WeROCK 099 付録CDインタヴュー集〜ナデシコドール編

WeROCK 099の付録オムニバスCDに参加したバンドのインタヴュー集を、このWeROCK EYESでもお届けするシリーズ企画。
今回は、札幌を拠点に活動する女性2人組のナデシコドールのインタヴューをお送りします。

MV「Re:START」


ナデシコドールの真骨頂で名刺代わりの1曲!

——ナデシコドールは、2010年結成なんですね?
ユズハ
:今年の春で14周年を迎えることになりました。
ナデシコドールとしてはリエと私のふたりで活動しているんですが、もともとは別のガールズ・バンドとして他のメンバーもいまして、そのバンドが解散してナデシコドールになるにあたって、他のメンバーを探すことに疲れてしまって(笑)。当時、まだサポート・メンバーを入れてやってるバンドが札幌ではいなかったんですね。“B’zもいるし、サポート・メンバーを入れてふたりでバンドをやってもいいんじゃない!”という発明した気持ちで組んだんです(笑)。全部ふたりで決めていけるので、バンドも進めやすいし、ふたりのほうがいいんじゃないかと思ったんですね。
——おふたりは、どういう音楽性に影響を受けているんですか?
リエ
:私は、90年代のヴィジュアル系が好きなので、XとかBUCK-TICKとかに影響を受けてます。ギタリストとしては、超絶技巧派というプレイヤーよりも世界観があって表現力のあるプレイヤーが好きです。だから、ナデシコドールでも、そうなりたいなと思ってます。
ユズハ:私自身は、とくに誰かに影響を受けたというのはないんですけど、初めてメタル・バンドを聴いて“こんなふうに歌うんだ! すごい!!”と思ったり、アニソンが好きで“こういうジャンルの音楽も素敵だな”って、いろんなところから少しずつつまみ食いした感じです(笑)。
——バンド名が変わってますが、リエさんが言っていた世界観を大切にして付けたんですか?
ユズハ
:わかりやすいコンセプトがあったほうが人の興味を引くと思ったのと、まわりは英語表記が多かったのでカタカナだったら目立つんじゃないかと考えたんです。ふたりでいろいろと意見を出してるなかで、せっかく女ふたりのバンドだし日本人として生まれ育ったし、当時は和風のバンドも少なかったのでインパクトもあると思いましたし、そうしてみようかと。
——曲名に日本語が多いのも、そういう部分にこだわっているんですか?
ユズハ
:詞や曲名の部分的な響きで英語を使いたくて入れることはあるんですけど、基本的には日本語ベースで作るようにしてます。
——ここまで、14年の歴史があるということで、かなりのリリース音源がありますよね。ただ、アルバムという意味では、1枚だけなんですね。
リエ
:2019年にリリースした『撫子的カラクリ論』だけですね。
ユズハ:シングルは12枚リリースしていて。私達、曲を書き溜めておくよりも、作ったらすぐに発表したくなるんです(笑)。
——そのほとんどが日本語のタイトルになってますが、2023年3月にリリースした「Re:START」は英語タイトルになりましたよね?
ユズハ
:コロナ禍もあって、私達自身が活動を続けるべきか辞めるか悩んでいた時期があったんですね。その間、自粛気味に活動をしていたんですけど、コロナが落ち着いてきた時に“このまま活動を続けるかどうかをツアー回りながら決めます!”と宣言して、2022年の春、ツアーに出たんです。そのツアー中に、多くのファンの方、対バンなどの仲間に“辞めないで”って暖かい言葉を頂いて、それなら私達も気持ちを新たにリスタートしようって流れになったので、今回の曲はあえてそのまま英語にしました。コロナ禍の時、札幌はとくに厳しい感じになっていて、“こんなんだったらバンドは続けられないんじゃないか”って思っていて、最後にツアーを回ってみようと本州に出たら普通にライヴもしていて(笑)。
リエ:私達はライヴができることを生きがいとして、ずっとバンドをやっていたし、ライヴをやりたいから曲も作るしリリースもしていたんですね。それができないとなっていた時期は、自分達でも大きなダメージでした。最初の頃は、コロナ禍でもガンバろうと思って無観客配信ライヴとかもやっていたんですが、だんだん心も疲弊していきまして……。
——とすると、そのツアーでの反応だとか自分達が感じる内容によっては、解散をしていた可能性もあったと?
リエ
:そうです。
ユズハ:みなさんから、“休んでもいいから辞めないで”とか言ってもらえてね。ライヴをやっていて見えたお客さんの表情だったり、お手紙をもらったりで、やっぱり辞めたくないなって思いました。
