WeROCK 105 付録CDインタヴュー集〜ヴォーカリスト特別座談会 編

WeROCK 105の付録オムニバスCDに参加したバンドのインタヴュー集を、このWeROCK EYESでもお届けするシリーズ企画。
第5回は、ねね(フルムーン) × Miwa(シリウス) × LeA(エンプレス)によるヴォーカリスト特別座談会です。
FullMooN MV「Reality」
Sirius MV「Fly High」
Empress MV「Rain」
——同じマネージメント所属の3バンドですが、先輩後輩という関係性はありますか?
ねね:フルムーンが、いちばん古くから所属していて、次はバンド的にはエンプレスなんですけど、Miwaちゃんのほうが個人的には早く事務所に入ってるんだよね?
Miwa:シリウスは2年ぐらいなんですが、その1年前ぐらいに事務所には入ってました。
LeA:エンプレスは結成5周年になるんですが、前任ヴォーカリストがいて私が入って1年ぐらいになるので、私がいちばん下の後輩になりますね。
——それぞれをヴォーカリストとして、どう思ってますか?
ねね:バチバチです。
一同:(爆笑)。
LeA:私的には、その先輩後輩関係の、いい部分だけ取ってる感じが強いなと思ってるんです。先輩から学んでいくみたいな。で、学ばせてもらう代わりに、こっちもできるだけ先輩に寄り添うみたいな感じが強いですね。よく、女同士のいさかいみたいなのをイメージされがちなんですけど、全然そういうのはなくて、相談に乗ってくれる先輩方です。ただ、Miwaちゃんとは、最初、距離感を測っていたよね(笑)。
Miwa:どういう距離感でいけばいいのか、初めのうちはちょっと難しくて(笑)。私、“後輩〜!”って近づくタイプでもないし、でもエンプレス自体は先輩だからエンプレス“さん”って呼んでいて。最初は、LeA“さん”って言ってたのが、いつのまにかLeAになってたよね。
LeA:たしか、どっかで話してる時に、一緒に切磋琢磨できるようになりたいと思って、徐々に敬語を使わなくなってMiwaちゃんも私に“さん”付けしなくなった感じですね。ただ、ねねさんに対しては師匠なんです。私が、エンプレスに加入するかどうかみたいな話になった時に、エンプレスの4周年ライヴを観に行ったんですね。そのライヴ・ハウスに入った瞬間に歌っていたのがフルムーンのねねさんで、その歌を聴いた瞬間に衝撃を受けて。それまでも、もちろん好きなアーティストはいたし“ヴォーカリストとしてこうなりたい!”という方はいたんですが、そういう憧れのアーティストって身近ではないじゃないですか。そんな時にねねさんの歌を聴いて、もう衝撃が強すぎて……。“どうにかこの人と肩並べて歌えるようになれないものか”って思いました。
ねね:そういう熱い思いを前から伝え聞いていたので、私は調子に乗ってます(笑)。
Miwa:私がねねさんに初めて会ったのは、事務所がヴォーカリストを募集していて、そのオーディションでした。で、お話させて頂いた時に人柄というか雰囲気が伝わってきて、この事務所に入ろうって決めたんです。ねねさんのステージングとかもすごく好きで、ライヴを楽しそうにしてるところを観てこの事務所だったら自分も楽しんでできるのかなって思いました。ふだんからヴォーカルの話もするんですけど、それだけじゃなくて、すごい緊張してる時とか和ませてくれたりもするんですよ。
ねね:この3人は、珍しいぐらいすごく仲がいいんですよね。あんまり先輩後輩とか関係ないっていうか普通に悩みごととかも話し合ったりするし、よくご飯行くしね。
——先輩から見て、後輩ヴォーカリストは、どう写っていますか?
