マーシャルの名機、JCM900にShu(TSP)がズーム・イン!!
多くの名機を送り出しているマーシャル・アンプ。そのなかでも異彩を放っているのが、JCM900だろう。1990年のリリースながら、現在も発売しているというロングセラー・モデルで、今なお定番アンプとして最前線で活躍しているアンプ・ヘッドだ。今回は、TSPのShuに、その900をいろいろな角度から試奏してもらった。
※WeROCK 072の掲載記事より。
マーシャル JCM900 4100 ¥250,000+税
〈仕様〉 ●出力:100w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、5881(6L6/パワー管)×4 ●チャンネル:2 ●コントロール:チャンネルA(ヴォリューム、リバーブ)、チャンネルB(ヴォリューム、リバーブ)、プレゼンス、ベース、ミドル、トレブル、ゲイン(チャンネルA)、リード・ゲイン(チャンネルB)、ループ・レベル、パワー・レベル・モード(ハイ/ロー) ●入出力端子:インプット、エフェクト・センド/リターン、ライン・アウトプット(RECORDING COMPENSATED/ダイレクト)、スピーカー・アウト×2(16Ω/8Ω) ●サイズ:740(幅)×310(高さ)×210(奥行き)mm ●重量:18.8kg
なぜに今になって、新製品でもないJCM900の試奏? と思われる方も多いと思う。ヴィンテージ・テイストあふれるSTUDIOシリーズが話題となってるし、そのSTUDIOシリーズがプロも納得のマーシャル・サウンドを繰り出してくれているなか、あえて900!
じつは、そのSTUDIOシリーズの相乗効果か、古きよき時代のマーシャル・サウンドが、再び脚光を浴びてるのだ。とはいえSTUDIOシリーズはもっとも大きな出力で20w。20wとは思えない音量だけど、やはりライヴをやるには100wはほしいというギタリストも多いことだろう。そこで、JCM2000が生産完了している現在、2000年以前のハイ・ゲイン・マーシャル・トーンを好むギタリストにとっての選択肢の最右翼がこのJCM900だ。JVMはたしかに万能で、JCM800や2000のようなクラシックなトーンも出せるのだが、やはり、どこかにモダンなフィーリングが漂うのも事実。クリーン〜クランチとハイ・ゲイン・サウンドの切り替えが容易でリバーブもほしいとなると、迷わず行き着くのがJCM900だろう。
意外と言っては失礼だが、最近でもライヴ・ハウスやスタジオなどでJCM900が使われているケースに、よく出くわす。自分のアンプが使えない時などは、愛用のJMP-1(プリアンプ)を900のリターンに突っ込んで弾くのだが、じつはこのパターンのトーンを好んでいたりするのだ。なぜに、そのサウンドが好きかというと……まずは、通常の900を試奏していくことから解明していきたい。
さあ、900と1960キャビのコンビですよ! なんとなく懐かしさが帰ってきた印象です。いきなりチャンネルBの歪みが強いほうを使用して弾いてみると、お〜、やっぱりピッキングの食い付きがいい。このレスポンスの速さは、やはりシンプルな作りだからなし得るところなのではないだろうか。ここで、自分のプリアンプと接続した時に、いい感じのトーンが出てくれる解答をしておこう。
ご存知の方もいるとは思われるが、この900、パワー管にマーシャルで多く使われているEL34ではなく5881(6L6)を使用しているのだ。そのためか、マーシャルならではのミッド・レンジに的を絞ったトーンよりも、さらにレンジが広いサウンドを出してくれるのだ。ここが、個人的に気に入ってるひとつで、もうひとつのお気に入りとしては、JCM900は手持ちのプリアンプをリターンに接続した際にマスター・ヴォリュームが効いてくれるのだ。これは、スタジオやライヴ時に、たいへんありがたかったりする。
▲JCM900最大の特徴は、パワー管に5881(6L6)を4本使用している点だろう。
他のEL34マーシャルとは、音圧やレンジが異なり、それが900ならではの個性となっている
▲プリ管は、ECC83が3本だ
さて、話を戻そう。純粋な900のヘッドは、とにかくトレブルのヌケがすごい。かなりキンキンに高域を出してくれるので、個人的にはなんとトレブルもプレゼンスもゼロで弾きたくなる。この時代のマーシャルあるあるなのだが、基本的にEQの幅は広くありません。その感覚もインプットしつつベースを調整すると、“こんなトーン・カーブだったっけ?”とニヤリとさせられた。今でいうレゾナンスに近く、上げていくと低域のさらに下が持ち上がる感じなのだ。ミドルに関しては、絞っていくとコモリ気味なので、上げ目がオススメだろう。
肝心の歪みだが、改めて弾いてみると懐かしさがありつつ、800や2000などの歴代の名機とは違う質が感じられる。たとえば、JVMや2000で800っぽい音を作れても、900は900でしか作れない歪みを持っているのだ。ツブが細かいような細かくないような……なんと表現していいかわからないが、これが900のオーバードライブ・サウンド、としか言いようがない個性的な歪みだ。
▲チャンネルは2つ。Aはクリーンからクランチで、Bはリード用のよく歪むチャンネルだ
▲各チャンネルにリバーブを装備している。
最近のデジタルではなくスプリング・リバーブなのが泣ける!
▲センド・リターンのレベルも調整可能
▲出力レベルを変えられることを知っていた!?
今回、いろいろなヘッドと比べることができたので、そのレポートもお届けしておこう。
▲今回の試奏は、いろいろなヘッドとの比較も実現! 上から、ジュビリー、JCM800、JCM900。
この他にも、JVM210Hとも比較した
まず、JVM210Hと弾き比べると、やはり900の個性的な歪みが際立つ。JVMを90年代風な時代のセッティングにしても、そこにはモダンなテイストも加わっていて、900のトーンには近づけなかった。ヴィンテージではないが、モダンにもなりすぎないトーンが900にはあるんだなと思わせてくれた。
ジュビリーと弾き比べるのもおもしろかった。ジュビリーが、かなりピーキーでハイ上がりだと思っていたのだが、900はその上の高域成分を持っていた。ジュビリーのEQが比較的調整幅が広いのに対して、900のEQはイメージ通りで、これまたニヤリ。
さあ、続いて800と比較だ。800の音の飛び方がすごい! さらに、レスポンスも早い早い。弾く前から音が出てくるような錯覚さえ感じられる。もちろん900もレスポンスはいいのだが、より歪みが深く、さらに5881(6L6)を搭載していることでEL34とは違った音の飛び方も感じられ、そういった部分でも800と2000との間に位置するモデルだと感じさせてくれる。
最後に、900を適度に歪ませてオーバードライブをブースター的にかけたサウンドを試してみた。これですね、これこれ。やはり、この時代のアンプはオーバードライブとの相性がいい! 基本シンプルなのでエフェクターとの組み合わせも音の乗りがよく、これこそが古きよき時代のアンプだと認識させてくれる。
▲Shuが使うなら! というセッティング。チャンネルBを使い、なんとトレブルとプレゼンスはゼロ!
問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
http://www.marshallamps.jp/