ANCHANGがマーシャル・ペダルを試奏!

マーシャルから同社の60周年を記念して4種類の歪み系ペダルがリイシューされた。
1980年代後半から1990年代に多くのギタリストを魅了したこれらのペダルを、ANCHANGが試奏!
動画と合わせて、その魅力を伝えてくれた!


ANCHANGによる試奏動画


新たに登場した4種類のリイシュー・ペダル

マーシャル60周年を記念して、1980年代後半から1990年代にかけて発売されていた4種類の歪み系ペダルがリイシューされた。どのモデルも外観のみならず、細部にわたるまでオリジナルを忠実に再現している(ジャックとポットは当時のものが生産終了となっているため、同等品が使用されている)。
The Guv’nor(ザ・ガヴァナー)は、1988年に“マーシャルのスタック・アンプのサウンドをペダルで再現”というテーマのもと開発、販売され、当時プロ/アマを問わず、またロックからブルース、メタル系まで幅広いギタリストに愛用された。
そのThe Guv’norの販売が終了した後、1990年代に入り、後継機種として発表されたのがDrivemaster(ドライヴマスター)。The Guv’norから回路の簡素化や低域のゲインの追加が行なわれているモデルだ。
そして、そのDrivemasterと同時に、マーシャルのコンボ・アンプの名機である“1962 Bluesbreaker”のサウンドを凝縮したBluesbreaker(ブルースブレイカー)、メタル・ギタリスト向けのハイ・ゲイン・モデルであり多彩な中域のコントロールが魅力のShredmaster(シュレッドマスター)も市場に投入されたのだ。
今回リイシューされたこの4機種。“Made in England”というところもファンを喜ばせていることを最後に付け加えておこう。


マーシャル
The Guv’nor
¥27,500(税込)

【仕様】
●コントロール:ゲイン、ベース、ミドル、トレブル、レベル
●入出力端子:インプット、アウトプット、Yインサート(センド/リターン)
●電源:9v-18v DCアダプター(センター・マイナス) or 9v乾電池
●外形寸法:112(幅)×61(高さ)×132(奥行き)mm
●重さ:0.8kg(乾電池を除く)

■The Guv’norの詳細
https://www.marshallamps.jp/products/re-issue-pedals/TheGuvNor/index.html

——ANCHANGは、オリジナルのガヴァナーの後継機種であるGv-2 The Guv’nor Plusは試したことがあるんですよね。
ANCHANG
:ええ。10数年前ぐらいですけど、これ1台で事足りるな、プリアンプ的にも使えるなと思ったことを覚えています。当時、まわりのギタリストもけっこう使っていましたよ。
——そのうえでの今回のリイシュー・ペダルですが、鳴らした瞬間に“すごいな”と言っていました。
ANCHANG
:すごい弾きにくいと(笑)。いや、これはいい意味なんですよ。ふつうはゲインを上げていくと弾きやすくなるというか、“弾けている感”が出やすいんですけど、そうならない。そういう面ではちゃんと弾ける人向けのペダルという気がしますし、そこがマーシャルらしい。当時のJCM800の音がする。けしてJCM2000とかの音ではないんです。
——歪みの質は、どう感じました?
ANCHANG
:イメージしていたよりは歪まないというか、80年代のマーシャル・アンプを歪ませた音です。そっくりすぎますよ(笑)。よく言うんですが、80年代の音に憧れるなら、マーシャルしかないんです。実際に当時のギタリストが使っていたのがほとんどマーシャルですから。だけど、今時のギタリストからするとマーシャルって弾きづらい、嘘がバレるアンプなんですよね。タッチが露骨に出るし、マイルドじゃないし、じゃじゃ馬的でな人しか使えない。そこがマーシャルのいいところなんですけど、そのキャラクターを凝縮していると思います。
——イコライザー類については?
ANCHANG
:ミドルがすごく効くのがいいですね。当時のマーシャルってミドルがあまり効かないじゃないですか。でも、ガヴァナーはすごくミドルの効きがいい。だから、発売当時もみんな重宝したんだと思います。マーシャルの音をちゃんとコントロールできるわけですからね。
——ANCHANGならどう使いますか?
ANCHANG
:プリアンプ的に使うと思います。アンプのリターン端子にガヴァナーをつないで、ガヴァナーでマーシャル・サウンドを作り、そこにオーバードライブを1台加えるとかですね。当時もそうやって使っていたギタリストは多いんじゃないかなと。
ジャズ・コーラスとか歪まないアンプでも、ガヴァナーをプリアンプ的に使うことで、マーシャル的なサウンドを作れると思います。また、アンプ側で歪ませて、ガヴァナーのゲインを絞ってブースター的に鳴らすと、80年代の中でも少しモダンな方向性のサウンドになりますね。この使い方もいいと思います。僕としては、ガヴァナーはディストーションとしてではなく、プリアンプとして捉えて使うのが理想じゃないかなと考えます。80年代のマーシャル・サウンドが欲しい人はこれを使わないとダメです。

