フロイド・ローズをアップグレード!
ギターのハードウェアをブラッシュ・アップするパーツの中でも、最近、SNSなどでフロイド・ローズまわりのカラフルなパーツに注目が集まっている。そこで、国内でカラフルなパーツを開発、販売している注目のメーカー“クリエィティフィニティ・パーツ”を紹介しよう。
独自の考えとこだわりから作り出される色鮮やかなパーツの数々……ギタリストではなくても目を奪われてしまうものばかりだ。まずは、ディレクターである矢野智史氏に、開発のキッカケや、特徴などを聞いてみた。
——クリエィティフィニティ・パーツが、アップグレード・パーツを開発することになったキッカケを教えてください。
CP:もともとディレクターである私がギタリストということもあり、音楽に関連する仕事をしたいと長年漠然と考えていました。その後、音楽から10数年離れていましたが、5~6年前に当時のバンド仲間と再会したことがそもそものキッカケです。その友人もギタリストであり、ギターのことやパーツについての造詣が深かったことから刺激を受け、パーツを製作することに興味を持ち始めサンプルを作って少しずつ販売し始めたのが2020年の2月のことです。
——開発でいちばん苦労している点というと、どこになりますか?
CP:いちばんはプレイヤーが何を求めているのか? という部分かと思います。当時は、パーツの選択肢があまりなく、もっとたくさんのリプレイスメント・パーツがあっていいはずなのにと考えていました。それは単純にカラー・ヴァリエーションであったり……。たくさん想像はできますけど、すべてを製作すると当然売れない物も出てきます。プレイヤーが求めていそうなもの、喜んで頂けるものを作ることがやはり大変ですね。
——音質的にこだわっている点はありますか?
CP:やはり素材が持つそれぞれのよさがキチンと伝わるような音質です。ちょっと大げさな言い方をするとHigh Resolution(ハイレゾ)級のクオリティに迫れるような音質が理想です ね。そんな部分にこだわっています。
——それでは、各素材の特徴を教えてください。
CP:チタン合金は、一般的な金属と比べる非常に軽く、よりブライトな傾向な素材です。分離や音の立ち上がりもよく、サスティンも申し分ないです。ステンレスは、錆びにくく傷付きにくい特性と、チタンに似た傾向が見受けられ、コスト・パフォーマンスは抜群ですね。アルミは、とにかく超軽量であり、意外と透明感のあるイメージなんです。ブラスは、芯があり分離もよく、芳醇な倍音とナチュラルなサスティンが特徴です。ブロンズ(ベルブラス)は、ブラス同様、重量もあり芯があるんです。音の輪郭が際立ち、かつ上品で煌びやかなサウンドになりますね。
——その中で、変更することで、いちばん音色のブラッシュ・アップが体感できるパーツは、どこになりますか?
CP:やはりインサート・ブロックやイナーシャ・ブロック、ナット・クランピング・ブロックではないかと思います。直接、弦が触れている部分や質量が大きくなると顕著にその変化が表われますので、ぜひお試しください。その他のスクリューなどは、直接、影響はないと言う方もいらっしゃいます。たしかに感じ方は人それぞれですから、変化は少ないのかもしれません。プラシーボ効果かもしれませんが、“ちょっと高価なスクリューに替えてみた”とか、“チタン(レアメタル)に替えてみた”という事実で、ある意味プレイヤー自身がブラッシュ・アップすることに一役買えたら私は満足です。アップグレードするということは、現状よりさらなる向上と、より洗練されることを追求する行為だと思いますので、決して交換して無駄なパーツはないと考えています。
——ファイン・チューニング・スクリューやストリング・ロック・スクリューでも音色の変化はありますか? 音色よりもカラフルになるところがポイントでしょうか!?
CP:たしかに目を惹きやすい部分でもあり、見栄えするパーツですよね。ドレス・アップには最適なパーツです。でも、充分にサウンドへの影響も強いと考えております。以前、ブラスで超極太サイズのファイン・チューニング・スクリューを試しに作ったことがあるんですよ(笑)。それは、質量も純正と比較すると何倍も大きく、音色への変化は強烈でした。さすがに、プレイに支障をきたすことを考慮してボツとなりましたけど(笑)。
——いろいろなカラーがありますよね? 付けにくいカラーなど、ありますか?
