WeROCK 087付録CDインタヴュー〜SAISEIGA編

WeROCK 087の付録オムニバスCDに参加バンドのインタヴュー集を、このWeROCK EYESでもお届けしよう。
まずはSAISEIGA(サイセイガ)。今回のオムニバスCDに収められた「RIDE ON」を含むファースト・アルバム『THE SUN』を2月2日にリリースした。
4人のメンバーがバンドの成り立ちやこの新作について語ってくれた。

アルバム『THE SUN』から「RIDE ON」

次の代表曲になるものを書こうと思った

——サイセイガは2020年11月始動とのことですが、どのように結成されたのでしょう?
Katsuki: わりと軽いノリでリズム隊でセッションしようみたいな流れになったんです。その時点ではとくに新たにバンドを立ち上げようという気持ちもなく。自分も桐子もコンポーザーだったり音楽的なアイディアを持って楽器を演奏することにこだわりを持っている人間なので、それを持ってその場を充実させるためにお互いがアイディアを出した結果、そこで生まれたものがおもしろく感じた、というのがサイセイガを結成するキッカケにはなりましたね。
そこから思い切ってReganに声をかけて3人でセッションして、その後Reganの友達の友達の紹介でWakkunとスタジオで合わせた時に、4人でのフィーリングのよさを感じたので、そこからはもう勢いで“バンドやってみよう”って正式にメンバーがそろった感じですね。
Regan:ゼックラ(絶対倶楽部)が解散した後も、桐ちゃんはいろんなバンドのサポートをしたりして音楽を続けるだろうし、応援していこうと思ってたんですよ。私は一休みしようって感じで(笑)。ただ、普通に世間話をする中で、どんどんハードな音楽を聴いてるなと思っていて。そしたら、いつの間にか新しいバンドを始めようとしていて、そこで声をかけられたんです。案の定、激しい音楽で(笑)。
その後に実際に曲を聴いたんですけど、2人でおもしろいものができたっていうのは私も感じたし、私が誘われた意味もわかって。でも、3人のリハの時点でこれだけいいんだったら、ギターはちゃんと釣り合う人を探さないと、長い目で見た時に潰れるなと思ったんですね。そしたら……“こんなにすぐ決まることある!?”みたいな(笑)。
Katsuki:事前にとくに話をすることもなく、とりあえずWakkunとスタジオに入って、「GO ON!」って曲だけやったんですね。そこで気構えずに弾いて出てきた音が、何というか、堅実なものだった。自分が描いてたとおりのもので。
Wakkun:僕はここ2〜3年はバンドをやってなくて、家で音源制作をやっていたんですけど、曲をもらって実際に音合わせした時に、みんなのレベルがすごく高かったんです。自分の好きなジャンルとはちょっと離れてたんですけど、これだったらやってみたいなと思って入ることにしました。
——そういった4人が集まってサイセイガがスタートしましたが、音楽的にはどういったものをやっていこうと考えたんですか? 最初のセッションで、自然と曲が生まれたという成り立ちがあってのことだと思いますが。
桐子:ヘヴィでエモーショナルな音楽が好きっていうのは、Katsukiと私で共通してるところだったと思うんですね。
Katsuki:好きなものはいっぱいあったとしても、何も考えずにバーンと自分を表現できることって、本当にちょっとしかないと思うんですよ。そのちょっとしかないものが、最初の2人のセッションでやった感じだったんです。だから自然発生的で、それがひとつのベーシックなものになったんだと思うんですよ。
Regan:(メイン・コンポーザーの)2人とも、4人のキャラクターを理解したうえで作品に昇華させていっていると思うんですね。でも、この4人が集まった時点で、勝手に新しいものになるだろうって自信はあるよね(笑)? 本当にそう思うぐらい、どんな曲が来るのかいつも楽しみなんです。
——この『THE SUN』というファースト・アルバムについては、どんな作品にしたいと思ってました?
Katsuki:僕の場合、自分がやりたいことを思いっきりやって、そのうえでみんなからのフィードバックでいろいろと形が変わっていくのはウェルカムだというスタンスなんです。そういう形で最初のEPができた時点で、バンドとしてのまとまりがすでにあったので、『THE SUN』に関しては自然とEPからの延長上で進化した形になるのかなって感じでしたね。結果、そうなったと思います。
桐子:4曲目の「CHAOTIC」はWakkunが元ネタを持ってきたんですよ。
Wakkun:自分の中でいちばんカッコいいと思うフレーズを出してくれって言われて、それをKatsuさんがアレンジしてくれて。自分でもかなり気に入ったできになりました。ギターだけで言うと、アルバムの全部の曲でソロを弾いてるんですけど、かなり個性的な面も出てるかなと思います。
——たとえば、「Illusion」や「sink」などでは、意外性のあるフレージングやサウンドが聴こえてきますよね。
Wakkun:たしかにそうですね。「Illusion」では、そこだけちょっと明るいロックみたいになってますよね。「sink」に関しては唯一と言ってもいいクリーンのソロで、しかもちょっと明るめの音で。
Katsuki:ギター・ソロは、自分としてもひとつのフックになるものと考えているんですね。とはいえ、何か明確な世界観、土台があったうえで、プロデュースするべきだなと思っているんです。テクニックなどに関してはもう信頼してますからね。
——ご自身ではどんな作品に仕上がったと?
Katsuki:明るいなと思います。タイトルも太陽で……こんなことを言うと語弊があるんですけど、音楽を聴いた時に感じられるエネルギーや後押しされる感じって、別に歌詞だけじゃないなと思っていて。
たとえば、音がマイナー調とはいえ、すごく前向きなものになったし、そこは人間が素直に出たのかなと思うし。サウンドもヘヴィだったりしますけど、はっきりした音を出したいんですね。7弦ギター、5弦ベースのレギュラー・チューニングにこだわっているのも、いろいろ模索した中でのことなんです。それもあって、明るさがより増したのかなとは思いますし、自分達の存在をアピールできるものになったんじゃないかな。