リエ:当時は、まだ声出し禁止とかもあったじゃないですか。それでも、なんとか気持ちを表現しようとしてくれて、お客さんの熱さを感じました。
配信ライヴをやっていた時も、チャット形式みたいに声が見えて、それで盛り上がってるのがわかったし、みんな声は出せないけど一生懸命に伝えようとしてくれているんです。ライヴをやった時は、お客さんはマスクをしなくちゃいけないから表情はわからないんですが、目がキラキラして見えていたし、そういう部分がすごい力になりました。
——「Re:START」に続いて、2023年9月に12thシングル「音鳴-onmei-」を発表しています。ところが、今回のオムニバスに参加して頂いた楽曲は、2021年にリリースしたミニ・アルバム『アゲハオト』収録の楽曲になっているんですね(笑)。
ユズハ
:2020年9月に、YouTubeのみで発表したMVの楽曲なんです。その後、ミニ・アルバムに収録したんですが、そのヴァージョンになります。今回、私達のことを初めて聴いてくれる方も多いと思うんですね。自分達にもいろいろな側面はあるんですけど、ナデシコドールの真骨頂で名刺代わりに1曲で“こんなバンドです”という雰囲気が伝わる曲を選びました。
もっとメタルに寄ってる曲やポップ寄りのものもあるんですけど、この曲がいちばんナデシコドールらしいし、ライヴでも盛り上がってファンの方にも人気のある楽曲なんです。初めて聴いて頂く1曲としては、これがいいかなと思いました。
リエ:コロナ禍の時に作った曲なんですね。当時は、悔しかったりとかバンドをやりたいのにできないとか、いろんな怒りがあったんです。そういう負の感情がいちばんピークの時で爆発している時期に書いた曲です。いつも曲を作る時はイメージから入るんですけど、いちばん自分の中でメラメラ燃え上がってる部分を、全部、詰め込んでいます。
曲として、ひとつのストーリーが成り立つようにしたくて、最近の楽曲に比べるとイントロが長いと思われる方もいるかもしれないですが、その中でもストーリーが見えるような作り方をしたかったんです。歪みとかクリーンとかギターの音色ひとつでも、自分の感情を表現できた曲だと思ってます。
ユズハ:歌詞の意味的には、私、根が暗いんですが(笑)、歌詞的に表現の仕方として暗くても込めているメッセージは前向きにということを軸に作ってます。それは、この曲に限らずなんですが……この曲は、コロナ禍で、今まで10年かけて積み重ねてきたものが一瞬にして崩されてしまったことへの怒りや負の感情を、なにも包み隠さずにストレートに書いたナデシコの中では珍しい曲になってます。後半では、こういう負のことがあったとしても、“ぜったいにこの場所を守り抜く”と前向きに歌ってます。その感情が伝わるように言葉を繰り返したり、あえて苦しそうにハイ・トーンで歌ってたりしていて、歌い方でも1番と最後のサビは違う発声法を使ったりして鬼気迫る感じを表現してます。
リエ:このミニ・アルバム『アゲハオト』を聴いて頂けると、だいたいナデシコドールがわかるというか自己紹介できるようなアルバムになってるんですね。激しい曲もあれば優しい曲だったりキラキラした音を使った楽曲だったり、私達が出せるサウンドのすべてを詰め込んだアルバムだと思います。ファースト・アルバム『撫子的カラクリ論』よりも洗練されてる感じもあります。
——ナデシコドール自体、どういうファン層にアピールしたいと思ってますか?
リエ
:メタルにこだわって曲を作ってるわけではなくて、要素としてメタルであったりロックであったり、最近ではダンサブルなものもあったりしていろんな側面があるんですね。どんな音楽好きにも、まず一回、聴いてもらえれば、どこかに刺さる部分があると思うんです。今回のオムニバスに入れて頂いた「限界ノ息」があまり合わないなって思ってる方も、他にもいろんなジャンルの曲を取りそろえてるので諦めないで聴いてほしいですね(笑)。

▲左よりユズハ(vo)、リエ(g)

シングル「音鳴-onmei-」
¥1,200(税込) 2023年9月23日
①音鳴-onmei-
②疾風HeartBeat
③音鳴-onmnei-(inst)
④疾風HeartBeat(inst)

ナデシコドールの最新音源となるシングル。スピード感あるメタリックで壮大な①、オムニバス収録や①とは違う方向性でダンサブルだったりフックのあるリズムが印象的な②を収録。音楽性の幅の広さがわかるシングルとなっている。

■ライヴ予定■
3月20日(水・祝)=札幌クレイジーモンキー
3月23日(土)=巣鴨・獅子王
3月24日(日)=吉祥寺クレッシェンド

■ナデシコドール 公式サイト■
http://www.nadeshikodoll.com/