SYUが現行チューブスクリーマー5機種を総力試奏!

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ハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ギタリストだけではなく、多くのギタリストならそのトーンはかならず聴いたことがあるだろう、エフェクターの名機チューブスクリーマー。
影響を受けて製作されたモデルも数しれずだが、今回はみずからも多くのチューブスクリーマーを所有するというガルネリウスのSYUに、アイバニーズの現行機種5台を弾き比べてもらった。動画とともに見て頂ければ、よりTSの魅力に迫れるはずだ!

撮影協力:六本木BAUHAUS


SYUによる試奏動画


SYUが語るチューブスクリーマーの魅力

SYUチューブスクリーマーといえば、僕のシグネイチャー・エフェクターであるヴォルヴェイドス・エンジニアリングからもリスペクトしたフォルティス・オーバードライブを発売してるぐらい、ずっと大好きなエフェクターです。
自分で何機種も持ってるぐらい使ってきているので、どんなトーンが出るのかも把握していて、そんなオーバードライブの王様からの影響は避けられないぐらいです。ミドル・レンジがアップしてくれるオーバードライブが大好きで、チューブスクリーマーはそんな中でも代表機種です。中域が目立つのでハイとローがカットされるようなイメージはありますけど、けしてコモって聴こえるような感じもなくバンド・サウンド内ですごく抜けてくれて、さらに弾き心地も素晴らしくなります。
具体的に言うと800Hzあたりが、すごく好みに鳴ってくれるんです。そこから自分のギターを聴かせていけるのは、大いなる武器となります。ブースター系のエフェクターも好きなんですが、オーバードライブが持つコンプ感だったりドライヴ感がすごく弾きやすくしてくれるんですね。“コンプレッサーがかかったような感じ”というと語弊があるかもしれないですが、オンにすれば弾いていて心地よい感じにしてくれるのがいいんですよね〜。


Ibanez
TS808HWV2

¥57,200(税込)

【仕様】
●コントロール
:オーバードライブ、トーン、レベル
●トゥルー・バイパス
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V(006P)乾電池、外部ACアダプター(DC 9V-18V/センターマイナス)
●外形寸法:77(幅)×133(奥行き)×60(高さ)mm
●重量:545g

レンジの広さ……TS好きなら、すぐに欲しい1台です

◎チューブスクリーマーをさらに進化させるべく、ハンドワイヤード・モデルを再構築したTS808HWV2。あらゆるパーツを見直すことから企画/開発をスタートしたモデルだ。
SYU:これの前のヴァージョンを弾いたことがあるんですが、より研ぎ澄まされた音になってると思いました。そもそも、アイバニーズがハンド・ワイヤードのチューブスクリーマーを出すこと自体の重要さがわかる音ですね。
今回、アンプはクランチ気味のセッティングにしてオーバードライブをかけてるんですが、セッティングはレベルをマックスにして音をプッシュする感じにしてます。トーンは、とりあえずセンターにして、オーバードライブのコントローラーは気持ちいいところまで上げてみました。オーバードライブをゼロのところから上げていくと、このモデルでもけっこうゲインが稼げることがわかりますね。
もともと、チューブスクリーマーは中域にフォーカスしていますが、このHWV2に関しては、より原音を大事にしたトーンにも聴こえます。“透明なサウンド”という、その通りの音がすると思いました。TS808やTS9に比べると、レンジが広い感じがしました。両者のいい部分を取りつつ、透明感があってハイの抜けが気持ちよくローもふくよかなんです。そのローも邪魔にならない感じでふくよかで、あと、ピッキングした時のレスポンスのよさもあり、演者にとってすごく弾き心地がいいなと思わせてくれる要素がいっぱい入ってます。
これまで、いろんなチューブスクリーマーを購入させていただきましたが、これは今回、初めて弾いたんですね……TS好きとしては、大至急、欲しいぐらい気に入りました(笑)。個人的な意見なんですが、この筐体が、めっちゃカッコいいんですよ。V1に比べると、やや大きくなってる気がして、その感じもいいし、持った時の重量感というか所有してる幸せを感じます(笑)。ツマミも高級感があって、とてもいいです。

