【試奏動画連動】音質向上委員会〜ギャリエン・クルーガー編

WeROCK 070で掲載した特集“音質向上委員会”。
WeROCK EYESでも、その記事を公開しよう。
今回、紹介するのはギャリエン・クルーガーの最新プリアンプのBPLEX(ビープレックス)。
試奏してくれたのは自身もギャリエン・クルーガーを愛用するMASAKIだ! 音質向上に役立つこと必至のプリアンプ、その実力に迫ってみた。試奏動画とともにお届けしよう。
※WeROCK 070の掲載記事より。

 

MASAKIがギャリエン・クルーガーの最新プリアンプを攻略!

■MASAKIによる試奏動画

BPLEXの概要

近年、多くのブランドからベース用プリアンプが発売されているが、そんな中、ギャリエン・クルーガーが満を持して発表したプリアンプがこのBPLEX(ビープレックス) Preampだ。
約14cm四方という本体には、800RBとFusion 550、MB 800、MB150という同社の名機のサウンドを凝縮し、同じく“ヴァリアブルQ”と呼ばれる同社ならではの4バンド・イコライザーを搭載している。さらに、さまざまな設定が行なえるコンプレッサーやオーバードライブも備えられ、多彩な音作りが行なえる。
そして、使い方もシンプルで、便利なクロマティック・チューナー、PAやレコーディング卓に送るDIアウトも搭載。また、USB端子も付いているので、自宅録音にも活用できる。
もちろん音質のよさはギャリエン・クルーガーならでは。ライヴやレコーディングで、よりいい音でベースを鳴らしたいプレイヤーは必見だ。

ギャリエン・クルーガー BPLEX ¥60,000+税

①入出力関係本体上部に、インプットとアウトプットの他、エフェクト・ループが備えられている。外部エフェクターは、BLEX内のEQセクションなどとマスター・ヴォリュームの間で効く形となる。

②XLRダイレクト・アウトグラウンド/リフト切り替えスイッチ付きのDIアウト端子を装備。また、プリEQ/ポストEQの切り替えスイッチも付いていて、DIから送る音を、EQを通る前か通した後かのどちらから選ぶことができる。
③イコライザーベース、ロー・ミッド、ハイ・ミッド、トレブルの4バンド・イコライザー。それぞれのツマミを押すと、バンプ、コントゥアー、ハイ・カット、プレゼンスのコントロールとなる。
④トリム/クリップベースからの入力信号を適正なレベルに補正するツマミ。
⑤ヴォイスの切り替えBPLEXにはギャリエン・クルーガーの名機のサウンドをモデリングした4種類のヴォイシングとフラットなトーンの計5種類が内蔵されている。※ヴォイスを使わず、コンプレッサーやオーバードライブのみを使うということも可能だ。
⑥オーバードライブ暖かみのある歪みからアグレッシヴな歪みまで、5タイプの歪みを選ぶことができる。
⑦コンプレッサーベーシストのマスト・アイテム、コンプレッサーももちろん搭載。アタックとレシオをそれぞれ5種類の中から選択できる。
⑧LEDディスプレイ選んだヴォイシングや歪みのタイプが数字で表示される(例:ヴォイスで“800RB”を選ぶと“1”となる。また、チューナー・モードでは音名などを表示。

〈仕様〉 ●コントロールベース/バンプ、ロー・ミッド/コントゥアー、ハイ・ミッド/ハイ・カット、トレブル/プレゼンス、マスター/ヴォイス、レベル/ドライヴ、レベル/アタック、スレッショルド/レシオ、トリム/クリップ、オーバードライブ・スイッチ、コンプレッサー/チューナー・スイッチ ●入出力端子インプット、アウトプット、エフェクト・ループ、DIアウト(リフト/グラウンド切り替えスイッチ、プリ/ポスト切り替えスイッチ)、USB、AUXイン、ヘッドフォン・アウト ●外形寸法135.6(幅)×55.2(高さ)×142.3(奥行き)㎜ ※突起物を含まず ●重量約856g ●電源9vDC(アダプター付属)

