【試奏動画連動】ケリー・サイモン流 OXでの音作り
真空管アンプを鳴らしたい! でも、音量が大きすぎて……というギタリストは多い。そんな悩みを解決してくれるのが、OX(オックス)だ。アッテネーターとしてだけでなく、専用のソフトが愛用の真空管アンプ・サウンドでのレコーディングを強力にサポートしてくれるのだ。ケリー・サイモンが、このOXに迫る!
※WeROCK 072の掲載記事より。
■ケリー・サイモンによる試奏動画
——音作りの前に、まずOX本体をチェックしてもらいました。パネル中央のスピーカー・ヴォリュームというツマミですが、これはいわゆるアッテネーター的なものになるんですね。
ケリー:そうですね。5段階で設定できるんですが、いちばん上の5の状態でだいたい80%ぐらいの音量に抑えることができます。で、3の状態で30%ぐらいまで落とせる印象ですね。僕のアンプは50wなので3の状態で自宅でも鳴らせるレベルまで落とせます。1だと音量的には1wアンプを鳴らしている感じですが、キャビネットの余裕などもあって、1wアンプを鳴らす時よりも広がりや深みがありますよ。
——マスター・ヴォリュームでのコントロールとは違いますか?
ケリー:ふくよかさを残したまま音量を落とせます。アッテネーターとして有能だと思いますよ。使う前はデジタルのイメージが強かったんですけど、使ってみたらいいですね。プロを目指す目指さないは別にして、ギターを弾くなら真空管で歪ませるとどういう音なのかということを知っておいたほうがいいですし、OXがあれば音量を下げた状態でそのトーンで弾けますからね。
——そして、専用のソフトウェア(iPad/Mac/Windows対応)を使って、難しいマイキングなどをせずに好みの音を簡単に作れるというのが魅力です。
ケリー:こういう機材やソフトはいろいろ機能が付いているぶん、個人的には使いにくいところもあったんです。でも、OXは多機能だけど、すごいシンプル。わかりやすい画面で、好みのセッティングが選べます。
——好みのセッティングはどんな感じですか?
ケリー:まず、重要なスピーカーですが、自分のアンプは50wなので、このグリーンバックのスピーカーが4発入っているのが、いい意味で音を潰しやすいですね(4×12 GB12 Thick、4×12 GB12 Punch)。Punchのほうがタイトでパワフル。飽和している感じが出せます。ストラトキャスターの音を太く出せます。Thickは中域や低域にポイントがありますね。4×12 Super 80は80wスピーカーのモデリングらしいですが、またキャラクターが違った感じです。僕が好きな80年代的なサウンドに向いているかなと思います。どれもキャビネットならではの箱鳴りも再現されてますよ。
——マイクもいろいろ入っていますね。
ケリー:僕はふだんのレコーディングでシュアーの57を使っているんですが、そのモデリングの“DYN 57”を試してみました。弾いた瞬間に、いつもの57の音がするなってわかりましたよ。他にも“クジラ”と呼ばれるゼンハイザーの421のモデリングやAKGの414のモデリングなどが選べますね。試奏映像では、コンデンサー・マイクのモデリングである“CON 67”も試してみましたが、思っていた以上にハイが出てくれますね。マーシャルのプレゼンスがしっかりと録れています。気になるようでしたら、オフ・マイクにするといい感じのハイになると思います。
——そのマイクですが、3本も使えます。
ケリー:マイクの1と2はオン・マイク、オフ・マイクが切り替えられて、3本目はルームですね。僕は、ふだんはマイクは1本しか立てないんですが、今回はもう1本オフ・マイクを立ててみました。オフ・マイクは基本的にこもるので、ロー・カットを入れて使ってみました。マイクが2本なのでステレオで録ることもできるし、1本はダイナミック、1本はコンデンサーという使い方もいいですね。それぞれEQも付いているので、とことんこだわれますよ。ルーム・マイクも、僕はアルペジオを弾く時など以外は基本的には使わないんですが、これもわかりやすくて使いやすいです。レコーディングでのマイキングは同じようにしてもその時々の環境によって音が変わるし、1mmでもマイクの位置が変わると音が変わる。しかも、アルバムなどで何曲か録ろうと思うと、全部同じ音で録るのは難しいんです。昔のアナログ・レコーディングだとそこまで違いが明確ではなかったですけど、今はクリアに録れますからね。このRigだと同じセッティングでレコーディングすることができるし、そのぶん演奏に集中できますし。
——そして、後がけ用のEQやコンプ、ディレイ、リバーブも入っていますね。
ケリー:僕も基本はドライで録って、リバーブとかは全部、後がけしているんですけど、このRigに入っているエフェクター類が高品位でいいんですよ。スタジオ・レベルのコンプやEQの音をちゃんとモデリングしている。ユニバーサル・オーディオならではだと思います。あと、EQはギターの帯域に特化していて、ズンズンくる80〜120Hzあたりや、こもりを調整できる400Hzあたり、そしてリード・ギターをふくらませるために重要な900Hzというところですね。ソリッドなリフを弾く時は、ここを下げてドンシャリにするといいかもしれないです。そして、高域の4kHzや5kHzあたりも調整できる。コンプは僕は基本的にはあまりかけないんですが、OXでは名機の1176が入っているし、ディレイやリバーブはひじょうにクリアにかかるタイプ。弾いていて楽しくなりますね(笑)。ディレイやリバーブに関しては、まず極端にかけてみてから、自分の好みのトーンを探していくのがいいと思います。
——全体的な印象を教えてもらえますか?
