WeROCK 093 付録CDインタヴュー〜KISAKI編

WeROCK 093の付録オムニバスCDに参加したバンドのインタヴュー集を、このWeROCK EYESでもお届け!
今回は、ミュージシャン活動30周年を記念して3枚のアルバムを連続リリースするKISAKIが登場!
その制作について語ってもらった。


SYU(ガルネリウス)のギターが唸るスペシャル曲

——前号に続いての登場となったけど、今回は付録オムニバスCDに参加頂きありがとうございます。
KISAKI
:これまでヴィジュアル系の雑誌に出させて頂くことが多かったので、僕にとってはすごく大きなことでしたし、まわりの反響がとてもよかったです。
——そのインタヴューで予言していた音源が、なんと3枚のアルバムで、しかも4月から3ヵ月連続リリースという。
KISAKI
:第3期として復活したミラージュのドラマーだったAYAMEの命日が3月15日で、その日に第3期ミラージュ完結盤としてミニ・アルバム「THE NEW ORDER」を発売することになったので、ソロ・アルバムに関しては当初の予定より押してますが、なんとか3枚完成に近づいてます。なので、個人的には4ヵ月連続リリースになりますね。今回、ゲスト・プレイヤーが多いので、その日程調整だけでも、なかなかたいへんでした。
——活動30周年を記念して音源を出したいとは言ってたけど、さすがに3枚のソロ・アルバムというのは驚きだよね?
KISAKI:ここ数年は、フリーランスとしてライヴもいろんなタイプのバンドとやってたりはしたんですね。その時はソロ・アルバムを作ろうとは考えてなかったんですけど、やっぱり30周年だし自分にとって人生的にも音楽活動的にも大切な節目になるわけだから記念盤を残しておきたいと思い決めました。ふつうにシングルをリリースしてもおもしろくないし、一生残るような作品にしたいと。30周年だし30曲作ろう、アルバムも3枚にしようって思いまして。
この30周年イヤーの間に期間を置いて3枚リリースするというアイディアもあったんですけど、“連続で発表したほうがインパクトあるやろ!”って思って自分を追い込みました。コロナ禍であまりライヴもできなかったし、作曲する時間もあったので、この間にやってしまおうと。そこにはセールスよりも自分の好きな音楽的ルーツを追求した楽曲を作って、その曲に合うゲスト・プレイヤーを探していったという感じですね。
——言うのは簡単だけど、セルフ・カヴァー曲があるものの、この1年間で30曲作ってレコーディングするのは、かなりたいへんだよね?
KISAKI
:セルフ・カヴァー曲も歌メロも歌詞も変えて、全部、録り直してますからね。その間にミラージュでライヴをやったりフル・アルバム『BIOGRAPH』を作ったりしてますけど、この2年間くらいはほとんどスタジオにいましたね。おかげで、スタジオのエンジニアさんとの連携も早くなって、スムーズに行くようになったものの、昨年はほとんど遊ぶこともなく(笑)。それに、現時点(1月中旬)で、まだ終わってないですから。ちなみに、1年ではなく構想から含めたら3年間ぐらいやってますよ。当初は、ソロなんだけど“KISAKIオムニバスを作ろう”って感じで思い付いたんですね。
——ちなみに、いちばん最初に作った曲というと?
KISAKI
:それこそ、今回の付録CDに参加させて頂いている「Doppelganger」かもしれないですね。この曲は、5月に発売される2枚目のアルバム『Afterglow』に収録されるんですが、付録CDではヴォーカルが違っていて、ザ・シーグレープスの蟹江(敬子)さんに歌ってもらってます。このヴァージョンが聴けるのは、WeROCKの付録だけですね。
——ありがとうございます!
KISAKI
:アルバムでは男性ヴォーカル、付録CDでは女性ヴォーカルになっています。女性ならではの妖艶で感情的な感じと、思い切りメタルに振り切ったノーゴッドの団長との違いを聴き比べてもおもしろいですね。どちらもいい感じに仕上がってます。
