RENOファウストがTONEX Cabと初遭遇!!

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TONEXシリーズの新製品であるTONEX Cabは、いわゆるパワード・スピーカーであるが、アンプ・シミュレーターを愛用するプレイヤー向けのモデルであり、よりアンプらしいサウンドが得られるという。
今回、そのTONEX Cabを代表的なアンプのキャビネットと弾き比べて魅力を探ってみた。チェックしてくれたのは、本誌ではDamian Hadada’s Creaturesのメンバーとしてお馴染みのRENOファウストとエンジニアの櫻井としゆき氏だ!


RENOファウストによる試奏動画


IK Multimedia
TONEX Cab
¥123,200(初回限定版/税込)、140,800(税込)

【仕様】
●出力:2ウェイ 350W RMS/700W Peak パワード・キャビネット
●スピーカー:高出力のギター用に特別設計された12インチ・セレッション低域ドライヴァー、大音量のステージでも鮮明なサウンドを実現する最大132dB SPL 対応、制御された指向性を持つ高性能1インチ Lavoce 高域ドライヴァー
●周波数特性:60Hz〜20kHz
●コントロール:ベース、ミドル、トレブル、アンプ・トーン、8プリセット、ヴォリューム、AUXレベル、IR ローダー内蔵
●入出力端子:USBインプット、MIDIイン/アウト、AUX IN(XLR 1/4 インチ・入力)、XLRバランス出力(PRE/POSTスイッチ付き)
●外形寸法:546(幅) x 432(高さ)x 230(奥行き)mm
●重量:12.7kg
※TONEX for Mac/PC SE とAmpliTube 5 SEソフトウェア付属

リアに設けられた入出力端子。MIDIも装備し、アウトプットはPRE/POSTスイッチ付きで、PAに接続したり、複数のキャビネットをスタックして最大限のパワーを得ることが可能となっている

 

■シミュレーターで作った理想の音とギャップがない

——RENOファウスト(以下、RENO)さんはケンパーを愛用されていますが、そうしたアンプ・シミュレーターを使う時に心がけていることは何ですか?
RENO
:デジタルであることを理解しつつ、よりアナログに近い、アンプを鳴らしているような音に近づける音作りを心がけています。
——今回、愛用のケンパーを使って、TONEX Cabを鳴らしてもらいました。第一印象を教えていただけますか。
RENO
:すごく素直な音で、なおかつ音量もしっかり出ます。これは自宅でも使えるし、ライヴでもモニターとして使えると感じました。レスポンスも速いし、鳴らしたフレーズがダイレクトに伝わってくる。ベッタリしていないというか、輪郭が伝わってくるんです。
——櫻井さんはエンジニアとしてどう感じられました?
櫻井
:普通のキャビネットと大きく違う点が1点あります。そこがレコーディングしてみて苦労した点ではあるんですが、普通のキャビネットは同じスピーカーが複数入っているのに対して、TONEX Cabは違うスピーカーが入っているんですね。ただ、取り出したい音がそこから出ているというのがわかるので音作りはしやすそうだなと思いました。
RENO:確かに、今見たらスピーカーが2つあって、種類が違いますね。おもしろいですね。僕はそこに気づかず、ミックスされた音を聴いていたんですね。
櫻井:音はアンプっぽいですよね。コントロール・ルーム内でもギターの録り音の音作りをしていたんですが、RENOさんから“スピーカーで鳴っている音に近づけてほしい。弾いている音と録っている音を近づけてほしい”とリクエストされたんです。

▲グリルを取り外したところ。
左上に見えるのがLaVoce製の1インチ・高性能コンプレッション・ドライヴァー。右側がセレッション製の12インチ・スピーカーだ


——イコライザーやアンプ・トーンというコントロールの効き具合についてはいかがですか?
RENO
:アンプっぽい変化の仕方というか、欲しいなというところがしっかり効いてくれる印象でしたね。アンプ・トーンはトーンのカラーを変えられるんですか?
——ツマミを回しながら試してみますね。いちばん左に回すとマイクをキャビネットに立てた時のダイレクトなキャラクターになり、右側のLIVEに回していくとステージ上で聴いているようなライヴ感が加わっていきます。
RENO
:うん、キャラクターが変わります。MIC側にしてもLIVE側にしてもいいですね。LIVE側に回していくと、ドライヴしていく感じがします。ここは好みだと思います。
櫻井:どのツマミの位置でもいいですね。MIC側だと小音量でも素直な音というか、ヴォリュームがそのまま上がり下がりするんですね。そこから、LIVE側に回していくと文字どおりライヴ感が加わってくる。
RENO:アンプ・トーンは使い勝手がいいですね。もしライヴで使うのなら、センターよりLIVE側に2時ぐらいまでの位置まで回した音が好みというか、いいと思います。これをマイキングしてもいい音で聴かせられると思います。
櫻井:ザクザクしていますね。
RENO:そうですね。

▲AMP TONEは左のMIC側に回すとキャビネットにマイクを立てたようなキャラクター、右側のLIVE側に回していくとステージ上で聴いているようなキャラクターを加えられる

