60年代の歪みを再現できるエフェクター
デジタル系エフェクターが多くなってきた時代ではあるが、アナログでしか再現できないトーンがある。そんなトーンにこだわったメーカーであるプリスクリプション・エレクトロニクス・インクが、60年代の歪みを再現してくれるモデルを発売している。
今回は、注目の4機種を試奏してみた。やはり、あの時代の音は、こだわりのメーカーだからこそ奏でられるのだ!
※解説:谷川史郎/WeROCK 075の掲載記事より。
■60年代の歪みといえば!?■
今回、紹介しているドライヴ系の元となっているオクタヴィア・ファズ、トーン・ベンダー……これらは60年代ロック創世期にジミー・ペイジやジェフ・ベック、エリック・クラプトンらのブリティッシュ・ロック・ギタリスト達、そしてイギリスに渡ったジミ・ヘンドリックスらによって広められていったエフェクターと言っても過言ではないだろう。
それまでのクリーンまたはクリーン+ファズ・サウンドから、ペダルによるクランチ・サウンドとなり、新たなロック・ギターの音作りとして“オーバードライブ・サウンド”へと変化していく。当時は、まだ“エフェクター”という呼び名すら生まれてない時代だが、ペイジやベックの友人でもあり、ジミヘンのサウンド・エンジニアとしても知られるロジャー・メイヤーがファズを手作りしたり、VOXアンプやソーラー・サウンドといったブランドが元祖オーバードライブ/ブースト系の歪み的なトーン・ベンダーを発売した。
それらを使用したベックのファースト・アルバムやレッド・ツェッペリンのファーストやセカンドが口火となり、イッキにロック・ギター=クランチ/オーバードライブによる”歪んだ音”の存在ということを音楽の中に定着させたのである。
■プリスクリプション・エレクトロニクスの4台のペダルを試奏!■
Experience
¥66,000+税
〈仕様〉
●コントロール:ヴォリューム、トーン、サステイン、スウェル
●電源:9v乾電池 or 9v電源アダプター(センターマイナス)
●外形寸法:119(幅)×70(高さ)×115(奥行き)㎜
●重量:447g
ジミヘン風ファズを再現
エクスペリエンスというモデル名のとおり、ジミ・ヘンドリックスが好んでいた当時のファズ・トーンを再現したファズ・エフェクターだ。FUZZ/OCTAVE/SWELLの3モードでの往年のファズ・サウンドに加え、オクターヴ・スイッチによる独特な倍音、スウェル・スイッチによる揺れ感を含んだファズ・サウンドが特徴となっている。
60年代のファズを再現しているので、あの当時ならではのいい意味でのゲルマニウム・ファズ特有のトーンを作り出せる。弾いてみると、ピッキングなど演奏ニュアンスに対して微妙に変化する歪み感、そしてツブ立ちが個性を放っているのだ。ディストーションやオーバードライブなどの歪みと違い、ギター側のヴォリュームやピックアップ・ポジションで歪みのトーンが大きく変化するのも、このタイプのファズ特有と言える。
クラッシュ感を持つ独特の歪みは、デジタルで作り出されるオクターヴァーとは一線を画しており、倍音の乗ったオクターヴ・トーンなど“エクスペリエンス”ならではのサウンドを作ることができる。音作りをする際は、当時のアンプの基本であるクリーン・サウンドをベースに歪ませるエフェクターとして考えられているので、オクターヴとスウェルの効果はクリーン・セッティングのほうがハッキリと出やすいだろう。
ジミヘン・ファンはもちろんのこと、オクターヴィア・ファズならではの音を飛び道具的にしてプレイするのももちろんありだ。現代だからこそ、ある意味、モダンなサウンドを作り出せる。
オススメ・セッティング
▲FUZZを基本に飛び道具的にOctaveをオンにしてオクタヴィア・ファズならではの60年サイケデリック・フレーズを楽しむセッティングだ。
アンプ側はクリーン・セッティングにし、基本となるファズ・サウンドは好みに合わせトーンを設定。VOL.(左端)はON時のレベルが高いので低く設定してある。単音弾きが効果的に鳴ってくれる
■Experienceが通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/661220
○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/prscrpt-experience
C.O.B.(Clean Octave Blend)
¥63,000+税
〈仕様〉
●コントロール:ヴォリューム、オクターヴ、ブレンド
●電源:9v乾電池 or 9v電源アダプター(センターマイナス)
●外形寸法:93(幅)×53(高さ)×124(奥行き)㎜
●重量:332g
オクターヴ音をブレンドしてレトロな歪みを
クリーン・オクターヴ・ブレンド(C.O.B.)というネーミングとおり、原音にオクターヴ音が加えられていくエフェクターだ。やはり、これも60年代オクターヴ・ファズのシリーズとして当時のオクターヴ効果を再現するレトロなサウンドを再現してくれる。なので、80年代以降のピッチ・シフター系オクターヴ・エフェクトとは、まったく別のエフェクターとして考えてほしい。
簡単にいうとオクターヴ(倍音)が原音にプラスされてくる感じだが、当時の再現ということもありオンの状態では原音も歪むため、それがC.O.B.特有のエフェクト・サウンドとして個性を作り出している。また、このモデルは、フロント・ピックアップでの使用が指定されている! この点もユニークだ。
