トップ・ドラマーを魅了するアヘッド

本誌でもお馴染みのアヘッド・スティック。
今回は、そのアヘッドからの新製品やオススメのアイテムに注目しつつ、あらためてアヘッド・スティックについての解説をお送りしたい。
多くのトップ・ドラマーが愛用する理由がわかってもらえるはずだ!


アヘッド・スティックを解説

今回の特集、まずはアヘッド・スティックについて、シグネイチャー・スティックが発売されたばかりの加藤剛志(メディア・ヴァイブス)の証言とともに紹介したい。
まず、構造的な特徴として“ハイ・プレシジョン・アロイ・コア”と呼ばれるアルミ合金の芯があり、その芯を硬質ポリウレタンでカヴァーしているということが挙げられる。この構造により、もともと木製のスティックと比べて長寿命だったのだが、2016年から投入された“HYPER-FORM ENGINEERED”と呼ばれる技術が投入され耐久性がもとの2倍以上になり、結果として木製スティックの6倍から10倍の耐久性を誇っているのだ。
そして、プレイ中に折れにくいという信頼感は演奏に集中することにつながるうえ、木製と比べて質量があるため、スネアやタムタム、シンバルなどの音量が増しつつ、“通りがよく存在感のある音が出せる”(加藤)という特徴もある。また、“本体が中空になっていること。そして、グリップ内部のVRS(Vibration Reduction System)で衝撃が手首に流れる前に50%以上軽減されて腱鞘炎になりにくい”(加藤)というメリットも記しておきたい。また、“チップとカヴァーを交換することでより長持ちします。カヴァーの叩き傷が深くなると本体に傷がついてしまうため、その前にカヴァーを交換するのが本体を弱らせないために大切です”(加藤)という点も付け加えておこう。長持ちする=木製スティックと比べると低コストになるのだ。
さらに、この構造によるメリットとして製品の誤差が1%未満であるということも挙げておきたい。木製スティックだとどうしても湿度や天候の影響を受けてしまう。“木製スティックは重さや重心のバラツキもあります。アヘッドはそれがなく、どれを取っても全部が同じバランス。ペアで同じものをそろえる手間がありません”(加藤)。また、アヘッドだと、木製スティックのような木クズが出ないのもうれしいところ。
こうしたメリットの数々から、国内外の多くのトップ・ドラマーがアヘッド・スティックを愛用するようになっているのだ。

アヘッド・スティックの構造。奥がアルミ合金の芯、手前が硬質ポリウレタンのカヴァー、リング、チップとなる。
カヴァーの交換もスティック本体の耐久性を維持させるポイントだ

“チップのタイプを変えるだけで違う音にできるし、カヴァーの色を変えられるところも、アヘッドのおもしろさです”(加藤)。

◎カヴァーについて

アルミ合金の芯を保護するのが硬質ウレタン製のカヴァーだ。テーパー(チップから徐々に太くなっていく部分)の長さや角度、そしてカラーなど10種類がそろっていて、カヴァーを交換することで自分により合ったスティックを作れる。
価格は¥1,100(税込)だ。なお、スティックごとに適合するカヴァーが異なるので注意しよう(※同様にチップも適合するタイプが複数選べるようになっている)。


加藤剛志 シグネイチャー・スティックが登場!

今回のアヘッド特集の鍵となるのが、新製品の加藤剛志(メディア・ヴァイブス)のシグネイチャー・スティック。本人にこのモデルのポイントなどを聞いてみた!
加藤:日本にアヘッドが入ってきて、師匠の樋口宗孝が試すことになった時、樋口さんが叩いている音がバンド演奏の中でどう聴こえるか、僕が印象を伝えたりしました。ヌケがいい迫力のある音が離れていてもよく飛んできて、木製との音の違いが衝撃的でしたね。自分でも試してみて、これは最高の武器になると感じて使い始めたんです。
木製を使っていた時は、デカい音や強い音を出すために、腕力をかなり使っていたんですが、アヘッドはスティックの重さを利用して叩くのがポイントで、木製のように力を入れなくても、振りおろすだけで大きくてしっかりした音が鳴ってくれるので、まず自然でしなやかなフォームで叩けるようになりました。
耐久性についてですが、カヴァーの傷が深くなる前に交換して、長持ちさせています。カヴァーは5〜6回のリハーサルで交換して、ライヴ本番は新しいカヴァーでやっています。1セットを使い続けると本体が弱りやすいので、2〜3セットを順番に使うようにすると長持ちしやすいです。
ずっと樋口宗孝モデルや同じサイズのトミー・リー・スタジオ・モデルを使ってきたんですが、以前からシグネイチャー・モデルの製作を勧められていたんですね。それで、昨年始めたバンド、メディア・ヴァイブスの曲は速く叩くことも多いので、もう少し振りやすくしたいと思って相談したところ、バンド始動に合わせて作りましょうってことになりました。
振りやすくヌケのいい音、プラスして存在感がある太さも欲しいため、太さ15mm/長さ413mm/重さ66gのロック・シリーズをベースに考えました。樋口モデルより9mm短く、2g軽くと、数字で見ると少しの差ですが、振った感じはすごく変わります。チップは音の立ち上がりが鋭いSAT、カヴァーはホワイトのSTWを選びつつ、個性が欲しくてグリップをホワイトにしました。飾っておきたいからってご購入される方もいるほどきれいな仕上がりになりましたね。
しっかりした太い音と振りやすさが欲しいドラマーにぜひ試してほしいです。レッスンやあちこちのライヴで、樋口宗孝モデルやトミー・リー・モデルを使いたいけど、長かったり重かったりしてムリだったって人とたくさん出会いましたので、そういったみなさんにもバッチリ使っていただけます。

