アヘッド・スティックがさらにパワフルに!
ラーズ・ウルリッヒ(メタリカ)をはじめ、国内外のロック・ドラマーが愛用するアヘッド・スティック。芯に金属を使うことで強力なサウンドを鳴らせ、また耐久性にも優れているこのアヘッドが“HYPER-FORM ENGINEERED”として進化した。そのポイントをさまざまな角度から探ってみた!
※WeROCK 067の掲載記事より。
「以前と長さや太さが同じで、耐久性は2倍以上です」
(高野氏/ラブレア・トレーディング)
新技術“HYPER-FORM ENGINEERED”が投入され生まれ変わったアヘッド・スティック。まずは、このアヘッドの輸入と販売を手掛けるラブレアトレーディングの高野氏に話を聞いた。
——高野さんがアヘッドのスティックを知ったキッカケから教えてください。
高野:EASTONというアメリカのスポーツ・メーカーがアヘッド・ドラム・スティックスを開発し、その本体に触れる機会があったんですね。第一印象としては、その比重とチップ寄りのバランスが左右ともに同じで、木製スティックのような違和感がないという点に驚かされました。さらに自分もドラムの演奏をしていたし、ハイテクで新しい物好きということも高じて、売れなかったら自分で使おうと思い輸入をすることを決心して。さらにLAにいた私はオーナーと知り合う機会があり、正式にAHEAD Drumsticks JAPANとして日本国内の販売を任されることになりました。
——国内でも多くのプロ・ドラマーがアヘッドを愛用していますが、プロ・ドラマーからはどういった感想が多いですか?
高野:アーティストさんからは、“信頼感が増した、ドラム全体の音量が上がった”と言っていただくことが多いです! アヘッドの耐久性は木製の6〜10倍以上あるので折れる心配も少なく、演奏に集中でき、安心につながるのだと思います。
——アヘッドは、いくつか特徴がありますね。まず、“人間工学に基づき、振り回しのいいスティック形状を実現”とのことですが、木製のスティックと形は同じように思えます。
高野:アメリカではスポーツ医学が発展していて、ドラムの演奏時にどのような影響があるのかを、木製スティックとアヘッドを使って、全長やグリップの形状、振動や衝撃など人体的な負荷をさまざまな角度から検証しました。その結果、アヘッドのスティックが医学的にも優れているとデータで立証されたんです。他の特徴として、カヴァーやチップを交換して耐久性を維持できることも挙げられます。とくにチップはオプションで3種類装着できますので、さまざまなサウンドが得られます。そして、アヘッドは製品の誤差が1%未満なんです。湿度や天候など環境に影響されず、質量も同じなので、重さも左右同じで反りも出ない。だから同じモデルを選んでいただければ、いつでも同じ最高の条件で演奏に望めます。
——“木製スティックより50%以上、衝撃を軽減!!”というのも不思議です。芯に金属があるほうが、手にくる衝撃も大きくなるのでは?
高野:多くの方が誤解されているのですが、アヘッドの構造はソリッドではなく中空パイプになっていて、グリップ内部にVRS(Vibration Reduction System)が挿入されています。それにより、ドラムを叩いた時の衝撃が手首に流れる前に50%以上軽減されるんです。木製スティックはソリッドなので衝撃の逃げ場がなく、手首や腕にそのまま返ってきてしまい腱鞘炎などの原因になっていることがわかっているんですよ。
——そして、注目の新技術がHYPER-FORM ENGINEEREDですね。
高野:HYPER-FORM ENGINEEREDは、2年前に新型のMAXX5Aモデル用に合わせて設計されデビューしました。このボディをいち早く日本のアーティストに使用してほしかったので、7A HYPER-FORM ENGINEEREDを工場に作るように指示し、日本にも紹介することで、やがてすべてのスティックがモデル・チェンジとなりました。以前と比べて、比重や全長、グリップ径は同じままで、耐久性が2倍以上も向上しています。その理由は、芯のHigh Precision Alloy Coreというアルミ合金の性能が上がったからなんですね。でも、耐久性が上がったからといって、ウレタン・カヴァーの交換は怠らないでほしいです。カヴァー自体は以前と同じ素材の硬質ポリウレタンなのですが、この交換がスティック本体の耐久性を維持するうえで重要なんです。
——長持ちする=販売本数が減る、というジレンマはありませんか?
