小型マーシャルで宅録に挑戦!!

新型コロナウィルスの影響が続いている。とくにスタジオで大音量が出せないストレスは……。そこで、“Stay METAL”企画として、“自宅でマーシャル・サウンドを実現しよう!”をお届けしよう。
1wと5wのマーシャル:DSLを使用し、なんと自宅録音が可能なのかにも挑戦してみた。チャレンジしてくれたのは、WeROCK 077の付録オムニバスCDにも参加しているTSPのShu!
※WeROCK 077の掲載記事より。

■Shuによる試奏動画

Shu:みなさんにも、なんとか有意義な音楽生活をすごしてほしいと思う今日このごろ。そんな折に、我が家にマーシャルのDSL、小型アンプが届きました。1wのヘッドとコンボ、そして5wのコンボ、なんとこのサイズで、プリもパワーも真空管を搭載している完全アナログ仕様だ。今回のテーマは、このDSLを使って自宅録音にチャレンジ! “1wと5wでメタル・ギターを録音って”と不安に思ってしまうのは当然のこと。そこで、今回の実験となったわけだ。
今回の実験方法は、下の図のとおりの2パターン。
DSL1HRVは、エミュレイテッド・アウトを使用し、そこからオーディオ・インターフェイスに接続してレコーディング。もうひとつのパターンは、コンボをマイク録りしてみるという、かなり興味深い実験だ。

まずは、それぞれのモデルが、どんなサウンドなのか弾いてみよう。
DSL1Cから試してみる。ふたつのチャンネルを装備しているが、ここはメタル・ギタリストなので、最初からウルトラ・ゲイン・チャンネルだ。ゲインを2時ぐらいで、ヴォリュームは1ぐらいから弾いてみると……音、大きいです! これで、1w!? 窓を開けて鳴らすと、ちょっとまずいかも、という刺激的なマーシャル・サウンドが出てくれてます。そして、1wといえども、さすが真空管。レスポンスが速い! 音量を上げてないからかなのか、かなり高域寄りのトーンだ。でも、自宅で、これより音量を上げるのは、度胸がいるな……そうだ、ロー・パワー・スイッチがあるじゃないか。
1wでも自宅だと音がヤバイという人には、0.1wに出力を下げてくれるのこのスイッチが便利。0.1wのフル・バルブ・アンプに切り替えると、“お〜、自宅メタル!”とトーンはそのままに安心の音量になってくれた。これでも、まだ高域が強く感じるので、トレブルを絞ってみると、これがまたすごく効いてくれるEQだと発見。トレブルは絞り気味、ミドルは上げ気味で使うといい。さらに、JCM2000でおなじみだったトーン・シフトが付いているので、これを押してみる。ドンシャリになると思いきや、あれ? もしかしたら、これを使ってEQを調整したほうがいいかも? という音作りができた。

DSL1C
¥オープン

●出力:1w/0.1w
●真空管:ECC83(プリ管)×2、ECC82(パワー管)×1
●チャンネル:クラシック・ゲイン、ウルトラ・ゲイン
●コントロール:クラシック・ゲイン・チャンネル=ヴォリューム/ウルトラ・ゲイン・チャンネル=ゲイン、ヴォリューム トレブル、ミドル、ベース、リバーブ、チャンネル・セレクト・スイッチ、トーン・シフト・スイッチ、ロー・パワー・スイッチ(リア・パネル)
●入出力端子:インプット、オーディオ・イン、エミュレイテッド・アウト、エフェクト・センド、エフェクト・リターン、フットスイッチ・イン、1/4″スピーカー・アウト(16Ω)
●スピーカー:セレッション製Eight-15
●外形寸法:360(幅)×340(高さ)×215(奥行き)mm
●重量:7.9kg

続いてDSL5CRVにいってみよう。さらに音が大きくなるのではと思いつつ恐る恐る音を出してみると、たしかに音量は大きくなるのだが、ドッシリとした印象だ。スピーカーのサイズが大きくなってるからなのか、中低域が膨よかになってくれているので高域の出方も違うように感じられる。さらに、ディープ・スイッチを搭載されていて低域をひとまわり増強! “マイク録りならこっちだな”と、すぐにひらめいた。

DSL5CRVには、JCM2000などにも搭載されていたDeepスイッチを装備。
低域をふくよかにしてくれる

DSL5CRV(限定仕様モデル)
¥オープン

●出力:5w/0.5w
●真空管:ECC83(プリ管)×2、12BH7(パワー管)×1
●チャンネル:クラシック・ゲイン、ウルトラ・ゲイン
●コントロール:クラシック・ゲイン・チャンネル=ゲイン、ヴォリューム/ウルトラ・ゲイン・チャンネル=ゲイン、ヴォリューム トレブル、ミドル、ベース、リバーブ、チャンネル・セレクト・スイッチ、ディープ・スイッチ、トーン・シフト・スイッチ ロー・パワー・スイッチ(リア・パネル)
●入出力端子:インプット、オーディオ・イン、エミュレイテッド・アウト、エフェクト・センド、エフェクト・リターン、フットスイッチ・イン、1/4″スピーカー・アウト(16Ω)
●スピーカー:セレッション製Ten-30 ●外形寸法:455(幅)×420(高さ)×240(奥行き)mm
●重量:12.7kg

