【試奏動画連動】メタルを録る!!〜島 紀史×マーシャル & トゥーノーツ
WeROCK 079より始まったステイ・ホームにピッタリの企画“メタルを録る!!”。
まずは、コンチェルト・ムーンの島 紀史に登場してもらい、マーシャルのスタジオ・シリーズを試奏してもらいつつ、そのマーシャルとトゥーノーツのキャプターXを使って、キャビネットを鳴らさない音を体感してもらった。なんと、アナログ指向の島が驚愕!?
※WeROCK 079の掲載記事より。
■島紀史による試奏動画
▲今回の宅録実験は、マーシャルのスタジオ・シリーズのヘッド(SV20HとSC20H)から、キャビネットを使用せずにトーピド・キャプターXに行き、その音をPCで録音するという方法だ
——マーシャルSTUDIOシリーズ自体を試奏したのは初めてですか!?
島:うん。伝統的なマーシャルを感じる見た目をしてるよね。コントローラー類もそうだし、新製品なのに、なんの違和感もないことに逆に違和感を感じる(笑)。
——今回、音を出す前にツマミを回して音決めをしてましたね。
島:自分がヴィンテージのマーシャルを使う時のセッティングをしてみたんだ。SV20Hに関しては、インプット1に接続してリンクさせなくても干渉してノーマル・チャンネルのヴォリュームが効く感じが出てくれる。だから、僕はリンクさせなくてもノーマル・チャンネルのヴォリュームを上げるんですね。本来、チャンネル1にインプットした場合、ノーマル・チャンネルのツマミは関係ないはずなんだけど、じっさいはトーンに干渉して影響して厚みを増してくれてると感じるんだ。その感じが再現されてるね。
ふだん1959を使う場合は、ノーマル・ヴォリュームを11時ぐらいで使うんだけど、SV20Hで音を出してみたら、ちゃんと干渉してくれていて、もう少し上げてもいいかなと思った。ちゃんと、4インプットのマーシャルの感じが出てます。
——島さんの愛機であるマーシャル・メイジャーと違うといえば?
島:出力が20wなので、トーンはミドル・レンジ寄りに感じるね。でも、ロック・ギターには、こっちのほうが好ましいんじゃないかな。みんなが50wマーシャルが好き、という方向に近いかも。
マーシャルって、出力が大きくなればなるほどトーンがクリアになっていく。ワット数の小さいモデルのほうが、ミッド・レンジに寄ったものになってると思うんだ。その傾向のトーンかな。だから、ベースは0で、僕はストラトキャスターを使うのでプレゼンスもほぼ上げないし、トレブルも下げ目(11時ぐらい)にするのがオススメかな。もし、1959を使う時も、もう少しミドルを上げるぐらいで、だいたいこのぐらいだよ。
——トーンの効き具合はどう思いますか?
島:ヴィンテージ・マーシャルのツマミなんて気分の問題だけど、それに比べると、ここ最近のマーシャルはトーンが効く(笑)。今回のSTUDIOシリーズも効くよね。とくにプレゼンスなんて、めっちゃ効くからハムバッカーを使ってるギタリストなら、リフにバリっとしたニュアンスを出したい時など、そこをプラスさせられる。昔のマーシャルは、プレゼンスを上げると耳が痛くなるだけだったけど(笑)、このモデルはしっかりとトレブルの上にあるプレゼンス成分のコントロールになってる。
見た目は古いけど、トーン・コントロールはすごくフレキシブルなモデルだと思いました。あとね、これ、悪口じゃないですよ、昔のマーシャルと違って、ツマミのトルクがあって、ちゃんとツマミを回してる感覚がある(笑)。
——今回はヘッド・タイプの試奏ということで、まずは実際に1960のキャビを使用してもらっていますが、その感触はどうですか?
島:ちゃんと箱鳴りのローを感じるね。20wのヘッドということで小さいスピーカー・キャビネットで鳴らすことも考えられるんだけど、このヘッドのフル・ポテンシャルを出そうと思ったら、12インチ×4発の1960のほうがいいと思うな。
——その20wという小出力ですが、どう感じました?