ねね:それぞれ違ったよさがあると思います。LeAは努力家っていうかガンバり屋で、エンプレスに加入した最初の頃から見てきたんですけど、ものすごい早さで成長してる。こんなに早く成長する人、私、見たことないから、たぶんめちゃくちゃ努力したんだなって思います。ピッチが最初からよかったし、かなり丁寧に歌うヴォーカリストで、そこのよさを私は持ってないので見習いたい。で、どんどん私のいろんなところを盗んでくれるんですけど、なんかLeAの動き見てると、“あれ? 私!?”って思ったりして、もしかして私がLeAのマネしているのかという感覚に陥るぐらいに似てる部分があるんです。
LeA:毎回、ライヴを勝手に動画で撮って、“こうやって歌ってるからこういう歌い方ができるのかな?”みたいに研究して 個人練でスタジオ入って鏡を見ながら、ずっとねねさんの動きをマネしてるんです(笑)。最近、いろんな人に“なんか、ねねちゃんがもうひとりいる!”とか言われたり、お客さんからも“すごい似てきたよね”って言われるんです。で、歌い方とかも、自分で歌っていて、“あれ、ねねさんに似てきたぞ”って思う部分が出てきて。
ねね:でもね、モノマネをしてるだけじゃなくて、その中でLeAらしさというか自分らしさみたいなのを出しているので、これからもすごい楽しみだなと。抜かれないようにガンバらなきゃ。Miwaちゃんは、役者もやってるからなのか表現力がすごくて、世界観を作るのがうまいんですよ。ステージに立ってるだけで“私がシリウスのヴォーカルだ!”という存在感が出てる。私ってマジメな時もありますけど、おちゃらけてしまって世界観を台無しにしてたりして(笑)。でも、Miwaちゃんは、そういうのがないんですよね。ライヴの最初から最後まで、ずっと“シリウスのヴォーカル!”という世界観がある。センターに立ってるだけで、なんか“小林幸子さん的”みたいな感じ(笑)。
LeA:“私はこうだ!”って堂々としてますよね。
ねね:あれが難しい。私はカッコつけることができない。
——役者をやってると自然と出てくるものなんですか?
Miwa:自然というか……少し前にお客さんに言われたのは、“こうなりたいっていうヴォーカリストを演じてるんでしょ?”って。でも、それはそうなのかもしれないって思います。こういうふうに観られるようにしたいっていうのは、 ステージングで意識してるし衣装を着たらスイッチが入りますね。私、生バンドで歌うっていう経験が少なかったので、ヴォーカリストとしてステージの中心に立って、どうやって空気を盛り上げていくかとか、歌い方、声の出し方も、それまでやってきたものとはぜんぜん違ったんですね。声作りから、ここはこうしたら自分に使えるのかとか、いろいろと盗みながらやってます。
LeA:やっぱり刺激がすごいですよね。
ねね:刺激しあってるね。
——では、今回の付録オムニバスに入ってるそれぞれの楽曲は、どう思っていますか?
ねね:シリウスの楽曲は、かなり前のものだよね?
Miwa:録ったのは2023年ですね。
ねね:この音源から、かなり成長してる。
Miwa:ありがとうございます。よかった〜(笑)。この曲のレコーディングの時、ねねさんに一緒にいてもらったんですよ。レコーディングで歌うのとライヴで歌うのって違うじゃないですか。どうしたらこう、カッコよさを乗せられるかっていうのも含めて、ねねさんに来てもらってアドヴァイスしてもらいながら録ってたんです。ウニを献上して(笑)、賄賂を渡して、一緒にレコーディングしてました。
ねね:めっちゃ美味しかった(笑)。Miwaちゃんって、声がキレイなんですよ。ファルセットの声もキレイで、どちらかといえばメタル寄りの声質じゃない部分もあって。今回の「LUCIFER」では聴けない、そういう部分もあるんですよね。
Miwa:「LUCIFER」はライヴで盛り上がる曲でキャッチーで聴きやすい部分もあるんですね。5曲入りEP「Fly High」に入ってるんですけど、表題曲にするか悩んだぐらいなんです。
ねね:私は、「Fly High」より「LUCIFER」のほうが好き。
LeA:X JAPANの曲に似てるよね? 去年のジリオン・イヴェントで、この曲をエンプレスでカヴァーしたんですよ。さらに、フルムーンの「Until the end」もカヴァーしてるんですけど、「LUCIFER」はとにかく言葉数が多い。滑舌をしっかりやるのと言葉数が多いぶん、言葉と言葉の間の余白の歌い方、ニュアンスのつけ方にすごい悩みました。カヴァーするからにはMiwaちゃんと同じことをやるわけにはいかないし、“エンプレスが「LUCIFER」をやったらこうなりました”っていうのをお客さんに観せたかったんですね。自分だったら“こう変えよう”というのをノートに書いてカヴァーしました。
——エンプレスが提供してくれた「運命」は、いかがでしょう?
ねね:私、昔、エンプレスのサポート・ヴォーカルをやっていた時期がありまして、この曲は歌詞がめちゃくちゃ覚えにくい(笑)。
Miwa:曲調的にも、いろんな面を持ってる曲ですよね。私、いちばん最後のメロが好き。歌い方に、かわいらしさも色気も出ている感じがします。
ねね:最初、LeAは、歌い方で困ってたよね。平坦な曲だからこそ、そこに感情を乗せるのが難しい曲で、LeAも悩んでたんだけど、いつの間にかにいい感じで歌えるようになって。
Miwa:どんどんLeAの色が乗ってね。
LeA:この曲は、歌詞が直球すぎるんですね。まだバンドに加入が決まる前にもらった曲の中に入っていたんですけど、当時の自分にその歌詞が刺さって泣いたんです。私、バンドで歌うということが初めてだったんですね。ピッチとかは合唱部をやっていて全国大会に出たりしたこともあるので鍛えられてはいたけど、合唱とバンドで歌うのとはギャップもあって。リズムの取り方も違うし、「運命」に関してはリズムも難しいんですよ。Bメロで急にゆったりになったりして、とにかくリズムが難しい場所が大量にありすぎるんです。
ねね:LeAの苦手ポイントがいっぱい入ってる。
LeA:はい。さすが、歌ったことがあるからわかるんですね(笑)!
