EDENで作る美味しいベース・サウンド・レシピ
WeROCK 067に掲載したベース特集。その最後を飾ったのが、エデンのペダルやアンプを使っての音作り実践編だ。今回の試奏のポイントとなったのは、ハード・ロック/メタル系サウンドを作ること! そのサウンド・レシピをお届けしよう。
また、WeROCK 067の誌面では、hibiki(サーベル・タイガー/サイレックス)による各機種についての一言アドヴァイスを掲載しているのでチェックしてみてほしい。
※WeROCK 067の掲載記事より/試奏:Jun Kawai
レシピ①:ベース・サウンドの核を作る
●エデン伝統のハイファイ・サウンドを凝縮したWTDIで、音の骨格を作る
WTDI オープン価格
〈仕様〉 ●コントロール:ベース、ミッド、トレブル、ゲイン、エンハンス、コンプレッサー、マスター、ベース・シフト・スイッチ、ミッド・シフト・スイッチ ●入出力端子:インプット、アウトプット、XLRバランス・アウト ●外形寸法:120(幅)×51(高さ)×89(奥行き)mm ●重量:0.6kg
エデン伝統のハイファイなサウンドをペダル・サイズに凝縮したプリアンプが、このWTDIだ。コンパクトでありながら、透明感と奥行きがあるという、まさにエデンならではのサウンドを作ってくれる。しかも、音作りのしやすさも魅力といえるペダルだ。ハード・ロック/メタルに向いたベース・サウンドをこのWTDIで作ってみた。
ハード・ロック/ヘヴィ・メタル系の音楽をプレイするうえで、まずポイントとなるのがゲイン。このWTDIのゲインはワイルドに歪むというよりは、歪ませつつ音に厚みを増すタイプなので、12時ぐらいでもかなり分厚い音が実現できた。3バンド・イコライザーに関しては他の楽器との兼ね合いしだいだが、12時を基本にしつつ、ベースとトレブルを強調して、低音をずっしりと響かせながら、モコモコにならないように高音でキリッとした質感を持たせるのが重要だ。
さらにベース・ブースト・スイッチで、低音に厚みを持たせて、最後にミドルをやや強めに付け加えてみたが、コンプレッサーとエンハンスは好みで調整するといいだろう。基本的にクリアで美しいサウンドを特徴にしているので、どの帯域に設定しても扱いやすい音を実現してくれる。
▲エデンらしい中域を持ち上げつつ、ハード・ロックに向いたドライヴ感も感じさせるベース・サウンドのセッティング例。ベース・ブースト・スイッチはオン
●Terra Novaで好みの音を作り込む
TN501 ¥85,000+税
〈仕様〉 ●出力:500w ●コントロール:ミュート・スイッチ、コンプレッサー・スイッチ、インプット・ゲイン、エンハンス・オン/オフ・スイッチ、エンハンス、ベース・ブースト・スイッチ、ベース、ロー・ミッド、ロー・ミッド・セミ・パラメトリック、ハイ・ミッド、ハイ・ミッド・セミ・パラメトリック、トレブル、マスター ●入出力端子:アクティヴ・イン、パッシヴ・イン、AUXイン、スピーカー・アウト(スピコン×1、フォンアウト×2)、ヘッドフォン・アウト、DIアウト(グラウンド・リフト・スイッチ、DIアウト・レベル切り替え可、プリ/ポスト切り替え可)、エフェクト・ループ、フットスイッチ・イン、チューナー・アウト ●外形寸法:324(幅)×79(高さ)×175(奥行き)mm ●重量:2.42kg
WORLD TOUR PROシリーズのサウンド・クオリティと操作性を継承しつつ、よりシンプル、かつコンパクトにまとめたのがこのTerra Novaシリーズ。その500wモデルがこのTN501だ。小型でかつ軽量を実現しているので、持ち運びがしやすいというのも大きな特徴で、ぜひライヴにも持ちこんでほしい。
音作りに関してポイントとなるのはミドルにLOW MIDとHI MIDの2つが装備されている点で、さらにそれぞれ細かく周波数帯も調整できるツマミも搭載されている。ハード・ロック/ヘヴィ・メタル系の音楽ではギターやドラムなどの楽器に音圧や音量があるし、他の楽器と帯域が被らないように細かく調整できるのはじつに便利。そうしたバンド・サウンドを想定して、ベースは少し強めにして、LOW MIDでは音の抜け具合を意識しつつ少し強めのセッティングにしてみた。HI MIDではブライトな要素も加えた設定にしてみたが、それに合わせてトレブルを少し抑えめにするなど、バランスを考えて調整をする必要がある。さらにゲインは音圧と歪みが適度に加わる程度にし、コンプはオン、エンハンスは弱めに設定すると張りのある音を作り出せた。このあたりはピック弾きと指弾きなど、ケース・バイ・ケースで設定してみるといいだろう。
▲中低域を強めに押し出したハード・ロック向けのセッティング例。ゲインをあえてやや抑えめにしてみた
レシピ②:太い真空管サウンドを加えたい
●12AX7真空管を内蔵したGLOWPLUGを使う
GLOWPLUG オープン価格
