一ノ瀬(青色壱号)がアンペグの最新プリアンプを試奏!

発売されると同時に、多くのベーシストに注目されているアンペグのSGT-DI。
ストンプ・タイプのアンペグのプリアンプに、初のIRロードを可能にしたモデルだ。
このペダルに、Damian Hamada’s Creaturesのベーシストとして抜擢されたガッシャンこと一ノ瀬が迫る!


アンペグ SGT-DI
¥75,900(税込)

【仕様】
●コントロール:ヴォリューム/コンプ、ベース、ミッド/フリーケンシー、トレブル、グリット/レベル、CABセレクター(115/410/810またはA/B/C)、ウルトラ・ロー・スイッチ、ウルトラ・ハイ・スイッチ、ヴォイス・スイッチ(SVT/B-15)、プリアンプ・スイッチ、SGTスイッチ、グランド/リフト・スイッチ、キャビネット・レベル、CAB/オフ/ユーザー切り替えスイッチ
●入出力端子:インプット、スルー、プリアンプ・アウト、ライン・アウト/ヘッドフォン・アウト、ダイレクト・アウト、USB、AUXイン(ステレオ)、AUXイン(モノラル)
●外形寸法:201(幅)×65(高さ)×126(奥行き)mm ※側面ノブ未収納時、ゴム脚含まず
●重さ:0.85g

▲リア・パネルには、①インプット、②スルー・アウト、③9V DC入力、④プリアンプ・アウト、⑤ライン・アウト/ヘッドフォン・アウトを装備。
②は、ドライ音の出力でチューナー・アウトとして使うことも可能で、レコーディング時にドライ音を録音する際に使うのにも便利だ。④はキャビネット・シミュレートされたトーン、AUXの音は含まれない音色を出力。⑤は、キャビネット・シミュレート(IR)などのエフェクト音、AUX INから入力された音などすべての音が出力される。ヘッドフォン・アウトとしても使用可能なので夜間の練習にも最適だ

▲本体左側には、グラウンド/リフト・スイッチ、ダイレクト・アウト(バランスXLR)端子、キャビネット選択スイッチ、キャビネット・レベル・コントローラー、さらにUSB-C端子を装備。
ダイレクト・アウトは、DI出力端子として使用可能で、IRのサウンドを出力することも可能。キャビネットのレベル・コントローラーは、プッシュすると飛び出る仕組み(写真右)で便利だ

本体右側にはMP3プレイヤーなどを接続できるステレオ入力端子、別のベースや音源を接続できるAUX入力端子(モノラル)も搭載している。AUXレベルはプッシュすると飛び出るようになっている


「アンペグそのままの音が出てくれます!」

——ふだんからアンペグを使う機会が多いとのことで。
一ノ瀬
:リハーサル・スタジオに行くと、アンペグが置いてあることが多いじゃないですか。ライヴ・ハウスでも多いですし、自然とアンペグを使う機会が多くなりました。ベース・アンプのスタンダードというイメージですよね。
なのでアンペグでの音作りはしやすいし、むしろ“アンペグ基準”で音作りをしてきた感じで、他のアンプの時はアンペグじゃないんだと思って音作りしてます(笑)。
——音は、どういうふうに作ってますか?
一ノ瀬
:エフェクト・ボードにプリアンプを2つ載せていて、片方を歪み的に使用してどんなアンプが来ても自分の好きな音が出るようなセッティングにしてます。やっぱり現場によってどんなアンプが来るのかわからないですし、わかってるアンプでもコンディションによっては音作りしづらかったりするので、足元で完結するようにしてます。
——そんなベーシストが、このSGT-DIを使った第一印象は?
一ノ瀬
:音の面では、ちゃんとアンペグの音がするということにまずはビックリしました。
最初、キャビネット・シミュレーターを使わずにプリアンプのみの音をラインで出したんですけど、その時点で“これはいいかもしれない!”という感触がありました。プリアンプ自体って、EQの効きが弱かったり、そのメーカーの本物のヘッドやキャビネットに負けちゃうなという印象があるんですよ。ところが、SGT-DIは、アンペグそのままの音が出てくるんです。まずパワフルだし、歪ませても音痩せせずに出てくるので個人的にもすごくありがたいなって思いました。
——今、話していたEQに関しては、どのぐらいの効きでした?
一ノ瀬
:効きがいいんです。ツマミを動かしたぶんだけキャラクターを変えられるので、いろんなジャンルに使えそうと思いました。
ひとつずつ試奏してみると、まずベースは、かなり太めでパワフルな帯域のブースト/カットができます。いちばんベーシストが欲しい帯域のベースですね。バンド・サウンドにもよりますけど、ベーシストが気持ちいい感じで言ったら、このベースを基準にローの感じを決めて音作りをしていくのがいいんじゃないでしょうか。
ミドルもちゃんと効いてくれるのがうれしいし、帯域部分にちゃんと数字が書いてあるので加減もわかりやすいんです。私、ロー・ミッドの400Hzが欲しいんですけど、そのポイントで上げられる。この帯域って、ギターのジャマにならずフレーズを出したい時はこの場所を調整すると主張できるんです。600Hz以上になってしまうと、ギタリストにうるさいって言われたりするので(笑)。ここを調整するポイントとしては、1回フルにしてから帯域を選んで下げていくと音作りしやすいかもですね。そうやって上げ下げしていくのも、バンドの中で自分の居場所を探すのにいいと思います。
トレブルも効きますね〜。どのEQも、ちゃんと効いてくれるからいじり甲斐があります。トレブルは絞ると絞るで暖か味のある音になってくれて、この大人な感じはジャズ系とかにもいいですね。

