ファーストゼロが掲げる“ドラマティック・ロック”とは?

ガルネリウスのLEA(ds)がリーダーを務めるファーストゼロ。彼らがセカンド・アルバムを完成させた!
自身の音楽を“ドラマティック・ロック”と表現するそのサウンドは、メタルでありテクニカルであり、そして何よりメロディアス。
WeROCK初登場となる彼らに、気になる最新作について語ってもらった!
MV「PLANETARY NEBULA」
メロディも歌詞もしっかりと伝わる
ドラマティック・ロックをやりたい
——ファーストゼロはどういう経緯で結成されたんですか?
LEA:僕とTAKAAKIはいっしょに罪號人-ZYGOTE-というバンドでも活動しているんですが、以前からずっと自分が曲を書くバンドをやりたいと話していて。
——罪號人-ZYGOTE-で、LEAさんが曲を書くという選択肢はなかったんですか?
LEA:罪號人-ZYGOTE-はリーダーがいて彼が曲を書くし、罪人というコンセプトがあって、自分が書きたい曲とは違うなというのもあったんです。
TAKAAKI:その前からLEAとはセッションで知り合いだったし、罪號人-ZYGOTE-から前のドラマーが抜けた時、LEAを誘ったんです。
LEA:罪號人-ZYGOTE-も最初はサポートだったんですが、正式に加入を頼まれた時に、じつは自分のオリジナル曲をやるバンドを作りたいから組もうという話をして。
TAKAAKI:交換条件的なね(笑)。
LEA:それで、自分は罪號人-ZYGOTE-に加入しつつ、ファーストゼロを立ち上げて。
ヴォーカルは、ガルネリウスのコピー・バンドを一緒にやっていた、突き抜けるハイ・トーンを持つYUHYA、ギターは、また別のコピー・バンドをやっていた、指が速くたくさん動くRYO君を誘って、この4人が揃ったのが2020年ぐらいですね。
——自分のオリジナル曲をやるバンドとしてスタートしたとのことで、具体的にはどういう方向性だったんですか?
LEA:ファーストゼロを立ち上げる時に、最初のMVとして発表した「Tragedy〜終焉〜」のデモはできていて。オーケストラちっくで、テンポが速くて、ハイ・トーン、そしてギターもベースも弾き倒す、音数多めでメロディアスな曲をやっていきたいと思ってました。僕自身がX JAPANやガルネリウス、ソナタ・アークティカ、アングラとか歌もののメタルが好きだし、そういう系統でやっていきたいと。
——そういう音楽的なルーツは共通しているんですか?
YUHYA:そうですね。でも、私は激しい音楽に触れたのが遅いんです。大学の時に知ったX JAPANが最初で、今でも私の中ではToshlさんがいちばん大きな存在ですね。それから、いろいろセッションしたり練習する中で、国内外のハイ・トーン・ヴォーカルを聴くようになり、ガルネリウスやスティール・ハートとかも知っていって。
RYO:僕は高校生の頃にギターを始めたんですけど、その頃はアジアン・カンフー・ジェネレーションとかJ-ROCKを聴いてました。そうした中で、友達からハロウィンを聴かせてもらったらハマって、イングヴェイ・マルムスティーンなども通って、日本にもこういうバンドがあるのかなと思い、ガルネリウスに出会ったんです。
SYUさんに師事するようにもなって、やはりSYUさんの影響がもっとも大きいですね。そこにSYUさんが影響を受けたというポール・ギルバートやアンディ・ティモンズなども遡って聴いたり、当時ヤニ・リーマタイネンやガス・G、アレキシ・ライホなどのテクニカル・ギタリストも聴いてました。ただ、歌メロという部分では、90年代に聴いていたJ-POPやアニソンが根っこにあるので、自分が作る曲はテクニカルなギターの上にポップスのような歌メロが乗るという作風になったんだと思います。
TAKAAKI:自分はポップスからジャズ、メタル、ゲーム音楽などいろんな影響を受けていますが、ヘヴィ・メタルやハード・ロックのベーシストで言えば、アンスラックスのフランク・ベロですね。単純に見た目、プレイ・スタイルがカッコいいいし、他のジャンルでもステージでのいがカッコいい人に影響を受けがちです。
LEA:僕は中学の時、ドラム・マニアというゲームからドラムに入ったんですが、吹奏楽部にいたのでその経験がイチゼロ(=ファーストゼロ)の楽曲のオーケストレーションを考える時に生きていると思います。で、大学時代にドラム・マニアでガルネリウスの「Destiny」に衝撃を受けて。もちろんその前からガルネリウスの存在は知っていたんですけど、すごいなってことを再認識して、しばらくはリスナーとしてガルネリウスのライヴに通うというのが続きましたね(笑)。
▲YUHYA(vo)
——4人で初めて音を合わせた時のことを覚えています?