TSUYOSHI KATO TK
¥オープン

【仕様】
●長さ:413mm
●太さ:15mm
●重さ:66g
●チップ:SAT
●装着可能チップ:TIPB、TIP、MBT、BALL
●リング:RGB

オススメのスティックを試奏

スピードとパワー、コントロールのバランスを求めた
リッキー・ロケット(ポイズン)のモデル

今年2月に日本にも上陸してきたリッキー・ロケット(ポイズン)のシグネイチャー・スティックだ。グリップ部にはイメージ・カラーの緑を配し、銀色のカヴァー部もステージ映えしそうだ。
これまでのアヘッド・スティックと同じく重心はセンターからチップ寄りにあるイメージで、そのためムダな力を入れることなくスティックを振り下ろすことができる。
また、今回試奏したスティックの中でも軽めのため、速いフレーズも叩きやすくフィンガー・コントロールも違和感なく行なえた。チップは、5ABと呼ばれる丸型のものも装着可能なので、細かいコントロールよりも安定した音粒を求めるドラマーにも向いているだろう。

RIKKI ROCKETT
¥8,250(税込)

【仕様】
●長さ:406mm
●太さ:15mm
●重さ:53g
●チップ:5ATB
●装着可能チップ:5AS、5AT、5AB
●リング:RGB5A

グリップ部でアメリカ国旗を表現した、
パワフルなスティック

グリップ部にアメリカ国旗をイメージさせる星とストライプがそれぞれ描かれ、その名も“PATRIOT”(愛国者)と付けられたスティック。アメリカ人の気分でチェックしてみよう!
基本となっている5Bから重さを6g増しているそうだが、そのためか重さやグリップ径のバランスがよく叩きやすい。チップがやや大きめなので、音量もかせげるのも特徴だ。

“PATRIOT” LIMITED EDITION 5B
¥8,250(税込)

【仕様】
●長さ:406mm
●太さ:15mm
●重さ:64g
●チップ:TIP
●装着可能チップ:TIPB、SAT、MBT BALL
●リング:RGB

木製スティックのような重心バランスが逆に新鮮!?

グリップ部は5B、カヴァー部は5Aという2タイプのモデルのハイブリッド・スティック。振った瞬間に、他のアヘッドと違うのがわかる。他のモデルの重心はチップ寄りなのだが、このモデルはグリップ寄りになっていて木製スティックにやや近い感覚があるのだ。
とは言え、叩いてみるとやはりアヘッド。木製スティックと同じ感覚で叩いても音量が上がるのがわかる。アヘッドの入門モデルとしてもオススメだ。

5AB HYBRID STUDIO 5ABS
8,250(税込)

【仕様】
●長さ:406mm
●太さ:14mm
●重さ:53g
●チップ:5AS
●装着可能チップ:5AS、5AB、5ATB
●リング:RGB5A

練習用アイテムも充実!

スティックの試奏レポートに続いては、アヘッドが取り揃えるさまざまなアイテムの中から、オススメのモデルをレポートしよう。
まずは練習用アイテムを3点。AHPZMはグレーガム・ラバーと呼ばれる素材が貼られた直径10インチのパッド。静粛性に富みつつ、打感もリアル、そして音もスネアのようで、これは練習する気が出てくるパッドだ。このAHPZM以外にも14インチで両面に異なるラバーが貼られたAHPDL(¥7,150/税込)や8mm径のシンバル・スタンドに装着できる直径10インチのAHPM(¥4,950/税込)など、さまざまな練習パッドが発売されている。

AHPZM
7,628(税込)

▲裏面には滑り止めのゴムが貼られている。
机やイスなど好きなところに置けるのだ


そして、よりハイパーな練習をしたいというドラマーには、8mm径のスタンドに装着して使うAHWCPをチェックしてほしい。右上の写真を見てもらうとわかるが直径4cmほどのラバーが貼られたパッドで、スティックのリバウンドも自然でいい……だが、いつものような力の入れ具合で、正確にかつ速く叩くのが難しい!

AHWCP
4,950(税込)


▲底面にネジ穴が開いていて、8mmのスタンドにセットする

 

最後は、AKPPというパッド。こちらはストラップが付いていて、自分の太ももに付けられるタイプ。打感はややハイ・ピッチにチューニングしたスネアのようで直径は5.5cm。ライヴ前の練習やウォーミング・アップ、自宅練習などに活用したい。

AKPP
4,378(税込)


メタル・ドラマー必携のグローヴ

スティックの滑り止めと同時に手にかかる衝撃をやわらげるのに有用なのがグローブだ。スティックを落とさなくなる、すっぼ抜けるというメリットはもちろん、滑らないことでムダに力を入れてスティックを握らないようになることも大きい。
アヘッドのグローブ、PRO DRUMMERS GLOVES(¥7,050/税込)は、柔らかさもあってスティックのコントロールがしやすい。サイズは、S、M、L、XLの4種類がそろっている。

▲手のひら側。通気性を保つための小さな穴も確認できる

マジックテープ式だから着脱もラクに行なえる


スティック・ケースもアヘッドで!

ドラマーのマスト・アイテムのひとつがスティック・ケース。スティックやチューニング・キーなどの小物の持ち運びだけでなく、ライヴではフロア・タムやスネア・ドラムにかけて使用するアイテムだ。
アヘッドのスティック・ケース、Stickbag SB(¥7,050/税込)は外装がポリエステル製で、黒や白、縁取りの色違いなど合計5種類のカラー・ヴァリエーションがそろっている。使い勝手がよく、また作りもしっかりしているのでオススメしたい。

■アヘッド 公式サイト
https://www.labreatrading.com/