WeROCK 099 付録CDインタヴュー集〜CROWLEY編

WeROCK 099の付録オムニバスCDに参加したバンドのインタヴュー集を、このWeROCK EYESでもお届けするシリーズ企画。
今回は2023年10月にアルバム『FRIDAY』を発表したクロウリーのインタヴューをお送りしよう。

MV「DANCE WITH THE DEVIL」


クロウリーならではのラヴ・ソングです

——2023年10月にニュー・アルバム『FRIDAY』を発表され、東名阪ツアーも展開されました。現在の手応えはいかがですか?
HIRO
:まず、ツアーについてですが、初日の名古屋がアルバムの発売日だったんです。それで、アルバムを予習する余裕のなかったファンからは、せめて曲を覚える期間をもう少しほしかったな〜という声がありましたね(苦笑)。
Takashi Iwai(以下、Iwai):でも、制作を進めていく中で10月の“13日の金曜日”にリリースしよう、ツアーもアルバム・タイトルに合わせて金曜にしようって決めてしまっていたので、日程に関しては仕方なかった部分はありましたね。ちなみにツアーに関しては、新曲を中心とするセット・リストだったので、初日の名古屋は少し演奏が固かった部分もありましたけれど、それ以降は回を追うごとにだんだんよくなっていった印象でした。
HIRO:アルバム自体の手応えとしては、メンバー全員が楽曲もサウンドも過去最高峰のものだと感じています。
Iwai:うん、『FRIDAY』は新たな挑戦もできた最高傑作だという自信がありますし、このアルバムをきっかけにクロウリーがもっと世の中に浸透していけばいいなと思っています。
——その新たな挑戦とは?
Iwai
:『FRIDAY』に限らず、これまでも何らかの挑戦はしてきていたんです。例えば前作のミニ・アルバム『悪魔がにくい』(2021年12月発表)では、約50年前の昭和歌謡の「悪魔がにくい」をカヴァーしたり。最初は“何でクロウリーがこの曲をカヴァーするの?”という反応もあったのですが、結果としてかなり幅広い層に受け入れられたと思っています。今回で言えば、「DANCE WITH THE DEVIL」の歌詞は悪魔的な世界観を入れつつ、悪魔の館のダンス・ホールで謎の女性と踊り明かそうというラヴ・ソング的な要素も取り入れています。今までのクロウリーには、ここまでハッキリとした形での歌詞の表現ってあまりなかったと思うので、そこも新しい挑戦かなと。
HIRO:いやいや、「Evil Bride」(2020年7月発表のアルバム『EVIL BRIDE』の収録曲)もそうだったじゃん? それに、我々の80年代の曲にだってラヴ・ソング的なものはあったじゃん? だから僕としてはそのあたりのことが新たな挑戦という感じには思わないかな(笑)。
Iwai:たしかに。考えてみれば『WHISPER OF THE EVIL』(1986年)の時代から「Night Angel」など、そういったラヴ・ソング的な要素の曲はいろいろあったね。そう考えるとそんなに変わったわけではないのかもしれないね(笑)。
HIRO:新たな挑戦っていうのは何をどんなふうに狙うとかではなく、アルバムを作るたびに曲や演奏、それにアルバム全体のコンセプトとかが必ず前作を上回るものにするということ。他のバンドを否定するわけじゃないけれど、メジャー・デビューまでしているようなけっこうな人気バンドとかでも今の世の中、新譜を出す度に音質も内容も進化どころか退化したような作品を作っていることが多いんだよね。僕らは、そのあたりのことに関してはバンドのプライドにかけて退化した新譜を発表するようなことはしないんですよ。逆に、制作段階で音も内容も退化したような作品になりそうと感じたら、そんな作品は制作を中止して闇に葬りますよ(笑)。
Iwai:そうそう。アルバムって出せばいいってものじゃないからね。
HIRO:1980年代当時も今も、クロウリーはまわりからはサタニック・メタルと言われたりしていましたけど、申し訳ないですが僕ら自身が自分達をサタニック・メタル・バンドだと主張したことは一度もないんです。僕の中ではクロウリーは、オカルトやホラーをコンセプトにしてきたと思っています。あと、楽曲の面でも最近のクロウリーはポップになったと書かれたりすることもあるのですが、自分達は昔からそういう面もあったし、「Evening Prayer」(1985年当時の楽曲、2017年発表のアルバム『Nocturne』にボーナス・トラックとして収録)とかもポップでキャッチーですよね? というより、基本的にメタルって世界的にヒットした曲のほとんどは意外にポップでキャッチーな曲が多いんです。
——今回のオムニバスに、『FRIDAY』から「DANCE WITH THE DEVIL」で参加してもらいました。選曲の理由は?
Iwai
:他にも候補が2〜3曲あったのですが、『FRIDAY』の中でまずこの曲のMVを作ったんです。なので、今回のオムニバスCDをきっかけにしてクロウリーを知っていただいた方にはすぐにこの曲のMVを観ていただける。そういう点でこの曲を選びました。
HIRO:曲調としては、オールドスクールっぽさと新しいところの間、ちょうどニュートラルな感じだと思っています。