▲RENOファウストのオススメ・セッティング。アンプ・トーンを2時ぐらいにセットして、ライヴ感を加えている


——プリ/ポストを切り替えられるDIアウトも付いているのでTONEX CabのEQやアンプ・トーンで調整した音をPAに送ることもできますし、バイパスしてアンプ・シミュレーターの音をそのまま送ることも可能です。
RENO
:そんなこともできるんですね。
櫻井:便利ですね。
RENO:TONEX Cabで鳴らすことで、さらにアンプライクな音になるし、その音をそのまま届けたいですからね。
——今回はTONEX Cabと、ローランドのJC-120、マーシャルのJVMのリターン挿しで、その音の違いをRENOさんに確かめていただきます。まずはクリーン・トーンでTONEX CabとJCのリターン挿しを試していただけますか?
RENO
:(弾き比べてみて)キャビネットの大きさの違いによる音量感の差はあるんですけど、JCはJCならではの箱鳴りもありますね。TONEX Cabはイヤモニで鳴っている音にすごい近いです。JCを使う場合は、“JCで鳴らすこと”を考えた音作りをする必要があるんですけど、TONEX Cabはそれがいらないというか素直に鳴ってくれますね。
櫻井:JCはいつも聴いている音で、このキャビの大きさが出る感じも予想どおりというか。TONEX Cabの大きさって、他にあまり見ないじゃないですか。でも、身体に感じる音圧や音量感がありますね。
——では、マーシャルのリターンに挿してクリーン・サウンドを鳴らしていただけますか?
RENO
:(試奏して)マーシャルはスピーカーが4発ということもあるし、もっと音量を出した時とは違うと思うんですけど、ちょっと散っちゃうイメージがありますね。それがよかったりもするんですけど、それと比べるとTONEX Cabはスコーンと出てくるし、このサイズの小ささながらしっかりと音圧も感じられます。びっくりしました。
櫻井:マーシャルとTONEX Cabの音の違いは、このサイズの差にもよるとは思います。そして、マーシャルはマーシャルの音がする。
RENO:(笑)。
櫻井:そのマーシャルの音を聴いた後に、TONEX Cabの音を聴いて感じたのは“やっぱり素直だな”ということです。語弊があるかもしれませんが、マーシャルは高音域が少しグチャッとしちゃうんです。それがマーシャルっぽさでもあるんですが、小さな音で聴いてもその差を感じました。

▲中央がTONEX Cab。マーシャルやJC-120と比べてのサイズ感が伝わるだろうか?

——続いて、ドライヴ・トーンでの弾き比べをお願いします。
RENO
:マーシャルだと、違う音作りでも試してみたいところですね。
——それはどういった理由でですか?
RENO自分が出したい音と比べるとマーシャル色が強くなってしまうので、ケンパー側でEQなどをいじりたくなります。JCに関しては、そこまで使ったことはないんですが、JCの音だなあって(笑)。だから、マーシャルと同じように自分が思い描いている音にするためには、ケンパー側での音作りが少し必要かなと感じました。今回鳴らしたマーシャルやJCの個体差もあるとは思うんですけど、そういう研究が必要だなと思います。それと比べるとTONEX Cabは自分の理想の音に近いというか直結しているので、細かくいじる必要がないなと感じます。
櫻井:私も同じように感じました。生で聴いて比べてみるとマーシャルとJC-120に関しては、それぞれのアンプの特徴がすごく出ているんですね。でも、TONEX Cabは素直というか、ブースで鳴っている音がそのままコントロール・ルームで鳴っているイメージですね。
——ちなみに、マーシャルとJCを鳴らす時にはケンパー側でスピーカー・シミュレーターをオフにしていましたが、TONEX Cabの時はオンにしてもらいました。そのスピーカー・シミュレーターは何を選ばれていますか?
RENO
:自分のレコーディングの時に使った、確かVHTだったと思うんですが、それを取り込んだものです。クリーンだとまた違うんですが、歪みに関してはそのVHTを取り込んだものが素直に再現できている感じです。
——ライヴで使うことはもちろん、自宅とステージとのサウンドのギャップを減らせるというメリットもありますね。
RENO
:そうですね。家でアンプ・シミュレーターで音を作って、ライヴ・ハウスでマーシャルやJCを使って鳴らすと、差が出てしまう。“こんな音じゃないのに……”とギャップに悩むギタリストは多いと思うんです。実際に僕もそういうことがあります。でも、TONEX Cabはアンプ・シミュレーターで作った理想の音とギャップがないし、自分でも使ってみたいと思いました。

RENOファウスト(右):魔暦24(2022)年のD.H.C.のサポートをへて、第2期D.H.C.メンバーとなる。また、現在展開中の聖飢魔の大黒ミサツアーのサポート、ViViDの期間限定復活やLike-an-Angel、ソロとしての活動などで、そのテクニックを存分に知らしめている!
左は、今回、担当してくれたエンジニアの櫻井としゆき氏。東京を拠点に、レコーディング/ミックス/マスタリングからマニピュレーター、PAまで行なっている敏腕エンジニアだ

▲本体左右のスタンドを使ってスラント状態でセット可能だ。ライヴでのモニターに便利だ

▲グリルは簡単に取り外しが可能。下の写真のように別売のシルヴァーやゴールドと交換できる

グリルを取り外すことが可能で、交換用の色違いも発売している。左がシルヴァー、右がゴールドで、各8,800円(税込)だ

 

■TONEX Cabの詳細■
https://hookup.co.jp/products/ik-multimedia/tonex-cab

■取材協力:バズーカスタジオ■
https://bazookastudio.com/