SYUがトゥーノーツの最新シミュレーターを試奏!

スピーカー・シミュレーターの象徴的な存在となりつつあるトゥーノーツのトーピド・シリーズ。
そのトーピドが進化し、オーパスとなった。今回の進化は、トーピドならではのハイ・クオリティなパワー・アンプ+スピーカー・シミュレーターはそのままに、ついにプリアンプを搭載。歴代のトーピドを、ライヴ、そしてレコーディングで愛用しているガルネリウスのSYUに、そのオーパスを試奏してもらった。


SYUによる試奏動画


Two notes
OPUS
¥オープン

■仕様■
●AD/DAコンバーター:スタジオ品質24bit/96kHz
●ダイナミック・レンジ:101dB
●内部処理:32ビット浮動小数点
●レイテンシー:2.2ms
●入力端子:アンプ/インスト/ライン・イン(標準モノラル・フォーン・ジャック/イン・レベル・スイッチで入力感度とインピーダンスを設定)、AUXイン、MIDIイン
●出力端子:ヘッドフォン・アウト、DIアウト、ライン・アウト、スピーカー・アウト
●メモリー:内蔵メモリー(64スロット:DynIRキャビネット用/99スロット:プリセット用/20msのIRを512個まで)、メモリー・カード(サード・パーティIR用に256MB〜32GBのMocro-SDに対応)
●電源:DC12 V センター・マイナス(200mA)
●USB端子:USB-C 2.0
●外形寸法:121 (奥行)x100(幅)x60(高さ)mm
●重量:450g

左サイドには、MIDIイン、ヘッドフォン・アウト、AUXイン、DIアウト、ライン・アウトを装備。
MIDI端子は、5pinへの変換ケーブルが付属している。また、DIアウトとライン・アウトのルーティングは変更可能で、たとえばDIアウトはプリアンプ→パワー・アンプ→キャビネットのモデリングをすべて通った音に設定し、ライン・アウトはプリアンプ後の音を出力するように設定できる

右サイドには、インスト(楽器)/ライン・イン、トゥ・スピーカー(スピーカー・アウト)、イン・レベル・スイッチ、USB-C、パワー端子が搭載されている。
なお、ロード・ボックス機能は内蔵されていないので、アンプ・ヘッドから接続する場合は、かならずスピーカー・キャビネットに接続すること(インピーダンスは接続したアンプと同じに出力される)

上部にはmini SDカード用のスロットを装備している

■歴代のトゥーノーツを愛用してきたSYU

SYU愛用の歴代トゥーノーツのトーピド・スタジオ(奥)とキャプターX(手前)、そして今回試奏してくれたオーパス。
この他、トーピド・ライヴとC.A.B. M+も所有している