高野:長持ち=売り上げが減るとは思っていません。アヘッドの特徴であるチップやカヴァーの交換を行なえることをもっと多くのドラマーに知ってもらえればと考えていますし、演奏向上のお役に立てれば幸いですね。
——アヘッド・スティックは、どういったドラマーにオススメでしょうか?
高野:まず、ロック・ドラマーですが、レギュラー・グリップで演奏される方にも断然効果を発揮します! あと、家でエレドラを叩く人にも、木くずが出ないのでいいかもしれないですね(笑)。
▲アヘッド・スティックの構造。手前がカヴァーとリング、チップ。奥が金属製の芯となる
▲チップも好みの形に交換できる。木製スティックでは考えられない便利さだ
「音のエッジがより効いています」
(HINA/TSP)
——アヘッドを使い始めたキッカケは?
HINA:10年ぐらい前に加藤剛志さんにドラムを教えてもらっていたんですが、その時に誕生日プレゼントで7Aのセットとグローブをいただいたんですね。“俺も使っているから試してみて”という感じで。それまでもアヘッドは知っていたんですが、木製のスティックでいいやと思ってて、使ってなかったんです。それで、その7Aを最初に持った時ですが、重心がチップ寄りにあるなあと思いましたね。先端が重いというより、握った時の親指の先あたりから先端にかけて重心があるという感じで。ただ、加藤さんはもっと長いアヘッドのスティックを使っていて、持たせてもらった時に“重いなあ。よく叩けるなあ”と思っていたから、逆に“こんなに軽いんだ”というぐらいでした。それで、7Aはこんなに軽いのなら使ってみようと思いましたね。
——重心がチップ寄りにあることで叩くフォームも変わった?
HINA:変わりましたね。重心が先端側にあるから振りやすいし、リバウンドも自然と大きくなり、肘から先の振りが大きくなりましたね。手首の使い方も変わりましたし。あと、重心が前寄りにあるせいか、細かいフィンガー・コントロールをしやすくなったように感じました。
——木製スティックとアヘッド・スティックの音の違いはどうでしたか?
HINA:個人的な感想ですけど、木のほうが硬い感じがします。あと、リム・ショットをすると、アヘッドのほうがスネア全体が鳴っていて、サスティンも長いですね。メイプル・シェルでも金属シェルでも、その印象は変わらないです。ライド・シンバルのカップを叩いた時も、音にパワーがあって、サスティンが長くなりますね。
——使っているチップは5ASですね。
HINA:丸めですね。丸いほうがツブが繊細に聴こえる気がして、音のブライト感も出ると思っているので。
——現在はHYPER-FORM ENGINEEREDの7Aを使っていますが、以前の7Aと持った感じは違いますか?