島:充分でしょう。ふつうにライヴ・ハウスでやるぐらいなら大丈夫じゃないかな。僕は、音量に関して頭がおかしい派閥で生きてきたので、これだと小さ目だけど(笑)、ふつうのギタリストが鳴らしたら“デカっ”と思うよ。音量に関しては、僕の言うことは聞かないほうがいい(笑)。
——スタジオ・シリーズには、その出力をさらに下げられる機能が付いてます。
島:これがマーシャルだなと思うところで、出力を下げた時のトーンの変化もマーシャルならではなんだよね。ローの箱鳴り感やミドル・レンジの出方が変わってくれる。もし、そのトーンで不足してる部分があると感じるなら、よく効くEQを上げればいいんだよね。
——続いては、SC20Hにいってみましょう。
島:僕、最近、JCM800って、すごくいいアンプだなと思っていて、別件でマーシャルのデジタル・モデリング・アンプ CODEを触る機会があったんだけど、その時も800をプリアンプに選んだ。昔の800って当たり外れがあるとか言われてたけど、その昔の感覚でいうと、このSC20Hは“よいJCM800”の感じがする。あ、現行の800は、よくできていて、当時のいい800という意味です(笑)。
で、このSC20Hは、SV20Hの時よりも、ややベースを上げてみた。マスター・ヴォリュームの付いてるモデルは、ローの出方が違うんだよね。これも、ふだんの800は11時ぐらいまで上げるんだけど、これまたEQが効くので9時ぐらいでOK。ミドルに関しては、SVよりもドンシャリ気味ともいえるので、もう少しミドルがほしいと思って上げてます。ゲイン(プリアンプ・ヴォリューム)は、フルにするより3時ぐらいにしたほうがピッキングの強弱が表現しやすくなる。マスター・ヴォリュームも、じつは上げていくとトーンが変わって、これもマーシャルのいい部分なんだ。2時ぐらいからパワー管が燃えてくるというかね(笑)。そこから上げていくと、パワー管のサチュレーションが出てきてさらにファットになってくれる。
——方向性も、じっさいの800に近いですか?
島:同じ系統だと思った。少しローを足したいというニュアンスとかも同じ。こちらも、昔の800より、トーンが効きます(笑)。今回、試奏した2台はどちらも好きな音だけど、どちらか1台選べと言われたらSC20Hを選ぶかな。最近の自分の流行もあるけど、音的にフレキシブルに使えるのはこちらだね。来年、また違うことを言うかもしれないけど(笑)。SV20Hは間違いない音を出してくれるけど、今回のテーマである自宅でギターを録りたいというのであればSC20Hのほうが便利かもしれない。
▲マーシャルSTUDIOシリーズは、プリもパワーも真空管仕様。
だからこそ、あのトーンが再現されるのだ
▲20wから5wに出力を下げられる機能を搭載。
音量を下げても、マーシャルならではのトーンがキープされる
——さて、続いては、島さんの中には考えられないキャビネット・シミュレーター、トーピドのキャプターXの試奏にいってみましょう。今回はマーシャルSTUDIOシリーズのヘッドをキャプターXに接続して、キャビを鳴らさずにPCでモニタリングしてもらうという島さんのレコーディングではありえない方法です(汗)。キャビネットのシミュレーションは、どれに設定しますか?
島:マーシャルの4×12インチが入ってる“GreenArtC”にしてもらえます?
——マイクは、シュアの57をモデリングした“Dyn 57”にしてみました。いかがでしょう?
島:やばい(汗)、今のテクノロジーって、すごい……グリーン・バックならではの音の詰まり方がしてる。グリーン・バックって、1発が25wなので、少しスピーカー独特のコンプレッションがあるんだけど、その感じがするな〜。
——ちなみに、島さんのいつものレコーディング時の、キャビとマイクの距離に設定してみました。
島:ピッキングのニュアンスが、グリーン・バックそのものだよ。これは、優秀。すごいな、これ。キャビを“Brit VintC”にしてもらっていいですか?