▲ミドル・コントロールの効きがいい!
この点は80年代のマーシャルらしくない?

ANCHANGのお好みセッティング

ANCHANGには4台でそれぞれお好みのセッティングを作ってもらった。
アンプ側はクリーン・セッティングで、ガヴァナーをプリアンプ的に使うセッティングだ


マーシャル
DRIVEMASTER
¥27,500(税込)

【仕様】
●コントロール:ゲイン、ベース、ミドル、トレブル、ヴォリューム
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9v-18v DCアダプター(センター・マイナス) or 9v乾電池
●外形寸法:110(幅)×67(高さ)×147(奥行き)mm
●重さ:0.7kg(乾電池を除く)

■DRIVEMASTERの詳細
https://www.marshallamps.jp/products/re-issue-pedals/Drivemaster/index.html

——続いてのドライヴマスターですが、当時、ガヴァナーを踏襲した形で発売されたそうです。ANCHANG:実際、ガヴァナーと音が似てますよ。ただ、ゲインを同じぐらいにしても、ドライヴマスターのほうが弾きやすく感じますね。不思議だなあ。ガヴァナーのほうがリアルなアンプっぽいというかタッチがバレやすい。
ドライヴマスターのほうは、コンプ感というか、全体的に持ち上がっているように感じますね。低域を上げるとその差がわかりやすいと思います。アンスラックスみたいな音が出せる。今時、この例えが伝わるかどうかわからないですけど(笑)。イコライザー類もガヴァナーと同じで、ミドルが効くのがいいですよ。
——ガヴァナーと似ているというところで、ユーザーは迷いますよね?
ANCHANG
:よりマーシャルらしい音を求めるならガヴァナー、弾きやすさを取るならドライヴマスターじゃないですか。ガヴァナーと比べるとドライヴマスターには少しだけモダンさも感じます。もちろん、どっちも弾けば弾くほどマーシャルを感じますし、他のアンプやペダルじゃ出せない音ですよ

ガヴァナーと同じく3バンドのEQの効き方が秀逸。
細かく音作りが行なえる

ANCHANGのお好みセッティング

ドライヴマスターも同じく、アンプは歪ませず、本機をプリアンプ的に使い、マーシャルらしい歪みを作ってもらった


マーシャル
BLUESBREAKER
¥27,500(税込)

【仕様】
●コントロール:ゲイン、トーン、ヴォリューム
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9v-18v DCアダプター(センター・マイナス) or 9v乾電池
●外形寸法:110(幅)×67(高さ)×147(奥行き)mm
●重さ:0.7kg(乾電池を除く)

■BLUESBREAKERの詳細
https://www.marshallamps.jp/products/re-issue-pedals/Bluesbreaker/index.html

