バラゲール・ギターズはロック・ギターのスタンダードになるか!?

2015年に米国ペンシルベニア州で創設された、伝統と革新を併せ持つ新興ギター・ブランド“バラゲール・ギターズ”が、いよいよ日本に上陸した。
今回は、代表であり製作にも携わっているジョー・バラゲール氏のインタヴューとともに、WeROCK読者にも目を引くであろうメタリックなモデルの試奏をお届けしよう。各所に職人ならではのこだわりが生かされた新ブランドに注目だ!


ヴィンテージとモダンの相乗効果相乗効果を活用したい

ジョー・バラゲール氏(代表)=インタヴュー

——バラゲール・ギターズは、いつ頃、設立されたブランドですか?
ジョー:設立は、2014年になります。
私は、楽器をデザインし構築していくうえで、ヴィンテージのインスピレーションをしっかりとつかみつつ、モダンなデザインのアプローチを取り入れることにつねに焦点を当ててきました。その精神は、企業としてバラゲール・ギターズを前進させていくものであり、私達の楽器作りへの取り組み方そのものなのです。なので、製作するうえで、私のヴィンテージ・ギターのリペアとしての経歴と、私自身がヴィンテージ・ギター愛好家であることをギター・デザインのアプローチに反映させています。
ギター製作の学校に通い、その後10年以上ギター作りに従事する中で、ヴィンテージとモダンなデザインの間のユニークな相乗効果を活用することが、最良の結果につながることだとわかりました。ヴィンテージからインスパイアされたギターには、それがノスタルジーであろうと美学であろうと、ギター文化における本質的な何かがあります。それを現代のデザイン・アプローチ、とくに人間工学の領域の部分や、木材やパーツの潜在的な変化の部分とミックスすることで、多くの改善が見込めます。ヴィンテージからのインスピレーションとモダンなデザインの要素の2つの世界を融合し、現代のプレイヤーのニーズに合致したユニークな楽器を実現しようと努力しているんです。
——ジョーさんは会社の代表でありつつ、ギター製作者でもありますよね?
ジョー:10代の頃から楽器に触れながらすごしてきましたが、2009年にギター作りのための学校に通うまで、ギター作りに関して真剣に考えていませんでした。
2009年にギター製作の学校を卒業して以来、ヴィンテージ・ギターの修復と修理、小規模ギター・ブランドやブティック・ショップのコンサルティング、他社のためにギター・デザインを行なう仕事などをして、 2014年になって初めて自分のブランドを立ち上げ、完全なる創造的な自由を手にすることができました。
——さて、バラゲール・ギターズの新製品として、スタンダード・シリーズが登場し、日本でも販売が始まりました。このシリーズは、どういったモデルになりますか?
ジョー:私達は 、あらゆるレベルのプレイヤーに高品質な楽器を所有してほしいという考えのもと、手頃な価格で良質なギターを提供したいと考えました。ひじょうに多くのプレイヤーが、価格帯やその他の理由でギターの特定のスペックにアクセスできず、諦めたり不満を抱えています。そのギャップを埋めつつ、高品質の木材、ハードウェア、ステンレス・フレットを持つ、一生使用できるギターを提供したかったのです。
——WeROCKでは、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルを愛するギタリストが多いことから、スタンダード・シリーズのDIABLO STANDARDに注目しています。このモデルの開発理念や特徴を教えてください。
ジョー:DIABLOはいわゆる“スーパーS”スタイルのギターでありつつ、現代的なアプローチに焦点を当てたモデル・シェイプの集大成です。メタルをプレイするのにも問題ありません。DIABLOはジャンルを横断するモデルとしてデザインしました。
——DIABLO STANDARDには、ヒップショットとエヴァーチューンという2種類のブリッジを搭載したモデルが発売されていますね?
ジョー:モダンなスペックのギターに興味を持つ多くの人が、エヴァーチューン・ブリッジを気に入る傾向があることがわかりました。そのいっぽうで、エヴァーチューン・ブリッジに圧倒され、通常のハードテイル・ブリッジを好むプレイヤーもいることもわかりました。実際には、エヴァーチューン・ブリッジは、一度仕組みを知れば、ひじょうに簡単に使用できます。
どちらのブリッジが最適か、両方の選択肢を提供しつつ、ユーザーに判断してもらうことが重要だと考えました。
——バラゲール・ギターズに興味を持っている日本のギタリストへメッセージをお願いします。
ジョー:ユニークさを求め、他の人とは違う楽器を手にしたいと考えているならば、あなたは正しい場所にいます。
私達、バラゲール・ギターズは、全員がプレイヤーであり、私達が手がけるすべてのギターやベースに、私達の音楽や楽器への情熱を注ぎこんでいます。プログレやメタル、フュージョン、カントリー、ポップ、はたまたジャズを演奏する場合でも、私達の手掛ける楽器は、本当に特別なものを提供する能力があると自負しています。 


