タウラスの歪み系ペダルを踏み比べ

ペダル型の真空管アンプ・ヘッドも好評のポーランドのメーカー“タウラス”から、手のひらサイズの歪み系ペダル・エフェクターが数種類発表された。これまでに発売されたペダル型アンプ・ヘッドやエフェクターが、プロ/アマ問わずギタリストやベーシストから高い評価を得られているメーカーだけに今回も期待大。
さっそく、気になる4機種の試奏レポートをお届けしよう。
タウラスといえば、上質なアナログ・トーンを生み出してくれるエフェクターやアンプ・ヘッドを送り出してくれているメーカーだ。今回、そのタウラスから発売されたのがコンパクト・タイプの歪み系エフェクター3機種+エンハンサーの4機種。どれも、かなり小さなモデルで、エフェクト・ボードを構築しているギタリストにはうれしいサイズとなっている。
Guitar Drive
¥オープン
■仕様■
●コントロール:ゲイン、レベル、キャラクター、ドライヴ・サウンド切替スイッチ(ハイ・ゲイン/ドライヴ/オーバードライブ)、ブライト/ダーク・スイッチ
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源アダプター:9V〜15V/極性自動検出→電源アダプターの極性に関係なくセンター・プラスでもセンター・マイナスでも使用可能。電源アダプターの接続が外れたり電源アダプターからの供給電圧が規定値より低くなると自動でバイパス・モードに切り替わるDCアシスタント機能搭載
※トゥルー・バイパス
●外形寸法:66(幅)×50(高さ)×100(奥行き)mm
●重量:353g
まずは、ボディに“DRIVE”と銘打たれたギター・ドライヴから試奏してみよう。
こちらは、資料によるとオーバードライブ/ディストーションというモデルで、タウラスのイメージからすると“極上のオーバードライブで、わりと歪みが強い系なのかな?”と予想してみた。左側にドライヴ・サウンドを3種類から切り替えられるスイッチを搭載しており、オーバードライブをセレクトして、アンプをそれなりに歪ませてブースター的に使ってみると……かなり低域をスッキリさせて抜けをよくしてくれる音になってくれる。キャラクター・ツマミは、トーン・コントロールでダーク〜ロー・ミッド〜ハイ・ミッド〜モダンと表記されている。アンプを歪ませたセッティングのまま回していくと、さほど劇的な変化が感じられない……これは、もしかして!?
今度は、アンプをクリーンにして弾いてみた。するとキャラクター・ツマミの変化も、まさに表記されているとおりに感じられる。さらに、ドライヴ・サウンド・スイッチをオーバードライブからドライヴからイ・ゲインに切り替えていくと、歪みの強度が劇的に変化していく。ハイ・ゲインの位置では、かなり激しく歪んでくれて、ゲインをフルにすれば激歪みなディストーション・サウンドが作り出せた。キャラクター・コントロールの幅がとても広く、ロー・ミッドあたりで70〜80年代のマーシャル的な中域を感じられる歪みを作り出してくれて、モダンにすると90年代のスクープしたドンシャリ・サウンドもあっという間に作り出せる。そこに右のスイッチでブライトかダークかを選択すればトーンのニュアンスを明確に変化させることができて、コンプ感もあり弾きやすさも申し分ない。このモデルは、ブースター的に使用するのではなく、アンプをクリーンにしてディストーションとして使用するのがオススメだ。そのセッティングなら、ドライヴ・スイッチをオーバードライブにしてクランチ系の歪みも作れるし、どんなアンプが来てもアナログ・ライクな歪みが作れるペダルだと感じられた。
▲ページ上はド〜ンと写真を大きくしてるが、じっさいはこのとおり、かなりコンパクト! 素晴らしい!!
▲このドライヴ・サウンドを切り替えるスイッチがポイント。ハードなディストーションが作り出せる
■Guitar Driveの詳細■
https://www.electroharmonix.co.jp/taurus/guitar-drive.html
Beefmaster
¥オープン
■仕様■
●コントロール:ゲイン、レベル、トーン、ドライヴ切替スイッチ
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源アダプター:9V〜15V(最大消費電流50mA)/極性自動検出→電源アダプターの極性に関係なくセンター・プラスでもセンター・マイナスでも使用可能。電源アダプターの接続が外れたり電源アダプターからの供給電圧が規定値より低くなると自動でバイパス・モードに切り替わるDCアシスタント機能搭載
※トゥルー・バイパス
●外形寸法:75(幅)×55(高さ)×125(奥行き)mm
●重量:405kg
続いて、ビーフマスターという名のオーバードライブにいってみよう。
こちらは、ゲイン、レベル、トーンというオーバードライブらしいシンプルなコントロールに、ドライヴ/オーバードライブという2種類の歪みを選択できるスイッチが搭載されたモデルだ。もちろんサイズはコンパクト! 箱から出すと、ミニ・サイズのペダルというよりも通常のストンプ・ペダルが小さくなったかわいらしいサイズ感で、これだけでも欲しくなってしまうルックスだ。
先ほどのギター・ドライヴの例があるので、こちらも、まずはアンプをクリーンにして弾いてみる。
