StingRayが劇的進化!

パワフルなサウンドで、幅広い人気を誇るロック・ベースの定番といえるスティングレイ。このスティングレイが、サウンドもデザインも新たに“スティングレイ・スペシャル”として生まれ変わった。その魅力や進化点に着目し、従来のスティングレイと弾き比べつつレポートしていこう。新たな定番ベースの誕生だ!!
※WeROCK 067の掲載記事より/試奏:Jun Kawai

 

スティングレイについて

ベースの定番モデルとして知られるスティングレイ。フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)をはじめ、ジャンルや国内外を問わず、数多くのベーシストが愛用しているモデルだ。
そんなスティングレイが誕生したのは、76年のこと。フェンダー社を退社したレオ・フェンダーが中心となって開発され、ミュージックマン社から発売された。そして、ハムバッキング・ピックアップ1基ながら、エレクトリック・ベースとして初めてアクティヴ・プリアンプを搭載し、パワフルなサウンドと音作りの自由度で一躍注目を集めることとなった。また、87年には、アーニーボール・ミュージックマン社となってから初のベースとして、5弦モデルのスティングレイ5が発表されている。
4弦ベース、5弦ベースともに、現在までさまざまなマイナー・チェンジが行なわれ、ピックアップ配列がSH、HHのモデルなどもラインナップ。また、70年代後期のモデルをもとにモダンな仕様を加えたクラシック・スティングレイ、スルーネックのモデルなど、数多くのヴァリエーションがそろっている。そんな中、新たに発表されたのがスティングレイ・スペシャルだ。
4弦と5弦、そして1Hと2Hというラインナップを誇り、全面にわたりスペックの見直しが行なわれ、さらに進化を遂げたという。その進化を、これまでのスティングレイと弾き比べることで、明らかにしていこう。

StingRay Special H ¥330,000+税(アイボリー・ホワイト)

〈仕様〉 ●ボディ:アッシュ ●ネック:セレクト・ローステッド・メイプル、5点止め ●指板:メイプル/ローズウッド/エボニー(※ボディ・カラーによって異なる) ●ピックアップ:ハムバッキング(ネオジム・ハムバッキング) ●コントロール:ヴォリューム、トレブル、ミッド、ベース

 

こちらは、モデル・チェンジ前のスティングレイ。一見したところ、ネック/指板の材、フレット数など違うぐらいだが、よく見るとボディのコンターが異なる

 

進化①:ネックがセレクト・ローステッド・メイプルに

スティングレイ・スペシャルの大きな特徴の1つにセレクト・ローステッド・メイプル・ネックの採用が挙げられる。すでにアーニーボール・ミュージックマン製のギターではお馴染みのこのネックは、独自の方法により熱を加えることで、温度や湿度の変化などによって生じる反りやねじれに強い耐久性や安定性を実現。しかも、木材の比重も抑えているので、軽量でかつ頑丈というのがポイントだ。
握った感触はオイル・フィニッシュ、あるいはエイジド加工された使い込んだネックのようなスベスベした手触りが魅力的で、通常のメイプル・ネックを採用している従来型のスティングレイのパリッとした鳴りとは異なり、音に深みを感じさせる。さらにステンレス製のフレットを採用しているのも改良点で、フレットが減りづらいうえに、サビに強く、シャープな音を実現してくれる。

ネック・シェイプは以前のスティングレイと同じだが、使い込んだモデルのような手触りがあり弾き心地が向上している

 

進化②:ボディ・デザインやネック・ジョイント部の改良で弾きやすさが向上

スティングレイ・スペシャルは従来型のスティングレイより軽量というのも特徴になっているが、実際に持ってみると、その軽さに驚かされた。この軽さを実現させるためのくふうとして行なわれたひとつがボディのコンタード加工だ。
写真ではわかりづらいが、ボディの周囲のエッジ全体が従来型より丸く削られており、ボディ・トップの右腕が当たる部分も滑らかな形状となっている。ボディ材は従来型と同じアッシュを採用し、シェイプも正面から見ると同じだが、ボディを削ることで重量を減らすとともに、身体とのフィット感の向上も図っているのが大きな魅力。
また、軽量化に一役買っているのが、パーツのデザインの見直しとのことで、ブリッジも新たなデザインとなっている。しかも、軽量化と同時に豊かな弦振動の伝達、安定したチューニング、耐久性も向上しているという。
さらに22フレットまで容易に弾けるようにネック・ジョイントのヒールをラウンド・カットしているのも初の試みで、テクニカルなプレイなどにも対応できるような操作性のよさを実現しているのも見逃せない。