▲オペアンプは、JRC NJM4558を使用。チューブスクリーマー特有のミッド・レンジが特徴だ

■SYU’s setting

オーバードライブは上げ目だ。アンプは、クランチ・セッティングで使用

 

■TS808HWV2の詳細■
https://www.ibanez.com/jp/products/detail/ts808hwv2_01.html


Ibanez
TS808

¥28,050(税込)

【仕様】
●コントロール:オーバードライブ、トーン、レベル
●バッファード・バイパス
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V(006P)乾電池、外部ACアダプター(DC 9V/センターマイナス)
●外形寸法:70(幅)×125(奥行き)×52(高さ)mm
●重量:500g ※1/8” ミニプラグ変換コード付属

より中域にフォーカスしたTS系の原点

◎1970年代後半に発売され、多くのギタリストに愛され続けた伝説の“TUBE SCREAMER Overdrive Pro TS808”のリイシュー・モデルだ。
SYU
:HWからこちらに切り替えて弾くと、安心できる音というか、これまでずっと弾いてきたチューブスクリーマーのトーンだなと思いました。じつは、この808もふつうに所有していて、自分がエフェクターを作る時もリファレンスとしてのエフェクターとして、いつも鳴らしているし、ずっと好きで使ってきているモデルです。
いちばんの特徴といえば、中域の盛り上がり方、それとローとハイの感じですかね。バンド・サウンドで出した時も、安心できる音を出してくれます。エレキ・ギターの心地いい部分を、いい感じで再生してくれる感じなんです。オススメ・セッティングでは、HWV2よりオーバードライブが上げ目になってますが、これは今回、心地いい感じのところでのセッティングですね。12時あたりで弾いても、パリっとしたいい感じの歪みが出てくれます。
アンプをクランチ気味のセッティングで鳴らすとなると、僕、メタラーなんで(笑)、メタル的な歪みに持っていくために2時ぐらいにします。そうすると歪みが細かい粒子になってくれて心地いいですね。今、聴き比べてみると、HWV2と歪みの質も違いますね。より、中域にフォーカスされてる音ではあります。HWV2の時はレンジが広めと感じたので、ここまでドライヴを上げなくても大丈夫だったんですが、808の場合はオーバードライブを少し上げ目にしてあげると弾きやすさが出てくると思います。レベルは、こちらもフルです。
僕がオーバードライブを使う時は、基本的にレベルはフルで弾きます。まあ、そのあたりはギタリストによって、いろいろだとは思います。セッティングをする時は、まずはオーバードライブをオフにしてアンプで自分の好きな音を作るということがすごく大事なことで、そこにオーバードライブでフリカケのようにサスティンとか足りない部分を彩ってあげる感じです。ちなみに、TS9と比べると、808のほうが甘めなトーンに感じました。

▲TS808ならでは!? 電源には専用変換プラグが付属されている

■SYU’s setting

▲オーバードライブのツマミが、他のモデルより、やや上げ目になっている

 

■TS808の詳細■
https://www.ibanez.com/jp/products/detail/ts808_99.html


Ibanez
TS9

¥20,350(税込)

【仕様】
●コントロール:ドライヴ、トーン、レベル
●バッファード・バイパス
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V(006P)乾電池、外部ACアダプター(DC 9V/センターマイナス)
●外形寸法:74(幅)×124(奥行き)×53(高さ)mm
●重量:570g 

“これこそエレキ・ギターの音”という感じがします!