トーンとしては、アンプ側のセッティングに関わらず芯にファズ的な軽い歪みを持ち、ブレンド・ツマミによって、そこに倍音が加わる。プレゼンス感のような張りのあるエンハンス・サウンドや骨太でスウィートでレトロなクランチ・サウンドを作り出せる。オクターヴ音を作り出すために自然と生まれる歪みは他の歪みエフェクターとはまた違った、このモデルならではのサウンドを得ることができる。倍音を軽く加えたエンハンス的なトーンは、ソロでのアクセントなど隠し味的にもおもしろい。
オススメ・セッティング
▲C.O.B.特有の60年代系オクターヴ・サウンドを原音として隠し味的に使い、コード/リフをキラびやかでリッチなサウンドにするセッティング。シングルコイル、ハムバッキングともにフロント・ピックアップを使用する。
C.O.B.本体で軽い歪みが加わるので、クリーン・サウンドでも芯のしっかりした存在感のあるトーンが出てくる
■C.O.B.(Clean Octave Blend)が通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/660044
○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/prscrpt-cob
Rx Overdriver
¥44,000+税
〈仕様〉
●コントロール:ヴォリューム、トレブル、ベース、ドライヴ
●電源:9v乾電池 or 9v電源アダプター(センターマイナス)
●外形寸法:93(幅)×50(高さ)×124(奥行き)㎜
●重量:325g
70年代の名機をもとに開発
こちらはオーバードライブ/ファズのモデルで、95年に発表されたドライヴ・エフェクトの2019年ヴァージョンとなる。
参考となっているのは70年代のイギリス製Colorsound Overdriverで、キレのいいクランチ系の歪みを基本に、ふたつのトーン・コントロールとトレブル・ブースト、ベース・ブーストによってハイ・ゲインなオーバードライブまで幅広く作り出せるようになっている。
ドライヴ・レベルのポジションに限らず、ツブ立ちがよくヌケもいい歪み感を持っており、ギター側のヴォリュームによる歪み感への反応もなめらかなので、アンプ側との相性もいい。アンプのセッティングが、クリーンでもドライヴでも、どちらに対してもトーンにクセが付かないため、ベーシックなドライヴ・エフェクターとして、またドライヴ・レベルを低めにしてブースター的なセッティングなど幅広く使えるだろう。なお、ドライヴをフルにすると、いきなりファズ・サウンドに変化するというのも特徴だ。
オススメ・セッティング
▲立ち上がりのいい歪みサウンドを生かすため、アンプ側はクランチ〜オーバードライブ・サウンドにセッティングして、ソロ時にパワー感とヌケを加えようというブースト・セッティングだ。
アンプの音作りを基本にしたまま、手元のヴォリューム・コントロールによってクリーンなカッティングからドライヴまでをカヴァーすることができる(ハムバッキング/シングルコイル共通)
■Rx Overdriverが通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/663541
○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/prscrpt-rx-overdriver
Yardbox
¥33,000+税
〈仕様〉
●コントロール:ヴォリューム、ゲイン、ファズ、トレブル・ベース
●電源:9v乾電池 or 9v電源アダプター(センターマイナス)
●外形寸法:93(幅)×51(高さ)×124(奥行き)㎜
●重量:345g
ヤードバーズのサウンドを凝縮
エリック・クラプトンやジミー・ペイジ、ジェフ・ベックらが在籍した伝説のバンド、ヤードバーズ。とくにペイジ、ベックのギター・サウンドの要となっていたのがSola Sound社のトーン・ベンダーというエフェクターだった。その歪みを再現した60’sブリティッシュ・キャラクターを持っているのが、このモデルだ。
ファズなのだが、今回の4機種の中では、いちばん密度の濃い歪みを持っている! ファットでなめらかなブースト系のファズで、ギター側の音量を変えることで得られるトーンの変化など、当時のファズ・トーンだけではなく、その後のディストーション・エフェクター的なニュアンスも持っているようだ。そのため、ファズ・サウンドをアンプ側のクランチ・セッティングで作っても、ファズ特有の芯のあるアタック感を持ちながらも現代のディストーション的な歪みも得ることがができる。また、Fuzzレベルと別にゲインのコントロールを装備しているので、歪みの幅も広く得ることができるのもうれしい。
ジミー・ペイジが、初期レッド・ツェッペリンの作品でトーン・ベンダーを使用していたが、そのサウンドを望むギタリストはもちろんのこと、60年代ブリティッシュ・サウンドを好むギタリストやディストーション的に使いたい方にもオススメできるモデルだ。
オススメ・セッティング
▲アンプ側を軽めのクランチ・セッティングにして、トーン・ベンダー風な密度の高い歪みとサスティンのいい、なめらかで芯の太い歪みを作ってみた。
ギターのヴォリュームを下げるとわずかにくすみを感じさせる独特のトーンになり、一般的なディストーションでは得られないトーンが作れる
■Yardboxが通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/665262
○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/prscrpt-yardbox
問:日本エレクトロ・ハーモニックス株式会社
http://www.electroharmonix.co.jp/pei/index.html