【動画連動】マーシャル JVM 攻略マニュアル

すでにリハスタやライヴ・ハウスでの定番となって久しいマーシャルのJVMシリーズ。
これまでのJCMシリーズのマーシャルに慣れているギタリストだと、ツマミやスイッチの多さと操作性に戸惑ってしまう方もいると思われる。
そこで、今だからこそ知りたいJVMの攻略法をJVM210を使って伝授しよう。
自宅レコーディングでも、活躍できるぞ!


Shu(Tribal Scream of Phoenix)による試奏動画


マーシャル
JVM200H
¥236,500(税込)

【仕様】
●出力:100w
●真空管:ECC83×4(プリアンプ)、ECCC83×1+EL34×4(パワー・アンプ)
●コントロール:フットスイッチ/MIDIプログム・スイッチ、FXループ・スイッチ、マスター1、マスター2、マスター切り替えスイッチ、プレゼンス、レゾナンス、リバーブ(クリーン/クランチch、オーバードライブch)、リバーブ切り替えスイッチ 〈クリーン/クランチch〉ヴォリューム(オレンジ&レッドのみ作動)、ベース、ミドル、トレブル、ゲイン、モード・セレクト・スイッチ 〈オーバードライブch〉ヴォリューム、ベース、ミドル、トレブル、ゲイン、モード・セレクト・スイッチ
●入出力端子:インプット、スピーカー・アウト(1×4Ω、1×8Ω、2×16Ω、1×16Ω)、シリアル/パラレルFXループ(センド/リターン、MIXツマミ付き)、FXレベル(選択スイッチ=−10dBV/+4dBV)、パワー・アンプ・インサート/シリアル・ループ(センド・リターン、アクティヴ/バイパス・スイッチ付き)、エミュレーテッド・ライン・アウト、フット・スイッチ用イン・ジャック、MIDIイン/スルー 
●外形寸法:750mm(幅)×310mm(高さ)×215mm(奥行き)
●重量:22kg

JVMとは?

1990年代から2000年にかけて、多くのリハーサル・スタジオやライヴ・ハウスでメイン・アンプとして選ばれてきたマーシャル JCM2000(種類は、2チャンネルのDSLと、3チャンネルのDSL。さらにヘッドとコンボがあった)。そのJCM2000の後継機種として、そして次世代のフラッグシップにふさわしい新たなラインアップとして、かつてない多彩なサウンド・ヴァリエーションと、ギタリストのニーズに応える数かずの新機能を備えて2007年に登場したのが、今回、紹介するJVMだ。
最初に登場したJVM410は、4チャンネル×3モードを搭載し、合計12音色のトーンを作り出すことができた。そのトーンは、淀みないクリーンから歴代の名機を彷彿とさせるクランチ/オーバードライブ、さらにはJCM2000の歪みをあっさりと凌駕するウルトラ・ディストーションまでカヴァーし、さらにさらに自在に切り替えが可能という、その多機能ゆえにシンプルなコントロールに慣れたマーシャル・ファンの中には戸惑う声もあったほど画期的なモデルだった。
かといって、デジタル的なモデルではなく、真空管ならではの暖かみのあるマーシャル・サウンドを実現しながら、現代の多方面な方向性に対応するトーンを出してくれた(現在も、発売中なので“出している!”)。
そのJVM410をシンプル化したのが、ここで攻略する2チャンネル仕様のJVM210だ。この210は、410からチャンネル数を半分にした2チャンネルなのだが、単純にふたつのチャンネルを省いたのではなく、JVM410のおいしいところを集約したモデルといえるのだ。
それでは、シンプル化されながらも十二分に多機能であるこのモデルに関して、実践的な使用法を伝授していこう。

▲真空管は、プリ管にECC83を、パワー管にEL34を搭載している


JVM210操作術〜リハスタでもバッチリ!
①チャンネルを使いこなせ!

JVM210を使いこなすうえで、いちばん理解しておかなくてはいけないのが各チャンネルの音色だ。
下の表は、各チャンネルの音色がどういう方向性かを示した図。合わせて歴代モデルのトーンの位置関係も示してみたが、要するにJVM210は、すべてのトーンをカヴァーしてるといえる。それでは、それぞれを解説していこう。

【CLEAN/CRUNCH】チャンネル
◎クリーン/クランチ・チャンネル=グリーン・モード
真空管ならではの暖かみのあるクリーンを作り出してくれる。すっきりとした透明感のあるクリーンと言うよりも、ヴィンテージ・ライクな太いクリーンという印象だ。
◎クリーン/クランチ・チャンネル=オレンジ・モード
JTM45や1959といったクラシックなマーシャルを少しゲイン・アップしたようなトーンだ。レゾナンスというコントローラーがあるため、EQの幅が広がっており、腰のあるヴィンテージ・マーシャルのトーンから、低域を強調したモダンなサウンドまでカヴァーしてくれる。
◎クリーン/クランチ・チャンネル=レッド・モード
JCM800を彷彿とさせるトーンを持つモードだ。歪み成分が強くなるとシャープな方向性になったり歪みのツブが細かくなりがちだが、このモードはゲインを上げていくと太さも増していく。
【OVERDRIVE】チャンネル
◎オーバードライブ・チャンネル=グリーン・モード
細かめな粒立ちが特徴的なオーバードライブ・サウンドで、ゲインを上げると洗練されたディストーションを作り出してくれる。このモードの時点で、すでに歪みは、かなり強めなのでディストーション・ペダルなどは不要!
◎オーバードライブ・チャンネル=オレンジ・モード
トーン・ニュアンスは、グリーン・モードに近く、さらに歪みを強くしてモダンなサウンドにしたモードだ。リード向けのサウンドで、低域がスッキリしているので(レゾナンスでモッコリとしたトーンに調整可能)、7弦ギターやロー・チューニングにも対応できる歪みだろう。
◎オーバードライブ・チャンネル=レッド・モード
JVM210のチャンネル内で、もっともモダンな歪みを作り出してくれるモードだろう。グラフ上はオレンジよりも歪みが強い位置にあるが、歪みの質感には少し違いを感じるものの、歪む度合いに極端な差はないと感じられる。というか、どちらも激しく歪んでくれるので、リード・サウンドに最適だろう。

