WeROCK 099 付録CDインタヴュー集〜囁揺的音楽集団AsMR編

WeROCK 099の付録オムニバスCDに参加したバンドのインタヴュー集を、このWeROCK EYESでもお届けするシリーズ企画。
今回は2023年12月にアルバム『MUSIC RECEPTOR』を発表した囁揺的音楽集団AsMR(しょうようてきおんがくしゅうだん アズマー)のインタヴューをお送りしよう。

MV「Snow drop」


“陽”を楽しみ、アルバムで陰まで網羅してほしい

——囁揺的音楽集団アズマーは、どういう経緯で結成されたんですか?
Ayaka
:サウンド・プロデューサーとプロデューサーがいまして、彼らに召喚されたメンバーになります。
Milli:最初に話を頂いたのが私になります。プロデューサー的には、クラシックからポップスまで歌えると考えていたようで、ヴィジュアル系っぽいバンドにハメるのがいいんじゃないかというアイディアが初期の段階の話でした。さらに、ジャンルにハマらない音楽を作りたいと。五線譜だけじゃない音も合わせて音楽にすることができないかと。
——Milliは音大卒とのことで、バンドマンというよりも音楽家に近い活動をしていたそうで?
Milli
:小さい頃から、ずっとクラシック・ピアノをやってきました。昭和歌謡が好きなので、音大を卒業してからピアノ&ヴォーカルという弾き語りで活動していました。
——ライヴを観てもヴォーカリストとしても、すごいしっかりされてますよね? 音大でピアノをやっていると、オペラ的なヴォーカリストにもなれるんですか!?
Milli
:いやいや(笑)。ぜんぜん違うものですが、声楽も習っていたんです。アズマーにはクラシック的な要素もたくさんあるしオペラチックだったりもするので、声楽をやっていたことが生きてると思います。
——emyu:は、どういう経緯でやることになったんですか?
emyu:
:私は、もともとドラマや映画、CMなどのスタジオ・レコーディングとか、アーティストのサポート演奏、某テーマパークのショー出演などプロ演奏家としての仕事を長年やってきていて、バンドを組むという考えがあまりなかったんです。組んだことはありますが1年もしないうちに解散したこともあって。
ですが、アズマーの前任ヴァイオリニスト脱退後、たまたまプロデューサーから後任としてお声掛けいただいて、世界観やASMR音を曲に取り込むというコンセプトがおもしろそうだったので意を決して加入させていただくことにしました。
——いっぽうAyakaも、かわった経歴になってますよね?
Ayaka
:私は声優として活動していて、アズマーにはウィスパーだったり語りが入ってるということで呼んで頂いたんです。アズマーの世界感を聞いた時、作詞もするので自分的にはしっくりきたものがあったんです。ボードレール(詩人)とかダークというか暗めの文学作品も好きだったので、そういう部分も活かせるなと思いました。
——ベースも担当していますよね?
Ayaka
:太田家というバンドでベース&ヴォーカルを担当していて、アズマーで初めてベースのみの担当になります。バンドとしては青春パンク系が大好きで、ヴィジュアル系は通っていないですね。
——GINAは、WeROCK的にはバブバブルや、今回、メロウズでもこの企画に参加していますが、アズマーのほうが先だったんですか?
GINA
:YouTubeかなにかに動画をアップしていて、それをプロデューサーが観てくださったらしくバブバブルを始動するほんの少し前に話を頂きました。最初はガールズ・バンドかと思っていて、ここまでの世界観とは知らなかったんですが、これもチャレンジだし生きる舞台が変わる感覚だと思って加入しました。で、やってみたら、私の知っているギター・プレイではなかったし、すごいところに入ってしまったという感覚でした(笑)。
Milli:私も、まさか、こんな壮大な世界観のバンドだとはわかってなかったですね(笑)。
GINA:なにがわからないかもわからないというか(笑)。
Milli:バンドとしては2021年に結成したんですが、昨年12月にリリースしたアルバム(『MUSIC RECEPTOR』)でやっと理解してきました(笑)。
GINA:最初は、アルバムに収録されている中でもノリのいい「震撼SCREAMER」あたりが来たんですが、そのうち「人狼」とか「ドラゴニア」など世界が横にも縦にも四次元にも広がってきたような楽曲が来て“これがアズマーでやることなんだ”と理解し始めました。で、アルバム前半の曲から始まってストーリーにしていくとアズマーが完成するんだって理解しましたね。
Ayaka:1曲1曲がテーマを持っていて、私とMilliの半々で作詞をしているんですね。最初は、めちゃくちゃ戦いながら理解して詞を書いて演奏して、という感じでした。
emyu::個人的に世界観は大好きなフィールドだったので、何も抵抗はなかったです。それよりも入ってすぐの頃は、ガールズ・バンドやアイドル・バンドのノリで見られがちでそこにかなり抵抗があり、加入して1ヵ月で入ったことを後悔したこともありました(笑)。それぐらい、自分自身が女性オンリーの現場に慣れていなかったし、まわりから“ガールズ・バンドですか?”と聞かれて初めてメンバーが女性オンリーだったことに気がついたくらいで、まさかそういう見られ方をするとは1ミリも思ってなかったので。
