Sakuraがズームの最新マルチを試奏!
コンパクト・エフェクター・サイズのボディにマルチな機能やサウンドを搭載したズームのマルチストンプ・シリーズ。本誌Vol. 099でMS-50G+のレポートやWeROCK TVでSakuraによる試奏動画をお届けしてきたが、今回はこのシリーズの最新モデルであり歪み系に特化したMS-200D+のレポートをお送りしよう。
試してくれたのは、MS-50G+の動画でも活躍してくれたSakuraだ!
Sakuraによる試奏動画
ZOOM
MS-200D+ MultiStomp
¥13,900(ZOOM STORE販売価格)
■仕様■
●同時使用エフェクト数:2
●パッチ・メモリー(ユーザー・エリア):250
●サンプリング周波数:44.1 kHz
●A/D変換:24-bit 128倍オーバーサンプリング
●D/A変換:24-bit 128倍オーバーサンプリング
●信号処理:32-bit
●周波数特性: 20 Hz〜20 kHz(+0.5 dB−0.5 dB)(10kΩ負荷時)
●ディスプレイ:ドットマトリクスLCD(160 ×128 dot)
●入出力端子:インプット、アウトプット、USB
●電源:ACアダプター、単3乾電池×2
●外形寸法:79(幅)×61(高さ)×133(奥行き)mm
●重量:346g(乾電池を除く)
▲リアにはアダプターの接続や専用アプリをダウンロードしたスマホやPCと接続できるUSB端子を装備。また、USBバスパワーでも駆動可能だ
■Sakuraの第一印象
——まず、歪み系の音作りの好みなどを教えてください。
Sakura:バッキングはドンシャリが好きで、リード・リフでは前に出るようなミドルがねっとりした歪みが好きです。レコーディングではクランチ系の音色も使うんですが、もともと歪んだサウンドで弾きたいと思ってギターを始めたので、オーバードライブやディストーションは自分にとって欠かせないものですね。
——ふだん、歪みを作る時のアンプとエフェクターのバランスはどうやっていますか?
Sakura:基本はアンプで7割、足元で3割という感じです。アンプの音を大切にしつつ、エフェクターでプッシュする形ですね。足元ではアナログのチューブ・スクリーマー系のペダルやボスのオーバードライブなどを使っています。ギター・ソロでは、“ここがギター・ソロだ”って聴いている人に知らせたいタイプなので(笑)、エフェクターの個性を活かした音色作りで弾くこともありますね。
——そして、今回はマルチストンプ・シリーズの新製品、MS-200D+を試してもらいました。第一印象は?
Sakura:試す前は“200種類も歪みが入っているから操作とか大変かな?”と思ったんです。でも、まずプリセットが、大きくオーバードライブ、ディストーション、ファズなどに分かれていたりして、想像していたより好みのサウンドを探しやすかったんですね。実用的な音色が中心になっていて、おもしろい音色もあるし、自分にそのままハマるプリセットもある。いいなって素直に思いました。
——エフェクトは、ズームが新たに開発した164種類のオリジナルの歪みと36種類の定番のエミュレーションが内蔵されていますが、まずエミュレーションのニュアンスはどうでしたか?
Sakura:例えば、TS DRIVEというチューブ・スクリーマーのモデリングがあるんですが、TS系特有のねっとりとした、いい意味でしつこい感じが出ています。そうしたモデリングもリアルでいいんですけど、オリジナルの歪みエフェクトの中に、私の好みの音色がたくさんありますね。粗い歪みの感じのDESERT DRIVEとかクランチ系のCRUNCH BAR DRIVEなど、使えるエフェクトが多いなと感じます。
——細かい音作りも含めての使い勝手はどうですか?
Sakura:使いやすいですよ。プリセットの状態でLIBRARYというボタンを押して、横にスクロールしていくとオーバードライブやディストーション、ファズなどのカテゴリーが移動しつつ、画面の色も変わるのでわかりやすいですね。使いたいペダルを決めたら、4つのツマミでゲインやハイ、ローなど細かく音色を作り込めます。コンパクト・エフェクター感覚で使えますし、効きもよくてわかりやすいです。デジタル系の機器が苦手な方でも簡単に操作できると思います。
■プリセットをチェック
——今回はプリセットを中心に試してもらいました。ただ、200種類のプリセットを全部レポートしてもらうのは無理なので、まずは001番から005番までの感想から教えてもらえますか?