EQコントローラーは、ベース、ミドル、トレブルの3つが基本。
ミドルは、フリーケンシー方式になっており、200Hz〜3kHzのカット/ブーストが可能。なお、3つのEQは、すべてセンター位置がフラットで、そこからカット/ブーストを行なう

 

——EQに関わるスイッチで、ウルトラ・ローとウルトラ・ハイはどうでしょう?
一ノ瀬
:ウルトラ・ローが、すごくよくて、ずっと付けっぱなしで弾いちゃいます。カットのほうにするとスッキリする感じで、ブーストすると気持ちいいローが足されます。センターのオフの位置でも充分にロー感はあるんだけど、もう少し欲しいなという時にプラスするといいかもしれない。いっぽうのウルトラ・ハイのスイッチはプラスするかオフかですが、オンにすると抜け感がよくなる印象ですね。

▲写真上段はウルトラ・ロー・スイッチ。カット(左)/オフ(中心)/ブースト(右)が選べる。
写真下段はウルトラ・ハイ・スイッチで、こちらはオフ(左)とブーストで(右)の切り替えが可能。

 

——スイッチに関してはヴォイシング・スイッチを搭載していて、SVTとB15のアンペグを選択できるという。
一ノ瀬
:スタジオによくあるのがSVTじゃないですか。だから、SVTのほうは馴染みのある音ですよね。ところが、B15もいいんですよ。SVTよりスッキリしていて、ミッドも抑え目な感じです。B15は、昔の15インチ一発のコンボなんですね? SVTだと圧が強すぎる場合は、こちらを選ぶといいと思います。

▲ヴォイス・スイッチで、SVTかB-15のエミュレートを選択する


——そして、アンペグ独自のSGT(Super Grit Technology オーバードライブ回路)スイッチの印象は?
一ノ瀬
:歪みが増すということですよね? いい感じでかかってくれるんですよ。ソロの時にオン/オフするという使い方もありですよね。ヴォリューム・ペダル代わりにもなるし、ブースター代わりやディストーション代わりにしてもいいと思います。
ドライヴ感を足したい時に使うのにも最適で、ニュアンスが付いてロックな音になりますよね。いちばんうれしいのは、グリット・コントローラーを上げていっても音痩せせずに音の太さをキープしてくれるんですよ。グリットをマックスにしても低音が減ることもなく歪んでくれる。歪みは細かいタイプではなく、粗いツブに感じました。オーバードライブに近いニュアンスですね。ギター的な歪ませ方とは違うんですけど、あまりベースでそういうシーンもないと思うし、あくまでもベース的な歪みでロックな音にしたい時とかバンド・サウンドに馴染みをよくしたい時にほしくなる歪みです。私は、こちらの歪みだけでも足元に欲しくなりますね。
——メーカー側の意向も、真空管アンプを少しドライヴさせたような歪みをシミュレートしていて、ディストーションではないとのことです。
一ノ瀬
:SGTスイッチを使えば、ソロで少しヴォリュームを上げたい時に、歪ませないでヴォリュームだけを上げることができるじゃないですか。もちろん、オンにしたままで音を作るのもありだとも思いました。かなり、いろいろな使い方ができるプリアンプですね。

▲SGTスイッチは、オーバードライブのオン/オフを選択するスイッチだ。


SGTフット・スイッチをオンにした時のみ有効になる2層式のツマミだ。
内側がオーバードライブの量、外側が出力レヴェルのコントローラーになっている。歪みの量とレベルを調整し、SGTのオン/オフを使用すれば、ライヴ時の2音色の使い分けやソロ時など有効に活用できる

 

——さらに、コンプが搭載されています。こちらは、どうでした?
一ノ瀬
:これも、ちゃんとかかってくれるんですよ(笑)。コントロールがひとつのみなので微調整はできないんですけど、純粋に音の頭を揃えるだけで使うならばこれだけで充分です。
逆にコンプって、使い方が難しいじゃないですか。でも使ってみたいというベーシストならば、これぐらいシンプルなほうが正しい加減で使えるんじゃないですかね。このSGT-DIは、このコンパクトな中にコンプも入っていて、すごく便利ですよね。飛行機移動とか、あまり機材を持っていけないという時、これ1台で済みますから。

