360 Reality Audioでラウドネスを聴く 〜第2弾『8117』編
WeROCK 084やこのWeROCK EYES でも紹介した360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティ・オーディオ/以下360RA)が、各地で反響を呼んでいる!
すでに体感した人は、そのすごさに驚いているだろうが、WeROCK 084で紹介した『8186 LIVE』に続いて、現メンバーでその『8186 LIVE』を再現した『8117 LIVE』の360 RA化が発表された。
そこで今回は、360RAを手掛けるエンジニアに、360RAの魅力と、ラウドネスの音を360RA化したことでわかった素晴らしさを聞いてみた。
360 Reality Audioとは?
▲上の図を見てもらえればわかりやすいだろう。左上がこれまでのステレオ再生、右上がサラウンド、左下が3Dサラウンド、というイメージだ。
それらに対して、360RAは、上からも下からも含む、全方位から音が聴こえてくる感覚のシステムになっている。これを、通常のヘッドホンで体感することが可能なのだ
エンジニア・インタヴュー
▲『8117 LIVE』の360 Reality Audio化を担当した野口素弘エンジニア。
これまでに、浜田省吾やTOTALFAT、FLOW、ねごと、チャットモンチーなどの作品を担当し、海外でのDSDレコーディングにも同行するなど、幅広いジャンルの作品に携わっている。
第23回日本プロ音楽録音賞(2016年) 最優秀賞や、第20回日本プロ音楽録音賞(2013年) 新人賞などの受賞歴もあるエンジニアだ
——野口さんは、360 Reality Audio(以下、360RA)専門のエンジニアなのでしょうか?
野口:いえ、基本的にはソニー・ミュージックスタジオのレコーディング・エンジニアとして録音とミックスを担当しております。360RAを担当したのは1年ぐらい前からで、まずは360RAのデモをミックスするようになりました。その時は、まだProToolsで作れるソフトではなかったので、ものすごくたいへんな作業で(笑)。ProToolsのプラグインとして導入されたのは、ここ半年ぐらいなんですよ。なので、じつは、まだまだ、いろいろ悩みながらやっている感じなんです。
——360RAというシステムを知った時、どういう印象を持ちましたか?
野口:好きなところに楽器を配置できるので、音源であれば臨場感や空間の広がりをものすごく出せます。やはり映像が付いているとものすごくおもしろいのですが、ふつうの録音物においても、それぞれの楽器をいろいろな位置に置けるので、アレンジという意味でも幅が広がりますね。
——360RAを手掛ける前から、サラウンド的なミックスを担当されたことはあったんですか?
野口:浜田省吾さんの劇場用のドルビーアトモスの作品で手伝ったものがあったので、空間オーディオとしての知識は持っていました。360RAに関してはデモではいろいろ録っていましたが、世に出る音源として初めて手掛けたのがラウドネスの『8186 LIVE』になります。
あの音源はマスターがテープの時代だったので、元の24トラックをデータ化したものはあったのですが、当時は2デイズのライヴで、その2日間が入り混じっているデータでして。誰も詳細がわからなくて、どのデータの曲がアルバムに収録されたのかを聴き比べるところから始めて、判明した楽曲のみ手掛けさせていただきました。
——どちらの日かわからないとNGだったんですか?
野口:CD製品として世に出てますから、違う日の楽曲を360RAにするのは……という問題がありまして。CDと聴き比べて、ちょっと歌い回しが違うとか、ソロのニュアンスが異なるというのを聴き比べて探しました(笑)。
楽曲を選んでからは改めてミックスすることから始めるんですが、僕なりに現代的でもあり360RAなりの会場の広がり感を意識してミックスしました。元のCDと違いすぎて“これはラウドネスのサウンドじゃない”となってもいけないので、なるべく寄せつつ現代的なリバーブ感にしたりという作業ですね。伝説的なライヴと聞いていたので、オリジナルのよさをなるべく崩さないようにミックスしました。
苦労した点と言えば、当時のデータは24トラックしかなくて、オーディエンスのトラックがまとまってしまっていたし、ドラムも“キック、スネア、それ以外”というまとめ方になっていて“360度のイメージを考えたいけどタムとシンバルは一緒になってしまう”などと制約がありました。ただ、その音でもうまく作り上げることができたと思います。
——CD盤と聴き比べると、どちらのよさもあると感じました。
野口:CDがタイトな音像なのに対して、360RAは“あの当時のライヴ会場を思い出してもらいたい”という臨場感を再現したかったんです。
——いちばん苦労した点というと?