——そして、ブルースブレイカーですが、第一印象として、“思ったより歪む”と。
ANCHANG
:そうですね。ゲインを上げてはいますけど、それでも想像していたより歪むと感じました。基本は、JCM800以前のコンボ・アンプのサウンドを再現とのことで、モデル名どおりのブルージーなドライヴ・サウンドですね。大人な感じの音です。ゲインを上げていくとガリっとしたところもあって、AC/DC的なサウンドも大丈夫ですよ。
——けしてメタル的なものではない?
ANCHANG
:ええ。しかも、オーバードライブというよりプリアンプ寄りな感じがします。あと、アンプ側で歪ませて、ブルースブレイカーのゲインを0とか1とかのブースター的な使い方もありかなと。実際にそうやって鳴らしてみましたが、ハード・ロック的な使い方ができますね。でも、これ1台あれば、けっこういろいろな現場で対応できると思いますよ。ジャズ・コーラスとかでもこれがあればマーシャルのドライヴ・サウンドを作れますからね。

▲ヴィンテージなブルージー・サウンドが基本キャラクター。
ゲインを上げるとハード・ロックなサウンドに

ANCHANGのお好みセッティング

ゲインを抑えてのブルージーなマーシャル・トーン。歪ませたアンプにつないでブースター的にも使いたい1台だ


マーシャル
SHREDMASTER
¥27,500(税込)

【仕様】
コントロール:ゲイン、ベース、コントゥアー、トレブル、ヴォリューム
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9v-18v DCアダプター(センター・マイナス) or 9v乾電池
●外形寸法:110(幅)×67(高さ)×147(奥行き)mm
●重さ:0.7kg(乾電池を除く)

■SHREDMASTERの詳細
https://www.marshallamps.jp/products/re-issue-pedals/Shredmaster/index.html

——最後は、今回の中で、もっともハイ・ゲインなシュレッドマスターです。
ANCHANG
:いいですね、これ! このペダルに限らないですが、まずイコライザーの効きがいい。
真ん中にコントゥアーというつまみがあるんですが、これでかなりのキャラクターを変えられますね。コントゥアーを上げるとドンシャリ感が出つつ、ちゃんとマーシャルの音がするんですよ。とくに単音を弾いて思ったんですが、ハイ・ミッドのコリコリ感にマーシャルならではという印象を受けますね。コントゥアーを絞るとドンシャリ感が下がって、太さを感じます。
——ゲインはどうですか?
ANCHANG
:上げれば、どんどんモダンな方向性になるんですが、それでもマーシャル独特のハイ・ミッドがちゃんと残っているし、ゲインを下げてももちろんマーシャルらしさがある。個人的には、ゲインは12時ぐらいの位置からから上げていくのが気に入りました。
——今回中でいちばんのお気に入り?
ANCHANG
:そうですね。けっこう音作りの幅が広く、ジャンル的にも広く対応できると思います。マシンガンズでも使えますね。80年代サウンドからニッケルバックとかの2000年代のサウンドも出せますから。ライヴ・ハウスにこれ1台、持っていけば大丈夫だと思います。いじりがいがありすぎて、困りますけど(笑)。

▲シュレッドマスターのポイントのひとつ、コントゥアー。中域を広くコントロールできる

ANCHANGのお好みセッティング

マーシャルらしさを軸によりモダンでアグレッシヴなセッティング。
ゲインを上げきらないで、輪郭と太さを残しているのがポイント。


◎ANCHANG(アンチャン)
本誌読者にはおなじみ! セックス・マシンガンズのヴォーカリスト&ギタリストで、ソロとしても活躍。なお、マシンガンズは今年デビュー25周年を迎え、アルバム『地獄の暴走列車』(写真)を4月12日にリリースしたばかり。25周年記念ツアーをはじめ、精力的なライヴ活動にも注目だ。

▲アルバム『地獄の暴走列車』

セックス・マシンガンズ 公式サイト
http://sexmachineguns.smg-fire.com/