【試奏動画連動】ケリー・サイモンがカール・マーティンの歪み系を試奏!
デンマークの老舗ブランド、カール・マーティン。そのカール・マーティンから、よりコンパクトになったSシリーズが続々と発表されてきた。WeROCK 070ではK-A-Zによるレポートをお届けしたが、今回はケリー・サイモンが登場! 60年代から70年代、そして80年代のロック・ギター・サウンドが得られるという3機種を弾き比べてもらった!!
※WeROCK 072の掲載記事より。
ケリー・サイモンがたどるロック・ギター・サウンド史!?
■ケリー・サイモンによる試奏動画
カール・マーティン Purple Moon ¥14,500+税
〈仕様〉 ●コントロール:デプス、レベル、スピード、ファズ、ファズ・レベル ●電源:9v DCアダプター(センター・マイナス) ●外形寸法:60(幅)×50(高さ)×115(奥行き)㎜ ●重量:340g
▲これがケリー・サイモンのお気に入りセッティング。
写真ではわかりづらいが、ファズのツマミは3時ぐらい、ファズ・レベルは11時ぐらいだ
▲ミニ・ツマミはファズ用。
上のファズで歪みを、下のレベルでヴィブラート効果にどれだけファズを混ぜるかを、それぞれ調整できる
——まずは、ヴィブラート/ファズのPurple Moonからチェックしてもらいましょう。
ケリー:ファズだし、“Purple Moon”というモデル名で一目瞭然というか、僕ですら弾く前からジミ・ヘンドリックスのフェイズが加わったファズ・サウンドがイメージできました。実際に弾いてみても、コーラス/フェイザーというモジュレーションを基本にファズを加えていくという形で、フェイザーとして単体でも使えます。薄くかけるとコーラス効果も得られますね。
——そのコーラスのキャラクターはどういったものでした?
ケリー:きれいにかけるコーラスというよりは、フェイザーやトレモロに近い、積極的に揺らしていきたいキャラクターで、アナログ感もすごくあります。これがあれば、60年代後期から70年代中盤ロックのリズム・ギターもリードもアルペジオもできるんじゃないかなっていう音でしたね。
——ファズについては、どうでしたか?
ケリー:かなりレンジが広いと思います。ジミ・ヘンドリックスということで、ファズフェイス的な音をイメージしていたんですが、そういったニュアンスもありつつ、それよりもきれいにかかってくれる気がします。ファズって、いい意味で音がつぶれているとか汚いというイメージがあると思うんですけど、当時のジミの生の音はクリーンだったと思うんです。でも、当時のレコーディング環境で録るとかなりアナログ・コンプレッションがかかって、つぶれてしまっていた。このPurple Moonはきれいにファズがかかるし、今のシーンやレコーディング環境に合っていると思いますね。コーラスやフェイザーと歪みが1台でまとめられているし、かなり便利だと思います。
カール・マーティン PlexiTone SINGLE CHANNEL ¥18,000+税
〈仕様〉 ●コントロール:レベル、トーン、ドライヴ ●電源:9V DCアダプター(センター・マイナス) ●外形寸法:80(幅)×62(高さ)×115(奥行き)㎜ ●重量:330g
——PlexiToneもモデル名そのままのトーンでしたね。
ケリー:この金色のカラーも含めてね(笑)。“プレキシ”と呼ばれるマーシャルのスーパー・リード、そのハイ・ゲイン・チャンネルの音を再現できるというペダルですね。70年代のマーシャルの、プリ・チューブとパワー・チューブをストレートに歪ませた音を再現してくれます。僕自身も73年製の改造マーシャルを使っていて、それはもとのマーシャルより歪むんですが、その改造マーシャルに近いというかもっと歪ませることができます。当時のマーシャルって個体差があって、全然歪まないものもすごい歪むものもあるんですが、この1台で、その歪まないところから歪むところまでカヴァーできますね。
——各コントロールの効き方はどうでしたか?
ケリー:スーパー・リードはJCM800と並んで、ロック・ギターの原点だと思うし、ツマミを全部センターぐらいで弾くと、まさにスーパー・リードのトーンですよ。ドライヴ・ツマミを上げていくと、どんどん膨らんでいって、AC/DCのようなリフをガンと弾くにはぴったりの歪みが鳴らせます。かなり歪むので、歪ませすぎると逆にリードを弾くには、少し扱いづらいぐらいだと思います。僕が使うならドライヴをギリギリまで下げて、ふだん使っているマーシャルぐらい歪みを下げますね。
▲かなり歪むということで、ドライヴを下げ気味にして使うのが好みとのこと。
これでも充分すぎる歪みが得られる
カール・マーティン Panama ¥18,000+税
〈仕様〉 ●コントロール:ゲイン、レベル、ダンピング、トーン ●電源:9v DCアダプター(センター・マイナス) ●外形寸法:60(幅)×50(高さ)×115(奥行き)㎜ ●重量:340g
▲左下のダンピングを下げ気味にして、
シングルコイルでもしっかりとしたミッド・ローを出すのがケリーの好み
▲このダンピングを上げると歪みにアグレッシヴさが加わり、
下げると深みを加えることができる
——最後は、オーバードライブのPanamaです。
ケリー:Purple Moonもそうですけど、ひじょうにモデル名がわかりやすいですね。80年代前期から中期にかけてのヴァン・ヘイレン・サウンドを再現できるよう、中のパーツもこだわっているんだろうなと思います。踏んだ瞬間に「パナマ」を弾きたくなりますから(笑)。当時のエドワード・ヴァン・ヘイレンはアンプをギンギンに歪ませる人でしたが、このPanamaがあれば、クリーンなアンプでもあの音が出せますね。けして、今のウェッティでジューシーなヴァン・ヘイレンの音ではなくて、当時の超ドライな音。ヴァン・ヘイレンと彼に影響を受けた、80年代のLAメタル・サウンドの音が出せます。
——具体的には、どういう歪みのキャラクターでしたか?
