WeROCK 099 付録CDインタヴュー集〜Chaos Control編

WeROCK 099の付録オムニバスCDに参加したバンドのインタヴュー集を、このWeROCK EYESでもお届けするシリーズ企画。
今回は2023年9月にアルバム『The Legacy Within』を発表したケイオス・コントロールのインタヴューをお送りしよう。

MV「The Legacy Within」


飾り気のないパワー・メタルがテーマです

——ケイオス・コントロールは、どういう経緯でスタートしたんですか?
金子
:関東を中心に活動しているプログレッシヴ・メタルのビジランテというバンドがあって、1990年代の後半にバンド仲間のツテでビジランテを紹介していただいたんですね。それでギターの堀江さんと大本さんと仲良くさせていただくようになり、ライヴのギター・テックのようなお手伝いをしていたんです。当時、僕はバンドをやっていなくて趣味で曲を作っていて、その曲を大本さんとかに聴いてもらっていたんですが、“よかったらCDをビジランテのレーベルから出してみないか”と。それで、1999年に僕と元ビジランテの光永(vo)さんらとプロジェクトのような形でスタートしたのが、ケイオス・コントロールの始まりになります。
——当時の音楽性は、今につながるパワー・メタルだったんですか? それともビジランテのようにプログレの要素も入ったメタルだったんですか?
金子
:基盤としては、今と変わらないです。パワー・メタルというか、激しかったり、重かったり、速かったりという。1999年前後の日本のシーンにはビジランテのようなプログレッシヴ・メタルのバンドがいくつかあって、その中でビジランテが好きだったというのはあるんですが、自分でやるならストレートなパワー・メタルをやりたいと思っていたし、当時、日本にはハイ・トーンを軸としたパワー・メタルをやっているバンドがいなくて、やるならそういう音楽をやりたいと大本さんと話していたんです。
——金子さん自身の音楽的ルーツは?
金子
:U.S.パワー・メタルのヴィシャス・ルーマーズのジェフ・ソープ(g)とマーク・マックギー(g)のツイン・リードだったり、ベイエリア・クランチと呼ばれたフォビドゥンというバンドだったりですね。ギターがザクザクしていて勢いのある楽曲をやっているバンドが、当時から好きでしたね。
——そして、2023年9月にセカンド・アルバム『The Legacy Within』をリリースしています。アルバム全体のテーマを教えてください。
金子
:ファースト(『Call Of The Abyss』/2022年8月)はパワー・メタルと言っても、デス・メタルやゴシック・メタルの要素があったんです。でも、今回は80年代や90年代に寄せたいというのがありました。2000年代以降のパワー・メタルって、雄々しくて壮大なコーラスが入っaたりするイメージがあるけど、もっと飾り気のない、ストレートなものにしたいなって。それに伴って、スラッシュ方面に尖らせたり、デスラッシュっぽさも入れたりしつつ、パワー・メタルとして裾野を広げようと。
——80年代、90年代に寄せたという話がありましたが、けしてオールドスクールなものになっていませんよね。
金子
:そうですね、僕はオールドスクールなものは好きですけど、今はスラッシュ・メタルって技術的にもすごいじゃないですか。グリッドに合わせた音楽は耳馴染みもいいし、しっかり聴こえる。でも、80年代、90年代のパワー・メタルやスラッシュ・メタルって生々しかったんですよね。そういう点を今の音楽に感じなくなってしまったんです。そういう雰囲気を今の音で表現したいというのがありますので。
——レコーディング・メンバーについて教えてください。前作と今作のドラムは摩天楼オペラの響さんですね。
金子
:『Call Of The Abyss』は当初、知人の紹介で別のドラマーが叩く予定だったんですがプリプロのスケジュールが合わなくなってしまったんです。それで、僕が一時音楽活動をしていなかった時、ベーシストやドラマーの動画をよく観ていたんですが、なかでも響さんの動画をよく観ていて。その動画に、“お仕事はこちらまで”とあったので、光永さんに“響さんに頼んでみたい”と相談しつつ、響さんに連絡したらすぐにOKの返事をいただいて。
——ベースはRosana:mihoですね。
金子
:以前、友人に誘われてデストローズのワンマンを観に行ったことがあったんです。その時、ベーシストのステージングがカッコよくて印象に残ったんですね。で、作曲活動を再開した2021年当時、日本にはどんなバンドがいるのかなって動画をいろいろ見た中で、LOVEBITESを観て、女性でこういうハードな音楽をやっているバンドがいるんだということに驚いて。しかも、“ベーシストはあの時の人だ、いつか演奏できる機会があればいいな”と思ってはいたんです。それで、前作の時に弾いてもらおうとコンタクトを取ったんですが、その時はタイミングが合わなくて。だけど、今回あらためて声をかけたらOKをいただいて。
