WeROCK 093 付録CDインタヴュー〜VRAIN編
WeROCK 093の付録オムニバスCDに参加したバンドのインタヴュー集を、このWeROCK EYESでもお届け!
本日は“ネオ・ドラマティック・サイバー・ハード”を掲げる5人組、ブレインのインタヴューをお送りしよう。
アルバム『Beyond The Southern Cross』 トレイラー映像
わかりやすくも一筋縄ではいかない曲
——ブレインは、結成20年以上になるんですね?
MIYA:オリジナル・メンバーは自分だけですが、結成は2000年なんです。2017年にSANAとHAKUYAが加入して現メンバーになりました。
HAKUYA:私がいちばん新米なんですが、もう5年たってしまいました(笑)。
——男性ヴォーカルは考えなかったんですか?
MIYA:ずっと女性ヴォーカリストで曲も作っていたので、男性ヴォーカルがそれを歌うとなるとキー的な問題が出てくるじゃないですか。昔、男性ヴォーカル時代というのもあったんですが、現状を考えると女性ヴォーカルで探していました。前ヴォーカルはキーボードも兼任だったので、同時にキーボードも探さなくてはいけなくなり、ギターもツイン・ギターだったんですけどワン・ギターになって……前ヴォーカルもオリジナル・メンバーに近かったので、僕だけがオリジナル・メンバーになってしまったという。
NAOKI:僕とKASSYとMIYAという3人だけになってしまった時に、僕とKASSYでMIYAを支えていこうって話していたんです。僕はブレインに入ることになってから、自分が戦力外通告を受けるまでブレインを続けていこうと決めていましたので、そこは揺るがなかったですね。
HAKUYA:私は、ネットに加入希望みたいな記事を出していたところNAOKIに見つけてもらって声をかけられたんですね。それまでライヴを観たことなかったんですが、前ヴォーカルの方のイメージがすごく強かったので、そのイメージを引き継ぐのは大変だなって思ってました。バンドの方向性的には、自分にどストライクな曲調だったので、ぜひやりたいと思いました。
——ブレインにとって、その時に新しいブレインに変わったわけですが、バンドの方向性を変えていこうとかは思わなかったんですか?
MIYA:思わなかったし、できないですね。けっきょくのところ、自分の得意なことを一生懸命やるのが、結果的にいちばんクオリティも高いし聴いてもらえる可能性も高いんじゃないかと思ってるんですね。
——MIDI検定を持っていたり、才能豊かですよね?
MIYA:もともとキーボードだったりシンセサイザーから音楽に入った人間なんで、作曲するうえでキーボードを使ってるので、便利ではあります。ドラムは好き勝手に叩いてるだけですよ(笑)。自分が作る曲なので、どうブチ壊そうが自分の責任なので。
NAOKI:曲が鍵盤で作られてるので、ギターでは物理的に難しかったりするんですよ(笑)。
——発売された『Beyond The Southern Cross』でも、かなり構築されたギター・プレイが聴けますよね。
MIYA:デモでは、全パートを打ち込みで作ったのを渡していて、丸々コピーすれば曲になるぐらいの完成度のものです。ブレインの場合、コードを決めて、あとは好きにやってと言ったら、まったくまとまらないと思うんです。うちの場合、誰かすごいテクニカル・プレイヤーがいてそれが売りになるというよりも、構築美……チーム・プレイですね。野球で言えばスモール・ベースボールで、日本的な野球です。
——たとえば、「Scorpion Fire」のイントロのギターも大変ですよね?
NAOKI:あれは、ベートーヴェンの「熱情」というクラシック曲のフレーズそのままなんですね。“あれをギターでできるか?”という相談から始まり、なんとかいけそうなのでそのままやろうと。
MIYA:フレーズとしては、ピアノの右手をギターでなぞってる感じです。
NAOKI:最近、クラシックの曲でもYouTubeの「弾いてみた」であがってたりするじゃないですか。どういう運指で弾いてるのか観てみたりしたんですけど、「熱情」はあまりやってる人がいなくて(笑)。
MIYA:途中、キーボードで入るところもギターでいこうとしていたんだけど、さすがに無理だろうと。
NAOKI:あそこ、弾けなくてすみません(笑)。
MIYA:低音弦で、あの速弾きはムリだと思うよ。でも、自分的に、たとえばイングヴェイ・マルムスティーンのような超速弾きをやらせてるつもりはないんですけど、オカズが多くて覚えるのが面倒くさい(笑)。単純にコードを流すというのが嫌いなので、結果的に難しくなるという。
NAOKI:ギタリスト的な運指じゃないんですよ(笑)。
HAKUYA:ヴォーカルも、ドラマーの目線でラインを考えてると思うので、あまり普通の歌ではこういうリズムは使わないだろうなっていう部分があるんです。そのあたりは、まわりの楽器と同じ気持ちですね。これまでカヴァーとか歌っていた時はメロディと歌詞さえ覚えれば、なにも考えずに歌えていたんですけど、ブレインの曲は頭をフル回転で歌わないと歌えないな〜というのが多い気がします。
——ベートーヴェンの話からすると、「Star Crowd Station」の中間部にも入ってますよね。
MIYA:「エリーゼのために」ですね。曲の世界観をわかりやすくするために入れてみました。この曲自体、“誰かのために”という曲なんです。そのイメージで導入してみようと。キーもちょうど合ってたし、うまくいくんじゃないかなって思ってました。今回、クラシックの曲が3曲入ってるんですが、わかりますかね?