▲付属のACアダプター

 

基本となるのは4種類の名器

BPLEXにはギャリエン・クルーガーの4種類の名機のサウンドが、レベル1〜4にそれぞれ内蔵されている。
各サウンドの特徴をMASAKIにレポートしてもらおう。
※写真は、それぞれもととなっているモデルだ。なお、レベル0として、EQ回路を通さないフラットなヴォイスが用意されている。また、BPLEXをプリアンプではなく、コンプレッサーやオーバードライブでの音色補正としてのみ使いたい時に適したレベル5もセットされている。
●800 RB

82年に発売され、数多くのロック・ベーシストがライヴやレコーディングで使用したアンプ。レベル1は、このサウンドのヴォイスとなる。※写真は後継機種だった800 RB
MASAKIこれが、まさにギャリエン・クルーガーのど真ん中の音ですね。誰もがイメージする“ヌケのいいミドルを感じるギャリエンの音”がしますよ。まとまりがいいし、使いやすいヴォイスだと思います。
●Fusion 550

ギャリエン・クルーガーとして、初めてプリ部に真空管を採用したハイブリッド・タイプのFusion 550。現在のフラッグシップ・モデルであり、MASAKI自身がメインで使用しているアンプがレベル2に入っている。
MASAKI:800 RBや他のヴォイスと比べると、ディープなローが抑えられて、ロー・ミッドやハイ・ミッドのあたりは出すぎることなく、しっかりと出せる印象ですね。これもFusion 550の特徴がよく出ています。ベースってローが強すぎると他の帯域がマスキングされてしまってダメなんですよね。このFusion 550の音は、そのあたりのバランスがいいですよ。
●MB 800

レベル3のヴォイスは、小型軽量ながら500w出力を誇るMB 800。こちらもMASAKIが愛用している。
MASAKI:MB 800はいつも使っているアンプなので“ああ、この音だ”って思いました。実際のMB 800は、真空管アンプのようなサウンドが得られる独自の回路が付いているんですが、このBPLEXに入っているヴォイスもそのあたたかさを感じることができます。Fusion 550の音と比べるとハイが明るくて、ローもハッキリと感じられますね。今の時代に合った、ガッツのある音が作れます。
●MB 150

ギャリエン・クルーガーの往年のコンパクト・ベース・シリーズがマイクロ・ベース。広く人気を博し、ヘッドやコンボなど多彩なラインナップを誇ったこのサウンドがレベル4のヴォイスだ。※写真はMB 150S/112。
MASAKI:僕自身はMB150を使ったことがないので、似ているかどうかはわからないのですが、キャラクターとしては800 RBに近いものを感じつつ、そこに明るさも感じます。ギャリエンらしい、ミッド感を軸に全体的に明るくまとめ上げつつ、“暴れ感”みたいなものもあるという印象ですね。

▲マスター/ヴォイスというツマミを押すとツマミのLEDが白から青へと変化。さらに押していくとディスプレイの数字が0から変化していく。
写真は“3”のMB 800のヴォイスが選ばれている状態だ

 

ギャリエンならではの“おいしい”イコライザー

BPLEXにはギャリエン・クルーガー伝統の“ヴァリアブルQ”と呼ばれる4バンドのイコライザー回路とコントゥアーが搭載されている。
これは、ベースの帯域に合わせ、使いやすく設定された回路で、30年以上、同社の標準となっているものだ。また、ベースのつまみを押すとLEDが白から青に変わりバンプという低域のブーストのコントロールが行なえ、同じくロー・ミッドのつまみを押すとコントゥアー、ハイ・ミッドはハイ・カット、トレブルはプレゼンスと、それぞれさらに細かく音作りが行なえるようになっている。
MASAKI:ギャリエン・クルーガー全般的に言えるんですが、まず効きがしっかりしているんですよ。他社のアンプやプリアンプでは、“あれ?効いてる?”みたいなものもあるんですが、出したいところ、引っ込ませたいところをわかりやすく設定できます。とくにロー・ミッドやハイ・ミッドが飛び出しすぎないというか、おいしいところでまとまってくれている。このミッドの存在感がギャリエンらしいと感じますね。ローもしっかりと出せると、多弦ベースにもおすすめですね。あと、バキバキした音とかピッキング・ノイズ的なものを抑えたい時は、ハイ・カットを入れると効果的ですね。

