WeROCK 087付録CDインタヴュー〜723シャトンヌ⤴︎編

元アイドル、現在は喪服シンガーとしてクラシックをモチーフにした楽曲を歌う723(ナツミ)シャトンヌ⤴︎。彼女がWeROCKオムニバスCDに初参加!
シンガーとしての歩みや現在の活動などについて聞いた!

サード・ミニ・アルバム『儚く揺れるディアブロ』
トレーラー映像

喪服と殺意、クラシック音楽が合うんです

——まず、どういうきっかけで今の音楽活動をスタートしたのかというところから教えてもらえる?
723シャトンヌ(以下723):小さい頃から歌手になるのが夢で沖縄から上京してきたんですね。それで、最初はいくつかのアイドル・グループに加入して活動していたんです。最後のグループでは、センター兼リーダーでやらせてもらって、赤坂ブリッツでのライヴも成功したので、そこを卒業させてもらってソロで活動していくことにしたんですが、ソロでは表現やコンセプトをもっと深く掘り下げたものにしたいと思ったんですね。
それで周囲とも相談して“喪服シンガー”というところに行き着いて、今に至ります。あと、723シャトンヌ⤴という名前の由来は、もともと723(ナツミ)で活動していたので、その723の後ろに、猫っぽいとよく言われるので、フランス語で仔猫という意味のシャトンヌと付けました。最後の⤴の矢印は、猫の尻尾を表わしています。ファンからはシャトンヌ様と読んでもらってます(笑)。
——なぜ、“喪服シンガー”に?
723:まず、見た目のインパクトを考えた時に、誰とも被らないであろうというのが喪服だったんです。そして、その喪服というコンセプトが決まる前から、クラシックをモチーフにした歌を歌いたいという思いがずっとあって、その思いと喪服というのはマッチするなと。
あと、作詞は全部私がしているんですが、共通したテーマが“殺意”なんですね。私の中で、喪服とクラシック、殺意という3つが合っているなと思ったんです。
——喪服や殺意というイメージは、アイドルとは真逆でしょ?
723:アイドル時代も楽しんでやっていたんですけど、まわりとは考え方が少し違うなという部分もあったんです。もっと、まわりとは違う表現をしたいと思っていたし、自分の中には毒の部分があるんだというのも気づいていて、それが今の形につながっていますね。あと、髪の赤と黒のツートン・カラーの意味は、赤は情熱、黒は絶望を表わしています。
——アイドル時代のファンだった人は、この変化にびっくりしたでしょ?
723:そうですね(笑)。でも、びっくりされつつも付いてきてくれる方もいて。もちろん、今のコンセプトになって初めて私のことを知ってくれた人もいて。この世界観って好きな人は好きで、嫌いな人は嫌いっていうものだと思うんですが、いわゆる大衆向けみたいな表現は、私は好んでなかったので。だから、アイドル時代のファンの方にとっては、うれしい裏切りになっていればいいなと思っています。
——大衆向けではないけど、でも自身の存在や表現は多くの人に届いてほしいよね。
723:そうなんです。もちろん、広く聴いてほしいんですけど、もとにあるのは私がやりたいかやりたくないかというところなので。だから、充実しているんですよ。
——さっき話に出た、まわりとは違う表現をしたいということとはつながらないかもしれないけど、ソロとして活動を始める時、こういうシンガーになりたいというような理想像はあったの?
723:小さい頃から、中森明菜さんとか昭和歌謡に憧れがあって、歌手になりたいと思っていたんですね。そことつながるかどうかわからないですが、中森明菜さんのような、ひとりでも世界観を作り出せるシンガー、アーティストになりたいというのがありましたね。
——ロック・シンガーというところで憧れていた人はいる?
723:ロックかどうかわからないですけど、マイケル・ジャクソンに中学生の頃から憧れていました。マイケル・ジャクソンに憧れて、当時ダンスも習い始めました。
——そして、楽曲はクラシックをモチーフにしているけど、小さい頃からクラシックも聴いていたの?
723:小学校5年生の頃からピアノを習っていたので親しみはありましたけど、とくに詳しいかと聞かれたらそうでもないと思います。楽曲のアレンジもプロデューサーの方と相談しながら、進めていますね。
——ピアノを習っていたとのことだけど、ライヴではギターの弾き語りもするんだよね?
723:ギターは、じつは最近弾き始めたんです。プロデューサーは上達が早いって言ってくれますけど、まだまだです(笑)。
——クラシックって、バロック音楽とか近代音楽とかさまざまな分け方があるでしょ。“このクラシックの楽曲に歌詞を乗せたい!”という基準はどこに設けているの?

