シールド・ケーブル 22本弾き比べ!!〜後編

もはや、いいシールド・ケーブルを使用するのはギタリストとして当たり前の時代になっている。
しかし、どのケーブルを選ぶかは悩みどころ。最近は通販で購入する方も多いと思うが、となると試奏もできない……。
そこで、この企画だ。通常の試奏記事の他、アナライザーを導入しての比較など、各モデルの違いを感じよう!
※WeROCK 073の掲載記事を前編と後編に分けて紹介します。
※前編では、シールドの一般論や豆知識を掲載しています。
前編は
http://rockinf.net/eyes/?p=3446
をご覧ください。

【試奏にあたって】
今回の試奏は、以下のギター、そして環境で行なった。
■使用ギター→ハムバッキング搭載のストラト・シェイプ・モデル。おもにリア・ピックアップを使用。
■アンプ→今回は、アンプを使わずにDTM環境でDAWを使って測定。
■試奏(聴感上)グラフ→DAWでプラグ・インを使い、聴覚上の感覚をグラフ化。
プラグ・インは、スタック系アンプのシミュレーターを使用した。

弾いて聴いた聴感上のグラフ。マーシャルで歪ませて弾いた時のサウンドをグラフに表わしてみた

■フリーケンシー・アナライザー値→DAWソフトのプラグ・インを使用し、その周波数特性を記録。
ここでは、Emのコードを弾いた時に得られた数値を掲載。ちなみに、弾くギターや、そのギターのチューニング、弦の種類などでも数値は変わってくるので、ここで出た数値が、そのケーブルの標準的な数値とはいえないので注意してほしい

今回の試奏では、全ケーブルを同条件でフリーケンシー・アナライザーに通してみた。
上記のグラフは、安価なギターにセットで付いていたケーブルを測定した時の結果なのだが、これに比べると、今回、試奏した各モデルはどれも驚くほど髙い数値を示していて、かなり精度の高いモデルということが確認できる


Providence
Z102 “Livewizard”
¥5,500+税(1m)〜¥10,400+税(10m)/試奏機種は¥6,700+税(3m)

イギリスの『ギタリスト・マガジン』誌において、“ギタリスト・チョイス賞”を受賞したというプロビデンスのモデルは、おもにライヴでの使用をテーマに開発されたケーブルだ。導体に錫(すず)メッキ加工を施し、絶縁体には導体の特性を充分に発揮させるNAP ELASTOMERという素材を採用。この2つの素材を使用したプロビデンス独自の芯線構成と超過密編組シールドにより、ロー・ノイズで特徴のあるサウンドを実現してるという。
ライヴでの使用を考えると、あまり太くないケーブルで取り回しがいいモデルが好まれるが、それでいてトーンを損なわないようにするために、各メーカーが頭を悩ませていると思われる。そんな悩みを解消しつつ、さらにグッドなトーンを実現したモデルが、これだ。
弾いてみると、基本フラットに近いが、高域のヌケがいい印象を受ける。アタックも強く出るので、レスポンスがよく音のツブが明瞭に出てくれるのだ。プレゼンスあたりの帯域をキレイに再現してくれるのはプロビデンスならではの特徴といえるのではないだろうか。
プラグはオール24金メッキのプロビデンスのNP-14G/NP-14GL(L型プラグ)を使用。コンパクトなプラグなのでジャマにならず、このあたりもライヴで使用する際に役に立つだろう。

■通販で購入可能■
○公式オンライン・ショップ
http://www.oasis-music.jp/c-item-detail?ic=CB0002SS

問:株式会社パシフィクス
http://www.providence.jp/cables_01.html#h_z102


Providence
E205“59ers”
¥3,700+税(1m)〜¥7,700+税(10m)/試奏機種は¥4,700+税(3m)

プロビデンス、こちらのモデルは、ギターやベースなどの微妙に枯れたサウンド・ニュアンスと、ピッキング時の音の立ち上がりを忠実に伝達することに重点を置くという目的で開発されたケーブルだ。導体にはプロビデンス独自のNVW1 OFCを使用し、ラフなカッティングやコード弾きなどで、際立つ倍音をよりバランスよく出力してくれるとのことだ。
じっさいに弾いてみると、上のZ102よりも、中域に特徴があるトーンだと感じられた。これにより、オーバードライブさせるとラウドな感じが出てくれて、弱くピッキングしても、しっかりと音が付いてきてくれる。ミッドの押し出し感がありつつ、しっかりとハイも出てくれているので、リフを弾いた時の音圧もあり音のヌケもいい。メーカーの発表では“ミッド・ハイをしっかりカヴァーしたサウンド”とのことだが、その帯域はもちろんのこと、ロー・ミッドというボトムを強調する部分も膨よかに出ている。
Z102同様、こちらもライヴにおいても取り回しがしやすいように、対電磁ノイズなどのクオリティは保ったまま、より一層の柔軟性を持たせてくれている。ケーブルの太さもZ102と同じぐらいなので、ミッド〜ミッド・ハイを好むならこちらのモデル、それよりもさらにハイのブライトさがほしいならZ102と、使い分けてみるのもいいだろう。

