hideのスピーカーが登場!
2019年5月2日に、川崎クラブチッタで行なわれたhide Memorial Day。その献花式の際、場内中央に置かれて、hideの楽曲を鳴らしていたのが、このアンプ内蔵スピーカーのVDRS hide model【HEADWAX】だった。ユニークな形で注目を集めていたこのモデル。開発や製作をリードした2人に話を聞いた。ぜひ実際に触れて、その音に耳を傾けてみてほしい。
※WeROCK 074の掲載記事より。
エムズシステム VDRS hide model【HEADWAX】
¥720,000(税・送料込み)
〈仕様〉 ●アンプ部:実用最大出力=6w×2、入力端子=RCA1系統 ●スピーカー部:再生周波数帯域=67Hz〜22kHZ、インピーダンス=8Ω、許容入力=50w ●付属品:オーディオ・ケーブル2種(3.5mmミニ・ステレオ端子⇔RCA端子、RCA端子⇔RCA端子)、ACアダプター、木製スタンド、オリジナル・スピーカー・カヴァー2枚 ●外形寸法:545(幅)×370(高さ)×250(奥行き)mm ●重量:約7.5kg
▲hideをイメージさせる専用かヴァーが2種類付属する
——今回のVDRS hide model[HEADWAX]というスピーカーですが、形もサウンドもひじょうにユニークなものですね。まず、スピーカーそのものについて、一般的なスピーカーと何が違うのか、教えていただけますか。
三浦:一般のオーディオ・スピーカーは強弱はあるんですが指向性を持っているんです。ある方向に音が進んでいく。ステレオの場合は左右の音が重なるリスニング・ポイントにいると、いい音で聴こえる。でも、今、リスニング・ポイントにいて、30分とか1時間とかじっくりと音楽を楽しんでいる人って少ないと思うんです。いろいろ家事をしながら聴いていたり、何人かでお食事したりお酒を飲みながら聴いているかもしれない。
エムズシステムのスピーカーの特性のひとつとして、置く場所、聴く場所を限定しないというのがあるんです。音が空間に広がっていくから、その部屋のどこにいても音楽が楽しめるんです。今までの指向性の強いスピーカーに慣れた方には、新鮮な驚きがあると思います。今、聴いてもらっても、音が広がる中でちゃんと右側にギターがいて、左側にベースがいる。しかも、聴く人の位置が変わっても、そのバランスが崩れていない。また、スピーカーに近づいてもうるさくないし、離れても音が小さくならないでしょ。これは音が指向性を持って再生されているわけでなく、空間に広がっているからなんです。
——たしかに、心地いい響きがありますね。
松村:そうなんです。ある人の紹介でエムズシステムのスピーカーを聴かせてもらう機会があったんですね。その時に音の響き方がすごいなと驚いて、三浦さんにいろいろ教えてもらったんです。そして、エムズシステムのスケルトンのモデルがあることも知って、これはおもしろいなと思ったのが、今回のキッカケですね。このスケルトンのモデルで、音にこだわり続けていたhideさんに関するものができないものかなと。僕自身は2015年に公開されたhideさんのドキュメンタリー映画『JUNK STORY』をプロデュースしたんですが、その縁でもう一度、hideさんとコラボしたいとずっと思っていたところに、エムズシステムのスピーカーなら何かできるかもと思ったんです。
三浦:私は、X JAPANの熱烈なファンだったわけではないのですが、hideさんのことはギター・プレイヤーというよりはその時代のライフ・スタイルの提案者というふうに受け止めていたんですね。松村さんからコラボ・スピーカーの提案を聞いた時、そんなhideさんにまつわるものがスケルトン・モデルの中に入ったらいいものになるだろうな、素敵だなと思いましたね。
——実際の開発や製作にあたっては、どのような障壁、苦労がありました?
三浦:壁だけでしたね(笑)。
松村:僕はスケルトンの中に何を入れるのか、ということを託されていたんです。それで、まわりからアイディアをもらいつつ、hideさんのマネジメント事務所とも話を進めつつ、最初はhideさんの衣装やギターのフィギュアを並べるということを提案したんですが、おもしろくないよねということになったんです。そこで、原点に立ち返るために、マネジメント事務所の名前である“HEADWAX”の意味をスタッフの方に聞いたんですね。そうしたら、これはhideさんの造語で、hideさんが絶えず頭にワックスをかけて磨いて、アンテナを張ってクリエイティヴでいようとスタッフにも話していたというところから自ら付けた名前とのことで、これだと。スピーカーは、アーティストの音を届けるためのものだし、スピーカー自体をhideさんの頭、脳として考えてみようと。
そして、いろいろなアイディアを持ち寄って、hideさんが実際に身に着けていたものだったり、実際に使っていたパソコンの一部を入れられないかとマネジメント事務所の方と相談してみたんです。そういうコンセプトならやってみようかと。最初にエムズスピーカーとhideさんのコラボ・モデルを作りたいという話から1年ぐらいかかって、hideさんの20th Memorial Project中にやっと完成したんです。それで、ご実家に寄贈したら、hideさんのお母様が“hideがこんなスピーカーを欲しがっていた”というお話をされていたというのをお聞きして、このサウンドをファンのみなさんにも伝えたくて、5月のhideさんのMemorial Dayに展示させてもらったんです。
——そこから発売に至ったと。
松村:はい。ファンのみなさんからたくさんの問い合わせや熱望を受けまして、1つ作るのにすごい時間も労力もかかるんですが、数量限定という形で発売することになりました。
——今日の取材前、立ち話的にジャンルについても語られていましたが、実際はどうでした?