——楽曲のポイントは?
Iwai
:KENT(g)に関しては、この曲に限らず、アルバム全体の話になるんですが、前作から比べてもまた見違えるほど、いいギタリストになったと思います。メタル・バンドにとって、ギタリストって看板だと思いますし、クロウリーにはKENTというすごいいいギタリストがいるんだよって伝わると思います。
HIRO:最近の若手が作る音楽から、どんどんギター・ソロがなくなってきているじゃないですか。ギター・ロックと呼ばれてても、ソロがなかったりする。でも、これまで例えばリッチー・ブラックモアやイングヴェイ・マルムスティーン、ヴァン・ヘイレン……たくさんのギター・ヒーローがいた。僕達はそこにもこだわっていきたいのでぜひ、KENTのソロにも注目してほしいですね。彼のソロは、速弾きだけでなくメロディアスな部分、そしてリズミカルな部分も兼ね備えているので、今の時代にはあまりいないタイプのギタリストだと思います。
——他のパートに関してはどうですか?
HIRO
:ドラムは、ロック・ドラムの基礎を詰め込んだ曲だと思ってます。簡単に聴こえるかもしれないですけど、ちゃんとコピーしてみると意外に難しいんですよ。
Iwai:作曲者のHIROとドラマーのHIROがいるんです。作曲者のHIROは“こんなカッコいい曲ができた”って持ってくるんですけど、いざドラマーとして向き合ってみると予想以上に難易度が高かったりしてね(笑)。
HIRO:デモで、自分で考えてリズム・パターンを打ち込んではいるけど、実際に叩いてみると意外に難易度高かったりして(笑)。なので、“しまった、これ難しいな”という時は、メッチャ個人練習してから録音するんです。Iwaiはまったく練習しないでスタジオに来ますがね(笑)。練習しなくても、本チャンで歌えると思ってスタジオに来て、歌えることもあるけど、歌えないこともある(笑)。KENTはレコーディング前には必ず予習してくるけれど、Iwaiは歌詞とメロディを覚えてくるだけだから、スッと終らない時もあって(笑)。
Iwai:ちゃんと説明すると、我々には幸いにもフルタイムで使えるスタジオがあって、その中で試行錯誤しながら作り上げていくスタイルをとっているので、“やっぱりメロディ変えようか?”とか“語呂が合わないから歌詞を変えようか?”といった要望に現場で即座に対応できるような体制を整えています。なので、予習しても無駄になる可能性が高くて……(笑)。
HIRO:それは言いわけだろ(笑)? まあでも、確かに歌詞はレコーディングしながら最後の最後まで練るからね。他のバンドは、リリース日を決めて、それに合わせて、いろいろな締め切りもあるじゃないですか。でも、クロウリーって7割くらいできてから、“これなら何月何日に出せそうだね”と発売日を決めるんです。のんびりしていても仕方がないけれど、リリース日が先に決まっていて、納得がいかないまま進めるというのはないんです。それもあって、Iwaiの歌とKENTのギターにはすごく時間をかけますね。で、ベースのMiyoshiはある意味で、ヘンなヤツの集まりのクロウリーの中でも特に変わり者なんです(笑)。私生活においても不明な点が多く、不思議なヤツなんです。ただし、聴く音楽の幅は ひじょうに広く、練習熱心な一面も持っています。
——今後の予定を教えてください。
HIRO
:5月5日に名古屋のell. FITS ALLでワンマンがあります。6月29日には関東のRE-ARISEと目黒鹿鳴館でジョイント・ライヴを行ないます。クロウリーが鹿鳴館でライヴをするのは1980年代以来となります。あと、7月27日に三重の四日市クラブ・ケイオスでのメタル・イヴェントに出演します。それ以降のライヴはブッキング中で、2024年はまだまだ増えそうです! あと、『FRIDAY』から新しく「TEARS OF THE WITCH」のMVも作っていて、早ければ3月末頃に公開される予定です。楽しみにしていてください。

▲左より、Shunji Miyoshi(b)、Takashi Iwai(vo)、HIRO(ds)、KENT(g)

アルバム『FRIDAY』
DROPOUT MUSIC ENTERTAINMENT
DME-030
¥3,000(税込) 2023年10月13日
①REVIVED
②DANCE WITH THE DEVIL
③LIVING DEAD SOLDIER
④THE BREATH OF LIFE
⑤TEARS OF THE WITCH
⑥BREAKING THE CURSE
⑦DEAD FACE
⑧FRIDAY
⑨GREEN MANALISHI(With the Two Pronged Crown)
⑩FREEDOM

1980年代のインディーズ・シーンで活躍し、2017年に再始動したクロウリー。以来、制作とライヴを重ねて、本作は再始動後、3枚目のフル・アルバムとなる。王道のハード・ロックを下敷きにしつつ、独自の歌詞や世界観を漂わせ、「DANCE WITH THE DEVIL」ではキャッチーな側面も。

■ライヴ予定■
5月5日(日・祝)=名古屋ell. FITS ALL
6月29日(土)=目黒鹿鳴館
7月27日(土)=四日市ケイオス

■クロウリー 公式サイト■
https://www.crowley.jp/