■通販で購入可能■
○公式オンライン・ショップ
http://www.oasis-music.jp/c-item-detail?ic=CB0005SS

問:株式会社パシフィクス
http://www.providence.jp/cables_02.html#h_e205


Providence
S101“Studiowizard”
¥5,500+税(1m)〜¥10,400+税(10m)/試奏機種は¥6,700+税(3m)

持った瞬間に、プロビデンスの他のモデルと違い、極太な形状がわかる。価格からもわかるとおり、プロビデンスのモデルの中でも最上位機種となるわけだが、弾いてみるとワン・ランク上のモデルだと、すぐに認識できた。
まず、全域においてアップしていることが体感できるのだ。“音量が上がってる?”と思えるほど、どの帯域においてもブラッシュ・アップしている。低域〜中域の盛り上がり方が多めに感じられつつ、ハイのヌケもすごい! 高域がキレイに再生されており、CDで聴くようなトーンを再現してくれる。さすが、スタジオ仕様。これは、すごいケーブルだ。

■通販で購入可能■
○公式オンライン・ショップ
http://www.oasis-music.jp/c-item-detail?ic=CB0001SS

問:株式会社パシフィクス
http://www.providence.jp/cables_01.html


Providence
F201“Fatman”
¥3,700+税(1m)〜¥7,700+税(10m)/試奏機種は¥4,700+税(3m)

ファットマンという品名からもわかるとおり、低域に重点をおいたモデルだ。
試奏してみると、たしかに低域の出方がすごい! 6弦をミュートして弾くと、他よりも確実にゴンゴンと音圧が出てくれる。S101で感じたスタジオ仕様のよさも感じられ、そこに低域を加えた印象だ。おもしろいのは、ローを強く押し出してるが、ハイもしっかりと出ているところだ。なので、コモったようなニュアンスはまったく感じない。シングルコイル・ピックアップを使う時や、もっと低域がほしいギターなどでこのモデルを使用すると、ちょうどいい効果を発揮してくれるだろう。もちろん、レコーディングにもオススメ。

■通販で購入可能■
○公式オンライン・ショップ
http://www.oasis-music.jp/c-item-detail?ic=CB0003SS

問:株式会社パシフィクス
http://www.providence.jp/cables_02.html


Providence
B202“Bottomfreq’er”
¥3,700+税(1m)〜¥7,700+税(10m)/試奏機種は¥4,700+税(3m)

ロー・チューニングやベースに最適なトーンになるよう開発されたというB202。ロー・ミッドに特徴を持たせているとのことだが、F201よりも、さらに低音がズンと鳴ってくれる。
F201の時に、6弦をミュートして弾くと音圧が出ると記したが、今度は5弦ミュートでも他のモデルよりレベルがアップしている。アナライザーを見るとF201と同様の波形になっているのだが、機械では計ることのできない低域のアップ感がある。そのぶん、高域が抑えられているトーンに感じるが、あくまでも余計な脚色がなく原音を忠実に生かしてくれている。これをベースで使用したら、どんなボトムを出してくれるのか、じつに興味深い。

■通販で購入可能■
○公式オンライン・ショップ
http://www.oasis-music.jp/c-item-detail?ic=CB0004SS

問:株式会社パシフィクス
http://www.providence.jp/cables_02.html#h_b202


Providence
H207“Heartbreaker”
¥3,700+税(1m)〜¥7,700+税(10m)/試奏機種は¥4,700+税(3m)

プロビデンスの代表的なパッチ・ケーブルであるP203。多くのミュージシャンから好評を得ているそのP203を長くしてケーブルにしてしまったモデルだ。P203と同じく導体にNCS3 OFCを、絶縁体にNAP ELASTOMERとSPECIAL POLYETIRENというふたつの違う素材を使用したハイブリッド構造が特徴で、P203よりも低域が出るように改良されているという。
弾いてみると、F201やB202に近い低域を持ちつつ、フラットな印象を受けた。低域の音圧的にはF201に近く、6弦をミュートして弾いた時のニュアンスが似ていた。しかし、あくまでもクセがなく使えるモデルだと思う。