◎オーバードライブの代名詞とも呼べるTS9。ジャンルを超えて多くのギタリストに愛され続けているエフェクターだ。
SYU
:もう、安心感があるというか馴染みがありすぎて(笑)、“これこそエレキ・ギターの音!”という感じがします。いつ弾いても、TS9こそが“チューブスクリーマーだな”という印象が強くあると改めて思いました。
歴史的には808のほうが古いんでしたっけ? 僕がチューブスクリーマーとして初めて触ったのがTS9のほうなので、そういう印象なのかなとも思います。やっぱり真空管アンプとの相性も、すごくいいです。よく、ローがカットされすぎるとか言われたりしますけど、僕はそういう部分でもいい印象しかなくて、サスティンが生まれ中域が盛り上がってくれるのがいい感じのトーンになってくれて、何も考えずに気持ちよく弾けるんです。
808と比べると、少しレンジが広く感じられ、中域のギュっとした感じは808のほうが強く感じられました。そういう意味では、TS9のほうがHWV2寄りかもしれないですね。レンジ感でいえば、HWV2と808の間にあるのがTS9という感じで、TS9のほうが原音に忠実寄りです。世界中で愛されてるペダルですから、僕はこれこそ王様だと思っております。炊飯器レベルで、一家に一台あるべきオーバードライブですよね。
セッティング的には、こちらもオーバードライブを少し上げ目にしてみました。12時ぐらいでも大丈夫なんですけど、僕は2時ぐらいに上げたほうが芳醇な感じが出て気持ちよく弾けました。オンとオフで比べてみると、やっぱりミドルがフォーカスされた音が出てくれるのは間違いないですよね。僕がガルネリウスでオーバードライブを使う時は、今回と同じようなセッティングで、オーバードライブはオンにしっぱなしで弾きます。クランチや荒廃的なクリーンっぽいサウンドがほしい時も、あえてTS9はオンにしてギター側のヴォリュームを絞った音を狙って作れるペダルなんです。これまでいろんなオーバードライブを使ってきましたが、なにを使ってもこのトーンが恋しくなって戻ってきてしまうエフェクターですね。

HWV2、MINI(電池使用不可)以外は、電池交換が、ワンタッチでできるようになっている

■SYU’s setting

トーン、ドライヴともに、センターより、やや上げ目にされていた

 

■TS9の詳細■
https://www.ibanez.com/jp/products/detail/ts9_99.html


Ibanez
TS9DX

¥20,900(税込)

【仕様】
●コントロール:ドライヴ、トーン、レベル、モード(ターボ/ホット/+/TS9)
●バッファード・バイパス
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V(006P)乾電池、外部ACアダプター(DC 9V/センターマイナス)
●外形寸法:74(幅)×124(奥行き)×53(高さ)mm
●重量:570g

■ローがいなくならない、歪み多めのTSサウンドも作れる

◎4つのモードを搭載したチューブスクリーマー。各モードは、ノーマルのTS9サウンドに加え、TS9よりも少しザラついた歪みの「+( プラス)」、中音域をブーストさせる「HOT」、より現代的かつパワフルな歪みを得るために中低音域を強力にブーストさせる「TURBO」となっている。
SYU:今回のデモ映像では、+モードにしてトーンを上げ目にして弾いてみました。
モードをTS9にすると、本物のTS9とほぼ一緒だと感じました。そこから、+→HOT→TURBOにしていくと、ゲインも上がりつつ、ローも増えてマッチョになります。もしかしたら、TS系でローがカットされるのを嫌がるギタリストのために、こういう仕様にしたのかもしれないですね。僕は、ノーマルのチューブスクリーマーの中域にフォーカスされたサウンドがすごく好きなので、ローは増えなくてもいいかなと個人的には思ってます。ただ、チューブスクリーマーの中で、絶対的にローが消えてほしくないギタリストは、このDXを選ぶといいんじゃないかと思います。それこそ、ローが少なめのアンプやクリーン・チャンネルを使ってディストーション・サウンドを作るギタリストに、オススメしたいのがこのDXですね。
TURBOにいくとゲインも上がります。歪みの質としては、+とTURBOが似てるところがありますね。TURBOで、全部をフルにして弾いてみたんですけど、けっこう凶悪な感じの歪みが作れるんですけど、トーンをフルにしても破綻する音じゃない部分は強みですね。アンプをクリーンにしてTURBOで弾いてみたんですけど、ドライヴが0でクランチ、上げていくとディストーションに近い歪みを得られつつ、ローがいなくならないTSサウンドが作れます。