この段階での印象は、ギター・ドライヴのドライヴ切り替えスイッチから、オーバードライブとドライヴの2種類を抜き出した感じだ。オーバードライブよりドライヴを選択した時のほうが歪みは強く、ドライヴの位置でゲインをフルにすると、それなりのディストーションにもなってくれる。低域がスッキリするのも、ギター・ドライヴと同様だ。
今度は、アンプを歪ませてブースター的に弾いてみよう。お〜、なるほど、なるほど、オーバードライブらしい弾きやすさを作り出してくれる。やはり低域をスッキリさせて音抜けのよいトーンにしてくれるモデルだ。アンプを歪ませて使用する場合、スイッチをドライヴにすると歪みが強くなりすぎるので、オーバードライブの位置にするのがいいだろう。チューブスクリーマー系のように中域をアップさせるというよりも、原音を大切にしつつ音抜けをよくするモデルだ。
▲横から見ると、操作しやすいようにスラントが付けられているのがわかる
■Beefmasterの詳細■
https://www.electroharmonix.co.jp/taurus/beefmaster.html
MultiWAY BOOSTER
¥オープン
■仕様■
●コントロール:ゲイン・レベル、ヴォリューム・レベル、モード切替スイッチ
●入出力端子:インプット(1ウェイ/2ウェイ・モード対応)、アウトプット(1ウェイ/2ウェイ・モード対応)
●電源アダプター:9V〜15V(最大50mA)/極性自動検出→電源アダプターの極性に関係なくセンター・プラスでもセンター・マイナスでも使用可能。電源アダプターの接続が外れたり電源アダプターからの供給電圧が規定値より低くなると自動でバイパス・モードに切り替わるDCアシスタント機能搭載
※トゥルー・バイパス
●外形寸法:66(幅)×50(高さ)×100(奥行き)mm
●重量:400g
さて、続いて紹介するのが、これまでにない発想のブースター、マルチウェイ・ブースターだ。
これは、通常のブースターとして使用することも可能だが、Yケーブル〈¼インチ・ステレオ・フォーン ⇔ ¼インチ・モノラル・フォーン(L/R)〉を使用しアンプのセンド/リターンを利用することで、ブースト+音量アップすることができるようになるモデル。通常、アンプの前段でブーストしても思ったより音量アップしないので、センド/リターンの間でブーストすることで音量を上げることができる。ただ、アンプ前段で歪み系の前にも接続してブーストしたいとなると2台のブースターが必要になるわけだが、それをこの1台でまかなえてしまうという便利なモデルだ。
▲左が1ウェイでの使用で、通常のブースターとしての接続。右は2ウェイ・ブースターとしての使用で、その際はYケーブルを使う。
2ウェイで使えば、ゲインを稼ぎつつギター・ソロなどで音量をアップさせることが可能になる
■MultiWAY BOOSTERの詳細■
https://www.electroharmonix.co.jp/taurus/multiway-booster.html
Servo 3
¥オープン
■仕様■
●真空管:6021/CV3986
●コントロール:サーヴォ・ゲイン、レベル・コレクション、ロー・カット、ブースト・ヘッドルーム、キャラクター、マッシヴ・スイッチ、ブースト・スイッチ、オン/オフ・スイッチ
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源アダプター:9V〜15V(450mA/500mA以上推奨)/極性自動検出→電源アダプターの極性に関係なくセンター・プラスでもセンター・マイナスでも使用可能。電源アダプターの接続が外れたり電源アダプターからの供給電圧が規定値より低くなると自動でバイパス・モードに切り替わるDCアシスタント機能搭載
※トゥルー・バイパス
●外形寸法:75(幅)×55(高さ)×125(奥行き)mm
●重量:405g
最後の1台は、エンハンサーという真空管を搭載したサーヴォ3。
エンハンサー自体、なかなか馴染みのないエフェクターで、歪み系に分類していいのか悩みどころだが、試奏してみると原音をブラッシュアップしたトーンにしてくれるモデルだ。真空管を内蔵してるだけに、オンにするだけでも音を太くしてくれる。さらに、マッシヴというスイッチを切り替えると音圧も上げてくれるのはうれしい。ヘッドルーム・ブーストというツマミは、ブースト・スイッチをオンにした時のダイナミック・レンジを調整するもので、フルにするとさらなる音圧を作り出してくれる。
とくに優れてると感じたのは、そのコントローラーを操作しても原音を損なうことがない点だ。アンプを歪ませてブースターとして使うもよし、歪み系ペダルの前段につなぐのもよし、一度、使うと手放せなくなるモデルで、今回の中でもっともオススメしたい1台だった!
▲サーヴォ3の、エフェクト・オンでブルーに、ブースト・オンでレッドに光る真空管部分
■Servo 3の詳細■
https://www.electroharmonix.co.jp/taurus/servo-3.html
▲あくまでもWeROCK的試奏による比較。
ギター・ドライヴが、もっともゲインの幅が広く、さらにヴィンテージ系からモダンなサウンドまで作り出すことができた。
ビーフマスターは、そこまでハイ・ゲインなディストーションを必要としないギタリストにオススメのオーソドックスなオーバードライブ。
マルチウェイ・ブースターは、音色を変化させずに、さらなるサーチレーションとソロ時などで音量をアップさせることが可能なモデル。
サーヴォ3は、歪みを作るというよりも原音をブラッシュアップさせてくれるエフェクターだが、音圧もゲインもアップしてくれる印象だ