——3年ぐらい前から曲作りをしているとなると、当時できた曲と最近できた曲で温度差とかはなかった?
KISAKI
:ありまくりますけど、自分の中でできる限りのことはやりきったかなと。というか、これだけ曲があると、“これは、もう終わらん!”って何度もなって(笑)、タイムリミットを決めて仕上げていく感じにしました。そして曲順にも悩みましたね。じつは30曲とは言いつつ、実際にレコーディングしたのは33曲なんですよ。WeROCKのヴァージョンも入れると34曲ですか。歌まで入れてもらったのにボツにした曲もあるんです。他の曲と少し曲調がカブるなとかあったりして外しました。それと、特典としてプレゼントする2曲入りCDもあるから35曲ですね。
——豪華なゲストが参加してるけど、まずは曲ありきで作り始めたのかな?
KISAKI
:曲ができてきて、“この曲は誰々に弾いてほしい、こっちの曲は誰々に歌ってほしい”という感じですね。ドラムだけは、森谷亮太というドラム講師もやっている昔からの友達で、かなりテクニックもあるので彼に頼めば間違いないと思って3枚全曲お願いしました。ゲスト・プレイヤーは、ヴィジュアル系には戦友もいますけど、メタル界隈にも友達は多いし、いちばん初めに声をかけさせてもらったのがガルネリウスのSYU君やったんですよ。まさか弾いてくれたりしないよなって思って聞いてみたら、即決でOKくれて。SAKI(ネモフィラ)ちゃんにも聞いてみたら快くOKを頂けたし、マネージメントもヴィジュアル系より本人の意思を尊重してくれるところが多いんだなって感動しました(笑)。
他のアーティストも、仕事としてよりは僕の30周年ということで“せっかくの記念だからやりたい”と気持ちで参加してくれるミュージシャンが多かったです。ヴォーカル録りでは、東京にいるミュージシャンも多いので僕が大阪から東京まで行って録音して大阪に持ち帰ってミックスするというパターンもありました。データを送ってもらう方法もあったんですけど、ヴォーカリストによって言葉の当てはめ方も違うだろうし、感情の入れ方とかレコーディングしながらディレクションしたくてできる限りこだわりたかった。ヴォーカリストによっては何回も録り直してもらったり、破壊と再生の繰り返しでまさに尊敬するYOSHIKIさんのような作業でした。まあ、まだ続いてますが(笑)。
——いちばん時間をかけたヴォーカル録りというと?
KISAKI
:どの曲も、かなり時間かけてやりましたよ。あえて言うとすると、椎名ひかりというアイドルが歌っている「Mind Collapse」(1枚目のアルバム『Providence』収録)かな。でも、ヴォーカル録り自体は、どのアーティストもわりと早かったと思います。
——ギターのゲストは、ソロだけとかではなくバッキングも弾いてるの?
KISAKI:そうです。こちらからはデモを丸投げして、バッキングもソロも全部弾いてもらっています。たとえば、付録CDの楽曲でSYU君に弾いてもらってますけど、お任せしますって送って上がって来たギターを聴いて“さすがやな”って。ギター・ソロも長い曲で“イメージは「ART OF LIFE」(X JAPAN)”だからって伝えただけだったのに、ホント、さすがやなって思いました。
——とすると、このギター・ソロの尺とかは、もともとあった長さで、SYUが長くしたわけではないんだ(笑)?
KISAKI
:違います(笑)。ギター・ソロを長くしてきたのはSAKIちゃんですね(笑)。「Sacred Xanadu」という曲のエンディング部分のソロで、戻ってきたデータを聴いたらめっちゃ長くなってました(笑)。驚いたけどすごく曲と向き合ってもらえてるなと感動しましたね。
——自身のベース・プレイはどうだった?
KISAKI
