プロを納得させるアーニーボール弦〈ギター編その1〉
国内外を問わず、多くのプロ・ギタリスト/ベーシストが愛用しているアーニーボール弦。今回、ラウドネスの高崎 晃 & 山下昌良の証言やギター・テックへの取材、そして試奏レポートという形で、あらためてアーニーボール弦の魅力を3回にわたってお伝えしたい!
※グラフは各製品の優劣を示すものではなく、キャラクターを示すものです。
※WeROCK 072の掲載記事より。
高崎 晃(ラウドネス)の証言
「弾いた音のニュアンスを出してくれる弦だね」
▲写真:JOHN CHEESEBURGER
弦を選ぶ時に重要視してるのは、自分の感覚だね。鳴らない弦は、まず使わない。
そんな俺が選んだのが、アーニーボールのコバルト弦。すぐに自分のプレイにフィットする弦だと思ったよ。ゲージは、レギュラー・チューニングが09〜46で、ダウン・チューニングには10〜52を使ってる。コバルトは、左手の弾き心地もいいし、ラウドなんだ。ブライトでハイもしっかり出るし、弾いた音のニュアンスも出てサスティンもある。細かいニュアンスが出てくれる弦が好みなんだよね。チューニングの安定性もいい。コバルトを気に入ってからは他の弦を試してないからわからないけど、音ヌケもいいはずだよ。弦の寿命も長いしね。
とにかく選んだ最大の理由は音質。破壊力が他の弦より大きい。アーニーボールの弦は、どれも素直な音が出てくれるし、すべてにおいて信頼性が高い。好き嫌いは人それぞれだと思うけど、弦を選ぶ時は自分の感覚を大切にしてほしいね。
ラウドネスのギター・テックが明かす“弦の秘密”
▲ラウドネスの楽器を支えるスペシャルなクルー!
左より、高崎担当の金谷“CHIN”秀行氏(レオ・ミュージック)と、山下担当の伊藤“いとぺん”浩一氏
——高崎さんや山下さんから、弦交換の際にリクエストなどありますか?
CHIN:ギターでいえば、毎回、テンション感が同じになるようにとは言われます。それも、弦自体ではなく、弦高だったり他の原因のほうが多いので、弦交換に関してはお任せな感じですね。
いとぺん:ベースも、とくに山下さんから言われることはないですね。ただ、本人がいちばん気にしているのは、弦の寿命が近づいてる時の音の張りですね。なので、弦交換に関してのリクエストは、とくにはないですね。
——寿命に関しては、高崎さん、山下さん本人が判断されるのですか?
CHIN:ギターの本数が多いので、だいたい1公演で1本につき3〜4曲ぐらいしか使用されないのですが、高崎さんの場合は衣装で革を着ていることも多く、けっこう汗をかかれるんですね。手だけではなく身体全体の汗で弦にも湿気が付くので、意外と毎回交換してます。交換しなくても大丈夫そうだなと思う時でも、リハーサルをやった段階で“ちょっとまずいかな?”と思ったら、本番の直前でも交換してます。
いとぺん:ベースは、曲によってベース自体を持ち替えることは少ないんですが、やはり1公演ごとに交換しますね。張り替えができなかった時でも、山下さんはリハの時に“ちょっと、この弦、死んできてるよ”と敏感に感じられる方なので、言われる前に交換します。新品であれば、まず問題ないのでね。
——ベースもライヴごととなると、アマチュアでは予算的に難しい話ですよね(笑)?
CHIN:たぶん、僕も高崎さんじゃなかったら替えないですよ。弦の音が生きていることが大切なので。新品ならではのトーンの問題が大切で、切れるとか寿命的なことではないんですよ。
いとぺん:アーニーボールのコバルト弦は寿命も長いと思うんですよ。だから、たとえば2日間のライヴがあったとして、初日が終わって次の日でもリハは行けるんですけど、本番の後半になって新品のトーンが出なくなると困るので事前に替えるようにしてます。
——そのあたりは、ギターを触った時にわかるものですか?
CHIN:それよりも、高崎さんがリハで弾いてる音を聴いて“いつもの音と違うな”と感じれば、本番前に替えたほうがいいなとなりますね。
——それは弦の寿命が短いというわけではなく?
CHIN:そういうことではないですね。高崎さんや山下さんだから、ですね。ふつうだったら、ぜったいに替えないですね。
——高崎さんも山下さんも、コバルト弦を使用されていますが、もちろん他の現場ではCHINさんもいとぺんさんも違う種類の弦を使用していると思います。他の弦と比べてコバルトはどうですか?
