禁断のチューナー比較!

ギターやベースのチューニングを行なうチューニング・メーター(チューナー)は、各メーカーから多種多様なものが発売されており、最近はクリップ型のものも多い。
ピッチを合わせることが目的なだけに、差があってはいけない、このチューナー。
しかし、“本物”は違うらしい! チューナーの最高峰ともいえるピーターソンの新製品に注目し、検証してみた!!


ピーターソン Strobo Stomp Mini
¥28,600(税込)

【仕様】
●電源:電源アダプター(別売:9V DCセンター・マイナス)、USB-Cバス・パワー
●消費電流:85mA
●音域:C0〜A♯8
●チューニング精度:0.1セント
●ディスプレイ:液晶、バックライト付き
●コンサート・ピッチ:390Hz〜490Hz
●移調範囲:−6〜+5
●周波数応答範囲:16.35Hz〜7302Hz
●プリセット数:80以上(下記参照

●外形寸法:47(幅) × 52(高さ) × 96(奥行き)mm(スイッチ類含む)
●重さ:254g

■ディレクター/プロダクト・マネージャーが語るピーターソン
「当社のチューナーは、他社のものより10〜20倍正確です」

▲インタヴューに応えてくれたクリス・ラブリオラ氏

——新しいストロボ・チューナー“ストロボ・ストンプ・ミニ”を開発したきっかけを教えてください。
クリス
:フル・サイズであるストロボ・ストンプ HDとLEは大成功を収めて、現在も当社のベストセラー製品となっています。
しかし、お客様からはつねにトップ・マウント・ジャックを備えたチューナー・ペダルの要望がありまして、ストロボ・ストンプ HDにミニ・サイズがあればいいのにと言われていました。そこで、この2つの要望に応えることができるストロボ・ストンプ・ミニを開発しました。
——ミニは、どんな特徴を持っているモデルになりますか?
クリス
:ストロボ・ストンプ HDとLE、ストロボ・プラス HDと同様に、可変カラー・バックライト付きの高精細LCDディスプレイを搭載しています。また、ストロボ・ストンプ HDと同様に、トゥルー・バイパス、バッファード・バイパス、「常時オン」モニター・モードの切り替えも可能です。そして、80以上のピーターソン・スウィートナー&ガイド・チューニングのプリセットが含まれているのも特徴ですね。
——ところで、ピーターソンは、他のメーカーのチューナーとどこが違うんですか?
クリス
:すべてのピーターソン製チューナーは、1/10セント、半音の1/1000の精度を提供します。これは一般的に、他のチューナー・ブランドよりも10〜20倍正確です。精度の仕様に関係なく、こういった極めて高い精度をプレイヤーに示すことができるのは、高精細なストロボ・ディスプレイだけなのです。この精度の高さにより、ピーターソン・チューナーには特定の弦のチューニングをわずかに補正することで、楽器のチューニングをより合わせることができるスウィートナーとガイド・チューニングのプリセットが搭載されています。
——メカニカル・ストロボ・チューナー(オートストロボなど)とヴァーチャル・ストロボ・チューナーの違いを教えてください。
クリス
:機械式ストロボ・チューナーもヴァーチャル・ストロボ・チューナー(LCDディスプレイ)も、1/10セント、半音の1/1000の精度は同じです。しかし、メカニカル(回転ディスク)ストロボ・チューナーは、チューニングされている音の倍音や倍音などの追加情報を表示します。ピーターソンのメカニカル・ストロボ・チューナーは1970年代から販売されており、ギター職人、ツアー・テクニシャン、ピアノ・テクニシャン、打楽器メーカーに最適です。
——ストロボ・ストンプ・ミニは、どのようなミュージシャンに使ってもらいたいですか?
クリス
:ストロボ・ストンプ・ミニは省スペースなミニ・ペダル・フォーマットで、ペダル・ボードのサイズを縮小している新しい世代のギター・プレイヤー、ベース・プレイヤーにアピールできるモデルだと思います。販売価格も、大型のストロボ・ストンプ HDの約80%なので、ピーターソンのストロボ・チューニングのパワーと精度を、より多くの人に知ってもらえる機会だと思っています。
——ミニとHDのサイズ以外の違いは何ですか?
クリス
:サイズ以外のおもな違いは、上部にマウントされたジャックですね。ミニは電池を使用せず(9V DC電源のみ)、HDのような9V DC出力もありません。ただ、内部的には、HDと90%同じです。また、ミニは、トゥルー・バイパス、バッファード・バイパス、モニター・モードの切り替えをハードウェア・スイッチではなく、画面上のソフトウェアで切り替えるようにしました。
——ピーターソンのモデルには、クリップ・タイプのものもありますが、精度はストンプ・タイプと違いますか?
クリス
:いいえ、精度はどのピーターソン・チューナーも同じです。ただし、クリップ・オン・チューナーは、内蔵マイクやケーブルでの直接接続とは異なり、ギターからの信号をチューナーの頭脳に伝達するためにピエゾ・ピックアップを使ってます。そのため、クリップ・オン・チューナーの位置が信号の強さに影響することがありますので注意が必要ですね。
——では、ピーターソンのチューナーのおすすめの使い方を教えてください。
クリス
:ストロボ・チューナーを使う場合、一般的なチューナーのように何度も音を鳴らすのではなく、数秒に一度だけ音を鳴らすことが・ポイントです。弦をサステインさせ、ピックで強く弾くのではなく親指の柔らかい部分で優しく音を出すと合わせやすいかもしれないですね。それと、バンド内で違うメーカーのチューナーを使うのはオススメできません。かならず同じチューナーを使うことで、アンサンブルの聴こえ方が違ってくるので、ぜひ全員でピーターソンのモデルを使ってみてください。

