SYUがUAFX ANTIを詳細レポート!
SYUによる恒例の試奏企画!
今回は、ピーヴィー5150(1992年製!)をシミュレートしたユニヴァーサル・オーディオから発売中のプリアンプ UAFX ANTI(アンタイ)に迫ってもらった。
試奏していただくと同時に大絶賛! どこが、そんなに気に入ってしまったのか!?
SYUによる試奏動画(UAFX ANTI編)
SYUによる試奏動画(UAFX Knuckles編)
※WeROCK 104(12月13日発売号)では、Knuclesの試奏レポートを掲載! こちらの先行公開動画と合わせて、ぜひ誌面もチェックしてみてください!
Universal Audio
UAFX ANTI High Gain Amp
¥63,800(税込)
■仕様■
●コントロール:プリ・ゲイン、プレゼンス、アウトプット、レゾナンス、ゲート、ロー、ミドル、ハイ
●スイッチ:スピーカー・セレクト、ストア、アンプ・モデル(ベース、リード、ブラウン)、オン・オフ・スイッチ、プリセット・スイッチ
●入力端子:1/4インチTSフォーン × 2(Input 2はステレオ接続用 & 4ケーブル・モード用)
●出力端子:1/4インチTSフォーン × 2(Output 2はステレオ接続用 & 4ケーブル・モード用)
●USB端子:Type-C(コンピューター経由によるアップデート用)
●電源:外部ACアダプター(アイソレートタイプ 9V DC/センターマイナス/400 mA以上)、純正のPSU-GP1-WWを別売
▲上部3つのコントローラーは、左よりプリ・ゲイン、プレゼンス、アウトプット。中央段の真ん中にあるスイッチをALTにすることで、プリ・ゲインがレゾナンス、プレゼンスがゲート・コントローラーに代わる。
中央段の3つのスイッチは、左から、キャビネット・シミュレーターの選択、ALTと保存(ストア)スイッチ、チャンネル・セレクトとなっている。キャビネットは、デフォルトで3種類だが、ユーザー登録することでさらに3種類が追加(LEDが緑になる)される。なお、LED消灯時はキャビシミュがキャンセルされる。チャンネルは、リズム、クランチ、リードという3種類。本物の当時の5150よりチャンネル数がアップしている。
下段のコントローラーは、左より、ロー、ミドル、ハイ。こちらもALTスイッチを使うことで、内蔵されているオーバードライブのコントロールが可能で、左よりオーバードライブのゲイン量、オーバードライブ・トーン、オーバードライブ・レベルのコントローラーに代わる。
フットスイッチは、左がエフェクト・オン・オフ・スイッチで、右はプリセット呼び出し用のスイッチ。プリセット・スイッチを押すと、コントローラーがどの位置になっていても、プリセットされた設定が呼び出せる。
▲写真上は、アンタイの入出力部分だ。ステレオ・インプット、ステレオ・アウトになっており(もちろんモノラルでの使用も可能)、4ケーブル・メソッドにも対応しているので、他のアンプと併用しフットスイッチで切り替えることもできる。
USBは、PCと接続することでファームウェアのアップデートが可能となる。PAIRボタンは、スマホやiPadなどとブルートゥース接続する時に使用するペアリング・ボタンだ。
■ピッキングのニュアンスが、 真空管アンプの挙動そのままなんです!
——UAFXシリーズのLIONを購入したらしいですね?
SYU:ブラインドマンの中村さんに教えてもらって、スタジオでマーシャルのリターンにLIONを接続して鳴らしたんですね。1959的な圧や充分な音量を感じて、すぐに購入しました。音の立ち上がりの速さも実機に忠実だし、スタジオでキャビネットにつないで鳴らしても真空管アンプ(プリ管)と遜色ない音が出てくれて感動するぐらいだったんですよ。
——そして、今回、ANTI(アンタイ)を弾いて頂きました。
SYU:これ、買います(笑)。めっちゃいいです。ペダル・ボードに、これ1個あれば海外ツアーの時とか、すごく便利です。
LIONの場合、個人的にはJCM2000ぐらい歪んでくれたらとは思っていたんですが、ANTIはオーバードライブが入ってるので歪みも充分なんですよ。
僕、20歳前半ぐらいの時に5150を持っていたんですね。初めて買ったヘッド・アンプでもあるんです。当時は個体差があるみたいに噂されることもあったんですが、もちろんANTIにはそれもないですし、限りなくリアルに当時のサウンドを再現してくれてます。5150を使っていた時は、 EMGのピックアップが付いているギターを使ってアンプ直で弾いていたんです。それで充分な歪みが得られてライヴでも問題なく弾けるアンプだったんです。
——音的な印象はどうでした?