三浦:エムズシステムとしてジャズやクラシックだけでなく、ロックを聴くのも問題ないですというのは以前から言ってたんですね。ただ、いわゆるハード・ロックやヘヴィ・メタルまでいくとどうかなというのは正直ありました。そうしたジャンルを聴く方は大きなスピーカーで大音量で音圧や振動を感じたいというのもあると思うんです。エムズシステムのスピーカーは空間全体に音が広がっていくので、従来のスピーカーと聴こえ方が違うんです。だから、大音量で音圧を感じたいというリスナーには向いていないかなというのは前提としてありました。
ただ、我々のショウルームには日本だけでなく世界からもお客さんが来られて、そうした方の中にはヘヴィ・メタルが大好きな方もいらっしゃるし、そういうジャンルのCDを再生されると“これもアリですね”と仰ってくれるんです。hideさんの音楽を再生した時も、いけるんだなと思いました。僕自身はビリビリと音圧が来るような音楽が好みかどうかと聞かれるとそうではないですが、音圧が来る刺激を味わいたいという方がいるのもわかるんです。でも、そうではなくて、じっくりと味わったりとか何かをしながら聴きたい時に向いています。
松村:実際にhideさんの実弟であり、マネジメント事務所のヘッドワックスオーガナイゼーション代表取締役である松本裕士さんをはじめスタッフの方にもショウルームに来てもらって、聴いていただいたんです。松本さんも今までのスピーカーとは聴こえ方が違う、hideさんの楽曲がまた新鮮に聴こえるということでゴー・サインが出たんです。聴けば、みんなこのスピーカーの魅力に虜になるんですよね。
——使い方もシンプルですね。
三浦:【HEADWAX】はアンプを内蔵しているので、CDプレイヤーをつなげれば大丈夫です。また、今はスマホで音楽を楽しんでいる人も多いと思いますが、スマホもつなげるだけで聴くことができます。Bluetoothのレシーヴァーを搭載していないんですが、それはオーディオ的にはまだまだ質の面で……というところであえて搭載はしていないです。もちろん、市販のBluetoothレシーヴァーをつなげられます。ジャンルを問わず楽しめるスピーカーですし、hideさんの音楽にも合いますよ。
【HEADWAX】を入れられた5つのキューブ
5つのクリスタル・キューブには、hideが愛用していたPCの部品や衣服の一部、hideに関連するものなどが入れられている。気泡を作らずにキレイに作ることも、じつはすごい技術が必要とのことだ。
本人着用のサリー
◎祖母からプレゼントされたサリー。X初期の衣装として知られる。何度もhideの手により直された数着のサリーの中からカットされている。
本人着用のファー
◎hideのイメージの1つとして挙げられる、オレンジ色のファー。これも本人が着用していた数着の中から1枚をカットして入れられている。
本人着用のPC
◎ファンとの交流の場として早くからインターネットを活用していたhide。そのために愛用されていたパソコンのパーツや基盤の一部だ。
クモ/目玉
◎数あるhideのヴィジュアル・イメージのひとつがクモであり、目玉である。2013年に東京と大阪で開かれたhide MUSEUM 2013で、hideのリアル・ヒューマン・ドールが展示されたが、あのドールを手掛けた造形技師の岩倉知伸氏が、このクモと目玉のオブジェ、そしてキューブの製作を手掛けている。
エムズシステム
VDRS hide model【HEADWAX】の
紹介動画
【HEADWAX】を手掛けた2人のキーパーソン
□三浦光仁氏:有限会社エムズシステム代表取締役。1980年に伊勢丹に入社、6年間のパリ勤務中には欧州30ヵ国のファッションや家庭用品などを担当。2000年にエムズシステムを設立し、2004年に最初のスピーカーを発売。以来、世界最驚(最響)の音響メーカーを目指しつつ、日本各地で“演奏家のいない演奏会”を開催してきた。
□松村龍一氏:株式会社ドラゴンロケット代表取締役/プロデューサー。高校時代に映画『用心棒』に衝撃を受けて、映画の道を志す。1996年に石井聰亙(現:岳龍)監督の映画塾に参加し、以来、フリーとしてさまざまな映画に携わってきた。2015年5月に公開されたhideのドキュメンタリー映画『JUNK STORY』のプロデューサーも務めた。
編集部が【HEADWAX】を試聴!
“不思議なスピーカー”だ。
まず、見た目が不思議。一般的なステレオ・スピーカーはリスナー側を向いていて、それに相対する形で音楽を聴く。しかし、【HEADWAX】をはじめとする、エムズシステムのスピーカーは背中合わせにセットされている。では、音はどう聴こえるのかというと、このスピーカー全体から広がっているという印象だろうか。そのうえで、右からギター、左からベースという立体感も感じられる。その疑問に対して、三浦氏から説明も受けたが、 音響工学的な専門的な知識が必要なこともあってすべてを理解できなかったのが正直なところ……。そして、近くで聴いても遠くで聴いても音量差を感じさせないのも不思議だった。ふつうはスピーカーに近づくと大きく聴こえ、離れると小さく聴こえるが、このスピーカーから離れても音量差を感じないのだ。一般的なスピーカーは音が前に飛ぶイメージだが、エムズスピーカーは音を球状に広げるイメージ。そのため、音が自然に空間に広がるらしい。
百聞は一見にしかず。いやこの場合は一聴か。機会があれば、ぜひエムズシステムのショウルームで試聴してみてほしい。
◎hide公式サイト
http://www.hide-city.com/
◎【HEADWAX】特設サイト
https://vdrs-sound.com/hide/
◎問い合わせ先
info@vdrs-sound.com