——これまで発表されてるトゥーノーツの製品を使ってますが、とくに気に入ってる点は?
SYU
:初めて使ったのはトーピド・ライヴ(スピーカー・シミュレーター+ロード・ボックス)というモデルです。アンプから接続できて、いろんなキャビネットを鳴らしつつ、そのままオーディオ・インターフェイスに送れるというところが魅力的でした。
デジタルならではのフレキシブルに音を変えながら、リアルな音を出せたんです。専用のアプリを使ってマイキングの位置も変えられるのは視覚的にもわかりやすくて、まるでホントにスタジオでキャビを鳴らして音を録ってるようなリアルな挙動でずっと使ってました。その後、トーピド・スタジオ、キャプターX、CAB Mも使いました。とくに、トーピド・スタジオは、ガルネリウスのライヴでも使ってまして、本物のアンプのマイキングとトーピード・スタジオの音をミックスしてPAに送って出音を作ってるんです。
——とすると、DTMやレコーディングだけではなく、コンサートでも使われている?
SYU
:そうです。なにがいいかというと、ミドル・レンジの出し方というのが自分の思うがままに作れるんですね。コンサートでいうと、PAエンジニアの方がキャビネットの音をマイクで集音して、それをPAスピーカーから鳴らすわけですが、やはり会場によってどうしても出音に違いが出てきてしまうんです。
トーピドを使って自分の家でキャビネットから出したい音を作り込み、ライヴ会場でじっさいの出音とブレンドしてもらうことで自分の出したい音が外からも出てくれる。ライヴのPAをずっと一緒にやってくれているエンジニアさんと話をすると、“トーピドから出ているラインの音がよくてね”と言ってくれて。
たとえば、コンサートの後半で会場の熱気もありアンプの音が変わってきたなという時に、トーピドから来ているラインの音を多めにしたりしてもらって、そういう問題を解消することもできるんです。
——アルバムなどの音源で使用したのは、いつぐらいからですか?
SYU
:たぶん、10thアルバム『UNDER THE FORCE OF COURAGE』(2015年)あたりからだと思います。使い方としては、アンプ・ヘッドからトーピド・スタジオに接続する方法ですね。
僕はパワー・アンプも本物の真空管を使いたいので、キャビネットを鳴らせない環境の時にトーピドのスピーカー・シミュレーターのみを使ってました。なので、実際のレコーディングやライヴでトーピド搭載のパワー・アンプ・シミュレーターは使ったことないんです。あくまでも“スピーカー・シミュレーター”として使用しています。なので、とくに気に入ってるのがスピーカー・シミュレーターで、僕にとってトゥーノーツと言えばスピーカー・シミュレーターなんです。他のスピーカー・シミュレーターも使ったことはあるんですが、僕の中ではトゥーノーツのモデルがアイコン化してます。
——他のメーカーのとの違いはどこだと思いますか。
SYU
:音作りの幅広さですかね。例えば、パッシヴ・タイプのロード・ボックス機能付きのシミュレーターだと音の反応が早くて弾いていて気持ちよかったりするんですが、音作りの自由度はそんなに多くはなかったりしますよね。デジタルじゃないと少し音を変えられるぐらいのモデルになってしまう。ところが、トーピドだと、とにかく細かく音作りができるんです。それに、デジタルでも音が速いんです。レイテンシーを感じないのも魅力的です。
——気になるのは、やはりレイテンシーだったり、デジタルっぽいトーンがしてしまうことだと思いますが……。
SYU
:レイテンシーに関しては、オーディオ・インターフェイスとの兼ね合いもあるとは思うんですけど、トーピドだけに限ればまったく気にならないです。もちろん、デジタルっぽさを感じたこともないです。
——そして、今回、新たに加わったのがオーパスなんですが、試奏してみてどうでした?
SYU
:スピーカー・シミュレーターの種類が、めちゃくちゃいっぱいあるので、正直、まだ突き詰められてないんです(笑)。なので、基本のモデルだけ使ってみましたが、あいかわらず素晴らしいトーンが出てくれてます。
この“素晴らしいトーン”というのは、じっさいに他の楽器と一緒に鳴らした時に抜けるか抜けないかなんですね。僕の考える伝説的なトーンと言うと、音抜けがすごくいいという部分と、単体で鳴らしても素晴らしい音、このふたつが両立しているトーンだと思っているんです。その両立ぐあいを、かなり高次元な感じで再現してくれています。

▲付属のMIDI変換ケーブルを使用すれば、外部からプリセットの変更も可能。ライヴでも使える!

iOSアプリやPCソフトだけではなく、ふたつのコントローラーでエディットすることも可能だ

▲PC版のソフト、Torped Remoteの画面。すべてのパラメーターが全面に表示されているので、エディットもしやすい

■プリアンプの音は?

——これまでのトーピドとの最大の違いはプリアンプが入ってることですね。
SYU
:デフォルトではギター用のプリアンプが4種類と、ベース用が1種類入ってました。トーピド・リモートというPC用のソフトでアップデートすることで、さらに5つのプリアンプが使えるようになります。
今回、僕のお気に入りで使ったのも、アップデートで増えたモデルですね。選んだのは、ハイ・ゲインな“タンガー”と“エルドラド”、そして“ニフティ50”というモデルですが、それ以外にもヴィンテージ感のあるフェンダーっぽい太めのクリーンを出してくれるモデルがあったり、ドンシャリでハイ・ゲインなモデルがあったりと、かなり幅広い音色が選べます。そこにプラスして、パワー・アンプのシミュレート、そしてスピーカーのシミュレートと、この小さな筐体の中に、よくこんなに情報量があるなっていうぐらい音作りは無限にできます。
——最初に選んだタンガーというプリアンプの特徴は?
SYU
:オレンジっぽいアンプのトーンが出ます。そのサウンドを大事にしながら、オケを流して音作りしました。どういうレンジにしたら音が抜けてくれるのかということをiPadとともに設定したんです。
プリアンプだけではなく、パワー・アンプの設定もポイントで、コンツァーとデプスというツマミが音作りにかなり影響するんだなって感じました。デプス・コントロールでローの抜け方を調整できるんです。ローって上げていっても抜けが悪くなったりするんですけど、このデプスはそれがないんです。タンガー自体、オレンジっぽいアンプなのでミドル・レンジが強く出るんですね。なので、あまりミドルを出しすぎないように気をつけつつおいしい部分は残しました。それに、このプリアンプのモデルは、3バンドEQがオレンジと同じで干渉型なんですよ(笑)。トレブルを上げると少しハイ・ミッドも上がってきて、オレンジを使った時のあの感じが出てるんです。僕、オレンジを使ってた時代がありまして、すごく懐かしくなりました(笑)。
——今回は、オーパスだけではなく、その前段にSYUシグネイチャーのオーバードライブを使ってますね。
SYU
:アンプはクランチ気味にセッティングして、そこにオーバードライブをかけるというのがいつもの僕のセッティングなんです。実機のアンプを使う時も、アンプはそこまで歪ませてないんですね。そのやり方をオーパスでやってみても合いますね。そのあたりがデジタルなのにアナログの風味を感じる部分なんですよね。デジタル臭さがないんです。
——続いては、エルドラドというプリアンプですね。
SYU
:先ほどより、プリアンプ部でも歪みが強いセッティングになってます。僕はソルダーノっぽいと感じました。eldoradoという名称もそうですし(笑)、音を聴くと、ソルダーノかなって思います。ちなみに、先ほどのも含めまして、パワー管はPP34を使ってます。
それは、いろいろと音作りをしている時に、この真空管がいちばん音抜けがよかったからです。少しノイズが多いと感じたら、ゲートをオンにするとピッタリと止まってくれます。こちらも、前段にオーバードライブをカマした音が合います。オーバードライブ自体は、ゲインは絞り気味で、レベルはマックスな設定です。そこまで歪ませるセッティングではなく、ブースター的な感じですね。