Sakura:マルチ・エフェクターのプリセットと聞くと、歪み系と空間系とフィルター系とか、いくつかのエフェクトが組みあわさったものだと思うんですね。でも、MS-200D+のプリセットは、基本的に歪み系1個の音で作られていて、そのエフェクターとマッチするペダルが1個オフの状態で組まれている形がほとんどなんです。例えば、プリセット001のRay DriveはRay Driveというオーバードライブがオンになっていて、TS DRIVEというオーバードライブが前段にオフの状態で入っています。プリセットそのままのサウンドは、中域がしっかり出ていて、伸びやかさも感じるオーバードライブですね。幅広く使えるタイプで、歪みの粒が細かくて弾きやすさもありますよ。初心者の方にも“これがオーバードライブ・サウンド”というのがわかりやすく伝わると思うし、そうした音がプリセットの1番目に入っているのもいいなと感じます。
002のBleed Fuzzは、(弾きながら)これも使いやすいですね。ファズって個性的なペダルが多いと思うんですが、このプリセットはファズならではの粒の粗さや太さがありつつ洗練されているなという印象です。003 LightBooster + FDTwin-RDriveはこのモデル名からもわかりますが、プリアンプにフェンダーのツイン・リバーブのモデリング、そこにブースターが加わったプリセットですね。このブースターのおかげか、フェンダーらしいクランチ系トーンに、さらに明るさを感じます。実機のツインリバーブと弾き比べる機会があれば、試してみたい。004 Nebula Distortionは……いいですね、これ。お気に入りです。
——どういう点が気に入ったんですか?
Sakura:001 Ray Driveが使いやすいオーバードライブだとしたら、この004 Nabula Distortionは使いやすい、太さのあるディストーションなんです。埋もれないサウンドだし、サスティンもあって弾きやすい。あと、Ray Driveもそうだったんですが、歪みの粒がすごく細かいのも好みですね。昔の洋楽のロックを弾くためには粗い歪みのほうが合うかもしれないですが、現代的なメタルには歪みの質が細かいほうが合っていると思いますので、そうしたプレイにオススメのプリセットです。
——005 Krampus Driveは?
Sakura:これは80’sロックにも現代的なメタルにも合いそうなプリセットだなと思います。以前、試奏したMS-50G+にも入っていたプリアンプですが、あの時は、もっとドンシャリなイメージだった覚えがあるんです。でも、今回あらためて試したら、現代的なローもあるなと。そして、ミッドもしっかり出ているし、80’sロックを感じさせる明るさもあります。このプリセットもいいですね。
▲200種類ものプリセットを搭載。歪みだけでこの数!
プリセットは“MEMORY”と記されたこのスイッチで選択する
▲001 Ray Driveでは前段のTS DRIVEはオフになっているが、一発でオンにすることもできる
——動画用に、他にもいくつかのプリセットも試してもらいましたが、全体的な印象はどうですか
Sakura:すごく駆け足で試してみたのですが、まず032 DZ Driveというのが気になりました。ディーゼルのモデリングなんですが、クリーン・セッティングのアンプに繋げても粒の細かいハイ・ゲイン・サウンドが鳴らせます。ディーゼルの音ですね。038 Desert Driveは逆に粒が粗く、ゲインはやや低めという個人的に好きな音色だったし、046 Silver Bullet Driveは明るくて粒が細かい印象で、アルペジオのフレーズなどを弾きたくなりますね。094 Lead Distortionは“悪さ”を感じる音です(笑)。悪いけどなめらかで明るいトーンです。ソロに向いた音色です。187 Sporty Boosterを使えば低域を抑えて音にメリハリがつけられますし、192 G5n Boosterも好きなタイプです。このG5n Boosterもそうですけど、ズームのオリジナルの歪みがたくさん入っているのもポイントだと思います。
第一印象でも感じたんですが、デフォルトのまま使える音色が多いなと思います。中にはクセが強くて、どこで使うのか迷うようなプリセットもありますけど、そうした音色で弾くことが新しい曲作りのアイディアになったりもするんですね。私自身が“この歪みの音色に合ったリフを弾いてみたい、作ってみたい”ということもあるんです。例えば、ファズを踏んでいたら、それに合った曲が思い浮かんだりとか、音色に刺激されるんですよ。そういう点でも、ただプリセットをいろいろ弾くだけでも楽しい1台です。もちろん、ツマミでゲインやベース、トレブルを調整したり、プリセット上ではオフになっているペダルをオンにしたりして、もっと好みの音色にすることもできます。全部のプリセットをしっかり試してみたくなりました。
——どういったギタリストにオススメですか?
Sakura:まずは初心者の方ですね。“オーバードライブとディストーション、ファズなどの違いがよくわからないし、どれが自分に向いているのかわからない。でも、3種類も買えないよ”という初心者の方にオススメです。この1台で、いろんな歪みを知ることができます。そして、ズームが新たに開発した歪みが164種類も入っているので、新しい歪みサウンドを試したい、探しているという方にもオススメです。あとは、コスパが抜群にいいんですね。安い値段(ZOOM STORE 公式通販で¥13,900)で、これだけの歪みが入っているというのがすごいです。サウンド・クオリティとしてもの方も満足できるものだと思うし、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル系のギタリストも含めて、年齢やスタイルを問わずオススメしたいと思います。
▲MS-200D+のプリセットは、最大2つのエフェクトから構成されている。
例えば、プリセットの001 Ray Driveであれば、まずオンになっているRAY DRIVEが表示される(写真①)。
この状態でLIBRARYを押すと内蔵エフェクトが選べる(写真②)。そして、カーソル・スイッチで左右に動かすとディストーションやファズなどのカテゴリーごとに移動できる(写真③)。
ディスプレイの色も例えばディストーションは赤色などとそれぞれに変化するのでわかりやすい!