CHIN:コバルトは、すごくヘヴィ・メタルのサウンドに合ってると思います。トーンにキラびやかさがあって音ヌケもいいんです。それに、じつは耐久性も、すごくよくてコーティング弦じゃないのに持ちがいいなって思うんです。だから、先ほど言っていた交換のタイミングも、すごく細かいところでの話なんです。1%でも最善をつくす感じです。
いとぺん:ベースも同意見ですね。コバルトはロックにすごく合うと思います。音ヌケもいいですし、山下さんじゃなければ1公演ごとに替えなくても、ぜんぜん行けると思うんです。交換するのは、よりインパクトがある音を目指すためですから。
CHIN:それに、コバルトは材質のおかげか、精度が高い印象があるんですよ。弦ごとにバラつきがないですし、弦の問題で切れたこともないです。弦って、袋に丸まって入ってるじゃないですか? そこから出した瞬間にまっすぐになってくれて、ヨレがないんです。たまに、安価な弦とかだと、同じものを買っても精度の違いがあったりするんですが、それがないんです。
いとぺん:チューニングも安定しやすいですよね。
CHIN:ずっと伸びる弦とかあるもんね。ぐいぐい伸ばさなくても、すぐに安定してくれます。弦が1本ずつ袋に入ってるじゃないですか? それのほうが、やっぱり信頼性がぜんぜん違いますね。
いとぺん:やはりアーニーボールの弦は、どれでも安定してますよね。
CHIN:なによりも高崎さんが使ってるわけですから、ハード・ロック系のサウンドをやるならぜったいに試してもらいたいですね。ラウドネスが選んだ弦なわけですし、自信持ってオススメできます。
高崎の弦交換を公開!!
▲①まずは、交換前の弦を外すところから。
CHIN氏は手動のワインダーを使用!
▲②すべての弦を外したところ。
写真ではややわかりづらいが、ペグの向き、穴の向きをそろえている
▲③巻き弦を切る際、ここの部分を切断!
これをブリッジ側でロックする
▲④さらに太い部分に切り込みを入れる。
これにより、ロックされた時の安定度が増すそうだ
▲⑤どこから弦を巻くのかを計っているところ。
第2関節あたりを目安にしている
▲⑥すべての弦を巻き終えてからネック側の弦を切断していく終了!
試奏レポート〜ギター弦 編
SLINKY NICKEL WOUND
ロック・ギター弦の定番といえるレギュラー・モデル
まさに、ギター弦の標準と言っても過言ではないアーニーボールのレギュラー・モデル。
今回は高崎 晃が使用しているゲージ(09〜46)に合わせて、ハイブリッド・スリンキーを基準としてみた。ハイブリッドといっても、ワウンド弦(4〜6弦)がレギュラー・スリンキー、プレーン弦(1〜3弦)がスーパー・スリンキーとの組み合わせなので、基本はレギュラー・モデルと変わらない。弾いてみると、おなじみのアーニーボールのトーンだ。倍音豊かでテンション感もちょうどいい標準となるモデル。なお、下記のグラフは、このモデルを基準とするのでフラットとしてある。
〈6弦用〉
●PRIMO SLINKY/P02212:.0095、.012、.016、.024、.034、.044 ¥1,500+税
●MEGA SLINKY/P02213:.0105、.0135、.0175、.028、.038、.048 ¥1,500+税
●MAMMOTH SLINKY/P02214:.012、.016、.024w、.034、.048、.062 ¥1,800+税
●SKINNY TOP HEAVY BOTTOM SLINKY/P02215:.010、.013、.017、.030、.042、.052 ¥1,700+税
●POWER SLINKY/P02220:.011、.014、.018p、.028、.038、.048 ¥1,500+税
●REGULAR SLINKY/P02221:.010、.013、.017、.026、.036、.046 ¥1,500+税
●HYBRID SLINKY/P02222(写真):.009、.011、.016、.026、.036、.046 ¥1,500+税
●SUPER SLINKY/P02223:.009、.011、.016、.024w、.032、.042 ¥1,500+税
●EXTRA SLINKY/P02225:.008、.011、.014、.022w、.030、.038 ¥1,500+税
●BURLY SLINKY/P02226:.011、.014、.018p、.030、.042、.052 ¥1,500+税
●ULTRA SLINKY/P02227:.010、.013、.017、.028、.038、.048 ¥1,500+税
●NOT EVEN SLINKY/P02626:.012、.016、.024p、.032、.044、.056 ¥1,700+税
●BEEFY SLINKY/P02627:.011、.015、.022p、.030、.042、.054 ¥1,700+税
〈7弦用〉
●POWER SLINKY 7-STRING/P02620:.011、.014、.018p、.028、.038、.048、.058 ¥2,000@+税
●REGULAR SLINKY 7-STRING/P02621:.010、.013、.017、.026、.036、.046、.056 ¥2,000+税
●SUPER SLINKY 7-STRING/P02623:.009、.011、.016、.024w、.032、.042、.052 ¥2,000+税
〈8弦用〉
●SKINNY TOP HEAVY BOTTOM SLINKY 8-STRING/P02624:.009、.011、.016、.024、.034、.046、.064、.080 ¥3,300+税