723:基本はポップな曲、みんなが知っているようなわかりやすい曲ですね。例えば、私のことを知らなくても、曲を聴いた時、ステージを観た時に“あ、あのクラシックの曲だ”ってわかってもらえるような曲です。
——たしかに楽曲を聴いた時、曲名は知らないけど、どこかで聴いたことのあるメロディだというのはわかった。
723:そうなってほしいので、よかったです(笑)。
——そして、ソロとして2019年、2020年、2021年と毎年、ミニ・アルバムを出してきているけど、それぞれどういう作品なのかを教えてもらえる?
723:ファースト・ミニ・アルバムの『愛の賞味期限なんてとっくに過ぎてる』では、アイドルから喪服シンガーになったこと、しっとりした大人の女性として歌っていくということを伝えたかったんですね。そして、2枚目、3枚目と、今の私の姿、表現方法を定着させたいというところなので、3枚とも作風は共通しています。ジャケット写真のイメージも同じ感じにしていますね。
——ただ、それぞれのミニ・アルバムの中でヘヴィな音色をバックに歌っている曲もあれば、キャッチーな仕上がりな曲もあるでしょ。
723:そこはモチーフにしているクラシックの曲によって、この曲はキャッチーに仕上げたいとかしっとりとアレンジしてほしいというのをプロデューサーに伝えてアレンジしてもらっています。
——歌詞のテーマは“殺意”で統一しているとのことだけど、それもいろいろな視点からのものになっているし。
723:そうですね。楽曲のアレンジが終わってから歌詞を書くんですけど、そのメロディに合わせて、イメージする言葉を膨らませたりしています。
——今回、オムニバス参加曲である「儚く揺れるディアブロ」の歌詞については、どういうイメージで書き進めたの?
723:この曲も、まずメロディを聴いた時にタイトルでもある“儚く揺れるディアブロ”という言葉が頭に思い浮かんだんです。で、ディアブロって言葉は聞いたことがあったんですが、意味は知らなくて調べてみたら“悪魔”だということがわかって。これはしっくり来るなと。そこから、いろいろインスピレーションを膨らませました。
——ミニ・アルバム『儚く揺れるディアブロ』から、今回のオムニバス参加曲として、このタイトル曲を選んだ理由は?
723:「儚く揺れるディアブロ」のモチーフとなっているのは、リスト作曲の「ラ・カンパネラ」という楽曲なんですが、以前からこの曲でやってみたいと思っていたんです。そのことを、アレンジャー兼プロデューサーにも伝えてたんですが、“いや、この曲をアレンジするのは難しいよ”って言われたんです。“そうかあ……”って1回は納得したんですけど、寝て起きたらやっぱり諦められなくて(笑)、どうしてもこの「ラ・カンパネラ」で歌いたいですってお願いして作ってもらった曲なんです。
で、アレンジされたものを聴いた時に、鳥肌が立つぐらい感動して、これは世界中のすべての人に聴いてほしいぐらいだと思ったんですね。それで、今回のオムニバス用に選んだんです。
——では、ミニ・アルバム『儚く揺れるディアブロ』のレコーディング全体を振り返って、とくに印象に残っていることは?
723:「白いスカートの女」という曲があるんですけど、この曲はストーカーのことを歌っているんですね。ストーカーを自分の中に入れて表現するということにこだわりました。あと、「儚く揺れるディアブロ」になってしまうんですが、それまではあまりコーラスを重ねるということをやってなかったんですね。でも、この「儚く揺れるディアブロ」では、しっかりとコーラスも入れて。そこはクイーンを参考にさせてもらいました。レコーディングっていつも苦しいんですけど、このコーラスは楽しくできました(笑)。
1曲目の「無邪気な悪魔か冷たい天使か」はベートーヴェンの「エリーゼのために」をモチーフにしたんですね。
——クラシックに詳しくないけど、この曲はわかった(笑)。
723:(笑)。で、「エリーゼのために」をモチーフにした曲って、昔から多くの人やバンドがやっているので、“負けたくない!”という気持ちが強かったですね。
——そうした多くのバンドやミュージシャンが取り上げてきた「エリーゼのために」を選んだ理由は?
723:だからこそ、チャレンジしたかったんです。あとは、ピアノを習っていた時に最初の頃に弾いた曲で、私の中で思い入れが深い曲だったし。
