弦、新時代!!〜エリクサー編

ノン・コーティング弦のような弾き心地
OPTIWEBが登場

コーティング弦で弦の世界に革命を起こしたエリクサー。
そのエリクサーが放つ最新のギター弦がOPTIWEBだ。さらにコーティングを薄くすることで、ノン・コーティング弦と変わらない弾き心地を獲得したというこのOPTIWEBに迫ってみよう。

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▲ラインナップは全部で5種類

 

◎エリクサー弦の歴史

エリクサー弦を開発したW. L. Gore & Associates, Co., Ltd.(以下、ゴア社)は、化学技術を使って、いろいろ科学の革命を起こそうというグローバル企業で、ゴアテックスという名前を聞いたことがある読者も多いはず。
このゴアテックスもゴア社が開発した素材のひとつで、他にも医療や宇宙航空産業、他のさまざまな分野で革命的な製品を開発してきた。そうした開発の中で、エリクサー弦は生まれたのだ。
ただ、エリクサー弦の開発の発端はギター弦を目指したものではなかった。細い金属線のまわりを何かで加工して摩擦を減らしてほしいという需要があり、ゴア社ならではの薄いフッ素のコーティングを施す技術でその需要に応えることに成功。その研究を行なっていたスタッフがたまたまギターも弾くということで、その金属線の研究素材としてギター弦を使っていたのだという。
その研究過程で生まれた、コーティングを施したギター弦を張ってみたら、汗や脂に強く、サビることなく、すべりもいいことに気づき、この強さのまま、いい音がすれば最高のギター弦になるということで開発が始まったという。その後、多くのプロ・ギタリストに何度も試作品を弾いてもらい、97年に誕生したのがエリクサー弦の第1号、POLYWEB。このPOLYWEBでギター弦に革命を起こしたが、ノン・コーティング弦と比べ、その弾き心地に違和感を持つギタリストも多かった。そこでゴア社では、強度を変えずにコーティングをPOLYWEBの1/3ほどにしたNANOWEBを99年に発表。
このNANOWEBの登場により、エリクサー弦を使うギタリストがかなり増えたのだ。

▲約15時間の演奏後の弦の状態。左からノン・コーティング弦、他社のコーティング弦、エリクサー弦

 

◎OPTIWEBの登場

NANOWEBで多くのユーザーを獲得したとはいえ、まだノン・コーティング弦を愛用するギタリストは多かった。しかし、そうしたギタリストの多くはエリクサー弦のロング・ライフであることは認めつつ、弾き心地やトーンの面に不満があることに気づいたゴア社は、さらにノン・コーティング弦に近い弾き心地とトーンを持つ新製品の開発に着手。よりコーティングを薄くすることに成功したのが、新製品のOPTIWEBなのだ。
NANOWEBよりもコーティングを薄くし、さらに自然な弾き心地やノン・コーティング弦と変わらない音色、長寿命を実現したOPTIWEB。ゴア社によると“グレイト・トーン、ロング・ライフ”というエリクサー弦のポリシーをより多くのギタリストに知ってもらうための製品でもあり、“NANOWEBでもまだ違和感があったが、OPTIWEBはいい!!”というギタリストがひとりでも増えてほしいとのこと。
ノン・コーティング弦と変わらない弾き心地ながら、コーティング弦らしくスライドなどが弾きやすいというモデルなのだ。

▲POLYWEB、NANOWEB、OPTIWEBの音色と弾き心地の傾向

 

◎じつはプレーン弦にも秘密が!