 ▲左の円状のものが回転してピッチの精度を表示する

こちらは、機械式ストロボ・チューナーのオート・ストロボ T490。
ギター・テクニシャン、楽器製造者も認めるプロ仕様のストロボ・チューナーだ

プリセットやLEDの色は、左右のボタンで変更することができる

実際どうなの!? 禁断の比較をしてみました!!

0.1セント(半音の1/1000)のチューニング精度を誇るピーターソンのストンプ・タイプのストロボ・チューナーの中で、さらに小型化したモデルが、このストロボ・ストンプ・ミニだ。
“チューナーはどれでも同じで、使いやすさ重視!”と思ってるギタリスト&ベーシストも多いことだろう。ところが、どうやらそうでもないらしく、“実際どうなのか!?”を検証してみようというのが、今回の企画だ。
そもそも0.1セントがどれぐらいのものなのかもわからないと思うので、愛用者も多い某有名メーカーのクロマチック・チューナーのスペックを見てみると……±1セントと記されていた。というは、その1/10! この0.1セントがどれだけ正確かがわかるだろうか。その某メーカーのチューナーを使い、ほんの1目盛り弱ずれていても1セント程度ずれていることになるわけで、これがツイン・ギターだったり、ベーシストとのことも考えると、かなり不協になる可能性があるわけだ。わずかなずれをそれほど重要に考えてなかったギタリスト&ベーシスト諸君は、この段階で“おっと”と思っているのではないかな?
さて、検証の前に、このストロボ・ストンプ・ミニの特徴を調査してみよう。
まず、ストロボ・チューナーとは、クロマチック・チューナーと違って回転するメーターが表示され、その回転が止まるようにチューニングするチューナーだ。
使ったことがある方ならわかると思うのだが、クロマチック・チューナーがビタっと止まるのに対し、ストロボはビタ止めというわけにはいかない。そのため、慣れないとチューニングに時間がかかってしまうこともあるため敬遠しがちな方もいるだろう。しかし、よく考えてほしい! ギターは弦を振動させて音を出すために、ピッキング直後と少し間を置いてからでは、微妙にピッチが違うのだ。よって、ストロボ・チューナーのなかなか止まってくれないのが正しいと言える。ここは、正確なピッチにチューニングできるように、ぜひ慣れてほしい!
続いて、機能面を見ていくと、チューナーだというのにすごい! 最大の特徴は、80種類以上のプリセットが搭載されている点だ。“チューナーなのにプリセットいる?”と思われるかもしれないが、たとえばギターに関してもレギュラー・チューニングからドロップ・チューニング、さらにはエディ・ヴァン・ヘイレン・チューニングなどなど、とにかく豊富。そして、さらにすごいのは、各プリセットごとにピーターソンならではの微調整がされているのだ。これは、たとえば、GTRというプリセットであればエレキ・ギター用に微調整されているとのことで、この部分を後ほど実験してみたので参照してほしい。

さらに、3種類の出力も用意されている。
①バッファード・バイパス+モニター・モードバイパス時にバッファー回路を通った信号が出力され、フットスイッチを踏むと出力がミュートされてチューニングができ、さらにミュートを解除してもチューナーは作動し続けるモードだ。演奏しながらチューニングをチェックできるので、ライヴ時に便利だ。
②バッファード・バイパス・モード①のミュート時にチューナーを作動させないモード。
③トゥルー・バイパス・モードバイパス時に入力から出力までチューナー回路を通らないトゥルー・バイパス仕様だ。フットスイッチを踏むと音はミュートされチューニングが可能となる。

出力方法を選択する画面。左から、トゥルー・バイパス・モード、バッファード・バイパス・モード、バッファード・バイパス+モニター・モード

 