TAKAAKI:その瞬間から手応えがあったとか言いたいんですけど、よく覚えていなくて(笑)。
RYO:それまでのセッション・イヴェントで、素晴らしいプレイヤー達だというのはわかっていたし。
LEA:最初にイチゼロの4人が揃ってから公式に活動開始を発表するまでけっこう長かったんですよ。
RYO:揃った時はコロナ禍で、ライヴもできなかったし。
YUHYA:集まってから2年間ぐらいはファースト・アルバムのレコーディングをしてたんです。
LEA:そもそもイチゼロを組む時にいい作品をコンスタントに出すバンドにしたいねって話もしていたんですね。メンバーそれぞれの活動もあるし、ライヴはできても月1回ぐらいだねって。
——そして、ファースト・アルバム『1st Chapter』を2023年5月にリリースしていますが、今、振り返っていただくとどういう作品になりますか?
YUHYA:今回もそうなんですが、アルバムにはLEA君とRYO君がそれぞれ作曲した曲が入っていて、バンドに作曲者が2人いるということがすごくいいなあと思っているんです。
僕はX JAPANが好きなんですが、X JAPANでもYOSHIKIさんが作る曲、HIDEさんが作る曲、全然タイプが違う。イチゼロでも、LEA君とRYO君、それぞれタイプが違う曲を歌えて楽しかったし、同時に難しいことだなと思いました。それまではコピー・バンドでしか歌ってこなかったし、オリジナル曲を歌うことや作詞の難しさを知りましたね。
RYO:僕も自分だけで曲を作って打ち込んでギターを弾いてマスタリングするという経験はあったんですが、アルバムを作るという経験はなかったので得るものは大きかったです。ファースト・アルバムにはあの時にしか出せない衝動も入っていると思いますし、あの制作の経験は今回のセカンド・アルバムに生かせたと思います。
TAKAAKI:我々は“ドラマティック・ロック”を謳っていて、一般的なヘヴィ・メタルとは一線を画した楽曲をやっているんですね。広い意味でのポップスというか……。
LEA:音数の多いポップスだね(笑)。
TAKAAKI:そう、音数の多いポップスという新しいジャンルをファースト・アルバムで作れた気がします。
LEA:ひとつのジャンルに収まらないようにしようというのもあったんです。枠を決めてしまうと自分の首を絞めてしまうことになってしまうので、最初は広く構えておこう、ヴァラエティに富んだアルバムにしようというのはありました。
TAKAAKI:同時にヘヴィ・メタルが大好きな人にも納得してもらえるハイ・トーンや演奏力、サウンド・クオリティも追求できたアルバムですね。
——そうしたファースト・アルバムをへて、今回のセカンド・アルバムはどういう作品にしたいと考えていました?