ですが“どう見られたとて演奏だけはしっかりやってやる”と気持ちを切り替えてからは楽になり、今ではしっかりアズマーの音楽と世界観と個々の演奏にみなさまが注目してくださっていることに感謝する日々です。
Milli:私は、Gate(ライヴのこと)を重ねていくことで、お客さんやメンバーの反応を見ながら“アズマーとはこういうものかな”って気づいていきました。作詞は、ふつうに書けばこうなんだろうというところをアズマーだったらどう書けばいいのかというのを考えて“アズマーとはなんぞや”ということを1曲ずつ理解しようとしています。
GINA:これまではロック・バンドしかやってこなかったんですが、アズマーで初めてクラシックの人達と一緒にやったんですね。ピアノがあって歌も声楽寄りでヴァイオリニストもいる。これまではドラムに合わせればよかったのが、それだけではいけなくなったし、それによって出す音だったりニュアンスも変えないといけないんです。すべてが初めての経験で試行錯誤しながらやってきて、それにプラスしてこの世界観があるんです。
さらにアルバムが完成して、その世界観が深くなり広くなって、それをどう表現していけばいいのかものすごく考えながら弾いてます。音を作るにも、今まで入れたことのないようなエフェクトを使って、やったことのないような組み合わせで弾かなきゃいけないんですよ
emyu::わかる! 私もエフェクターを今までにはない組み合わせにしたり、そもそも楽器を叩いた音で演奏することになるとは思わなかったです。でも、それが「ASMR」に繋がる表現方法で、アズマーの最大の個性でもあるんですよね。
GINA:それが、アルバム発売日にワンマン・ライヴをやって全インパルス(楽曲)を通してこういう物語ができると知って、アルバムができたことで物語全体を表現するのにどう弾いたらいいか考えるキッカケになりましたね。
Milli:アルバム全曲がアズマーのすべてなんですが、歌い方にしても初期と最近で変わってきてるんですよ。ピアノも試行錯誤が入り混じっていて、どんどんアズマーっぽくなってる気がしてます。これまでにないバンドなので、みんなで音楽を作りながらさらにアズマーっぽく濃いインパルスになってるなって。1曲ごとにテーマはあるんですけど、アルバムを通すと1冊の本みたいになってると思うんです。
——アルバムがひとつのストーリーになってるからアルバムを聴かなきゃ理解できないと思いきや、それぞれの曲のサビがわかりやすいので1曲1曲でも入ってきやすいんですね。このインパルスを書かれている作家がすごいな、と。
Ayaka
:エースというバンドのヴァイオリニスト(Rookie Fiddler)なんですが、全楽器ができる方なんですね。プロデューサーからのオーダーがすごいんです。基本的には“全員がメインになれて全員がサブになれるような曲”というリクエストをするらしいんです。誰かが主人公ではなく、必ずどこかで出番が来るインパルスになってるんです。
——そんなアルバムの中から、今回、オムニバスCDに「PARADOX」を提供して頂きました。これは、アズマーにとって、どういう位置づけの曲になるんですか?
Ayaka
:進化がテーマのインパルスなんですが、ヴォーカルの歌い方が、すごく進化していてカッコいいんですよ。
GINA:私も完成したのを聴いた時、Milliが新しい扉を開いたみたいな歌い方をしていて感動しました。曲調的には、アズマーの中でもノリやすくてキャッチーでありつつ世界観もあるのでだいぶ新しいチャレンジだったし、これまでアズマーを好きだった方も驚かされるインパルスになってるかなと思います。
Milli:アズマーに入るキッカケには、とてもいいインパルスだと思います。
emyu::今回は明るい曲調ですが、この世界を創り上げているのは陰と陽。このPARADOX の「陽」を楽しんでいただいた後はぜひアルバムで、陰から陽まで網羅する全曲をお楽しみください。

▲左より、時計回りでAyaka(b)、emyu:(violin)、GINA(g)、Milli(vo&pf)

アルバム『MUSIC RECEPTOR
¥3,300(税込) 2023年12月19日
①Snare
②雷命INFESTER
③光喰者
④艶麗戦歌
⑤異端者の祭典
⑥Ark of Chaos
⑦トレモロ
⑧Snow drop
⑨Abyssphere
⑩人狼
⑪ドラゴニア
⑫PARADOX
⑬震撼SCREAMER
⑭Saturated World
⑮AWAKE

今回のオムニバス参加曲の中では、もっとも異端とも言えるのが彼女達だろう。しかし、その音楽性は、とてつもなくクオリティが高い。オペラ的な要素も持ち合わせるMilliの歌声、縦横無尽に駆け巡るヴァイオリンに、ハードなギターが色付けされる。このアルバムの世界観は、かなりすごいぞ。

■ライヴ予定■
4月25日(木)=渋谷レックス
5月4日(土)=立川バベル

■囁揺的音楽集団AsMR 公式サイト■
https://asmr-band.jp/