SYU:レンジが広くハイの部分が多いのでドンシャリかと思ったんですけど、オケを流して弾いてみるとハイの成分は他の楽器に馴染んでくれるし重要なミドルの部分や抜けてくるローがキレイに再生されました。専用アプリを使うとバイアス・モードというのがあるんですが、これがけっこうトーンを変えてくれて使えるんです。
——アプリを使うと、アンプのパワー管のバイアスと構成を設定できますね。クール、ウォーム、クール・チョーク、ウォーム・チョークという4種類の選択ができます。
SYU:僕はウォーム・チョークが気に入りました。クールよりロー・ミッドも増えて芯の立ち上がりが早い感じで、プレーン弦の“チッチ”という部分を強調してくれる感じもします。クールはいちばんフラットな感じで、ウォームはロー・ミッドが増えて暖かさが増した印象、クール・チョークはウォームよりミッドが抑えられつつ芯を出してくれます。
——同じくアプリを使うと2種類から選択できるのが、エディット画面のいちばん上に登場するオーバードライブ・エフェクトですね(写真下)。これは、チューブ・スクリーマー系のTSモードと、tcエレクトロニックのインテグレイテッド・プリアンプをエミュレートしたTCが選択できます。チューブ・スクリーマーはもちろん使ったことがあると思いますが、インテグレイテッド・プリアンプは80年代の珍しいエフェクターですよね。
SYU:使ったことはないのですが、エフェクターを作ってる僕としては内部回路を研究して作ろうと思ったことがあって、音のイメージはできてます(笑)。
実機の回路を見ると内部で昇圧されてるエフェクターで、それをシミュレートしているんですね。オーバードライブというか名前の通りプリアンプな方向性と使い心地。TCを選択すると、OVERDRIVEノブがベース、OD TONEノブがトレブル・コントローラーになりますね。僕としては5150の印象としてドンシャリに聴こえる部分があるので、TSのほうを使ってミドルを足してあげるとフラットでいいかなと思いました。
——チューブ・スクリーマーは似ていますか?
SYU:TS感を感じるし、実機のチューブ・スクリーマーよりローが残ってくれる感じがします。どちらかというとTS808に似ていると思いました。天下のUAさんですから、いちばんいいTSを入れてきてるはずで(笑)、アンプとの相性も考えられたTSになってるなと。
——その下にはブライト・スイッチというのがあります。
SYU:僕はオフで使ってますが、極端にブライトになるわけではないのでオンでもありですね。2kHz以上の部分が少し強調されるぐらいな感じです。
——続いては、ノイズ・ゲイトですね。
SYU:本体だけでもALTスイッチを使えば調整できるのですが、アプリのほうではアタックやリリースなど細かい設定ができるので、しっかり調整するとかなり自然にゲイトがかかってくれました。まったく問題なく使えるんじゃないですかね。バッキングのキレとかで大活躍してくれると思います。
▲アプリのエディット画面。いちばん上がオーバードライブ・エフェクトの選択画面だ。
TSとTCという2種類のオーバードライブを選べ、SYUはTSを選択
——チャンネルは3モードが選択できますが、クランチ・チャンネルを選びましたね?
SYU:内蔵されているオーバードライブを使うこと前提で音作りしてみたので、となるとクランチ・チャンネルがベストでした。
リード・チャンネルならオーバードライブがいらないぐらいの歪み量があるので、クランチ・チャンネルでTSモードのオーバードライブを使って、すべての機能を効率よく使いました。あと、クランチ・チャンネルのほうが、少し太さがある印象もあったんです。いや〜、ANTI、いいですね! おかげで、現在の本物のEVH 6550が欲しくなってしまいました(笑)。
——であれば、ANTIでいい気がしますが(笑)。
SYU:あと、このアンプで好きだったのが、レゾナンスなんです。しっかり受け継がれてますね。気持ちいいです。
——で、先ほどのバイアス・モードがあり……(写真下)。
SYU:次のポスト・ゲインというのが激アツなんです。アプリを開く前に本体だけでチャンネルを切り替えて弾いていたら、リードがいちばん音が大きかったんですよ。あ〜、そうなのかって思ってたら、このポスト・ゲインで調整できたんです。
——その下にあるルームは、アプリのみに搭載されている機能ですね。
SYU:文字通りルーム・リバーブで、マイクで拾ったアンビエンスを加えていける感じですね。
▲先ほどのエディット画面を下にスクロールしていくと、バイアス・モードの選択ができる。SYUは、ウォーム・チョークを選んでいた
——本体に戻りますが、各コントローラーの効きはどうでした?
SYU:プリ・ゲインやプレゼンスなど、実機そのものの挙動をしてくれると思いました。実機ではリード・チャンネルをよく使っていて、EMGピックアップだと9時半ぐらいで弾いてましたけど、その感じが出てます。
今の僕のギターでいうと、10時ぐらいで充分な歪みが得られますね。12時をすぎると歪みすぎるぐらい歪んでくれます。EQ類のコントローラーの効きも、そのものに感じます。ミドルもハイもしっかり出てくれて、レンジの広さがアンタイにもちゃんと反映されていますね。
——チャンネル設定で“リズム”の時のみ、アプリでクリーン、パンチ、パンチ+というモードを選択できますね。
SYU:ちょっとずつ歪みが足されますね。本物の5150にはない機能で、クリーンからクランチまで音作りの幅が広いです。すごいな〜。ちなみに、すごいクリーンにしたい場合は、インプット・ルーティングをLowにしてバイアス・モードもクールかクール・チョークにするのがオススメです。
——さらに、便利なのがフットスイッチのモードを変更できるんですね。
SYU:“Overdrive | Live / Preset”することで、オーバードライブ・エフェクトのオン・オフがフットスイッチでできるんですよ。右のプリセットのフットスイッチで2種類のトーンを選べて、左のフットスイッチでオーバードライブのオン・オフができるので、合計4種類のトーンが1台で使えますね。2チャンネルのアンプに、足元にオーバードライブ・エフェクトを接続しているニュアンスです。素晴らしい! これ1台で、海外ツアーに行ける可能性があるというか、これでガルネリのライヴができます!