■通販で購入可能■
○公式オンライン・ショップ
http://www.oasis-music.jp/c-item-detail?ic=CB0006SS

問:株式会社パシフィクス
http://www.providence.jp/cables_02.html#h_h207


こまほケーブル
-dope-
¥17,823+税(3m)〜¥21,575+税(5m)/試奏機種は¥17,823+税(3m)

足立祐二(デッド・エンド)をはじめ、最近では山下昌良(ラウドネス)らが使用しているブランドの“こまほケーブル”。今回、大手ブランドが並ぶ中、『下町ロケット』ではないが個人ブランドの底力を感じてみようと大抜擢! さっそく試奏してみた。
まず、手にしてみると、ケーブル自体が、かなりしっかりした作りに感じられる。プラグ部分に“アンプ”と書かれており、指向性のあるケーブルのようだ。弾いてみると、全域にわたってブライトでヌケのいいトーンが鳴ってくれて、レコーディング仕様の音だとわかる。低域の圧もよく、6弦をミュートして弾くとズンズンきてくれるのだ。高域も出すぎることもなく足らないこともない絶妙な印象。全域ヌケがいいし、これは大手もビックリだろう!

■通販で購入可能■
○こまほケーブル オンライン・ショップ
https://cw-cable.com/

問:こまほケーブル
https://comawhitemusic.wixsite.com/cw-cable


HEXA
HEXA-SC
¥1,900+税(1m)〜¥4,200+税(10m)/試奏機種は¥2,300+税(3m)

日本製で高品質なオリジナル・ケーブルとスイッチ・クラフト製のプラグを組み合わせたヘクサのモデル。今回、試奏した中で、もっとも低価格のケーブルだ。
試奏してみると、ナチュラル! 全域でフラット! これぞ、ギターの音という感じで、ハイファイすぎず、アナログ感あるトーンが出てくれた。あえていえば、ややロー〜ミッドが出てる印象だが、“これがギターの音だよな〜”と安心できるトーンがここにある。

■通販で購入可能■
○御茶の水楽器センター
https://www.gakkicenter.com/SHOP/197434/199920/list.html

問:株式会社神田商会
https://www.kandashokai.co.jp/flos/hexa/accessories/cables/hexa-sc_s-s.html


ERNiE BALL
Instrument Cable
¥2,500+税(3.04m)、¥3,700+税(6.09m)/試奏機種は¥2,500+税(3.04m)

アーニー・ボールといえば弦はもちろんのこと、ヴォリューム・ペダルなどのペダル類の印象が強いが、ケーブルも発売されている。こちらのモデルは、腐食に強い99.99%の無酸素銅を導体に使用し、デュアル・コンダクター&デュアル・シールド構造を採用。
試奏してみると、クセのないトーンが得られた。とくに、どこの帯域が強調されることもなく、楽器本来の持つ素直なサウンドを出してくれる。クローム・メッキ製のオリジナル・メタル製プラグ・キャップに蛍光色の熱圧着チューブを組み合わせていたり、アーニー・ボールならではのヴィジュアルにも注目。

■通販で購入可能■
○クロサワ楽器店
http://shopping-kurosawagakki.com/shop/shopdetail.html?brandcode=000000088226&search=ernie+ball&sort=

問:株式会社コルグ
https://www.ernie-ball.jp/guitar-accessories/instrument-cables/classic-cables


ERNiE BALL
Coiled Instrument Cable
¥4,900+税(9.14m)のみ

今回の企画では、カール・コードが2度目の登場! 基本的な仕様は、上のモデルと一緒で、無酸素銅を導体に使用し、デュアル・コンダクター&デュアル・シールド構造を採用。重量感があり重さを感じるが、それもそのはず、コイルを伸ばすと9m以上あるのだ。
音色はというと、さすがに上の3.04mのモデルよりもハイ落ちしているかと思いきや、そのぶんローが出ている。ケーブルの長さが伸びるとハイが落ちるのはやむを得ないことだが、低域がアップするのは知らなかった! これが、このコイル状になっている形状のためなのか長さのためなのかはわからないが、アナライザーで見る数値よりも、あきらかに6弦をミュートした時の音圧が左のモデルより感じられた。トーンがどうであれ、オシャレなのはこのモデルの特権だ!

■通販で購入可能■
○クロサワ楽器店
http://shopping-kurosawagakki.com/shop/shopdetail.html?brandcode=000000088223&search=ernie+ball&sort=

問:株式会社コルグ
https://www.ernie-ball.jp/guitar-accessories/instrument-cables/coiled-cables