CP:もともとメタリックなカラーが好きでしたし、“ピンクがあるならグリーンも作りたい!”といった感じで増えていきました。今ではさまざまなユーザー様にいろんなカラーをインストールして頂いていますから、とくに付けにくいカラーはないかと思います。カラーと言えば海外メーカーさんのパーツが有名ですけど、当時は存在を知らなくて某通販で知った際は“マネされた!”と勘違いしていました(笑)。もちろんそれらパーツを試したこともありますし、今ではリスペクトしています。
——ブロック・マウント・スクリューなど、ほぼ見えないところにもカラフルなパーツがありますね(笑)?
CP:そもそも、このようなリプレイスメント・パーツなんかないと思っていましたし、せっかくならないものを作らないとという考えもあったことから“見えない部分もオシャレにキメないと”と考えたんです。もしかしたら探している方もいるかもしれないし、と思って作りました(笑)。カラー・ヴァリエーションはまだ少ないですが、見えない部分のパーツも意外と好評なんですよ。
——ロック式トレモロ以外でも、パーツを変えることで効果はありますか?
CP:やはりネック・ジョイント・プレートは効果的ですね。某有名メーカー様の二番煎じではありますが、オリジナルのプレートを作りたかったんです。質量も他の部分と比較しても大きいものですし、ボディとネックを固定する土台みたいなものですよね。当然大きな効果が表われました。素材や厚みにもよりますが、手っ取り早く音色を変化をさせたければお手軽な改造ですね。当社では、ステンレス、ブラス、ブロンズの計3種類あり、上記でもご説明しましたが同様~それ以上の効果が見込めます。
またプレートに関しては、完全に当方の好みが反映されており、武骨な作りになっているのも特徴です。基本的に仕上がった状態のままでストックしますので、レリックしたような加工や汚れなども見受けられます。四方の面取りをあえてしないのも特徴かもしれません。好き好きもありますが、そのほうが存在感ありますし、ゴツい感じが好きなんです。その部分が気になる場合は、紙やすりなどで意外と簡単に角を落とせます。
——今後、開発してみたい、あるいは開発中の商品はありますか?
CP:最終的にはオリジナルのFRT自体を作ってみたいですね。それもさまざまな金属で贅沢に。開発中といえば、大好評の当社開発のブラス製極厚トレモロ・クローのブロンズ製(ベルブラス)を製作中です。ブラスで強烈なサウンド変化をもたらしましたからブロンズでも、きっと好影響をサウンドに与えてくれると思います。年内~年明けには販売できると思います。楽しみにお待ち頂けたら幸いです。
そして、これからパーツを交換をされたい方や、どこから始めたらよいのかなど、お気軽にご相談も承っております。また、“このようなパーツが欲しい!”といったご要望等も受け付けております。ゆっくりぺースではありますが、できる限り可能なことは実現して行きたいと考えております。たくさんの方に支えられて今日のクリエィティフィニティ・パーツがございます。これからも小さなお声も聞き逃さずに、つねに謙虚な心を持ち努力して参ります。どうぞよろしくお願いします!
さまざまなパーツに注目!
※詳細、価格は、リンクよりオフィシャル・サイトを参考にしてください(表示価格は税込)
チタン部門
▲サドル・マウント・スクリュー(¥2,600)、インサート・ブロック(¥2,800)、ストリング・ロック・スクリュー(¥5,880)、ファイン・チューニング・スクリュー(¥2,400)をチタン製のメタリック・ブルー・パーツに替えたユニット
▲こちらは、ロック・ナット用スクリューをメタリック・パープル(¥1,400)に交換!