▲今回の試奏では、より実機の感覚で使用したいとのことで、オーパスの前段にSYUのシグネイチャー・オーバードライブを接続。
アンプはクランチ気味で、オーバードライブでブーストさせるSYU愛用のセッティングだ

■実戦で使える?

——とくにフットスイッチなど付いてないですが、ライヴやリハーサルなどでも使えそうですか?
SYU
:iPadであったりiPhoneなどのアプリを使えばエディットは簡単だし、MIDIインも付いてるからライヴの現場でも使えると思いますね。
先ほどの2つはオーバードライブを使って試しましたが、オーパスだけのプリアンプでも充分に歪んでくれるモデルもあるんですね。それで選んだのが“ニフティ50”で、たぶん5150っぽいモデリングなんじゃないかと思います。このプリアンプでミドル・レンジを少し出したセッティングにして、ハイ・ゲインなのでノイズが目立つようならゲイトをオンにすればバッチリです。音量が大きめなら、オーバードライブいらずの歪みですね。倍音もよく出るし、速弾きするにも問題なくて気持ちいいです。
——シンプルなエフェクターも搭載されていますね。
SYU
:エンハンサーとリバーブも搭載されていて、エンハンサーは音を前に出してくれる機能ですね。
——これまでのトーピド・シリーズとのいちばんの違いというと、どこだと思われますか?
SYU
:トーピドはアンプがあったうえで、そこから先のシミュレーターだったんですが、オーパスはこれ1台でアンプのすべての機能を担えるようになったというのが大きな違いですね。オーパス単体で、かなり音作りを攻めていけるようになりました。スピーカー・シミュレーターからアンプ・シミュレーターに進化しましたね。
これまでの素晴らしいスピーカー・シミュレーター機能を残しながら、メタルにも対応できるプリアンプ機能が増えて、だからといって何かが悪くなったという部分もなく、とにかく使い勝手のいいモデルになりましたね。たとえば海外ツアーとかアンプを持っていけない時などに活躍してくれそうですよね。もちろん自宅レコーディングでも無敵級に使える機材だと思います。

■SYUお気に入りのセッティング〜トーン①

動画では導入部でプレイされているギターのトーン。
プリアンプにタンガーを使用。ゲインは上げ目だが、それほど歪みが強くないモデルなのでクランチ程度になっている。そこに、外部でオーバードライブをカマしている

■SYUお気に入りのセッティング〜トーン②

動画のエンディングでプレイされているギターのトーン。
こちらはトーン①よりも歪みの強いプリアンプにエルドラドを使用。SYUはオフにしているが、ノイズが気になる場合はオンで使用するのがオススメ。キャビネットは①と同じだ

■SYUお気に入りのセッティング〜トーン③

外部のオーバードライブは使用せずに、オーパスだけで“使える歪み”を作ってもらったのが、こちら。
プリアンプは、5150ライクなニフティ50を選択。ゲインもフルにしている。ここで紹介しているのは、すべてiPadアプリを使用しての音作りだ

 

■OPUSの詳細■
https://www.electroharmonix.co.jp/twonotes/opus.html


BETWEEN DREAD AND VALOR』
ワーナーミュージック
WPCL-13466 2,530円(税込)

◎前作から約1年半ぶりとなる8曲入りのスペシャル・アルバム。

■ガルネリウス 公式サイト■
https://www.galneryus.jp/