〈仕様〉 ●真空管:12AX7 ●コントロール:ウォームス、クロスオーバー、ミックス、ヴォリューム ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:120(幅)×51(高さ)×89(奥行き)mm ●重量:0.5kg
アンプやプリアンプDIのサウンドに、ヴィンテージ・アンプのようなナチュラルなファット感やヴォームな質感を与えるために開発されたGLOWPLUG。12AX7真空管を内蔵したこのエフェクターは、単体でプリアンプやオーバードライブのような使い方もできるが、今回はプリアンプDIの直前に繋ぐことで、クリーン・ブースター的な使用法を試してみた。
ツマミ類に関しては、いわゆるゲインの役割をはたすウォームス、チューブ・ゲインをかける帯域を設定するクロスオーバー、原音との混ざり具合を調整するミックス、音量を調整するヴォリュームが装備されていて、ウォームスは9時ぐらいの位置で、音が太くなることが実感できた。特に低域に深みが加わり、全体的にあたたかみが加わる印象で、ハード・ロック/メタル系の音楽で使う場合は、ウォームになりすぎない程度にウォームスを設定するのもいいだろう。さらにクロスオーバーで必要な帯域を見つけつつ、ミックスを中間くらいにすると、エッジの効いた、ライヴでも映えるようなサウンドが実現できる。
▲ハード・ロック・サウンドでは、あたたかみを加えるウォームスはあえて上げすぎないのがポイントになる
レシピ③:ベース・サウンドに彩りを加える
●I90でコーラスを付けてみる
I90 オープン価格
〈仕様〉 ●コントロール:スピード、デプス、ロー・カット、ミックス・レベル ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:120(幅)×51(高さ)×89(奥行き)mm ●重量:0.5kg
コーラス・ペダルのI90は、コーラスの速さを調節するスピード、深さを調節するデプスに加え、低音域の不要な濁りやうねりを解消するロー・カット、さらに原音とエフェクト・オンのミックス具合を調節するミックス・レベルを装備。まさにベース・ギターに特化したエフェクターであるといえる。
コーラス・エフェクターは80年代のポップスやフュージョン、あるいは90年代のオルタナティヴ・ロックなどで、ベーシストに好まれて使用されていて、とくにメロディアスなフレーズやアルペジオ・プレイ、さらにベースのフレーズやリフから始まるような曲で使われることが多い。それゆえ、スピードは速くしすぎると、飛び道具的な音になるので、やや遅めに設定するといいだろう。さらにデプスで深みを調整して音色を決めた後、ロー・カットで低域をスッキリさせることで、よりコーラスの広がりを体感することが可能だ。
▲オールディーなハード・ロックに向いたコーラス・サウンド。ロー・カットを上げて低域をスッキリさせるのがポイント
レシピ④:スラップ派にオススメの逸品
●CaliforniWAHでメリハリを付ける
CaliforniWAH オープン価格
〈仕様〉 ●コントロール:ロー・ポイント、センシティヴィティ、レゾナンス、エフェクト・レベル、ヴォイス・スイッチ ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:120(幅)×51(高さ)×89(奥行き)mm ●重量:0.5kg
音程感やレスポンスを損なわず、フィルター効果が得られるタッチ・ワウ。基本となるキャラクターは、本来の低音の太さを持ちつつ、アタック感があること。スラップに最適なだけでなく、この弾力を感じさせる音は繊細な指弾きにもしっかりと対応してくれた。ヴォイシングの切り替えも効果的で、トーキング・モジュレイター的な飛び道具サウンドも作り出せる。
レシピ⑤:変化球サウンドを作ってみる
●AstroFlangeでソロ向きの音作り
AstroFlange オープン価格
〈仕様〉 ●コントロール:ヴェロシティ、アルティテュード、ロー・カット、エフェクト・レベル ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:122(幅)×55(高さ)×90(奥行き)mm ●重量:0.5kg
フランジャー効果の速さだけでなく、高さや帯域も設定できるのがこの1台。メロディックなフレーズ向きの、揺れを伴うムーディな音もいいが、アルティチュードをハイ寄りに、ロー・カットで少し低域をカットしてのスラップでもおもしろい効果が得られた。スピードを上げれば飛び道具的になるし、フレットレス・ベースで使えばミステリアスな雰囲気も出せるはずだ。
問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
https://jp.yamaha.com/products/brands/eden/index.html