——さらに、4ケーブル・メソッドもできます。
SYU:他の本物アンプと組み合わせることもできるから、たとえばマーシャルと4ケーブルで接続して、マーシャルの音、アンタイの音を切り替えられるんですね。その場合は、キャビネット・エミュレーターはオフにしないとです。
——大絶賛のANTIですね。
SYU:超買いだと思います。世の中に、いっぱいプリアンプ・ペダルってあると思うんですけど、ユニヴァーサル・オーディオってプラグインにしても信頼性があるじゃないですか。すごく再現性のある技術があって、すごいだろうと思ってたうえでの試奏だったんですけど、ホントにすごかった。
LIONでも感じてたんですけど、シミュレーター・プリアンプの中でも群を抜いていいんじゃないかと。シミュレーターにはぜったいに真空管を超えられない壁みたいなものはあるんですが、そこの差が極めて少ないと思います。真空管アンプならではのよさってありますけど、アンタイをオケ中で試してみてもその部分は継承してるしプレイヤビリティが素晴らしいんです。ピッキングのニュアンスの出方が、調子いい真空管アンプの挙動そのままをしているんです。
“やっぱり真空管っていいよな”って思う感じを、真空管が入ってないこのペダルで感じました(笑)。
▲中央のスイッチをALTに持っていくことで、コントロール類が【】で表示されたツマミに変更される。すぐにエディットできるのが便利だ
■キャビネット・エミュレーションの印象をSYUが語る!
●UK V30(LED : 赤)=V30 を搭載した4 x 12 マーシャル・キャビネット。モダン・ロックやメタル・ギターの業界標準のひとつである12インチ・スピーカーを4基搭載したヴィンテージ・スタイルのクローズド・バック・キャビネットを、ダイナミック57でマイキングしたサウンド。 アグレッシブな上中音域のエッジを備えている。
SYU:マーシャルのキャビを57を使って、めっちゃ直でマイキングした音ですね。すごいソリッドな音です。
●CA V30(LED : 赤)=モダンで奥行きのあるクローズド・バック・キャビネット。12インチ・スピーカーを4基搭載し、ヘヴィでスクープされたアンプ・トーンのためにデザインされている。ダイナミック57でマイキングされたトーン。 前面に押し出るような中低域と高域のエッジを備えている。
SYU:UK V30に比べると暖か味があるトーンですね。
●WHITE 75(LED : 赤)=モダンな英国製12インチ、75ワットの“ホワイト/クリーム”スピーカーが搭載されたキャビネット。ダイナミック57とリボン121でマイキングされた音をシミュレート。拡張された高域/プレゼンスの周波数特性を備える。
SYU:少しレンジが広がっているように聴こえます。ロー・ミッドの感じがいいです。
●UK V30(LED : 緑)=英国スタイルの65ワット・スピーカーが2基搭載されたキャビネットに、ダイナミック57とリボン121でマイキングされたトーンをシミュレート。タイトなボトム・エンドの明瞭さが特徴。
SYU:緑になると、いきなりキャラがモダンになります。ハイとかプレゼンスを上げやすいから、こちらのほうが音作りがしやすいかも。この音がいちばん好きです。
●CA V30(LED : 緑)=12インチのヴィンテージ・リード80 ワット・スピーカーが4基搭載されたトーン。ダイナミック57とリボン121でマイキングされています。高域はソフトですが、中域はアグレッシヴで、押し出し感があります。
SYU:ハイ・ミッドが強く出てくる印象のトーンです。
●WHITE 75(LED : 緑)=1968年製バスケット織りの4 x 12キャビネットのビニールを取り除き、セレッション製グリーン・バック・スピーカー2台と JBL 120F スピーカー2台を搭載。スピーカーはダイナミック57で別々にマイキングされ、プリミックスされている。セレッション・スピーカーの太さと中音域、JBLスピーカーの高域のシズル感が組み合わされている。
SYU:ローが強調された感じです。抜けるローがあります。
※LEDが消灯時は、スピーカー/キャビネット/マイクの エミュレーションはオフとなる。
■SYU=お気に入りセッティング
▲SYUお気に入りセッティング。ALTでセッティングできるレゾナンスは11時、ゲートは1時ぐらいだ。
下は、ALTでエディットできるオーバードライブのセッティング。TSモードでの使用だ
■Universal Audio UAFX ANTI 1992 High Gain Ampの詳細■
https://hookup.co.jp/products/universal-audio/uafx-anti-1992-high-gain-amp