:バンド人生30年でいちばん弾きまくりましたね。ギターが入ってきた後の段階でそのプレイに合わないと思ったら何度もベースを録り直したり、曲に合わせるということを大前提に考えてプレイしましたね。たいへんだったのは曲によってチューニングもバラバラなので、これをライヴでやるとなったらヤバイなって(笑)。
——チューニングがバラバラって、自分で曲を作ったんだよね?
KISAKI
:曲を作っていくうえで“この人に歌ってほしいな”と思ったら、そのヴォーカリストのキーを考えて作ったんです。それに、キーを注文してくれる方もいましたし、チューニングを下げたりして対応するパターンもありましたね。ずっとレギュラー・チューニングでやってきてたから、そのあたりは自分の中でも新境地でした。
——ところで、30曲作って、どうやってアルバムごとに振り分けていったのかな?
KISAKI
:考えながら曲を作るのではなく、曲ができてから振り分ければでいいかって考えました。ただ、起承転結というのはぜったいに必要だと思ったので、30曲作って、激しい曲、バラード、メロディアス、プログレッシヴな曲という感じで3枚に振り分けました。そこからゲストへの振り分けも考えなきゃいけないから、けっこう曲順に悩みましたね。今回、3枚ありますけど、3部作ではなく、それぞれに完結したアルバムなんです。3枚で1作品ではなく、あくまでもKISAKI30周年がコンセプトなので、アルバムごとに曲を振り分けて各アルバムの内容を決めていくという感じですね。
——現在、仕上がってる曲を聴かせてもらうと、X JAPANを彷彿とさせる曲だったり、ルナシーっぽかったり、KISAKIのルーツを包み隠さず表現してるなって思えるよね?
KISAKI:聴いたら、“これ、YOSHIKIさん節じゃん”とか“ルナシーっぽい”とか思うかもしれないんですね。インダストリアルだったり、ポジパンっぽいのがあったりもしますし。すべてが、僕が30年以上影響を受けた音楽なんです。今回の付録CDでもX JAPAN風なメタルなドラムだったりピアノが入っていたり、アルバムではバラードで締めるという流れだったり、自分がやりたかったこと、聴いてきたルーツのすべてかと思います。基本的には正統派のメロディがある曲が多いと思うし、聴いていてもぜんぜん飽きないアルバムになってるんじゃないかと。
——SYUやSAKI、Masha(サイレックス)などが参加してることからもわかるとおり、ギタリストにも注目のプレイがかなり多いよね。2枚目の「Broken Loneliness」のギターもすごい。
KISAKI
:これは、ジルカのSena君が弾いてくれてます。みんな、それぞれ個性の強いギターを弾いてくるなって(笑)。SAKIちゃんは忙しいなか3枚とも参加してくれてるし、HIZAKI(ジュピター/ヴェルサイユ)もすごかったですね。
——この3作はかなりの苦労があったでしょ?
KISAKI
:いちばんたいへんだったのは、各アーティストの事務所とのやり取りでした(笑)。メンバーのスケジューリングというかね。でも、みんな、いいギターを弾いてくれて、いい歌を歌ってくれてます。
——もう1回やろうとは思わない(笑)?
KISAKI
:もう、やりたくないですね(笑)。ソロで30曲、3枚連続でフル・アルバムをリリースしているアーティストって見たことないと思うんです。今回、付録CDに参加させて頂いて、この曲を聴いてもらって他の曲も聴きたくなってくれたらうれしいです。参加曲のヴァージョン違いは5月に発売する2枚目ですけど、4月に発売する1枚目も強烈な曲がいっぱい入ってるんで、ぜひ聴いてほしいですね。
同じような曲が10曲入っていてもおもしろくないですし、それぞれのアルバムで飽きさせないようなヴァラエティに富んだ楽曲を収録しているんです。純粋に、自分が聴いて“いいな”って思うアルバムを作りたかった。新しい古い関係なく、これが30周年での自分へのいちばんのご褒美かなって思ってます。それを評価してくれる人がいたら、30年間やってきていちばんうれしいですね。