TS9DXは、TS9、+、HOT、TURBOという4種類の歪みモードが選べる

■SYU’s setting

モードは+を使用して音作りをしてくれた

 

■TS9DXの詳細■
https://www.ibanez.com/jp/products/detail/ts9dx_99.html


Ibanez
TSMINI

¥12,650(税込)

【仕様】
●コントロールオーバードライブ、トーン、レベル
トゥルー・バイパス
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9Vセンター・マイナス仕様のACアダプターもしくはエフェクター用のパワー・サプライ(電池での使用不可)
●外形寸法:51(幅)×93(奥行き)×56(高さ)mm
●重量:292g

この小さいサイズから驚愕のレスポンスの速さ!

◎伝統のチューブスクリーマー・サウンドをそのままに、ダウン・サイジングしたモデル。TS808と同色の専用設計ダイキャスト・ボディを採用している。
SYU
:ピッキングしてからのレスポンスがいいし、この小さい筐体から出てくる音じゃないって思いました。アンプ直で弾いてるような、すごくダイレクトに感じられる音です。そのぐらいレスポンスが速くて“アンプ直で弾いてるの?”と思わせてくれるぐらいですね。
それに、弾きやすいトーンにしてくれるのも特徴です。レンジが狭くなるのかなと思ったら、ぜんぜんそんなこともなくて、弾き心地もとてもいいです。808やTS9に比べても、遜色ないというか人によってはこっちのほうがいいと言うギタリストもいるんじゃないですかね。HWV2と似通った感覚もあって、それはレスポンスの速さ、レンジも広めという部分ですね。すごく興味深いモデルです。こんな小さな筐体から、こんな素晴らしい音が出てくれるなんて。速弾きしてもしっかりと付いてきてくれるし、すごく気持ちいいです。
なんで、小さくしてるのにそうなるのかはわからないですけど、とにかくMINIのサウンドは素晴らしいです。HWV2に関しては持っていて確実に損はないし、所有する喜びもあると思うし、素晴らしいサウンドが出てくれるのでオススメしたいんですけど、価格を考えると、このMINIでいいんじゃないかとも思います(笑)。他の機種と比べても、音的に負けてないし、こちらが勝ってると思うギタリストもいるんじゃないかと。もしかしたら、ボディが小さくなって回路が小さくなり、音が速く排出されてるんじゃないかという印象もあります。速いプレイをするギタリストなら、とくに気に入るんじゃないかと思いました。

■SYU’s setting

オーバードライブは12時の位置、トーンもセンターだ

 

■TSMINIの詳細■
https://www.ibanez.com/jp/products/detail/ts_mini_01.html


総評! 1台買うとしたら……

SYU:5機種をイッキに弾く機会って、なかなかないんですが、今回、弾かせて頂いて改めてチューブスクリーマーの偉大さを感じました。
根本にあるトーン……中域にフォーカスしているという部分は、どの機種にも絶対的に存在していて、その中でDXだったらローをブーストできるモードがあったりとか、HWV2であれば、よりレンジが広がりながらも弾きやすいトーンにしてくれます。どの機種でも、そのモデルならではの魅力があると感じさせてくれました。
1機種選ぶならどれ? と言われたら(笑)……価格は、全部、一緒として、僕ならHWV2です! ギタリストとして、音的にいちばん弾きやすかったです。
いちばん安心するのは? それは、やっぱりTS9ですかね。いつもの音です。で、けっこうお気に入りなのが、MINIです。ポータビリティが断トツにありますよね。808は808で、“ギュっ”としたミドル・レンジがすごく魅力的で……そういう観点から考えても、5台それぞれに個性がありますよね。