LEA:ファーストはレコーディングもミックスもマスタリングも基本的に、全部自分達でやれるところまでやったんですね。そのうえで、重低音が少し足りないねとかギターのトーンはこうしたいねというのが出てきた。ドラムも今使っているブリティッシュ・ドラムではなくレコーディング・スタジオのドラム・セットだったりして。そうしたところをセカンドではクリアしようと。
だから、ギターの音も立体感が出るようにRYO君が考えてくれたり、ドラムも自分がフル・セットを持ち込んで録っています。TAKAAKIもベースの重低音がより伝わ流ようにね?
TAKAAKI:ファーストではライヴ向きの音作りでレコーディングしたんですけど、今回はミックスしやすいようにベースはスッピンの音で録っていますね。
LEA:ファーストでは少し低音域が足りないと感じたので、それを改善してます。あと、プリプロもちゃんとやったことで全体像が見えて、本チャンに挑めたのも大きいですね。だから、音質の面でかなり煮詰めることができました。
▲RYO(g)
——ヴォーカルについては?
LEA:ヴォーカルも、ファーストの時はボカロで仮歌を入れたデモをYUHYAに渡したんですが、どうしても英詞の部分がわかりづらかったりニュアンスが掴めなくて、YUHYAが苦労したところもあったんです。だから、今回は僕がデモに仮歌を入れて“こんな感じで歌ってね”とやったら格段によくなって。
RYO:僕もデモに仮々歌を入れましたね。
——何ですか、仮々歌って?
RYO:僕がまず細い声で歌メロを入れるんです。それをLEAさんが仮歌としてスタジオで歌い直すんですTAKAAKI:(LEAは)ハイ・トーンが出せるからね。
LEA:さすがに出ないところはピッチ修正ソフトでガーっと上げて(笑)、鬼のようなエディットをしてYUHYAに渡すんです。自由に使わせてもらっているレコーディング・スタジオがあって、そこでマイクも借りて仮歌を録ってますね。歌詞も譜割もしっかり決めた状態で録って、“これどおりに歌って”と。もちろん、それ以上のヴォーカルをレコーディングしてくれますが。
——作風についてはどうですか?
LEA:作風も、ファーストは初めての作品だし、全曲シングルだというぐらいのつもりで作っていたんですけど、セカンドはアルバムちっくというか……。
TAKAAKI:実験的な曲も入れようとか。
LEA:ライヴ映えする曲だけでなく、家でじっくり聴くからこそ楽しめる曲も入れました。
TAKAAKI:聴き込むと、“こういう和音で構成されているんだ”とか新たな発見があるような、深みのある曲とかね。
LEA:RYO君が書く曲はライヴで拳を挙げやすいタイプが多いんですけど、僕は変拍子も入れて、ライヴだと初見のお客さんにはどうのっていいのかわかりづらい、でもCDで聴くと楽しめるという曲も入れたいと思ってました。
——資料には、前半6曲は暗め、後半6曲は明るめの曲とあったんですが、聴いてみたら“えっ、この曲って暗いのか?”と思ったんです。
一同:(笑)。
YUHYA:我々の中では充分に暗い(笑)。
——いやいや、前半の曲も充分にキャッチーだと思うんですが(笑)。
LEA:そうですね、暗いと言ってもデス声で歌っているわけでもないですし。
RYO:歌詞の内容が暗めなんですよね。後半3〜4曲は全部ラブソングなので(笑)。
TAKAAKI:曲が進むにつれて、どんどんキラキラ度が増していく(笑)。
RYO:僕はまったく世代じゃないけど、アナログ盤のA面、B面という感じですよね?
LEA:ミニ・アルバムが2枚分入っているという感覚かも。
——そういった構成は、作曲段階から考えていたんですか?
RYO:いや、デモが揃ってからですね。そこから、この構成や曲順を決めて、歌詞も書いていこうと。
LEA:「Fight with the Madness」がフェイド・アウトして前半が終わって、後半が始まるという構成ですね。
——そして今作には、前作の収録曲「Tragedy〜輪廻〜」の続編として「Tragedy〜終焉〜」が入っています。これはファースト・アルバムを作っていた時から続編を考えていたんですか?