▲黄色部分はJVM210で、すなわち代表的なマーシャルのすべてを網羅しているといえる。その中で、あえてチャンネルごとに分けたのが「レッド」「オレンジ」「グリーン」の位置関係になる

クリーン/クランチ・チャンネルのグリーン・モードでは、こちらのヴォリュームが作動せず、音量の調整はゲイン・ツマミとマスター・ツマミで行なう。(Orange&Red)と記してあるのは、オレンジとレッド・モードのみで作動するという意味だ

②拡張性を理解しよう

各チャンネルの音色が理解できれば、あとはJVMならではの拡張性を使いこなしてほしい。
ライヴやリハスタなどで便利なのが、その拡張性だ。専用のフットスイッチを使うのも便利だが、最近は自分のエフェクト・ボードを持ち込むギタリストも多いはず。そのボードにスイッチャーが搭載されており、スイッチャーがMIDI出力を持っていればJVMは最高に便利なアンプ・ヘッドとなる。各チャンネルで作った音をMIDI対応のスイッチャーで切り替えられるのだ。
やり方もカンタンだ。記憶したい音色が決まったら、FOOTSWITCH/MIDI PROGRAMスイッチを2回押す→MIDI送信しているスイッチャーのフットスイッチを押す→もう一度FOOTSWITCH/MIDI PROGRAMスイッチを押せば登録完了だ。
なお、センド/リターン(FX LOOP)のオン/オフもメモリーされるので、センド/リターンに接続したエフェクトを生かすか生かさないかも記憶でき、さらにふたつのマスター・ヴォリュームの選択やリバーブのオン/オフ(チャンネルごとにリバーブの深さを設定可能)もメモリーされるので、MIDI対応のスイッチャーを持っていれば、かなり便利に使えてしまうのだ。

▲リア・パネル

MIDI情報を登録できるスイッチがこれ。MIDI対応スイッチャーを使えば、アンプの制御が可能だ

付属のフットスイッチでもチャンネル/モードの切り替えやプリセット・チェンジ的な使い方が可能


JVMのライン・アウトのトーンが素晴らしすぎる!

今回の特集の目玉が、じつはこちらだったりする。
別企画で掲載している“おうち楽器(リハスタでも)”で取り上げたくなるのが、じつはJVMなのです!
というのも、JVMに搭載されているライン・アウト(エミュレーテッド・アウト)のトーンが秀逸なのだ。これは、いわゆるキャビネット・シミュレーターなのだが、通常、アンプ・ヘッドはキャビネットを接続せずに使用すると真空管を痛めてしまうが(壊れます!)、このJVMのライン・アウトは、スタンバイ・スイッチをオフ(写真下)の位置では自動的にサイレント・レコーディング・モードになり、キャビネットから音を出さなくてもOKとなる。

今回は、TSPのShuに、この機能を使い、じっさいにレコーディングしてみる企画にチャレンジしてもらった。
ここでは、ライン・アウトからオーディオ・インターフェイスに行ってレコーディングされた音と、マイク録りでレコーディングした音を比較。さらにJVMで便利なのが、この方式を同時に行なえるので、1回の録音でラインの音とマイクの音がレコーディングできるのだ。レコーディングしてみると、まわりのスタッフ一同、どちらがマイク録りで、どちらがライン録りの音か耳を凝らして聴かないとわからないリアルさ!
JVMのキャビネット・シミュレート技術が優秀すぎる点に驚かされてしまった!


JVM210と410=秘密の相違点

▲上段が4チャンネル仕様のJVM410。各チャンネルで3つのモードがあるので、合計12パターンのサウンドが設定できる

最後は、JVMの気になる秘密をひとつ伝授しよう。
前述したように、JVM210は、JVM410を2チャンネル仕様にしたモデルと言える。ということは、単純に2チャンネルぶんがなくなったと思われがちだが、じつはそんな単純なことを天下のマーシャルがするわけはない(気がする)! 下の図を見てほしい。これは、JVM210の各モードが、JVM410のどのモードに対応しているかを示した図になる。ここからもわかるように、単純に2チャンネルぶんを削除したわけではなく、JVM410のおいしいモードを移行した感じと言えるのではないだろうか。
気になるのはオーバードライブ・チャンネルだが、210は410のOD 2を元に搭載されている。また、クリーン/クランチ・チャンネルは、410のクリーン・チャンネルからグリーン・モードと、クランチ・チャンネルのグリーンとオレンジ・モードを搭載しているのだ。

■マーシャル JVMの詳細
https://www.marshallamps.jp/products/amplifiers/jvm/