イコライザーは、つまみを押すことでそれぞれより細かな音作りを行なえるようになっている。
写真は、ベースのツマミを押し、低域をブーストする“バンプ”を選んだところ。“バンプ”のタイプは、65Hzを9dBブーストする“2”だ

ファズ的な歪みもOK! オーバードライブに注目

オーバードライブは5種類を搭載している。内容は、レベル1が“Warm Clipping”、レベル2が“Low Drive”、レベル3が“Moderate Drive”、レベル4が“Full Drive”、レベル5が“Aggressive Drive”と、徐々に歪みが激しくなっていく。
MASAKI:BPLEXではギャリエンらしい、どクリーンな音も作れるんですが、それぞれのヴォイスのキャラクターを活かせるナチュラルな歪みもいいんですよ。レベル5の“Agressive Drive”まで上げるとファズ的な歪みというかかなり暴れる音なんですが、“使える”音になっていますしね。どのレベルでも、ギャリエンらしい存在感のある歪みを作れます。そのうえで、レベル1から5まで歪みの幅が広いので、ブースター的に使うのもありだし、ベース・ソロでちょっと飛び道具的に使うのもありだと思います。
個人的には、少しベースを暴れさせたいという使い方がおすすめかなと思います。レベル2かレベル3あたりが気に入りました。どちらもアンプ本体で歪ませた感じがあるんですよ。バンド・サウンドにすごく溶け込む歪みだし、スラップにも合う印象ですね。

下段左から2番目のレベルのつまみを押すと、オーバードライブのタイプを5種類から選べる。
写真ではMASAKIお気に入りのひとつ、“3”の“Moderate Drive”を選んだところ。オーバードライブのオン/オフは本体左下のスイッチで行なう

 

自然な効果もしっかりしたコンプも自由自在

ベーシストのマスト・アイテムといえるコンプレッサーも搭載。アタックとレシオ、それぞれで5つのタイプから選べるようになっていて、さまざまなタイプのコンプを設定することができる。
MASAKI:コンプもいいですよ。おもしろいのが、ツマミで効き具合を設定するのではなく、アタックやレシオのタイプを選ぶようになっているんですよね。ベーシストによってコンプの効き具合は好みが分かれると思うんですが、搭載されているアタックやレシオのタイプがヴァリエーションに富んでいるので、どんな人にも合うと思いますよ。かすかにかけるタイプもあれば、しっかりとかけることもできますから。
僕のような速弾きをするベーシストはしっかりとかけることで、音の粒がそろって弾きやすくなるし、スラップをバリバリ弾く場合はコンプを効かせすぎるとアタック感がなくなっちゃうので、ナチュラルにかけたほうがいいと思います。アタックもレシオも、キャラクター付けがしっかりしているというのも、長くベース・サウンドを研究してきているギャリエン・クルーガーならではだと感じました。 

レベル/アタック、スレッショルド/レシオというツマミを備えたコンプレッサー。アタックとレシオはそれぞれ5タイプから選べるようになっている

MASAKIによる実戦的音作り

●バンド・サウンドの核の音
MASAKIロック・バンドの中で埋もれない、かつナチュラルなドライヴ感を付けたサウンドです。ヴォイスは3(MB 800)、オーバードライブは3(Moderate Drive)を選んでいます。そのうえで、EQでナチュラルに補正しています。コンプのアタックは3(Medium Attack/Slow Release)を選び、レシオは1(2 to 1)です。コンプは、もともとしっかりとかかってくれるのでナチュラルめにしてます。

 