▲2層式になっているヴォリュームとコンプレッサーのコントローラー。
写真のように外側のツマミを回すことでコンプのスレッシェルドを調整可能だ。コンプがかかると、 ツマミの右下にあるLEDが点灯する


——さて、いちばんのポイントであるキャビネット・シミュレーターです。
一ノ瀬:ついにトラディショナルなアンペグがIRを導入したんですね(笑)。
これ、めちゃくちゃおもしろいです。私の場合であれば、曲によって使い分けるというよりも、好きなキャビを選んでずっと使うパターンですね。デフォルトで入ってるキャビも、それぞれキャラクターが違うので好きな音を選んでもいいし、楽曲に合わせるのもありだと思います。私は、ユーザー・エリアのAにデフォルトで入っていたキャビが好みでした(SVT-112AV)。固定で入ってる3つの中では810がパワフルで好きですね。どのキャビネットも、すごくそっくりにシミュレートされていて、ちゃんとアンペグの音がしていてプラグインとかでありがちなデジタルっぽさはないんです。IRなのでマイクやスタジオの環境も再現してるからか、空気感も感じられますね。
——ガッシャンとしては、SGT-DIをどういうふうに使うのがオススメ?
一ノ瀬
:レコーディングであれば、このまま録れますね。スルー端子があるからドライ音も同時に録れるのは、ホントに便利です。かなり本物のアンペグの音なので、バンドで鳴らしても存在感あるサウンドで出てくれると思うんです。なので、もちろんライヴでも使えるし、すごく器用なプリアンプです。アンペグが欲しいけど、大きくて家には置いておけないというベーシストなら、まずはこれで音作りしておけばいろんな場所で対応できると思います。

IRとは?

“IR”とは、キャビネットの音響特性を記録したデジタルオーディオ・ファイルだ。
IRは環境プリセットとも呼ばれ、ファイルには録音に使用されたマイク、プリアンプ、ケーブルなどの特性も記録されていおり、IRを使用すると本物のキャビネットを交換するのと同じように、異なるキャビネットに切り替えることが可能となる。
SGT-DIには、6種類のキャビネット・シミュレートが搭載されており、そのうちの3種類は好きなキャビネットIRに置き換えることも可能となっている。デフォルトで搭載されているキャビネットは、ヘリテイジ B-15、ヘリテイジ SVT-410HLF、SVT-810 Squarebackの3種類。その他、ユーザー・モードとして置き換えが可能なSVT-112AV、SVT-210AV、SVT-212AVが用意され、左側にあるキャビネット選択スイッチと写真のスイッチの組み合わせで切り替える。

デフォルトで搭載されている、ヘリテイジ B-15/ヘリテイジ SVT-410HLF/SVT-810 Squarebackという3種類のキャビネットを切り替えられる

一ノ瀬セッティング

キャビネットはユーザー・エリアのAを選択。ウルトラ・ローはオフにして、ロー・ミッド強めのセッティング(ミッド・フリーケンシーは1.5kHzをブースト)。
SGTレベルは2時あたり、コンプは1時あたりにセッティングされている

ライヴで使用!

◎ライヴ時に4つのアウトのうち、3つを駆使したセッティング。
PA卓に行くDIアウトは、キャビネット・シミュレートも入った音色を出力。プリアンプ・アウトを利用してアンプのリターンに接続すれば、SGT-DIの音色をキャビネットから出力してプレイすることも可能だ。これで、どんな現場に行っても、いつもの音色を奏でることができる

レコーディングで使用!

レコーディング時に便利なのは、ドライ音とSGT-DIで作った音の両方を同時出力できる点だろう。
さらに、プリアンプだけの音も出力できるので、プラグインなどでキャビシミュを持っていれば、自分の好きなキャビを鳴らすこともできるというわけだ

■アンペグ SGT-DIの詳細■
https://ampeg.jp/products/pedals/sgt-di.html


一ノ瀬(いちのせ):絶対倶楽部の解散後、2020年にソロ・プロジェクトの青色壱号を始動。青色壱号ではヴォーカルも担当し、ロックやポップス、クラシックを吸収したサウンドを聴かせてくれる(写真は、青色壱号のアルバム『A-I-SHI-TE-RU-WA international edition』)。また、ひーちゃん(ザ・ヒーナキャット)とのユニットをはじめ、数々のセッション・ワークも展開。さらに第2期Damian Hamada’s Creaturesのメンバーとして抜擢され、リリス一ノ瀬として今秋のツアーでも活躍予定だ。

アルバム『A-I-SHI-TE-RU-WA international edition』(青色壱号)

■青色壱号 公式サイト
https://aoiroichigo.jimdosite.com/