じつはプレーン弦にも独自の技術が施されている。
それが、2005年から投入された、プレーン弦のAnti-Rust(アンチラスト)という技術だ。巻き弦はコーティングしたことで、弦の隙間の汚れは拭くと落ちる、そしてサビにくい、その結果としていい音が長持ちするという評価を得たが、プレーン弦はコーティングしないため、一般的なノン・コーティング弦と同じように劣化してしまっていた。1弦〜6弦というパッケージで考えた場合、ロング・ライフという面で支障が出てしまったというわけだ。
それならばとプレーン弦にもコーティングを施してみたが、音質の面ではよくない影響が出てしまったとのこと。そのため、別の研究を進めて、開発されたのがAnti-Rustという技術。このAnti-Rustの技術の詳細は企業秘密とのことで明らかにされていないが、この技術により、巻き弦と同様の長寿命をプレーン弦でも実現しているのだ。

▲約50時間演奏した後の従来のプレーン弦(上側)とAnti-Rustプレーン弦(下側)

 

◎プロ・ギタリストの評価は?

及川樹京(マーデラス)

NANOWEBを8年前くらいから使っているんですが、NANOWEBは張り替えたてのつるっとした触感が長続きして、張り替えた後の弾き心地やサウンドの変化が少なく、とても安定してますね。また、弦のすべりがいいほうが弾きやすいと感じるタイプで、ふだんからフィンガーイーズを多用しているので、エリクサーのつるっとした触感が長続きするのは、とてもプレイ・スタイルに合っているんですよ。ノン・コーティング弦と比べるとややテンションがきついですが、慣れるとまったく問題ないですし、そのぶんサウンドは少し太く、重心が下がった感じがします。
OPTIWEBも、じつは発売されてからわりとすぐに試してみて、シングルのレコーディングやその後のツアーでも使用してます。巻き弦の弾き心地はいい意味でNANOWEBとの違いはあまり感じませんでした。弦のテンションはOPTIWEBのほうがじゃっかん緩く、その点では左手、右手ともに弾きやすくなったと思います。サウンドの第一印象は、1〜3弦のコードの分離感がすごくいいなと。倍音の出方やバランスもとても自然で、ノン・コーティング弦にかなり近いのではないでしょうか。
OPTIWEBは従来の弾き心地などのアドヴァンテージを維持しつつ、音はよりナチュラルに、きらびやかになっていると思います。また、過酷な長時間のリハを何回かこなしても弦の劣化をほとんど感じさせないです。弾き終わった後に軽く拭いているだけで、張り替えたての弾き心地が維持できます。ノン・コーティング弦は、弦が馴染んでチューニングが安定したおいしい頃にサビなどの弾き心地における劣化を感じていたので、OPTIWEBはその点ではライヴなどでとてもいいコンディションを保ててますね。滑りがいいので速弾きしやすく、汗や湿度にも強いので、ハード・ロック/メタル系のギタリストには打ってつけですし、音はナチュラルなので、クリーンから歪みまで幅広いサウンドをきれいに出したいギタリストにもオススメです。弾き心地、サウンド面でベストだと感じているので、これからも愛用したいです。

SAKI(メアリーズ・ブラッド)/photo by Tatsuichi Kuniyoshi

私が重要視しているのは弾き心地ですね。すぐサビて交換をまめにしなければならないだけでストレスにもなりますし、ふだんからエリクサーのNANOWEBを使っています。NANOWEBは滑らかな弾き心地で、トーンもバランスがいい印象です。
今回、OPTIWEBをライヴとその前のリハーサルで使ってみたのですが、NANOWEBから大きな変化や違いはないのですが、よりノン・コーティングの弦との違和感がなくなったように感じます。巻き弦に関しては、フィンガリング、ピッキングともノン・コーティング弦と感触の違いはありません。コーティング弦に慣れていらっしゃらない方でもすんなり弾けると思います。プレーン弦は、ノン・コーティング弦と比べれば、同じゲージであってもじゃっかん硬い感触を受けるかと思いますが、それほど大きな違いは感じませんでした。これまで、いくつかコーディング弦を弾いたことがありますが、エリクサーがいちばん長持ちという印象を受けますね。大抵の弦はコーティングといえどトーンや弾き心地に変化を感じますが、エリクサーはそういう劣化がなく、弦が切れたりするタイミングまでそのままのセットで使い続けられます。
また、OPTIWEBの音ですが、どこかに偏っているという雰囲気はなく、どの弦もバランスよく出ているという印象です。ライヴで使うと、とくに汗や脂が弦に付いて、ふだんよりも早く劣化するイメージがありますが、3日後も張りたての感触が続いているように思います。
弾き心地については、やや硬い印象もありますがポジション移動がスムーズに動くという感触です。ノン・コーティング弦と違い、弾きこむうちに変わってしまうということもないので、他の弦に代えるのと同じ感覚で試してみると、逆に扱いやすいのではないかと思います。コーティング弦にアレルギーがあるという方でも、すんなり移行しやすい弦ではないかと。NANOWEBがより長持ちになったというイメージがありますので、今後も使っていきたいと思いました。

