キャビネットいらずの魔法の小箱〜トーピド C.A.B. M
近年は、デジタル・アンプも全盛で、さらにDTMではプラグ・インを使用してギターの録音をする方も多いと思われる。しかし、やはりハードなオーバードライブ・サウンドには、本物の真空管を使用したい。ところが、キャビネットを鳴らすのは……と思っているギタリストにピッタリなのが、トゥーノーツのトーピドだ。そのトーピドに、これまでのモデルよりも小型化した新製品が登場! 今回は、レコーディングでもぜったいにキャビを鳴らしたいという、アナログ派のShu(TSP)に、試してもらった。※WeROCK 071の掲載記事より。
スピーカー・シミュレーターを超えた機能を満載
今回、試奏したトゥーノーツのトーピド C.A.B. Mは、いわゆるデジタルのスピーカー・シミュレーターだ。先に言っておくが、僕は完全にアナログ指向派。ライヴはもちろん、レコーディングも愛用マーシャルを鳴らし、ケンパーやフラクタルでは出せない爆音を奏でていると自負している。デジタルに負けちゃいけない、手軽るだからといって逃げちゃいけない……逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだと日頃から自分に言い聞かせている。
ところが、僕と同じ名前の日本が誇るギタリスト、SYU(ガルネリウス)が今やレコーディングでもトゥーノーツを使ってるというじゃないですか……。SYUには、その素晴らしさも聞いているわけで、それでもデジタルに負けちゃいけないと心に言い聞かせている毎日なところに、トーピド・ライヴを小型化した新製品が出るという情報が!? まあ、“ガンコに使わないという意志だけではギタリストとして進化はない! とにかく試してみよう”と。あの重いキャビやアンプを運ぶのから逃げたわけではなく、あくまでも仕事の一貫として(!?)、今回、試奏する機会を頂いたわけだ。
SYUいわく、“ケンパーなどの完全なデジタル・アンプではなく、やはり真空管アンプにはこだわりたい。なので、あくまでもアンプは真空管でキャビネットをシミュレートで”というアドヴァイスを心に受け止め、試奏は愛用のマーシャル:JMP-1(プリアンプ)を基本に、そこからC.A.B. M→オーディオ・インターフェイス→PCという順で試してみた(使用1)。
このC.A.B. Mは、ロード・ボックス(アンプ・ヘッドを接続してキャビネットの代わりにする)機能はないので、これがいちばんオーソドックスな使用方法だと思われる。JMP-1を使ってるので完全にデジタルではなく真空管を使ったギター・サウンドが再現できるのだ。あとの説明にもあるように、PCやiPadでも手軽にエディットできるのだが、まずは本体にある、たった2個のツマミのみでエディットしてみた。左のツマミで目的のエディット箇所をセレクトして右のツマミで音を作っていくわけだが、おっと、カンタンすぎて、逆に慣れが必要かも! でも、これだけでエディットできてしまうのが驚き……。
▲C.A.B. Mの具体的な使用例。いちばんオーソドックスと思われるのが、【使用1】のパターンではないだろうか。自分好みのプリアンプを使いレコーディングする例だ。
【使用2】は、ライヴでの使用例。アンプ・ヘッドを使いキャビを鳴らしつつ、PAにもラインで音を送るという方式。
【使用3】は、アンプ・ヘッドを使ってのレコーディング例。C.A.B. Mにはロード・ボックス機能がないので、アンプ・ヘッドを使用したい場合は、かならずキャビネットを接続する必要がある。ただ、自宅録音では大きな音は出せないので、C.A.B. Mからロード・ボックスに接続すればアンプ・ヘッドを使っても小音量でのレコーディングが可能だ
▲2個のコントローラーを駆使して、LED画面を見ながらエディットしていく
▲本体のサイズは、本誌と比べても、こんなにコンパクト!
これまでの、トーピド・ライヴが1Uサイズだったので驚きだ!
多岐にわたるシミュレート機能
さあ、問題は音!
シミュレートされてるサウンドがどうなのかです。下記で紹介しているように、シミュレートされてるモデルが、ものすごい数になります! カチっとコントローラーを回すだけで、確実に音色が変わっていきます。パワー・アンプの真空管を変えるだけで、音の輪郭、太さが変わり、キャビネットを変更すれば、さらにどんどんトーンも変わる。さらにさらに、マイクの選択で、またまた音が変わります。なんという数の選択肢があるのか……こんなにありすぎると、なかなか目的の音にたどり着かなくて時間ばかりすぎていくじゃないか!! なのに、とっても楽しい……。
全シミュレーションの感想は書ききれないので、気になった項目だけをレポートします。まずは、パワー・アンプ部門。僕は、ふだんマーシャルのEL34 100/100というパワー・アンプを使ってるんだけど、その中身は6L6とEL34の組み合わせに改造している。さすがに、その組み合わせは再現できないので好みの音を探していくと、PP EL34がいい感じだった。この真空管シミュレートは、中域の押し出し感があり倍音成分も豊か。その他も試してみると、6L6はローが強調されたトーン、EL84はいちばんカラっとしてハイが出る印象、KT88はローもありつつ6L6よりもツブがそろっていてヌケのよさを感じた。
続いて、スピーカー・キャビネットにいってみよう。シミュレートしている内容は下記の表を見てもらえばわかるのだが、気になるモデリングの印象をお伝えしたい。
Califはカラッとヌケのいい明るいサウンドで、StdCよりStdOのほうがローが強調されているようだ。
Brit VintCはミッドが強調されたヴィンテージ系マーシャル・トーンで、BoGreenはさらにミッドを押し出した印象だ。
これに比べるとBrit VintCのほうがハイが出ている。BigBeastは、さらにロー・ミッド寄りのトーンだった。12インチ×2発のシミュレートだが、Eddieはその名のとおりエディ・ヴァン・ヘイレンが出すようなまとまったサウンドで、かなり使いやすい。
というように、現実的には、なかなか試せない実験ができてしまうのは、じつにありがたい!
PCやiPadに接続すれば、手軽なエディットが可能
iPadやPCにブルートゥースで接続すると、アナログ的な感覚でエディットできる。
ここでは、僕が作った好みのサウンドを紹介します。プリアンプは愛用のマーシャル:JMP-1(シミュレーターじゃないよ!)で、C.A.B. Mではパワー・アンプにPP EL34、キャビネットには全域で鳴ってくれるので低域のヌケもいいRackHeroを選択。マーシャルっぽい中域を持ちながら、ローとハイを足した感じだ。マイクにもこだわって、57とRibbon160をセレクトしてみた。
▲Shuの音作り例
トゥーノーツ Torpedo C.A.B. M
¥オープン
〈仕様〉 ●インプット:アンプ・イン=バランス:TRS 1/4″フォーン端子(IN LEVELスイッチで入力感度とインピーダンスを設定)、AUXイン(ミニフォン・ステレオ端子。モノラルに変換) ●アウトプット:スピーカー・アウト(アンバランスTS 1/4″フォン端子)、ライン・アウト(バランスTRS1/4″フォン端子)、DI OUT(XLRバランス)、ヘッドフォン出力(ミニフォン・ステレオ端子) ●最小レイテンシー:2.2ミリ秒 (LINE IN〜LINE OUT) ●電源:専用電源アダプター付属(2.1mm、センター・マイナス)、入力電圧12V DC ●外形寸法:100(幅)×121(奥行き)×60(高さ)mm (突起物含) ●重量:450 g
問:日本エレクトロ・ハーモニックス株式会社
http://www.electroharmonix.co.jp/