——ヴォーカリストは、光永さんではなく、サイレックスのYoungChoon Choがメインで、Guiherme Hirose(ノーステイル、トラウマー)が3曲でゲスト参加していますが?
金子
:Choさんといううまいヴォーカリストがいることは前から知っていて、2023年2月に渋谷で復活ライヴをやった時にゲストで歌ってもらって、その時の感触がよかったんです。で、光永さんが声帯を傷めていて、今回のレコーディングには参加できないというのがわかっていたので、Choさんにメイン・ヴォーカルをお願いしたんです。Hiroseさんは、ファーストを作る直前にノーステイルのアルバムを聴く機会があって、いいヴォーカルだなと思っていたんですね。で、ファーストの時にヨーロピアン・メタル寄りの曲があったんですが、どうも光永さんとその曲が合わなくて光永さん本人もそう話している中で、気になっていたHiroseさんのSNSを見たら、“仕事はこちらまで”とあって。それで、コンタクトを取ってみたらOKだったんです。前作でも3曲ゲストで参加してもらい、今回も参加してもらいました。Hiroseさんのような少し甘めのハイ・トーンが好きなんですよ、僕。曲作りは2022年の暮れから詰めていたんですが、この2人のヴォーカリストに合わせてキーとかも考えて作りました。
——今回のオムニバスにはそのセカンド・アルバムから「Still Alive」で参加してもらいましたが、この曲を選ばれた理由は?
金子
:ケイオス・コントロールというバンドがいちばんわかりやすいと思ったし、りすぎてないというところでの曲全体のバランスも考えて選びました。3〜4曲候補があって、レーベルとも相談したら、レーベル側も「Still Alive」でしょうと。
——ケイオス・コントロールらしさにつながると思うんですが、アルバム全体的に一般的なパワー・メタルにはない幅広さがありますよね。
金子
:僕は音楽全般が好きだし、正直言うと、メタルをそんなには聴いてないんです。若い時は浴びるように聴きましたけど。だから、パワー・メタルをやるならマノウォーみたいなものじゃないとダメだ、みたいなこだわりはないんです。それよりも自然に聴ける、違和感なく聴けるということを作曲時に大事に考えているので。自分の中でも、これはパワー・メタルなのか? スラッシュ・メタルなのか? デス・メタルなのか? って感じることはあるし、聴いている方もそう思っていると思います。
——「Still Alive」は作詞も金子さんですね。歌詞のテーマは?
金子
:歌詞を書いたのは、このセカンドが初めてで、テーマ的には“再起”“復活”です。メタルにはありがちかもしれないですが、ケイオス・コントロールとしては最初のEPから20年ぶりにファースト・アルバムを2022年にリリースして、2023年にセカンド・アルバムという流れなので、越えていかないといけないという意識、新たな挑戦というものがあったんです。ひとりで曲作りをしていると“これでいいのかな?”って心が折れそうになることもあります。でも、“負けたらダメだ”という気持ちを込めて、まず日本語で書いて、それを英語に訳して、ディレクションしてもらいました。途中で“みんな楽しんでいますか?”というナレーションが入るんですけど、それは自分自身に対する問いかけでもあるんです。
——ギタリストとしての押しどころ、プロデューサーとしての押しどころを教えてください。
金子
:ギターとしては、汗臭いリフというか現代の音と比べると質感が違うところですね。クォンタイズされた音ではなく、生々しい音が入っているところ。ただ、プレイヤーとしては目一杯やっているけど、コンポーザー/プロデューサー的な視点ではもっと弾けないといけないなというのは正直あります。作品全体では、ギターをそうするためには土台がしっかりしていないといけないし、その土台を支えてくれる響さんのドラム、そのドラムと僕のギターを繋げてくれるmihoさんのベース。その土台もしっかり聴いてほしいですね。

アルバム『The Legacy Within』
リペントレス
RETS-0036
¥3,300(税込) 2023年9月20日
①The Legacy Within
②Headbanger’s Journey
③Still Alive
④ I’m Back(feat.Guilherme Hirose)
⑤Evolution Divine(feat.Guilherme Hirose)
⑥Second Impact(inst)
⑦Saviour
⑧Against The Evil
⑨Hold In My Fear
Bonus Track
⑩Karma(feat. Guilherme Hirose) – Bass Re-Rec, Remix & Remaster
Inferno(inst)

1999年に始動するも、一時活動を休止していたケイオス・コントロール。2022年に活動を再開しファースト・アルバム、2023年にこのセカンド・アルバムを発表した。徹頭徹尾、“これぞパワー・メタル!”という疾走感とドラマティックなメロディが貫かれ、爽快ささえも感じさせる。

■ケイオス・コントロール 公式サイト■
https://www.chaoscontrol-jpm.com/