 

■スペシャル・ゲスト・メンバー■

SYU(ガルネリウス)

昔、V系バンドをしていた時に、KISAKIさんのバンド主催の対バン企画が関西であり、そこに出させて頂いた時に初めてお見かけしました。“こわー!!”っな感じでした! こちらも世間知らずで失礼しました。
僕が弾かせて頂いた楽曲は、“素直にカッコいい!!”でした。僕がガルネリウスで作る曲との親和性もあったので弾いていてとても気持ちよかったです。ソロでのアプローチで何度かリクエストを頂きまして、そのおかげもありとても流れのよいソロになったと思います。長いソロでしたが(笑)、曲に合う演奏を心がけてガンバりました! とにかく勢いと泣きがある曲なので疾走感を重要に考えてました。
KISAKIさん、活動30周年おめでとうございます! どんなバンドにいてもKISAKIさんの個性は輝き続けています、ずっとカッコいいKISAKIさんをこれからも応援し続けます!

 

蟹江敬子(ザ・シーグレープス)

KISAKIさんとは、ザ・シーグレイプスがアルバムをリリースしたタイミングで“CD聴いてください!”とご挨拶したのが最初の出会いでした。
今回のお話は本当に光栄で信じられない気持ちでしたが、いざ楽曲を聴かせて頂き“この曲を私の歌でイメージしてくださったんだ……”と思うと、すごくうれしくて。力強さと繊細さを兼ね備えた表現で……と難しいリクエストでしたが、日本語の響きの美しさを意識しつつ、とにかく魂込めて全身全霊で歌わせて頂きました!
KISAKIさん30周年、本当に尊敬しています。おめでとうございます!

 

アルバム『NOSTALGIA』
LCD-010
¥3,300(税込) 2023年4月26日
全10曲収録(新録+再録)/トール・ケース仕様
■ゲスト・プレイヤー
AKIRA(MIRAGE/RENAME)、苑(摩天楼オペラ)、TAKA(defspiral)、椎名ひかり、SAKI(NEMOPHILA / Mary’s Blood / AMAHIRU)、JUN(元Phantasmagoria/GOTCHA-ROCKA)、HIZAKI(Jupiter/Versailles)、源 依織(Siva/Phobia)、他

アルバム『Afterglow
LCD-012
¥3,300(税込) 2023年5月24日
全10曲収録(新録+再録)/トール・ケース仕様
■ゲスト・プレイヤー
SYU(GALNERYUS)、SAKI(NEMOPHILAMary’s BloodAMAHIRU)、 団長(NoGoD)、Ruiza(元SyndromeD)、AKIRA(MIRAGERENAME)、HIZAKI(JupiterVersailles)、Sena(JILUKA)、MASATO(defspiral)、 Masha(Silex)、ryo(D’elsquelGULLET9GOATS BLACK OUTHOLLOWGRAM他)、HAL(FEST VAINQUEUR)、近藤 葵(ZipangVelvet Spider他)、他

アルバム『Preuve d’etre
LCD-012
¥3,300(税込) 2023年6月21日
全10曲収録(新録+再録)/トール・ケース仕様
■ゲスト・プレイヤー
みく(アンティック-珈琲店-)、 樹威(ヴィドール?GOTCHAROCKA)、DAISHI(Psycho le Cému))、AKIRA(MIRAGE/RENAME)、蟹江敬子(THE SHEGLAPES)、SAKI(NEMOPHILA/Mary’s Blood/AMAHIRU)、HIZAKI(Jupiter/Versailles)、Ryoji Shinomoto(RYUJIN)、Iyoda Kohei(NoGoD/ANCIENT MYTH)、森谷亮太、他

◎活動30周年を迎えたKISAKIが放つ、4月から3ヵ月連続リリースによるソロ・アルバム3枚。
合計曲数は30周年にちなんで30曲。全ベースはKISAKIが担当しており、そこにヴォーカリスト&ギタリストの豪華ゲスト陣が縦横無尽に駆け巡る作品だ。現在、耳にした制作途中の音源だけでも、かなりの聴き応えのある楽曲が多く、インタヴューでも語られている通り、KISAKIのルーツとも言えるアーティストの影響を垣間見れるナンバーとなっている。
なお、オムニバスに収録されているのは5月に発売される『Afterglow』からの楽曲だが、なんとWeROCK仕様としてヴォーカルが蟹江敬子(ザ・シーグレープス)ヴァージョンとなっている。もちろんSYU(ガルネリウス)のギターは聴きどころ!

■KISAKI 公式ツイッター■
https://twitter.com/KISAKI_OFFICIAL

■KISAKI 公式ブログ■
https://ameblo.jp/kisaki-official/