ケリー:まず、マイキングなどのレコーディングでのセッティングが、指先で簡単に間違いなくできるという。信じられない世の中ですね(笑)。実際にこれだけのキャビネットやマイク、エフェクターを揃えようと思うとすごい金額になるし、それが手に入れられるというのもすごいところですよ。で、僕はスタック・アンプのキャビネットが、ギター・サウンドのいちばん重要な部分だと思っているんですね。今回、OXで自分のアンプ・ヘッドを鳴らしてみたところ、しっかりとその音質を変えずにアッテネートできたし、Rigに入っているキャビネットにもかなりこだわりを感じましたね。この音なら、本物のキャビを鳴らしていると思われる人も多いと思いますよ。好みのアンプ・ヘッドを持っている、使いたいというギタリストは使ってほしいですね。
ケリー流セッティング〜スピーカー・キャビネット
▲まずはスピーカー・キャビネットを選択。17種類のプリセットの中から、今回は“4×12 GB12 Punch”と“4×12 Super 80”などを試してみた。画面上段にスピーカーが表示され、指先で左右にスワイプするだけで選択できる。また、ケリーのアンプは50wということでインプット・レベルも50wを選択(画面では中央あたりの左端)。その下の“SPEAKER DRIVE”は右に回すと、いわゆるエイジング効果が加わり、使い込んだスピーカーのようなニュアンスを足すことができる。
ケリー流セッティング〜マイク
▲キャビネット用マイクは7種類のプリセットが用意されている。試奏映像内では、まず1本目のマイクとしてコンデンサー・マイクの“CONDENCER 67”をオン・マイクとオフ・マイクでプレイ。続いては、2本目にダイナミック・マイクの“DYNAMIC 57”もセットしてチェックした。写真右上はマイク1とマイク2ともに“DYNAMIC 57”をセットした画面で、マイクは2はオフ・マイクにしてロー・カットしているのがわかりやすく表示される。ルーム・マイクとして3本目も使えるが、今回は不使用のためレベルは0だ
ユニバーサル・オーディオ OX ¥オープン(実勢価格 ¥148,000+税)
〈仕様〉
●アンプ・インプット:コネクター=1/4”メスTSアンバランス、入力インピーダンス=4/8/16 Ω(選択式)、最大許容入力=150w RMS/200w RMS Peak、安全負荷(電源オフ時)=16 Ω
●スピーカー・アウト:コネクター=1/4”メスTSアンバランス、出力アッテネーション値=6段階(dB) 0/6/12/24/36/∞(= スピーカー・オフ)
●ライン・アウト 1-2(ステレオ1系統):コネクター=1/4”メスTRSバランス、ダイナミック・レンジ=114.5 dB(A-Weighting)、周波数特性=20 Hz – 20 kHz、±0.1 dB、S/N比114.0 dB(A-Weighting)、THD + N:-110 dB @-3 dBFS、チャンネル・セパレーション=129 dB、出力インピーダンス=100 Ω、最大出力レベル=20.2 dBu(バランス時)
●ステレオ・ヘッドフォン・アウト:コネクター=1/4”メスTRSステレオ、ダイナミック・レンジ=113.0 dB(A-Weighting)、周波数特性=20 Hz – 20 kHz/±0.1 dB、S/N比=113.0 dB(A-Weighting)、THD + N=-107 dB @-3 dBFS、最大出力レベル=80 mW @600Ω
●デジタル・アウト:フォーマット=S/PDIF IEC958、コネクター・タイプ1=RCAメス、コネクター・タイプ2=オプティカル TOSLINK JIS F05、サンプルレイト:44.1 kHz、量子化ビット=24
●電源仕様:パワー・サプライ=専用ACアダプター(付属)、入力AC電源仕様=100 V – 240 V AC/50 – 60 Hz、出力DC電源仕様=12 V DC ±5%/1.5 A、最大消費電力=18 W、動作環境気温=0°〜 40℃、保管環境気温=-40°〜 80℃、動作環境湿度=10% 〜 95%(結露しないこと)
●外形寸法:381.25 (幅)× 112.94(高さ/ゴム足含む=138.44)×204.5(奥行き/ノブ&ジャック含む=229.58)㎜
●重量:6.4 ㎏
▲ケリー愛用のマーシャルの上に置いてみた。
製品写真だと大きく感じるかもしれないが、実際はこのように意外と小さいのがわかるだろう
▲リア・パネルにはアンプからの入力端子やスピーカー・アウト端子の他、
USBやフット・スイッチ・インなども備えられている
■通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/563714
○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/ua-ox-amp-top-box
問:株式会社フックアップ
ユニバーサルオーディオ
https://hookup.co.jp/products/universal-audio/ox
◎ケリー・サイモン。自身のバンド、ケリー・サイモンズ・ブラインド・フェイスやソロとして多方面で活躍中。また、“超絶音楽塾”もスタートさせた。11月9日に東京キネマ倶楽部で行なわれる『Marshall GALA 2』への出演も決定している。
また、現在、ミニ・アルバムの制作を行なっている。
アルバム
『OVERTURE OF DESTRUCTION』
キングレコード KICS-3457
ケリー・サイモン 公式サイト
https://www.kellysimonz.com/