——付録CDにご提供頂いた「Southern Cross」は、なんですか?
MIYA:モーツァルトの「ラクリモーサ」という曲ですね。コードだけで進む部分をギターでアルペジオ化して“これ、弾ける?”と相談のうえ、いけそうだということで。ぜんぜん原曲とは違うんですけど、そのコード進行をアルペジオでギターで弾いていると。今回、自分的に、懐かしいものをたくさん入れたかったんです。
——いろいろと構築したり詰め込んでいるからなのか、長めの曲が多いですよね?
MIYA:ふつうに作ってるとこれぐらいになってしまうんです(笑)。
NAOKI:年々、長くなってません(笑)?
MIYA:6〜7分だったら、許される範囲じゃないかと。とくに、今回は3曲で3部作のアルバムなので、1曲1曲、一生懸命作った結果、どうしても長くなってしまったんです。
HAKUYA:コンセプト・アルバム的な感じですからね。
MIYA:宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』ってあるじゃないですか。それが、アルバムの大元にあります。南十字星……“サウザン・クロス”というのが物語の最後のほうに出てくるんですけど、そこをクライマックスになるように考えました。ホントはフル・アルバムで作ろうと思ってたんですけど、壮大になりすぎて何年かかるかわからないので3曲にまとめようと。自分は宮沢賢治と一緒で岩手県出身なので、岩手県の夜空のイメージで1曲目を作った感じです。
——ということは、付録CD収録曲でもある「Southern Cross」から派生して作られたアルバムだった?
MIYA:そこを終着駅にしようという構想はあったので、その前をどうするかと考えていました。まずは地上から始まって、それが「Star Crowed Station」。その次に物語の途中で“蠍の火”というのが出てくるのですが、それが「Scorpion Fire」になります。過去に作曲を始めた時から『銀河鉄道の夜』の世界観というのは、すごい自分の中にあって、それをイメージした曲というのをちょいちょい作っていたんです。
——アルバムとしては、どこに注目してほしいですか?
MIYA:曲そのものですね。自分のドラム・プレイを聴いてくれというのは、そんなになくて、曲そのものを何回も聴けばよさをわかってくれると思うんです。物語に沿った内容を音で作っていった結果なんです。付録CDに入ってるのは、ある意味、いちばんわかりやすい曲なんですけど、それでも一筋縄ではいかない要素が入ってると思うんです。アルバムでは、それをもっとギリギリまで広げた曲や、わかりやすい楽曲が入ってると思います。
NAOKI:ギターなんですが、今回、すごくサウンドが進化していて、いい音で録れてると思うんです。前作まではキャビネット・シミュレーターを使っていたんですけど、今回はMIYAのほうでマイク録りをしてくれまして、そのキャビネットもMIYAオリジナルなんです。ヴェロシティのプリアンプで録った音をMIYAに送って……。
MIYA:それを、こっちでパワー・アンプとキャビでリアンプしてレコーディングしてます。マイクも含めて、すごい独特な録り方をしてます。
HAKUYA:今作からヴォーカルだけでなくウインド・シンセサイザーも担当しているので、そこもぜひ聴いてほしいです。
NAOKI:今までMIYAの作った曲を何十曲も聴いてきましたが、「Southern Cross」がいちばん好きな曲になりましたね。
▲左から、SANA(kb)、HAKUYA(vo)、MIYA(ds)、NAOKI(g)、KASSY(b)
アルバム『Beyond The Southern Cross』
VRMK-002
2023年2月15日 ¥1,100(税込)
①Star Wyvern
②Star Crowd Station
③Scorpion Fire
④Southern Cross
◎宮沢賢治の小説『銀河鉄道の夜』を題材にして楽曲を作っていったというコンセプト作。インタヴュー中ではミニ・アルバムと話しているが、EP名義でありつつ、どの楽曲も大作なので完全に“アルバム”的な仕上がりとなっている。壮大な構成の楽曲に覚えやすいメロディを乗せることで、聴きやすさも兼ね備えている。
■ブレイン 公式サイト■
http://vrain.jp/