Balaguer Guitars
Diablo Standard
with Hipshot Hardtail Bridge, Satin Trans Black

¥オープン

【仕様】
●ボディ
:マホガニーwithフレイム・メイプル・ヴェニア
ネック:ローステッド・メイプル、ボルト・オン
指板:エボニー、24フレット
ピックアップ:Truenobucker Humbucker
コントロール:ヴォリューム、トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター
ブリッジ:ヒップショット製フィックスド・ブリッジ
ペグ:グローバー製ロック式ペグ
カラー:サテン・トランス・ブラック(写真)、サテン・トランス・ホワイト
※主なスペックは同じで、ブリッジにエヴァーチューン(写真下)を搭載したモデルもラインナップしている。

【試奏】
美しい虎目のボディに鋭角的なヘッドを持ち、ヘヴィ・メタルっぽさも感じさせるモデルだ。
持ってみると、見た目よりも遥かに軽い! バランスもよく、立って弾いても座って弾いても疲れ知らずで弾き続けられるギターだと感じさせてくれる。生音で弾いてみると、その時点で“いい鳴り”をしてくれているので、これは期待が持てる。
弾いた印象からいってみよう。ネックは、薄めのシン・タイプで指板もフラットだ。だからといってネックのエッジが角張った感じもなく、スムーズにフィンガリングできる。ネックでいちばん特徴的だと思ったのはフレットだろう。極太で高めのフレットはステンレス製で、ヴィブラートやチョーキングをすると心地よくついてきてくれる。サビにも強いステンレス・フレットが滑らかな弾き心地も実現してくれているのではないだろうか(エボニー指板というのもあるかもしれないが)。
フィンガリングの部分でいうと、カッタウェイがしっかりと入っている24フレット仕様は最終フレットまでストレスなく弾ける。あまりにスムーズに弾けるので、22フレットに慣れていると、一瞬、戸惑ってしまうほどだ(汗)。右手の弾き心地も、かなり弾きやすい! エルボー・カットされているボディからブリッジまでの傾斜が肘から手首にかけてフィットし、ヒップショット製のシンプルなブリッジが弾きやすさを引き出している。ブリッジ・ミュートもしやすく、腕や手首をボディに乗せるタイプのギタリストなら抜群の弾き心地を提供してくれるだろう。
さて、いよいよサウンドだ。ディストーション・サウンドで弾いてみると、中高域がプッシュされたメタリックなトーンを出してくれる。ピックアップがダイレクト・マウントされているのも、そのトーンに一役買ってるのではないだろうか。アメリカンというか、80年代のLA的な高域に特徴を持った倍音豊かなサウンドだ。5〜6弦でパワー・コードを弾くと、かなりヌケのいいサウンドを出してくれる。1〜6弦までバランスよくヌケてくれるのだが、これはピックアップの性能なのだろうか!?
クリーンを弾いた時の印象は、ボディ材(メイプル・トップ+マホガニー・バック)のとおりな音と感じたが、ドライヴさせるとメイプル・トップ+マホガニー・バックなトーンに、さらに中高域を多めにプラスしたオーバードライブ・サウンドを作り出してくれる。弦が裏通しなのとリヴァース・ヘッドなので、低音弦のテンションも強く、このテンション感とヌケならば、ロー・チューニングにしてもいいトーンで鳴ってくれるはずだ。
う〜ん、かなり職人のこだわりで作られたギターだというのがわかる1本だった。

ネック・ジョイント部。
広めに取られたスクープ・カットがハイ・ポジション部での弾きやすさを高めている

ペグは、高い信頼性を誇るグローバー製のロック式が採用されている

▲今回は試奏できなかったが、これが注目のブリッジ“エヴァーチューン”。
かなり注目度の高い仕様のようだ


その他にも個性豊かなモデルがラインナップ!

◎今回、試奏したDiabloスタンダードの他にも、バラゲール・ギターズのさまざまなモデルが上陸している。
その代表格が、下のEspadaスタンダードとThicketスタンダードだ。それぞれ、その形状、そしてポップなカラーリングに特徴があり、女性ギタリストが手にすると映えそうなカラーだ。写真で紹介しているフィニッシュの他にも、数種類用意されているので、ぜひオフィシャル・サイトなどで確認してみよう。
ジョー:これらのモデルは、ヴィンテージのインスピレーションとモダンなデザインの要素を融合させるという、ブランドとしての主たるデザインの理念を表わしています。Espadaは手にした時の感覚がひじょうにユニークでありつつ、人間工学的でもあります。 Thicketも身体によくフィットします。

Espada Standard
Gloss Pastel Pink

Thicket Standard
Gloss White

■バラゲール・ギターズの詳細
https://www.kandashokai.co.jp/flos/balaguerguitars/

■バラゲール・ギターズが通販で購入可能■
○神田商会オンライン・ストア
https://store.kandashokai.co.jp/c/gr1414
○御茶ノ水楽器センター
https://www.gakkicenter.com/SHOP/161979/225473/list.html