●SLINKY 8-STRING/P02625:.010、.013、.017、.030、.042、.054、.064、.074 ¥3,200+税
〈9弦用〉
●SLINKY 9-STRING/P02625:.009、.011、.016、.024、.034、.046、.064、.080、.105 ¥4,500+税
〈12弦用〉
●SLINKY 12-STRING/P02230:.008、.010、.014、.024w、.032、.040、.008、.010、.008、011、.017、.022w ¥2,700+税
〈バリトン・ギター用〉
●SLINKY 6-STRING/P02839:.013、.018p、.030、.044、.056、.072 ¥2,400+税
〈6弦ベース・ギター用〉
●SLINKY 6-STRING/P02837:.020、.030、.042、.054、.074、.090 ¥3,300+税
SLINKY COBALT
高崎 晃が認めた新時代の弦
高崎 晃愛用のコバルト弦だ。このモデルは、鉄とコバルトを独自の技術で配合して開発したというマグネティック合金を採用。従来のニッケル合金よりも高い磁性体を獲得したことで、ピックアップの磁力と相互作用するという、最先端の弦といえる。
まず、弦の色が違う! これが、コバルトかと思いつつ弾いてみると、レギュラー・モデルよりも柔らかめの印象で弾きやすい。テンションもちょうどよく、チョーキングやヴィブラートが思い通りにかかってくれる。かなりロー・エンドが出てくれてブライトなのも特徴で、パワー感がいちだんアップしている。
〈6弦用〉
●SKINNY TOP HEAVY BOTTOM SLINKY COBALT/P02715:.010、.013、.017、.030、.042、.052 ¥3,400+税
●POWER SLINKY COBALT/P02720:.011、.014、.018p、.028、.038、.048 ¥3,200+税
●REGULAR SLINKY COBALT/P02721:.010、.013、.017、.026、.036、.046 ¥3,200+税
●HYBRID SLINKY COBALT/P02722(写真):.009、.011、.016、.026、.036、.046 ¥3,200+税
●SUPER SLINKY COBALT/P02723:.009、.011、.016、.024、.032、.042 ¥3,200+税
●EXTRA SLINKY COBALT/P02725:.008、.011、.014、.022、.030、.038 ¥3,200+税
●NOT EVEN SLINKY COBALT/P02726:.012、.016、.024p、.032、.044、.056 ¥3,500+税
●BEEFY SLINKY COBALT/P02727:.011、.015、.022p、.030、.042、.054 ¥3,500+税
〈7弦用〉
●REGULAR SLINKY COBALT 7-STRING/P02728:.010、.013、.017、.026、.036、.046、.056 ¥3,600+税
●POWER SLINKY COBALT 7-STRING/P02729:.011、.014、.018、.028、.038、.048、.058 ¥3,600+税
●SKINNY TOP HEAVY BOTTOM SLINKY COBALT 7-STRING/P02730:.010、.013、.017、.030、.042、.052、.062 ¥4.300+税
※試奏レポートの続きは〈ギター編 その2〉をご覧ください!
http://rockinf.net/eyes/?p=3408
プロ・ギタリスト & ベーシストの証言
ルーク篁(CANTA)
使用弦:SLINKY NICKEL WOUNDのPOWER SLINKY(11-48)※1音下げ時
◎気に入っているのは、何と言ってもブライトなトーン! 昔はハデすぎると思って敬遠していたが、この明るさはやはり魅力だ。
弦の交換は、ツアー中はステージごとに行なっている。ふだんは見た目が汚くなってきたら行ない、レコーディング中はブライトさが消えてきたら行なっている。
和嶋慎治(人間椅子)
使用弦:SLINKY NICKEL WOUNDのHYBRID SLINKY(09-46)※レギュラー・チューニング時/
SLINKY NICKEL WOUNDのSKINNY TOP HEAVY BOTTOM SLINKY(10-52)※ダウン・チューニング時
◎テンションが弱めでチョーキングがしやすいこと、そしてブリリアントで、いい意味で暴れ感のあるサウンドで気に入っています。けっこう寿命が短いので、レコーディング時は毎日、ライヴの際はステージごとに張り替えています。
Shu(TSP)
使用弦:SLINKY M-STEEL、またはSLINKY NICKEL WOUNDのTOP HEAVY BOTTOMで、ゲージはどちらも10-52
◎ずっとM-STEELの低域が締まっていてレンジの広いトーンが好きで使っていたんだけど、最近、レギュラー・モデルも使ったら、そのトーンも捨てがたくなりました。なので、ライヴではレギュラー・モデル、レコーディングではM-STEELと使い分けています。
問:株式会社コルグ
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