ブラス部門
▲中低域のトーンがアップするという極厚ファット・タイプ・ トレモロ・クロー・スプリング・ハンガー(¥2,500)と、トレモロ・ブロック(¥2,750)。フロイド・ローズやストラトのトレモロに最適なアップ・グレード・パーツだ。スプリング・ハンガーは、厚さを抑えたタイプもあり
▲ナット・クランピング・ブロック・ナット・キャップ。左が7弦用(¥2,600)で、右が6弦用(¥2,350)
▲ブラス製インサート・ブロック(¥1,800)。通常の鉄製ブロックに比べて、音に艶が増し、分離いいトーンに変化してくれるとのこと
ブロンズ部門
▲ブロンズ(ベルブラス)製インサート・ブロック(¥3,000)。上品でキラキラしたリッチなサウンドと、倍音豊かで前に出るサウンドが特徴だ
ステンレス部門
▲ステンレス製インサート・ブロック(¥1,680)。鉄製に比べ、キラキラした響きに変化する。抜け感も通常パーツより向上し、見た目もチタニウムのような色合いで変わる。巻玄のみに使用したり、プレーン弦のみに使用したりと狙ったサウンドによりカスタマイズ可能だ
▲ナット・クランピング・ブロック・ナット・キャップ(¥1,800)と、ロック・ナット用スクリュー(400円)。数あるステンレス系の中でも、もっとも優れたSUS304を材質にし製作されている
アルミ部門
▲アルミ製ロック・ナット用スクリュー(¥780円)。非常に軽い素材のため、軽量化と独特の響きが特徴だ
ギタリストも、続々と交換!!
及川樹京(Mardelas)
及川:フロイド・ローズ用のチタン・パーツ一式とファット・タイプのスプリング・ハンガーを使用しています。クリエィティフィニティ・パーツさんのよい点は、部品の精度が高い、カラー・ヴァリエーションが豊富、価格もとてもリーズナブルなところが挙げられると思います。
自分の印象としては、チタン製のパーツは、じゃっかん音がブライトになるのかなといった感じです。また、フロイドローズ純正のインサートブロックは長年使っていたり、少し強く締めすぎると潰れて動きが渋くなるがことがあるのですが、チタンのインサート・ブロックはその点心配がないと思います。
ファット・タイプのスプリング・ハンガーに関しては中低域が少し強調される感じがするので、今はVタイプのギターに使用しています。
フロイド・ローズをカスタムしている理由は、なんと言っても見た目のかっこよさ、オリジナリティを出せる点が一番ですが、サウンドの変化も実際にありますので、使用しているギターの方向性によって部品の素材(チタン以外にもステンレスやブラスなどがあったりします)をチョイスして組み合わせていくのもおもしろいかもしれませんね。
▲サドル・マウント・スクリュー、インサート・ブロック、ファイン・チューニング・スクリューをチタン製のパーツにインストール
▲Vシェイプのギターでは、中低域を稼ぐためにトレモロ・ハンガーを極厚ファット・タイプのものに交換
Shu(Tribal Scream of Phonix)
Shu:見た目がハデになるのはもちろんですが、音が変わります! トーンが違うんです。とくに影響が出るのはサスティン・ブロックとトレモロ・ハンガーですね。これをブラスにすることで中低域が増しつつ、コモらずに抜けもよくなりました。
最近、インサート・ブロックをブロンズにしてみたんですが、低域がキラキラした感じになりますね。
エフェクターやケーブルのように、とっかえひっかえしながら比べられるパーツではないので、もしかしたら気持ちの部分もあるかもなのですが(笑)、ギターの特徴によってどの方向性の音にしたいか見極めつつ、色も重要ですし、いろいろ使い分けて好みの音色を見つけるのも楽しいですよ。
あとは、海外製のものより低価格なうえに、信頼のmade in japan!
▲ブロンズ製のインサート・ブロック+チタン製のファイン・チューナー・スクリューに換装したフロイド・ローズ
▲こちらは、サドル・マウント・スクリュー、インサート・ブロック、ファイン・チューニング・スクリューをチタン製のメタリック・ブルー・パーツにインストールしている
▲左は、ロック・ナット・スクリューをチタン製のメタリック・ブルーに交換
▲トレモロ・ハンガーを極厚ファット・タイプ、サスティン・ブロックはブラス製に換装されている
▲左は、薄めのタイプのトレモロ・ハンガーに換装されたモデル。右は、交換前のノーマルなスプリング・ハンガーだ。見た目からも極太な音が出てくれそうなパーツだ。上の極厚タイプのモデルとの違いも見てほしい