに歪みが増してくれる。どのチャンネルにおいても、ヴィンテージは、いかにもヴィンテージ系の安心するサウンドで、ブティックは中低域に変化がありプレゼンスを上げた高域に特徴があるサウンド、モダンはミッド・レンジから低域をアップさせた、まさに現代的なサウンド、という特徴が基本のようだ。アンプ・モードの選択により、トーンはもちろんのこと、かなり音圧感も変化するので、ものすごく音作りの幅が広いアンプだということがわかる。
ところで、THR 10ⅡとTHR 30Ⅱ Wirelessを弾き比べると、THR 30Ⅱ Wirelessのほうが低域の締まりがあり音に余裕があることがわかる。ただ、もちろんTHR 10Ⅱのほうが小型だし、家、まさにデスクに置くには最適。このあたりは、すごく悩むところだろう。
THR 10ⅡとTHR 30Ⅱ Wirelessのどちらを使用する場合でも、ぜひ使ってほしいのがスマホなどの専用アプリ“THR Remote”だ(タブレットやPCでも用意されている)。とくに、THR 10Ⅱ本体の操作ではできないモードの切り替えがアプリを使うと可能になり、サウンドのエディット機能だけで言えばTHR 30Ⅱ Wirelessと同等になる。さらに、アプリなら16種類のキャビネットまで選択できる他、コンプレッサーやゲートも付いているという便利もの。このあたりは、THR 30Ⅱ Wirelessもアプリじゃないとエディットできないので、ぜひ活用してほしい。キャビネットを変えるだけでも、かなりトーンも変わるし、音作りしているだけであっという間に時間がたってしまうほど楽しく遊べる。
また、スマホなどとブルートゥース接続すれば、スマホに入ってる音楽を再生することもでき、これがまた同社のAV開発技術により高音質で再生されるのでので、リスニング用のモニターとしても重宝できるアンプとなっている。
▲これまた時代か!? スマートフォンやタブレット、さらにPCから専用アプリを使って操作可能。ブルートゥースで接続するので、これまたワイアレス! アプリを使えば、なんとキャビネットの選択までできてしまう他、画面を見てもらえばわかるとおり、本体では設定できなかったエフェクトの細かいエディットが可能となる。さらに、スマホからの音楽もTHRで流せるので、コピーしたい楽曲を流して練習しつつ、アンプの音色もエディットしてしまうなど、THRとギターさえあれば、なんでもござれだ(スマホは、日常生活の必需品としてカウント)
▲30Ⅱ Wirelessのモード・スイッチだ。左にあるツマミがアンプの種類を選ぶセレクターだ。10Ⅱにはモード・スイッチが装備されていないが、スマホやタブレットの専用アプリ“THR Remote”などを使えば、30Ⅱ Wirelessと同様に3種類のモードをセレクト可能だ
▲どのモデルも、チューナーを装備。これでアンプからケーブルを抜き差しすることなく、ストレス・フリーでギターを弾くことができる。ワイアレス対応機種を使えば、アンプからケーブルを抜き差しすることなく、完全にオール・イン・ワンで解決してくれる
▲Wirelessと表記されている機種は、LINE 6のRelay G10T(トランスミッター)に対応している。別売りのG10Tを使えばワイアレスで弾くことができる
▲なんと、THRのインプットに、G10Tを差し込むだけで、自動的にワイアレスのチャンネル設定をしてくれるだけでなく、充電までできてしまう!
▲写真左上がTHR10Ⅱ。手前左がTHR10Ⅱ Wirelessで、右がTHR30Ⅱ Wireless
問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/guitars_basses/amps_accessories/thr-ii/index.html
マルチ・エフェクターを
プリアンプ的に使用すると!
LINE 6
HELIX FLOOR
オープン価格(市場想定価格 ¥178,000+税)
〈仕様〉
●搭載アンプ:72種類
●搭載エフェクター:194種類
●キャビネット・モデリング:37種類
●マイク・モデリング:16種類 ※ファームウェア・ヴァージョン2.82の場合
●入出力端子:インプット、AUXイン、エフェクト・センド・リターン×4、マイク・イン、エクスプレッション・イン×2、CV/エクスプレッション・アウト、外部アンプ用チャンネル切り替えアウト、XLRアウト(ステレオ)、1/4”アウト(ステレオ)、ヘッドフォン・アウト、VARIAX インプット、MIDIイン、MIDIアウト/スルー、S/PDIFイン/アウト、AES/EBU L6 LINK、USB
●外形寸法:560(幅)×91(高さ)×300(奥行き)㎜
●重量:6.7kg
LINE 6が送り出したHelixも、新しい時代を作ったモデルといえるのではないだろうか。このモデルはマルチ・エフェクターという部類に入るものなのでアンプではないが、プロ・ミュージシャンの中でも、これをPA卓に直接接続することで、アンプという認識で使用している方も多い。なので、あえて“新時代のアンプ”というくくりに入れさせていただいた。
さて、試奏するうえで、どこを基準にするかという問題が出てくる。というのは、オーディオ・インターフェイス的に使用するのであれば問題ないのだが、ギター・アンプに接続してしまうと、そのアンプのトーンにも委ねることになってしまうからだ。ただ、他のモデル同様に、ここはギター・アンプのインプットに接続して試奏してみることにしよう。
こういったモデルはアナログ派の人間だと、操作性が難しくて手を出しにくかったりするのだが、Helixはかなり使いやすい操作性を持っていることがわかる。大画面のカラーLCDは、どこになにが接続されているかが一目瞭然で、画面の右にあるジョイ・スティックを使うと、エフェクターやアンプ・モデリングなどにすぐにアクセスできる。また、フットスイッチの上にも液晶画面があり、なんのスイッチか確認できるのがうれしい。操作性で言えば、PCのソフトウェア“HX Edit”を使えば、さらに直感的な操作で音作りが可能になる。
音を出してみると、これまたニヤリ。もちろんモデリングの性能はすばらしいのだが、あの“LINE 6”ならではのトーンが出てくれるのだ。どんな音かというと、たとえばPV Panamaというプリセットを選んで弾けば、CDで聴けるような、あの時代のエディ風サウンドが出てくれる。速弾きなどをしても、音のツブ立ちをキレイに出力してくれる。LINE 6といえばモデリングの元祖と言える名機PODを生み出したメーカーだ。あの時のトーンや弾き心地が、しっかりとHelixにも継承されている。アンプがなくても、今や時代はアンプの音を出してくれるのだ。
▲大型のカラーLCDディスプレイ。
左から、音声信号の流れを示しており、エフェクターやアンプ、キャビネットやインパルス・レスポンスなどもわかりやすいイラストで表示されている
▲エディット時にメインとなるのは、ジョイ・スティックとなっているコントローラー。
回して選択できるのはもちろんのこと、上下左右に倒すこともできる
▲アンプ・セクションには、このボタンひとつで入ることができる。
押すと画面がアンプのコントロールになり、画面下にあるコントローラーでドライヴやEQを調整していく
問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
https://line6.jp/helix/helix-floor-rack.html