ねね:あれは、キツイ(笑)。
LeA:ずっと悩んでて、感情入れたら入れたで今度は強くなりすぎるから、もう少し引いたほうがいいって言われて……。で、ねねさんに、もう少し優しさを入れたほうがいいよってアドヴァイスを頂いて、その優しさを取り入れたのが、このヴァージョンですね。
Miwa:じつは私も、この曲をサポートで歌ったことがあるんですよ。サポートをやらせてもらった時に、本当に難しくて覚えるのも大変だし、歌いこなすのも大変で、さらに表現に持ってくっていうのにめちゃくちゃ時間がかかる曲だなって思っていて。何人かの人が歌っているのを聴いてるんですけど、LeAが歌ったことで“いい曲だな”なのが“元気もらえる曲だな”に変わった瞬間があったんです。、今回、改めて聴いて、LeAの優しさだったり力強さだったりがすごく伝わる曲だなって思いました。エンプレスのアルバム『Departure』に入ってる他の曲も含めて、LeAの表現力が段違いでよくなってる。LeAが歌うようになって、好きな曲が増えました。
LeA:え〜、うれしい!
——では、フルムーンの「Until the end」はどうでしょう?
LeA:ライヴで初めて披露してくれた時に“ねねさん、私、あの曲好きです!”って言いました。で、いつか、ぜったいカヴァーしたいって思っていたのが、昨年、実現して。で、やるからには音源はもちろんなんですけど、ライヴをコソコソと3回分ぐらいは録画して、全部、見比べて身体の動かし方とか、めっちゃ研究しました。曲自体、ラストのサビでいきなり転調するのも好きだし歌詞もめちゃめちゃ好きなんです。私、曲を色とかイメージに変換しながら身体に染み込ませていくタイプで、 あの曲って今までのねねさんと少しスタイルが違うんです。フルムーンは満月のイメージですけど、この曲に関しては上弦が少し欠けていて。欠けてるんだけど、雲に隠れても光が漏れてくるようなイメージなんです。曲の流れがわかりやすいし聴きやすい。その聴きやすい歌詞の中に、力強さがあるんです。
Miwa:メロディが入ってきやすいんですよね。耳に残りやすい曲で、そこにちゃんとねねさんの声が残るんです。ねねさんのパフォーマンスを観てると、すごく陽のイメージが強いんですけど、弱い部分だったり人間だから落ち込んだり悲しいとかいろんな気持ちを曲の中で感じる。なんか、これがねねさんなのかなって思うようなね。
——フルムーン的には、なぜ、この曲を選曲したんですか?
ねね:「Another」と迷ったんですよ。でも、「Until the end」は出だしがカッコいいんし、やっぱりCDってイントロを聴いてよくないと掴めないじゃないですか。最初が重要かと思ったので、イントロから勢いがある曲を選びました。この曲は作曲も自分なので、ふたりからこうやって言ってもらえるのはめっちゃ気分いいです(笑)。
——それぞれ、ヴォーカリストではなく、バンドとしてはどう思ってるのでしょう?