●コンタード加工の違い

上がスティングレイ・スペシャル、下が従来のスティングレイ。コンタード加工の違いだけでなく、ボディのエッジもスティングレイ・スペシャルは滑らかになっている

●ブリッジの変更

上がスティングレイ・スペシャル、下が従来のスティングレイ。スティングレイ・スペシャルのブリッジは左右の幅が短くなり、コンパクトになっているのがわかる

●ネック・ジョイント部の違い

スティングレイ・スペシャルのジョイント部。ヒール部もなめらかになり、ハイ・ポジションでの弾きやすさが向上

従来のスティングレイのネック・ジョイントは6点止めだった

 

進化③:ネオジム・マグネット・ピックアップや18v駆動のプリアンプで、サウンドが向上

ハムバッキング・ピックアップ、そしてヴォリューム、トレブルとミドル、ベースを調整できる3バンドのアクティヴ・プリアンプの搭載といった仕様は従来型と同じだが、スティングレイ・スペシャルではピックアップとプリアンプの両方で新設計のモデルが採用されているのが注目すべき点だ。
まず、ピックアップに関しては従来型にはアルニコ・マグネットが採用されていたのに対し、新型にはネオジム・マグネットを使ったモデルを搭載。ネオジム磁石は磁束密度が高く、ひじょうに強い磁力を持っているということだが、従来型との音の違いは歴然で、4弦の開放弦を鳴らした時の出力の大きさと音の響きには驚かされる。従来型はパキッとしたエッジの効いた張りのある音が特徴的だったが、スティングレイ・スペシャルではウォームでかつ低域の響きが強力で、ハードなピッキングでも音をしっかりと拾うレンジの広さも感じさせる。さらに繊細な指弾きでのなめらかなタッチやスラップ・プレイで求められるアタック感も引き出すことができた。
そして、アクティヴ・プリアンプに関しては、従来型は9v駆動だったのに対し、新型にはヘッドルームを持たせた18v駆動のモデルを搭載しているのも大きな変化だ。よく効く3バンド・イコライザーをコントロールすることで幅広い音作りが出来るようになっている。ヴィンテージ風の深みのある音からモダンでラウドな音はもちろん、従来型のようなスラップ向きのパリっとしたサウンドを出すにはハイを上げて、ベースを抑えめにしつつ、ミドルを足していくような設定で対応できた。

スティングレイと言えば、このハムバッキング・ピックアップ。見た目は従来のモデルと変わらないが、磁力が高く、音の大きさや響きがアップしている

トレブル、ミッド、ベースという3バンド・イコライザーは、効きがよく、ネラった音を作りやすい

プリアンプは18v仕様になった。9v乾電池を2個使用する

従来のスティングから継承したコンペンセイテッド・ナット。構造上発生しています、微妙なピッチのズレを補正してくれる

 

結論:サウンドや弾き心地などあらゆる面で進化した、新たなスタンダード

これまでスティングレイと言えば、パンク・ロックやスラップ・プレイを得意とする人に愛用されているイメージがあった。だが、今回大幅にリニューアルされたスティングレイ・スペシャルは、セレクト・ローステッド・メイプル・ネックの採用やボディ・シェイプの変更によるデザイン面での高級感だけでなく、サウンド面でもさらに高級感が増していいるのが印象的だった。そして、あらゆるジャンルに対応できる万能さも備えたベースに進化しているのも特徴だ。
とくにウォームでありながら、1弦1弦がしっかりと響くような奥行き感、低域の深みは格別で、新開発のプリアンプにより、音作りもしやすくなっているのもポイントと言える。さらにセレクト・ローステッド・メイプルを使った触り心地のいいネックと新スタイルのコンタード加工がなされたボディに加え、ペグやブリッジも軽量化が図られているので、ストラップで下げた時のバランスのよさも際立っている。
音質、操作性などあらゆる面で進化を遂げた理想的なベースが登場したと言っていいだろう。

 

●スティングレイ・スペシャルのラインナップ

 

StingRay Special H ¥330,000+税/¥345,000+税(ボディ・カラーによって異なる)

StingRay Special HH ¥345,000+税/¥360,000+税(ボディ・カラーによって異なる)

StingRay5 Special H ¥345,000+税/¥360,000+税(ボディ・カラーによって異なる)

StingRay5 Special HH ¥360,000+税/¥375,000+税(ボディ・カラーによって異なる)

 

●スティングレイ・スペシャルの2ハムバッキング・モデルのコントロール

残念ながら今回は試奏できなかったが、スティングレイには2基のハムバッキング・ピックアップを搭載したモデルも発表されている。ピックアップ・セレクターは5ウェイで、そのポジションによって、選ばれるピックアップは下の図のようになる。このヴァリエーションと3バンド・イコライザーとの組み合わせにより、多彩な音が得られるのだ。

問:株式会社神田商会
https://www.musicman.jp/instruments/basses