この他、各プリセットで半音ずつ上げ下げできる機能、390〜490Hz間でピッチを設定可能な“コンサート・ピッチ”機能も搭載。さらには、ディスプレイの色を各プリセットごとに変更も可能で(10色!)、これを使い分ければどのプリセットになってるかを素早く確認することができる。

▲各プリセットごとに半音ずつ上げ下げすることも可能だ

入出力端子の上にあるのは、USB-C接続端子。こちらでも起動可能だ

他のチューナーと誤差が出てしまった(汗)

さて、いよいよ“実際どうなのか!?”の検証がやってきました。
まずは、実験①。
同じピーターソンのモデルを使い、プリセットがGTR(ピーターソンならではの微調整がされているプリセット)の時に、ノーマルのチューニングとどれぐらいの差があるかを検証してみた。
下の写真を見てほしい。右がストンプ・ミニでプリセット“GTR”、左はストンプHDで、こちらは平均律のプリセット“EQU”にセットしてみた。“GTR”はギターのレギュラー・チューニング用に微調整されたプリセットだが、平均律プリセットと違いは出るのだろうか(というか出ていいのだろうか/汗)。実験してみる、1〜6弦の開放を鳴らしてみると、ほぼ同じ反応で安心(!?)。

▲実験①は、同じピーターソンで異なるプリセットを使ってやってみた

 

さて、ここからが本番、某有名メーカーのチューナーと比べてみよう(実験②)。
まず、6弦を鳴らす。おっ、ぴったり合いました! よかった!! ところが……5〜1弦をチューニングしていくと、某メーカーのはややフラットに表示される。1目盛りぐらいなので2セントらしい。どうしましょう……。これ以上、多くは語りません。

▲実験②。モザイクをかけて自主規制してますが、某メーカーのチューナーと2セント程度の差が出てしまった(汗)

 

気を取り直して、“EVH”という“エディ・ヴァン・ヘイレン・チューニング”に微調整されたプリセットを検証してみよう(実験③)。こちらは、某チューナーだと差し障りがあるので、ピーターソンHDを平均律のプリセット“EQU”にしてやってみた。
そうすると、6〜4弦は、ほぼ同じ数値を示したが、3弦で微妙にEQUがフラットな回転を示し、1〜2弦になるとさらにフラットな回転で表示された。お〜、これは、ヴァン・ヘイレン・チューニングに調整されているのか!? ただの半音下げチューニングでヴァン・ヘイレンを弾くと、どことなくピッチが違く聴こえるのが、これで解消されるのだろうか!? ここから先は、自己責任で検証してみてください。

▲実験③。“ヴァン・ヘイレン”プリセット(右)では、3弦以降が通常の半音下げよりも高めに微調整されていることがわかった

 

さて、最後も禁断の検証。クリップ・チューナーのHDと、この精度の高いストンプ・ミニで“実際どうなのか!?”を検証してみた(実験④)。
ただし、ピーターソンからもクリップ・チューナーは発売されてるので、某メーカーのクリップ・チューナーと合わせて2つをヘッドに装着。さあ、度胸試しでいってみます!
まずは6弦を弾いてみて、ストンプ・ミニを基準に合わせてみると……よかった、ピーターソンのクリップ・チューナーも某メーカーのクリップ・チューナーも同じ反応。他の弦を合わせていっても、ほぼ同じ数値を示してくれて、ホッとした(汗)。
ただし、某メーカーのチューナーがセンターで止まっていても、ピーターソンのミニとクリップHDともに、ほんのわずかに回転する時があった。これはピッキングの強さなどにも反応しているわけだが、この数セントの精度がピーターソンならではといえるのではないだろうか。最後のまとめにも記したが、やはりバンド全体でピーターソンのモデルを使うと、かなりの精度でチューニングが合うことがわかった。

▲実験④。某メーカーのクリップ・チューナー、ピーターソンのクリップ・チューナー、そしてストロボ・ストンプ・ミニでレギュラー・チューニングを測定!
禁断の結果が出てしまった……

この結果をどう捉えるかは、あなたしだい……

という結果が出てしまったが、ひとつ声を大にして言いたいのは、ピーターソンでチューニングした後にコードを弾いてみると、ものすごくキレイな和音に感じられたことだ。
すなわち、これこそが正しいチューニングなのかなと思わされた。冒頭でクリスさんが言っていたように、バンドのメンバー全員が、このピーターソンを使うことでバンドのアンサンブルが一段よくなるような印象さえ感じてしまう。いや〜、チューニングって奥深いし、大切だということを今回の実験で思い知らされました!

■ピーターソンの詳細■
http://www.electroharmonix.co.jp/peterson/index.html

■ピーターソンStrobo Stomp Miniの詳細■
http://www.electroharmonix.co.jp/peterson/strobo-stomp-mini.html