桐子:前作のEP『芽』は、サイセイガの勢いや元気のよさを前面に出した作品だと思っているんですね。今回もその軸はぶらさずに、構成を凝った感じにしたり、ひとひねりを効かせたおもしろさをもっと出していきたかったんですね。
実際によりテクニカルな要素を入れたり、意外な展開を入れたり、思った以上のものができたなと思います。それからタイトルの“THE SUN”という言葉にも関係しますが、いろいろ不安定な状況の中でも聴いていると元気になれたり、闘争心みたいなものを思い出させる力強い曲が入ってるなと思ってます。
——タイトルは誰が決めたんですか?
桐子:それはReganが決めてくれました。
Regan:何かいい言葉はないかなと、歌詞を眺めてみた時に、太陽って言葉がめっちゃ出てきてたんですけど、今までのスタイルからすれば意外な印象だったんですよ。以前は月とか闇とか、影響を受けた90年代のヴィジュアル系っぽい要素のモチーフが好きだったから。これは何か必要なものが自然に出てきちゃってるんだろうなと思ったんですね。
Katsuki:時系列は覚えてないんですけど、Reganと『北風と太陽』みたいな話をしたんですよ。僕らのライヴのコンセプトというか、結果そうなってるって話なんですけど、熱さによってお客さんを脱がしていきたいわけです。僕らが熱くいれば、自然とそれに対して反応してくれる。音楽に情熱があり、自分達がやりきっている姿を見てほしい。そんな気持ちも含まれているのかなと。
——そうなんですか!? 今日もアルバムを聴きながら取材現場に来たんですが、『北風と太陽』なんだなと思って聴いてたんですよ。
桐子:えー、すごい!
Katsuki:すごいね(笑)。
Regan:やっぱ私も音に変えられたんだなあと思いますからね。このバンドの音を聴いて、自然に出てきた歌詞だったから。
——“坊主が屏風に”という一節も……。
Regan:この髪型じゃなかったら違和感あるかもしれないけど、刈り上げてるし、坊主を名乗ってもよいのではないかと(笑)。でも、あの「Illusion」という曲自体、イントロから酔っ払う感じがあるんですよね。“いくぞ!”っていうよりは、だんだん気持ちがよくなってくる。エンジニアのHiroさん(STUDIO PRISONER)からもおもしろい曲だねみたいな反応をもらったんですけど、これからもより大事な曲になっていくと思います。
——今回のオムニバスCDにも収録されるオープニング・トラックの「RIDE ON」はMVも先行公開されていますね。
Katsuki:この曲に関してだけは、バンドの次の代表曲になるようなものを書こうと思ったんです。EPを出して、さらに曲数を増やしてライヴを続ける中で、こういった方向性みたいなものがもっと広まれば、サイセイガがより強いものに映るんじゃないかなって。
Regan:歌詞もすぐにできましたね。その曲のデータをもらって聴きながら帰ったんですけど、家に着く前にはもう出来上がって。
Katsuki:それまでのある種のラフな部分ではなく、がっちりした筋肉質な音像が欲しかったんですね。それが軸になってさえくれれば、もっと自由になれると思ったし、それまでやってた曲もより活きるだろうなと思ったんですよね。
——逆説的に聞こえるかもしれませんが、この「RIDE ON」はアルバムの中で異色に思えるんです。今の話に即して言えば、これがいろんな広がりを見せるうえでの核になる曲ということなんでしょうね。
Katsuki:そうかもしれない。ライヴでも1曲目にやるだろうってことまで考えて作ってたんですよ。まずはがっちりしたものをぶつけて、そこから広がっていく。ストーリー的に、まさにおっしゃっていただいたような印象はありがたいですね。
Regan:最初に聴いた時は、だいぶ渋いし、伝わるかなって印象だったんです。でも、ライヴで1曲目に披露したら、フロアの熱量たるや、ホントにすごかったんですよ。
——ストレートであるがゆえに即効性が高いのでしょうね。「FEVER」がなければ、アルバムのエンディングに置いてもおもしろいと思いますし。ただ、この「FEVER」もサイセイガの特徴を表わすうえで重要な曲でもあって。
桐子:曲が出揃ってきて全体を見渡した時に、「GO ON!」みたいな明るく元気にみたいな曲がないかもなあと思ったんですよ。ただ、普段は思い描いたものを打ち込んだデモをKatsukiに投げるんですけど、この曲に関してはデモを作るのやめて、いちから2人で作ろうって言われたんですね。
Katsuki:あえて口で説明してくれって言ったんですよ。セッションっぽい曲作りをしたかったんですね。言われた言葉に対して、僕がアイディアを出し、それに対してまた考えてという感じで組み上げていって。
桐子:あれは、けっこう大変でしたね。とにかくもうわっしょいみたいな感じ。
Katsuki:底抜けに明るい雰囲気、お祭り感みたいなものが欲しかったんだろうね。
Regan:私は歌メロのデータをもらった時に、アイドル曲っぽいなと思ったんですよ。モー娘。とかももクロとかね。だから、ひとりで歌っているイメージが湧かなくて。けっきょく桐ちゃんにも歌ってもらいましたけど、わりと歌い方も他の曲とは違う、パーンて花火が上がるような爽やかな感じになってると思います。スタッフから“タオルを回したくなる”という反応があるぐらい(笑)、ライヴが見える曲だったんですよね。
Katsuki:「FEVER」にしても、「RIDE ON」にしても、僕は自分の中にあるものだったりを自然に出していくスタイルなので、あまり違和感がないんですよ。ただ、リズムのタフさみたいなものは絶対に崩したくないんですね、明るかろうが暗かろうが。そこだけなんです、サイセイガとして守りたいのは。あとは自由にやれたらいいかなと。
Wakkun:僕は「FEVER」を聴いた時、最初は“なんじゃこりゃ!?”状態でした。でも、制作を進めていくうちに、Katsuさんが言ったリズムのタフさも感じられたし、これはライヴでやったら絶対にいいんじゃないかって、思考もどんどん変わっていって。
Regan:でも、せっかく10曲あるからね、賛否なんて割れたらいいんだぐらいに思ってますよ(笑)。ライヴを観たり、自分のメンタルの状態でも聴こえ方は変わりますし。全曲いいのはわかってるからね。
取材:土屋京輔