——スラッシュ・シグネイチャーのモデリングですね。
島:お〜、これも優秀やな〜。セレッションのヴィンテージ30って、こういうミドルの出方をするんだよ。昔、ヴィンテージ30のスピーカーを使ってたことがあるんだけど、ちゃんと、その音がするな〜。じつはヴィンテージ30って、ミドルが少し減ってドンシャリなんだよね。すごいな、テクノロジーって(笑)。似てる〜。これは、本物のエンジニアもわからないと思う。今回、試奏するにあたり、ちょっとケチを付けてみようかと思ってたけど、すごいな〜、これ(笑)。
——マイクを2本立てるシミュレーションもできますが、やってみますか?
島:では、421のモデリングをプラスしてください。距離は、オンぐらいで、スピーカーから少し外した感じで。
——このぐらいですかね?
島:(弾いてみる)お〜、すごいな〜(驚)。421のほうがローのふくよかな帯域が録れるので、そこを加える感じなんだけど、ちゃんとキャビネットを鳴らした時の真空管がジリジリいうニュアンスを出してしまうんだね(笑)。もちろん、ヘッドに本物のマーシャルを使ってるというのもあるけど、ビックリしてる。困ったな〜、これは(笑)。
——レコーディングのたびにキャビを持ち運んだり、マイキングをしたりする苦労が(笑)。
島:キャビをマイクで録った時の空気が揺れるニュアンスが、本物と違うぐらいで、それは弾いてる人間にしかわからない。でも、限りなく違いがない(笑)。今回、レコーディング・スタジオで実験していて、ふだんはスピーカーから出てる音をマイクで拾って、それをコントロール・ルームで聴きながら弾くでしょ。それと、近いものがあって……ヤダ(笑)。
——たとえば、マイキングとかは、レコーディングが別日になってセッティングし直したりすると、どうしても音が変わってしまうじゃないですか。それが、これを使うと……。
島:ないでしょ。腹立つよね(笑)。そうなると、“この曲は録り終えておかないと”という話ではなくなるからね。ちょっと、マズイな(笑)。
——なんか、島さんをだましたドッキリのような企画になってしまいましたね(笑)。
島:ホントに、すごいと思う。あきらかに、選んだキャビを鳴らしてるニュアンスがあるし、例えばスタジオでは不可能なマイキングが手軽にできるわけでしょ? 今のテクノロジーはすごい。
——さらに、このキャプターXは、ステレオでアウトできて、PCのアプリを使えばダブルでギターを録ってるかのようなニュアンスも出せる設定ができるんですよ。
島:もう……そんなことも、できてしまうのか……でもね、“それは、2回、録れよ、若者”って思うけどね(笑)。しかし、これは困ったな、これを使えば“このエンジニア、腕いいな〜”というレコーディングができてしまう(笑)。
——もちろん、今回は、マーシャルの真空管ヘッドを鳴らしてるというのはありますよね?
島:やっぱり、それがいちばん大きいと思うよ。これが、アンプもシミュレーターであったら、ここまではいかないと思う。
——今回、取材に訪れた島さんが、このシミュレーターやらアプリでの操作を見て苦い顔をしていたのに、今は笑顔になってしまいましたね(笑)。
島:こういうのものがあるんだな〜って(笑)。ただ、これ、100wまででしょ? 俺の使ってるメイジャーは200wだから、接続できなくてよかったな、と(笑)。だから、大丈夫、俺は使えないから(笑)。
でもね、ホント、今回のマーシャルとキャプターXというコンビは優秀すぎる。ラインくさくならないのも、ちゃんとマーシャルという真空管アンプをドライヴさせてるからだろうし、それがあってのキャプターXだと思いますね。さっきも言ったけど、ケチをつけてやろうかと思って取材に来たんだよ。“若者よ、こんな機材に頼らず、スタジオでキャビを鳴らしてギターを録りなさい”と言いたかったんだけど、マーシャルのような適切なヘッドを接続して録音してしまえば大丈夫だった。これで行けてしまう恐ろしさがあるし、自分がブラインド・テストをやられたらダマサれてしまう自信もあります(笑)。
▲ヘッドフォン端子も装備しているので、アンプ・ヘッドの音をキャビを鳴らさずに確認することも可能となっている
▲USBでPCに接続すれば、PC上でエディット可能
▲キャプターXは、ふつうにロードボックスとしても使用可能なので、マスター・ヴォリュームが付いてないヴィンテージ・マーシャルなどで重宝する。
ヘッド→キャプターX→キャビネットに接続すれば、アンプの音量をトーンを変化させずに下げることが可能だ。これは、その際の音量を調節するスイッチ
■島 紀史=絶賛セッティング
SV20Hとトーピド・キャプターXでのセッティング