LEA:最初から考えていました。さすがにデモ段階ではそこまで考えてなかったんですけど、歌詞ができたぐらいの段階で、この曲は3部作にしようと決めたんです。それで、「Tragedy」というタイトルにサブ・タイトルを付けていこう、“終焉”から始まるのもカッコいいよねって。
RYO:ファースト・アルバムの1曲目なのに“終焉”って(笑)。
TAKAAKI:最初に公開したMVもこの曲で、いきなり“終焉”でいいのかって(笑)。
▲TAKAAKI(b)
——今、3部作という話が出ましたが?
TAKAAKI:はい。サブ・タイトルも決まっています。歌詞はまだですけど。
LEA:僕の頭の中では、もうできています。まず、“終焉”で世界がぶっ壊れて、今回の“輪廻”でその後の世界を表現しています。この次は、そこから立ち上がっていくという流れです。
——作曲自体はファースト・アルバムができてからすぐに始めた感じですか?
RYO:僕は今回3曲作曲しているんですが、「Everlasting Shine」はファーストの時にデモを完成させてますね。でも、ファーストに「Starlight」という曲があって、これとキャラが被るからセカンドに入れようとなって。あと、「The Abyss is Calling」はファーストゼロを組む前に書いていた曲ですね。「Acceleration」は書き下ろしですね。LEAさんは?
LEA:僕は全部書き下ろしかな。いや、「Dreamerʼs Syndrome」だけはイチゼロができる前からデモとしてはありましたね。YUHYAが書きたい歌詞があるって言ってて。
YUHYA:“夢の中で迷子になる”というストーリーがあったんです。
LEA:そのストーリーと、僕が持っていた「Dreamerʼs Syndrome」が雰囲気が合うからいいんじゃないかって。
——アルバム全体を通して、各パートのポイントを教えてください。
TAKAAKI:ベース・プレイ自体のクオリティはテクニカルな曲が多いこともあって、2ランクぐらいステップ・アップできたと思っています。音も、素晴らしいミックスによって低音の心地よさを感じてもらえますし、バンド・サウンド全体をみても、迫力のある音だけど耳が疲れない音になっていると思うんです。1曲1曲が進化していてインパクトもあるけど、12曲をひとつの作品として聴ける内容になったと思います。
RYO:ギターに関して言えば音作りも見直したことで聴き心地がいいと思うし、プレイ面でもギタリストとしても進化した作品になりました。全体の曲のクオリティ、演奏のクオリティも上がっている。
TAKAAKI:ファーストと比べて、ギターとベースがユニゾンするフレーズが増えているので、そこも聴いてほしいです。大変でした(笑)。
YUHYA:イチゼロの歌の特色を言うと、ハイを出し続けて飛ばしていくというのではなく、ポップスのような高低差のあるメロディを高いところで維持するというのがあるんですね。聴くとすんなりと歌っているように聴こえるかもしれないですけど、歌ってみるとすごい高いんですよ(笑)。
——歌うのは大変ですけど、歌詞の言葉選びやメロディも含めて、すっと耳に入ってきますよね
LEA:イチゼロはメロディだけでなく、歌詞の意味もしっかりと伝わる、ドラマティックなロックをやりたいので。曲作りもドラム・プレイもレコーディングも、すべてそうです。プレイヤー目線だと、わかりやすくはないですけど(笑)。
▲LEA(ds)
アルバム『2nd Chapter』
¥3,300(税込) 2025年3月25日
①Live out MY life
②不夜城Fake Love
③The Abyss is Calling
④Dreamerʼs Syndrome
⑤Tragedy~輪廻~
⑥Fight with the Madness
⑦童心の風景
⑧Night Travel
⑨Acceleration
⑩Daily Light
⑪PLANETARY NEBULA
⑫Everlasting Shine
■1st0 公式サイト■
https://1st0.jimdofree.com/