miko(イグジスト・トレイス)

かなり前に、POLYWEBだったと思いますが試したことがありました。ただ、音も弾き心地もむくむくした印象で、私にはちょっと違うなあと思い、じつは、そこからエリクサーは一度も使わずにいたんですね。
今回、OPTIWEBを試してみての第一印象は“フィンガーイーズをしっかりつけてあるみたい”でした(笑)。とくに低音のリフがすごく弾きやすくて、ムダな力が入らずにフレット移動ができますし、弦がしなやかで、軽やかに弾ける感じがします。プレーン弦については、なぜかいつもより細い弦を弾いているような感覚でした。プレーン弦も柔らかい印象で、クリーン・トーンでスライドするようなフレーズは、優しくのびのび弾けて気持ちいいです。ふだんの1音下げチューニングだと、いつも使っているノン・コーティング弦に比べて暗い印象も受けたんですが、レギュラー・チューニングにすると高音が華やかになってバランスが取れましたね。倍音も生音でも元気に鳴っています。ダウン・チューニングの人はふだんより少しだけ太い弦を選んだらいいかもしれないですね。全体的に、OPTIWEBは落ち着いた音で、張りたてのパリパリ感もないので使いやすい弦だと思います。
私は、手汗をすごくかくタイプで、いくらケアしてもすぐ弦が死んでしまうのですが、今のところ音の変化はあまり感じず長生きしてくれそうです! あと、ノン・コーティング弦とのいちばんの違いはリフを弾きやすい! トーンはコーティングを感じさせない自然で明るい音ですね。5〜6弦を駆使した高速低音リフを弾きまくりたい人にぜひ試してみてほしいです。そうでなくてもとても弾きやすいので、一度は試してみるべきと思います! 私はもうちょっとテンションがほしかったので、今度はゲージを少し上げて使ってみたいと思います!

乙魅(イグジスト・トレイス)

コーティング弦はサビにくいけど、高いというイメージで使ったことはなかったんですが、今回、OPTIWEBを試してみて、巻き弦についてはノン・コーティング弦より触り心地がなめらかで、ピッキングもムダな力が抜けるという印象を受けました。プレーン弦も、スライドなどでの運指がいつもよりスムーズに動く感触がありましたね。
サウンドも柔らかい印象で、高音から低音もバランスがいいです。ふだん使っているノン・コーティング弦と比べると、少しきらびやかさはない印象ですが、数日たってもサビていないし、音も張ったばかりの状態と変わらないです。コーティング弦を初めて弾きましたが、なめらかな弾き心地が気に入りました。手汗が多くて、すぐに弦がサビて劣化してしまうので、長く気持ちよく弾けるのがうれしいです。弦の張り替えが面倒な人にも(笑)、ぜひオススメです。私も、今後いろいろ試してみたいです。

 

問:日本ゴア株式会社(http://web.gore.co.jp/contact/contact.html

 

このOPTIWEBの試奏紹介記事は、WeROCK 060(2017年8月12日発売号)にも掲載しています。