▲島が、マーシャル SV20Hとトーピド・キャプターXを使って作ってくれたセッティング。
SV20Hでは、セレッションのヴィンテージ30をモデリングしているということでキャビネットに“Angl VintC”を選択。マイクは、“Dyn57”をメインに“Dyn421”を付け足す感じで加えている
SC20Hとトーピド・キャプターXでのセッティング
▲こちらは、マーシャル SC20Hとトーピド・キャプターXでのセッティング。
SC20Hではキャビネットに“GreenArtC”をセレクトし、マイクはこちらも“Dyn57”をメインに“Dyn421”を付け足している
マーシャル Studio Vintage SV20H
¥オープン
【仕様】
●出力:20w/5w
●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2
●チャンネル:1=ハイ・トレブル/2=ノーマル
●コントロール:ラウドネス1、ラウドネス2、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス
●入出力端子:ハイ・トレブル高感度入力、ハイ・トレブル低感度入力、ノーマル高感度入力、ノーマル低感度入力、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2)
●外形寸法:500(幅)×240(高さ)×230(奥行き)mm
●重量:9.25kg
マーシャル Studio Classic SC20H
¥オープン
●出力:20w/5w
●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2
●チャンネル:1
●コントロール:プリアンプ・ヴォリューム、マスター・ヴォリューム、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス
●入出力端子:ハイ・インプット、ロー・インプット、エフェクト・センド/リターン、DI出力、スピーカー・アウト×5(16Ω×1/8Ω×2/4Ω×2)
●外形寸法:510(幅)×240(高さ)×240(奥行き)mm
●重量:9.4kg
■マーシャル スタジオ・シリーズの詳細■
http://www.marshallamps.jp/products/amplifiers/studio/
Two notes Torpedo Captor X
¥オープン
【スペック】
●インプット(スピーカー入力端子):6.35mm(1/4″)アンバランス(TS)。IN LEVELスイッチで入力感度を設定(HIGH:0 dB/LOW:−15 dB)
●アウトプット(スピーカー出力端子):6.35mm(1/4″)アンバランス(TS)
●ロードボックス・インピーダンス:8Ω
●左/右出力端子:XLRバランス
●最大出力レベル:15 dBu @ 600Ω
●ヘッドフォンン端子:6.35mm(1/4″)ステレオ(TRS)
●MIDI入力端子:1/8″バランスTRS、1/8″ to MIDI変換ケーブル付属
●USB端子:Micro USB Type B、Micro USB Type B to USB Type A変換ケーブル付属
●ADC/DAC:サンプリング周波数:96 kHz、解像度:24ビット
●最小レイテンシー:2.2 ms(スピーカー入力 to 左/右出力)
●電源:AC100〜240v、出力:DC12v @ 1A
●外形寸法:128(幅)×175(奥行き)×64(高さ)mm
●重量:1.3kg
■多種にわたるシミュレート機能
■Torpedo Captor Xが通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/679611
○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/twonotes-tncapx
■トーピド・キャプターXの詳細■
http://www.electroharmonix.co.jp/twonotes/torpedo-captor-x.html
◎島 紀史:コンチェルト・ムーンのギタリスト。リッチー・ブラックモアをこよなく愛し、ストラトキャスターとマーシャルから繰り出されるプレイは強力無比! 現在の使用アンプは、マーシャル Major。
最新アルバム:『Rain Fire』(コンチェルト・ムーン)/2020年12月9日リリース
コンチェルト・ムーン 公式サイト
http://concerto-moon.com/