野口:とにかく樋口さんのドラムがパワフルで、そこをどう再現しようか、と。すごくいい音してるんですよ。臨場感を出そうと広げるとドラムが遠くなってしまうので、あのパワフル感をどう出そうかというのが難しかったです。
——臨場感というと、どの席でライヴを見ている雰囲気を再現しているんですか?
野口:いちばん、いい場所で聴いてる感じですね。『8117 LIVE』は、『8186 LIVE』よりギターが広がっています。『8186 LIVE』の時は、データを開いても、どのトラックが何か書かれていなかったので(笑)、あまり大胆なことができなくて。それに比べて『8117 LIVE』は詳細がわかるので、いろいろとできました。映像も観させていただいて、盛り上がり感や会場の感じもわかって、やりやすかったです。
あと、音圧という問題がありまして、『8186 LIVE』の時はまだ360RAで音圧をどこまで出せるのかが確立されてなかったため難しかったんですね。それに比べて、今回はマスタリング工程の際に特殊な作業をして前回より音圧が出ています。ラウドネスというぐらいなので、そこは出したかったんですね。好きなだけヴォリュームを上げて聴いてほしいです。
——高崎さんのギターのリバーブ感も、すごく臨場感ありますね。
野口:あれは会場のリバーブ感で、自然のものなんです。そういった意味での自信作は「SHADOWS OF WAR」で、ライヴ会場の空間がよく再現できて、360RAのよさをいちばん感じることができると思います。全体的に、ラウドネスのよさを出すためにハデに作ったつもりなので、ぜひ聴いてほしいですね。
▲こちらは、ソニー・ミュージックスタジオ内にある360 Reality Audio制作のためのスタジオ。
全方位にスピーカーが設置されており、あらゆる角度に定位された音が降り注ぐ。一般には開放されていないのだが、この感覚をヘッドホンで聴けるのだ
▲こちらは、『8117 LIVE』の貴重なProToolsミックス画面。
360 Reality Audioは、ProTools上のプラグインを使用して行なう。インタヴューにもあるように、一度、ミックスし直したものを、さらに360RA化するという作業を経て完成するのだ
編集部で聴き比べ!
CD vs 360 Reality Audio
比較したCD音源は、 下写真の4枚組リマスター盤だ。
まず、オープニングの「LOUDNESS」のイントロ・アーミングから、360RAミックスではCDと違い頭の中をグルングルンとしてくれる。そして、各楽器が入ると、その奥行き感がまったく違う。
ヴォーカル、ギター、ベースの存在感が、まさにライヴ会場にいる雰囲気なのだ。ミックスもやり直しているとのことで、キックのアタックやベースの太さが360RAでは押し迫ってくる感じだ。あとは、とにかくギター・ソロの空気感がすごい!
▲『8117 LIVE』を聴くことができるCDは、2017年12月にリリースされたライヴ・アルバム『8186 Now and Then』だ。
2017年4月にZepp Tokyoで行なわれた“8186完全再現ライヴ”と、その名盤『8186 LIVE』のリマスター盤を合わせた4枚組作品
ワーナーミュージック
WPCL-12787/90
¥6,380(税込)
360 Reality Audioを聴く方法は!?
現在、360 Reality Audioを聴くには、ストリーミングを利用した以下の方法があるのでご紹介しよう。
まずは、「360 by deezer」というスマホ専用アプリを使用する方法だ。
こちらは、音にこだわった360 Reality Audioを、みなさんが現在使用中のヘッドホンやイヤホンでも体験可能なストリーミング・アプリ。通常のヘッドホンの他、ソニーから発売されている認定ヘッドホンを使用すれば、さらに360 Reality Audioが、よりリアルに楽しめる!
■360 by deezerの詳細■
https://www.deezer.com/ja/devices/app/360bydeezer
そして、Amazonが提供する「Amazon Music HD」では、360 Reality Audio認定スピーカーを利用することで360 Reality Audio が体験可能。
■Amazon Music HDの詳細■
https://www.amazon.co.jp/music/unlimited/hd
※この他、海外のストリーミング・サービスであるnugs.netでも360 Reality Audioのストリーミング・サービスを行なっている。
『8117 LIVE』が配信開始
すでにアルバム『8186 LIVE』音源の中から「Loudness」「Rock Shock(More And More)」「Dark Desire」「Streetlife Dreams」「Crazy Doctor」の配信が開始され、現在では『8117 LIVE』もDeezer、Amazon Music HDにて配信が開始されている。
また、ソニーの360 Reality Audioを紹介している公式サイト内で360 Reality Audioを疑似体験できるようになっている。
詳しくは下記のサイトにアクセスしてみてほしい!
https://www.sony.co.jp/united/360ra_sounddive/#j_music
■360 Reality Audioの詳細■
https://www.sony.jp/headphone/special/360_Reality_Audio/