●ドンシャリ・サウンドでスラップを
MASAKI:上で作ったバンド・サウンド向きの音を基本にコントゥアーをオンにして“1”を選びました。これで、500Hzが4dBカットされるので、ミッドが落ちることでドンシャリな音になります。ローとハイが際立つことで、スラップに向いた音になるんです。ヴォイスはあえてフラットな0にして、オーバードライブは2(Low Drive)で軽く歪ませています。エフェクター的な使い方ですね。

●タッピングを活かせる音作り
MASAKIプレゼンスをオンにしてます。これで1kHzが6dBブーストされて、タップした時のハイのヌケがよくなるんですね。ふつうのフレーズを弾くと、ハイの“バチバチ”という感じが目立つんですが、タッピングには向いた音色です。そして、ローを少し削ってみました。ヴォイスの3(MB 800)を使うとナチュラルなコンプ感が加わってくれて、すべての帯域がバランスよく聴こえますよ。

 

MASAKIの結論「とくに今時の音を求めるベーシストにオススメ!」

MASAKI:まさにギャリエン・クルーガーの音が出せる、ギャリエン・クルーガーのプリアンプだと思います。ギャリエンは、ヌケのいいミドル感が特徴のひとつなんですが、この音があるからこそ80年代からずっと愛されてきたんだなってわかりますよね。ジャズやフュージョンというよりもロック、メタルな音だと思います。その音がこのBPLEXに凝縮されています。
ギャリエン・クルーガーの最新機種や代表的なモデルの音が4つ入っていて、自分が使っているFusion 550やMB800など、その特徴をしっかりと感じることができましたね。自分なら、まずは、自宅録音で試してみたいですね。センド/リターンが付いているので、そこにお気に入りのディストーション・ペダルをつないで使ってみたいです。あと、DIアウトはプリとポストを切り替えられるし、使い勝手がいいと思います。だから、ライヴで大きな音で鳴らしてみたいですね。BPLEXで補正した音をミキサーに送るという使い方もおもしろいと思います。ライヴだとたいていそのライヴ・ハウスにあるDIを使うと思うんですが、BPLEXを持ち込むことで自分の音を鳴らせますからね。
チューナーが付いていてミュートもできるし、ボードに入れるというのもありですね。AUXインやヘッドフォン・アウトが付いているので練習にも使えますし。だから、ホントに何にでも使えると思います。
だけど、初心者向けかと聞かれるとそうではない気がします。もともとプリアンプというものが初心者向けではなく、極上のサウンドに目覚めてきたベーシスト、サウンドにひと味加えたいという人が使うものだと思うんです。BPLEXもそうしたベーシストに応えられる音質を持っていますしね。小さくて持ち運びしやすいから、自宅でのレコーディングからリハーサル、ライヴまで、ギャリエン・クルーガーの音を出せるというのもいいですし。でも、さっきも触れたようにAUXインが付いていて練習にも便利なので、ぜったいに初心者向けではないとも言いきれないんですけどね。値段的にもコンプやチューナーなども入ったプリアンプと考えると、いいと思います。
ジャンル的には幅広く対応できますよ。ギャリエン・クルーガーって、自分としてはロックのイメージが強いんですけど、BPLEXはヴィンテージ系の音もいけるし、何にでも使えると思います。イコライザーの効きがよくて低域もしっかり押し出せるので、5弦や6弦にも使えるだろうし、スラップやタッピングを活かせる音も作れる。すごくベーシストのことを考えて作られている1台だと思う。僕的には、今時のモダンな音がしっかり出せるし、そうした音を求めているベーシストに相性がいいと思います。

 

問:株式会社神田商会
http://www.kandashokai.co.jp/flos/gallien_krueger/effectors/bplex_preamp.html

 

◎MASAKI/マサキ。卓越したテクニックによる存在感あふれるプレイで“ギター殺し”の異名を持つベーシスト。CANTA、ダイダ・ライダ、地獄カルテット、他、ソロでも活躍している。

MASAKI公式サイト
http://masaking.com/

 

ソロ・アルバム
PIT-LOW2
キングレコード KICS-3753 ¥3,000+税