HINA:重さや重心はまったく一緒です。ただ、音的には前の7Aよりも硬くなった気がしますね。木製スティックでの音の硬さではなく、アヘッドならではの硬さを感じます。タイコの胴鳴りがする感じなどは変わらないんですけどね。あと、アヘッドは木のスティックよりもしなる感じがするんですけど、以前の7Aと比べるとHYPERはしなりつつも音がまっすぐ伝わってくるというか、音にエッジが効いていますね。
——あと、耐久性が向上しているんですよね。
HINA:はい。私の場合、木のスティックだと1日で折れたりしてたし、以前の7Aでも2〜3回のリハーサルや2回のライヴで折れちゃっていたんですね。でも、HYPERはライヴの本番とかMV撮影とか、折れちゃいけない場面でしか使ってないんですけど、この1年半で1セットしか折れてないですから。もう木のスティックには戻れないですね。あとは、カヴァーやチップも交換できるので、そのカヴァーやチップのカラー・ヴァリエーションがあると楽しくなると思います(笑)。7Aは女性にも叩きやすいと思うし、メタル系もいけますよ。
HYPER-FORM ENGINEERED 7A HINA Signature ¥6,500+税(ライヴ会場限定発売)
〈仕様〉 ●長さ:399mm ●太さ:14mm ●重さ:49g ●チップ:5AS(標準)、5AT(装着可能)、5AB(装着可能) ●リング:RGB5A
▲HINAはグリップ部にパールのタイト・グリップというテープを巻いて使用
▲HINAはグローブを愛用。握りは、ややグリップ・エンドが余る程度。速いフレーズでは少しだけ手のひら側が下に向くとのこと
「アタックと低音はアヘッドならではだと思います」
(市川氏/イケベ楽器)
市川:耐久性が謳(うた)われていますが、やはりアタックと低音の効いたサウンドが魅力だと思います。トミー・リーや樋口宗孝さんが体現されていましたが、アヘッドじゃないと出せないパワフルなサウンドですね。この音が気に入って、アヘッドから離れられないお客さんは多いです。なかでも、トミー・リーのモデルは長さがあることもあって、重いので、より音量が出せるので人気ですね。ラーズ・ウルリッヒのモデルは、一般的なスティックと変わらないサイズで、やはりアヘッドならではのサウンドが出せるので、こちらも人気モデルになっています。他にも細めや軽めのモデルもあるし、女性ドラマーにもオススメですね。カヴァーは白いものとか銀色のものがあるんですけど、もっとハデなものもあるといいなと期待しています。
◎イケベ楽器 ドラムステーション リボレ秋葉原
〒101-0026 東京都千代田区神田佐久間河岸45 早川ビル1F
営業時間:11時〜20時(年中無休/元日を除く)
https://www.ikebe-gakki.com/realshop/drumstation/index.html
▲ドラムステーションには、スティック本体以外にチップなども販売されている。スティックは30種類前後、取りそろえられていて、試奏もOKだ
「簡単に大きな音が出せます」
(Misai)
元ロウ・ヘッド・マシンのドラマーで現在はアメリカで活躍中のMisai。彼女からのコメントも紹介しよう。
Misai:15年以上、アヘッドを使っていますが、男性に比べて力の弱い女性でも簡単に大きな音が出せる、私にとっては魔法のスティックという感じです。昔はヘヴィ・ロックやメタルをやっていたのでライヴのたびに木製スティックが何本も折れたりしていたのですが、アヘッドだと数ヵ月はもつので節約もできて、とてもエコです。今は多ジャンルの曲を一晩で4時間、多い時で週6日は演奏していますが、まったく折れないですし、アヘッドのグリップ・テープを巻いているので手への負担もほとんどありません。アルミ製なので木製に比べると重いイメージがあるかもしれませんが、現在使用している自分のモデル(7A)は木製スティックとあまり変わらない感触なのでアヘッド初心者や女性ドラマーにオススメです。アヘッドは1度使ったらもう手放せません。
ロック・ドラマーにオススメのモデルを紹介!
今回、メインで紹介している7Aの他に、アヘッドからは数多くのスティックが発売されている。その中から、メタル・ドラマーにオススメのモデルを厳選して紹介!
▲5BLTD-25 ¥6,500+税 アヘッドの25周年を記念して発売された、世界限定1,000本のスティック。人気の5Bモデルがもとになっている。シリアル・ナンバーと保証書付き
▲JJ1 Speed Metal ¥6,500+税 手数の多いドラマー向け。速いフレーズのコントロールが容易で扱いやすい
▲5AB Studio ¥6,500+税 日本のドラマーから支持が多いモデル。アヘッドの中で唯一グリップ側に重心があるのが特徴
▲LU-SGL ¥6,500+税 メタリカのラーズ・モデルの中でも最新のScary Guy Light! LU-SGLはコントロール性だけでなく、パンチ力と音量を兼ね備えた人気モデルだ
問:ラブレアトレーディング
http://official.labreatrading.com