ねね:シリウスはメタルなので、フルムーンとは違うなと思っていて、エンプレスは似たような感じなので仲間みたいな(笑)。じつは、お客さん的にもそうで、エンプレスとフルムーンは一緒なんですけど、シリウスはちょっと違ってメタルが好き、激しいのが好きみたいですね。もちろん、3バンドとも応援してくれるファンの方もいます。
Miwa:そのファン層がかぶってるところもありつつ、ちょっと違うところもありますよね。でも、フルムーンとエンプレスのファンのみなさんが一緒にシリウスも楽しんでくれたりとか、ふだんメタルしか聴かない方が、シリウスをキッカケで他の2バンドを聴いてくれて楽しんでくれるのはすごくうれしいなと思ってます。
LeA:私からしたら、それぞれ個性が激強なので、ヴォーカルとして他の2バンドに負けない強い個性を身につけなきゃなって考えていて。エンプレスって曲調がめちゃくちゃ広いんですよ。しっとりめのもあればJポップ寄りな感じの曲もあり、アニソンチックな曲だったり、ハード・ロックだったりもあって。そう考えると、エンプレスは、ちょっと枠が違うなと感じる時はありますね。
ねね:そういう意味でも、シリウスは正統派メタル。で、フルムーンは、ヴァラエティ豊かな……。
Miwa:ねねさんのライヴを観てると、たまにヴァラエティ番組を観てるような(笑)。
ねね:けっこうコミック・バンドだと思われたりするからね。
LeA:フルムーンは長くやってるぶん、お客さんが求めてるフルムーン像みたいなのがあるなって感じます。ねねさんがやってるからあの形になって、で、あの形をみんなが求めてきてる。あの雰囲気も含めて、フルムーンっていうジャンルになってる感じがします。
ねね:3バンドでライヴをすると、フルムーンが後に出ることが多いじゃないですか。シリウスがこういうことした、エンプレスがいいライヴをしたとなると、さらにガンバらなきゃって思うんです。仲間でありライバルなので、仲はいいけど負けたくないっていうか負けちゃいけないっていうね。自分が先輩であるから、もっと上に行かなきゃみたいなプレッシャーはありますよね。
LeA:エンプレスが出演した後にフルムーンが出ることが多いので、その日の自己反省を踏まえたうえで先輩のライヴが観られるんです。今日めっちゃいいライブできたわって満足してるところに、それをぶち抜いてくるねねさんがいる。
——では、最後に、それぞれにエールの交換といきましょうか。
LeA:Miwaちゃんって、魔王のイメージなんです。キラキラした星空みたいな、シリウスという名前のとおりの輝く星みたいに一点の光を放つヴォーカリストになってほしいですね。まっすぐ前を向いて、これからも走ってくれたらいいなって。
Miwa:LeAには、太陽みたいな明るいエネルギーがすごくあるから、それでライヴ・ハウスを覆うぐらいになってほしい。で、そのライヴ・ハウスが大きくなっても、陽のエネルギーが増していくヴォーカリストになってくんだろうなって、私は思っております。そして、ねねさんには、いつまでもずっとこのままでいてほしい。ねねさんが ライヴや歌を楽しんでる、バンドを楽しんでる姿がいちばん好きだし元気をもらえるんです。コミック・バンドと言われようが(笑)、ずっとそんなねねさんを見ていたいです。
LeA:ねねさんっていう存在が私の中でもドデカすぎるんです。私のヴォーカリストっていう枠の中で、8割がねねさんなんですよ。あと2割は余白で残しておかないと、私はねねさんになっちゃう(笑)。弟子だから、まずはねねさんをマネできるようになって、それができるようになったら、そこに少しずついろんな要素、私らしさ、エンプレスらしさみたいなのを作っていこうって思ってます。ねねさんには、信じる道をこのまま突き抜けていってほしいなって思います。そしたら勝手に付いていきます。
ねね:ふたりに言いたいことは……私を抜かさない程度にガンバってください(笑)。
▲左より、LeA(エンプレス)、ねね(フルムーン)、Miwa(シリウス)
■FullMooN■
▲左より、りん(b)、葵(ds)、ねね(vo)、えれん(g)
ミニ・アルバム『SPREAD』
¥2,750(税込) 2024年8月14日
①Reality
②Until the end
③Devil Princess
④missing
⑤Another
⑥ドロップ
◎昨年8月にリリースしたフルムーンの最新作。ハードでメロディアスなものから、明るくキャッチーな方向性だったりアニソンを思わせるものなどなど、ヴァラエティに富んだ6曲を収録している。
■フルムーン 公式サイト■
https://www.tatenaga.net/
■Sirius■
▲左より、みさ(b)、菫(g)、Miwa(vo)、あにゃ(g)、Ami(ds)
EP『Fly High』
¥2,200(税込) 2024年3月6日
①α〜天翔新星〜
②Fly High
③朝月夜
④LUCIFER
⑤Fake you
◎2022年12月が初ライヴだったという、結成まもない2024年3月にリリースした5曲入り EP。ツイン・ギターを活かしたヘヴィ・メタル・サウンドを基本に、メロディアスなヴォーカルが印象的なアルバムとなっている。
■シリウス 公式X■
https://x.com/Sirius_tw_
■Empress■
▲左より、マリ(b)、LeA(vo)、いおり(ds)、みつき(g)
ミニ・アルバム『Departure』
¥3,300(税込) 2024年11月20日
①Dreaming of Reign
②Departure
③カタルシス
④ナイトメア
⑤ハルジオン
⑥ラストシーン
⑦運命
⑧ビターブレンド
⑨ブルーライト
⑩渚
⑪BEST LIFE
◎エンプレスの記念すべきファースト・アルバム。オムニバス収録音源の⑦とはまた違うハードな方向性の楽曲や、バラード的な楽曲も収録されている。
■エンプレス 公式X■
https://x.com/empress_tw
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