さて、いちばんキュートなDSL1H
キャビは取り寄せていないので、エミュレイテッド・アウトで実験することを前提に送られてきた刺客だ。このエミュレイテッド・アウト、ヘッドフォン・アウト端子との兼用になっているので、まずはヘッドフォンで音を確認してみると……あれ!? ぜんぜんコンボの音と違う! より中域をアップしたトーンで、コンボがJCM800や900あたりのブライトさがあるとするならばヘッドは、もっと以前のヴィンテージ・マーシャルにも通じるミッド感がある。今回、我が家に実験のため到着した1Hは、ヴィンテージ風のロゴになってる限定品なので、そのイメージにピッタリの音だ。それに、ヘッドフォンで聴いているのに空気感のある、この音。これは、かなり期待できるスピーカー・シミュレータのトーンだぞ。
では、オーディオ・インターフェイスに接続して、PCのモニターから音を出してみよう。
お〜! マーシャル・サウンド! 言うなれば、スタジオでキャビを鳴らしている音をマイクで拾って、エンジニア・ブースで聴いてる音。マーシャル・シミュレートのプラグインではぜったい出せないトーンだ。そして、なにより弾き心地がプラグインとは違う。今回、動画でこの音を配信するので、音のニュアンスは伝わると思うけど、このアンプを弾いてる感(“感”ではなく実際に弾いてるけど)は、気持ちいいです。

こちらは、DSL1HRVの真空管だ。
プリ管にECC83、パワー管にECC82を搭載している

オーディオ・インターフェイスには、裏面にあるエミュレイテッド・アウトから接続する

DSL1HRV(限定仕様モデル
¥オープン

●出力:1w/0.1w
●真空管:ECC83(プリ管)×2、ECC82(パワー管)×1
●チャンネル:クラシック・ゲイン、ウルトラ・ゲイン ●コントロール:クラシック・ゲイン・チャンネル=ヴォリューム/ウルトラ・ゲイン・チャンネル=ゲイン、ヴォリューム トレブル、ミドル、ベース、リバーブ、チャンネル・セレクト・スイッチ、トーン・シフト・スイッチ、ロー・パワー・スイッチ(リア・パネル)
●入出力端子:インプット、オーディオ・イン、エミュレイテッド・アウト、エフェクト・センド、エフェクト・リターン、フットスイッチ・イン、1/4″スピーカー・アウト(16Ω)
●外形寸法:360(幅)×210(高さ)×215(奥行き)mm
●重量:5.6kg

さあ、そして、大きな実験のマイク録りだ。自宅なのでブースがあるわけでもなく、ふつうにアンプから音を出して弾いてます。なので、どんなサウンドで録れるかは録音後に聴くことになる。
聴いてみると、わ〜お! これは、“もしかしたら、ふだん大型アンプで鳴らしてる苦労がムダになるかも!?”という域に達しているかもしれない。じっさいの音はYouTubeでの動画で聴いてほしい。その動画では、今回、WeROCK 077の付録オムニバスCDに入ってる曲で実験してるけど、CDはいつもの僕のマーシャル(JMP-1+改造EL34 100/100+MODE FOURキャビ)、そして、動画はDSL5CRV。その音の違いを、ぜひ聴き比べてほしいです。
なお、今回、どちらの実験も、僕のメタル・サウンドには不可欠なオーバードライブをブースターとして使用している。DSLでは歪みが足らないという方は、DSL側のゲインを2時ぐらいにして、ブースターと組み合わせると、ワンランク・アップしたマーシャル・トーンになりますよ!

DSL5CRVを使ってのレコーディングは、マイクを立ててチャレンジ。そのトーンに驚愕!!

 

問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
http://www.marshallamps.jp/

 

Shu:故・沢田泰司が最後に結成したバンド、トライバル・スクリーム・オブ・フェニックス(TSP)のギタリスト。そのサウンドやリフ・メイキングが特徴的で、キラー・ギター+マーシャルの組み合わせで繰り出される撃音に注目だ。2018年には、ベスト・アルバム『Tribal Scream of Phoenix vol.1』をリリース。WeROCK 077の付録オムニバスCDには、7月15日に発売されたミニ・アルバムから「CHAIN」で参加。もちろん、マーシャル・サウンドが炸裂しているとのこと!

最新ミニ・アルバム:『Phoenix Rising Against the Fate』/TSP
Blaze Up! BLCD-0009

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