▲Katsuki(b)、桐子(ds)、Wakkun(g)、Regan(vo)

■サイセイガ 公式サイト■
https://www.saiseiga.com/

アルバム『THE SUN』
SGM-0002
¥3,300(税込) 2月2日
①RIDE ON
②INSIDE
③DESTRUCTION
④CHAOTIC
⑤persona
⑥illusion
⑦sink
⑧ALIVE
⑨JOKER
⑩FEVER

◎モダンでヘヴィ、メロディアスでありつつグロウルもあり、あらゆる現代のメタルのエッセンスを取り入れた楽曲群が印象的なファースト・アルバムだ。
オムニバス収録曲である「RIDE ON」の印象でアルバムを聴くと、いろいろな角度から楽曲が迫ってくるのでおもしろい。幅広い10曲が収録された作品となっている。

■ライヴ予定■
3月19日=心斎橋ショヴェル
3月21日=上野音横丁
4月22日=“LUPINUS ROCK FESTIVAL 2022”(東京・下北沢9会場往来自由イヴェント)
4月24日=吉祥寺クレッシェンド(ワンマン/3月9日時点で販売予定数終了)
4月30日=吉祥寺クレッシェンド
5月1日=松山サロンキティ
5月2日=広島セカンドクラッチ
5月5日=巣鴨・獅子王