▲MS-200D+には、歪み系の他、イコライザーやノイズ・ゲートなど7タイプのエフェクトも内蔵されている
■その他の注目ポイント
①チューナーを搭載:MS-200D+にはクロマティック・チューナーも搭載されている。
中央のオン/オフ・スイッチを長押しするとチューナー・モードになる。ドロップ・チューニングやオープン・チューニングなどにも対応していて、ミュート状態でのチューニングも可能となっている!
②アプリと連携:無償の専用アプリ「Handy Guitar Lab for MS-200D+」(iOS版)を使えば、USBで接続したスマホでプリセット・パッチの入手やパッチの編集などが行なえる。
③シリーズ接続とパラレル接続:コンパクト・エフェクターの接続方法として、シリーズ(直列)とパラレル(並列)の2種類があるが、MS-200D+では本体内でその2つと、さらにシリーズとパラレルを行き来するオルタネイトという3種類のモードで使い分けることができる。
選び方は簡単だ。使いたいプリセットを選んだら、中央右端のMENUノブを押して、右にスクロールしていくと“EFFECT ROUTING”が選べるようになる。ここで、シリーズとパラレル、オルタネイトの3つから選択すればOK。ちなみにコンパクト・エフェクターでシリーズ接続を行なうと前段の歪みに後段のキャラクターが加わる形で当然ノイズも増えてしまう。また、パラレル接続はそれぞれの歪みのキャラクターがミックスされる形だが、シリーズ接続と比べるとセレクターなどが必要になる。そうしたノイズやセレクターの心配もMS-200D+なら不要! 2つのエフェクターを同時に使うという場面で、より好みの音作りが行なえるのはうれしい限りだ。
▲プリセット 007をパラレル接続に変更すると画面には写真のように表示される
動画で使われたSakuraお気に入りのセッティング
〜イントロ&アウトロ
▲イントロではプリセット001を選び、もともとオフとなっていたブースターのTS DRIVEをオンにして使用。GAIN=30、TONE=54、VOL=100だ
メロディ
▲メロディ部分では、プリセット 043のCrunch Bar Driveを選び、デフォルトからゲインと低域を上げ、高域を下げて使用。さらにデフォルトではオフとなっていたブースターのZ CLEAN BOOSTERをオンにしている。
ブースターの数値は、GAIN=50、BASS=50、TREBLE=50、VOL=27
ギター・ソロ
▲ギター・ソロでは、プリセット 191のCalifornia Boosterをセレクト。プリセットでは後段にオフで入っていたディストーションをオンにし、前段に入っていたブースターを外してZOOM NOISE REDUCTIONをセットした。ノイズ・リダクションの数値はDEPTH=100、THRSH=30、DECAY=0
ハモリ・ソロ
▲ハモリのパートで重ねたギターは、お気に入りだというプリセット 004のNebula Distortionをそのまま使用。なめらかなトーンを持つディストーションだ。ちなみに数値を紹介しておくと、GAIN=50、BASS=50、TREBLE=62、VOL=66となっている
■MS-200D+の詳細■
https://zoomcorp.com/ja/jp/multi-effects/multistomp-pedals/ms-200d-plus/
■マルチストンプ・シリーズのラインナップ
写真左端はMS-50G+(¥12,900/ZOOM STORE販売価格)。102種類ものギター用アンプ/エフェクト・モデルを搭載し、それらを同時に最大6種類を組み合わせて使うことができる。写真中央はベース用のMS-60B+(¥14,900/ZOOM STORE販売価格)。こちらには97種類のアンプ/エフェクト・モデルが搭載されている。写真右はコーラスやディレイ、リバーブを中心に149種類の空間系エフェクターを搭載したMS-70CDR+(¥15,900/ZOOM STORE販売価格)。2系統のステレオ入力を備え、ギター/ベースの他、シンセサイザーなどにも使用できる。
マルチストンプ・シリーズの共通した仕様として、クオリティの高さはもちろんのこと、足元で操作できる4つのカーソル型スイッチ、カテゴリーごとに色が変わりわかりやすい液晶画面、コンパクト・エフェクター感覚の音作りなど使い勝手のよさも挙げられる。
『BETWEEN DREAD AND VALOR』
EACC-5001 2,750円(税込)
◎新体制となったHAGANEの最新音源であるEP。MVも公開されている「天下五剣」などを収録。
■HAGANE 公式サイト■
https://www.hagane-official.com/
■Sakura 公式サイト■
https://sakurayoshida.jimdofree.com/