——「エリーゼのために」をもとにした曲を、そんなに数多く聴いてきたわけじゃないけど、それらとはまた違ったニュアンスになっているとは思ったけど。
723:そう感じてもらえるとうれしいです。
——さて、今後のヴィジョンも教えてもらえる?
723:まずは、ライヴですね。毎月第3日曜日に主催ライヴをやっていて、それが12月まで決まっているんですね。
——殺(サツ)フェスだね。
723:そうです、そうです。この主催ライヴをどんどん盛り上げていきたいと思っています。
——この殺フェスって、どういうものなの?
723:私が仲良くさせてもらっているアーティストの方や私が気になっているアーティストの方に声をかけて組んでいます。個性豊かな、あるいはいい意味でちょっといびつな方達が出てくれています。でも、それだけでなく、アイドルも出たりして、ふつうなら一緒にならないメンバー、アーティストが揃うイヴェントになっています。だから、来てくださる方もお目当てのアーティスト以外は初めて観るというような、ごちゃ混ぜのイヴェントですね。私は、ライヴのことを“弔いの宴”と呼んでいるんですけど、殺フェスでいろんな方と対バンしても、いい意味で私の個性は突き通しています。“弔いの宴”では、日常では味わえないような別世界を作り上げることにこだわってやっています。例えば、弔いの宴が始まる時、白い薔薇を持って入場するのですが、その花言葉は“私はあなたにふさわしい”なんです。全曲の歌詞と照らし合わせるとゾッとすると思いますよ。あと、「儚く揺れるディアブロ」では後半のブレイクで自主規制音で使われるピー音を入れて、ピタッと空気を止めるんですね。そのピー音の間に口パクでセリフを言っていて、それに気づいたお客さんが“●●って言っている?”とか質問されることがあるんです。でも、まだ当てた方はいなくて。
——ライヴでは同期をバックに歌う感じ?
723:そうですね。同期を流したり、あとバンド界隈の方達と対バンする時はサポートのギタリストの方に来てもらって、また違う“弔いの宴”になりますね。
——今後の作品については?
723:次の作品については、まだ具体的にいつ出そうとか決めていないんですが、内容については、これまでと同じようにクラシックをモチーフにしたものにしようとプロデューサーとも話し合っています。喪服シンガー、殺意を歌う歌詞、クラシックをモチーフにするというところを極めていこうと思っています。そして、初めのほうでお話ししたことと被るんですが、大衆向けの表現は好きではないんですね。でも、地球に住んでいる人、みんなに聴いてほしいんです。クラシックが好きな人にも聴いてほしいし、女性の方にも聴いてほしいですね。
——オリジナル曲を作っていくというヴィジョンもあるの?
723:そこにつながるかどうかわからないんですが、芦沢和則さんという、有名アーティストの作曲を数多く手掛ける方と私で、作詞作曲プロデュース・ユニットのΨ’N’ KNOW(サイエンノウ)というのを結成したんですね。そのユニットでオリジナル曲を作って、いろんな方に提供していきたいと思っています。ご希望の方はよろしくお願いいたします(笑)。
——そのユニットで作った曲は、自分では歌わないの?
723:いえ、自分達のための曲も作りますけど、まずはクラシックをモチーフにするということを極めたいなと。そして、私個人の大きな目標として武道館に立つ! というのを掲げています。ぜひ、応援をよろしくお願いいたします。

■723シャトンヌ⤴︎ 公式サイト■
https://pont.co/u/chatonne

ミニ・アルバム『儚く揺れるディアブロ』
Garçon Records
GRNI-1003
¥2,000(税込) 2021年7月11日
①無邪気な悪魔か冷たい天使か
②亡骸の首筋にキスをした ③ そんな自由じゃない
④白いスカートの女
⑤儚く揺れるディアブロ

WeROCK初登場の、元アイドルで現在は喪服シンガーとして活躍する彼女の3枚目のミニ。これまでの作品と同じく、多くの人が耳にしたことがあるであろうクラシックに歌詞を乗せるというスタイルだ。ポップ寄りであったりEDM的だったり、さまざまな表情を見せる。

■主催ライヴ“殺フェス”予定■
3月20日、4月17日、5月15日、6月19日、7月17日、8月21日、9月18日、10月16日、11月20日
会場はすべて東新宿キャッツホール