ケリー:最近の濃い歪み系ペダルとは違って、ミュートした時の弦のギラギラ感が残っている感じです。だから、パワー・コードで使ってもいいけど、もっとコード感を出したいフレーズに向いているのかもしれないですね。カッティングで弾いた時もきれいに歪みが乗ってくれたので。
——ダンピングというツマミが気になりますね。
ケリー:オーバードライブの効果を変えるツマミですね。僕は基本的にシングルコイルのストラト・タイプを弾いているんですが、このダンピングを絞っていくことで、中域から低域がしっかりとした、ハムバッキングに負けない歪みが出せますね。逆にパワーのあるハムバッキングで弾く時やそんなに低域が必要ない時は、このダンピングを上げて、少しカラリとした感じを出したほうがいいかもしれない。このダンピングというツマミはかなり有効だと思います。あと、今日はアンプ側をクリーンにしたセッティングで試しているんですが、ゲイン・ノブが12時のあたりでもしっかり歪んでくれたし、フルに上げるとモダン・ヘヴィなところまでかなり歪みます。だから、JCのようなクリーンのアンプでも大丈夫だと思いますよ。僕はいつもマーシャルである程度歪ませて、そこにクリーン・ブースターをかけているので、Panamaのような歪み系ペダルは持ってないんですが、こういうペダルが1台あれば充分なんだなってあらためて思いましたね。
——全体的な印象としては、どうですか?
ケリー:どれもがロック・ギターの原点と言える音が出せると思いましたね。Purple Moonは60年代のジミ・ヘンドリックスだし、PlexiToneの歪みとPurple Moonのフェイジングを合わせても初期のジミ・ヘンドリックスの音が出せました。逆PlexiToneの歪みを下げてPurple Moonのファズを使うといちばん歪んでいた時のジミ・ヘンドリックスのサウンドも出せる。PLEXITONE単体は、ジミ・ヘンドリクスに影響を受けた、リッチー・ブラックモアやウリ・ジョン・ロートのようにストラトでマーシャルを鳴らしていた70年代から80年代初期にかけてのロック・ギターの音。そして、Panamaは80年代ヴァン・ヘイレンのブラウン・サウンドや彼に影響を受けた80年代のギタリスト達の音で。この3台で歴史になっているというか、ロック・ギター・サウンドの原点を知ることができるペダルですよ。
問:株式会社フックアップ
カール・マーティン
https://hookup.co.jp/products/carl-martin
ヴァイタル・オーディオの最新パワー・サプライ
今回試奏した3台のペダルが搭載されたエフェクター・ボード。そのボード内で3台のペダルに電源を供給していたのが、ヴァイタル・オーディオの新製品、VA-05 ADJだ。このパワー・サプライについても、ケリーがチェックしてくれた!
ケリー:小さいのでボードに組み込みやすいし、ノイズ対策でアイソレートされてるのもいいですよ。5口というのも僕にはちょうどいいサイズですよ。しかも、2口の供給電圧が変えられるのも便利そうですね。
ヴァイタル・オーディオ VA-05 ADJ ¥9,500+税
〈仕様〉 ●出力端子:9v @ 300mA×3、9v/12v/18v @ 500mA×2 ●外形寸法:111.5(幅)×21.3(高さ)×60(奥行き)㎜ ●重量:134g
▲リア側には、4番目と5番目の供給電圧を切り替えられるスイッチが付いている
■通販で購入可能■
○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/GoodsSearchList.html?keyword=VITAL+AUDIO
問:株式会社フックアップ
ヴァイタル・オーディオ
https://hookup.co.jp/products/vital-audio
◎ケリー・サイモン。自身のバンド、ケリー・サイモンズ・ブラインド・フェイスだけでなく、ソロとしても活躍。その“超絶”ぶりで注目を集めてきた。現在、新作『UNLIMITED NEOCLASSICISM』の制作中、リリースは11月を予定している。
ケリー・サイモン 公式サイト
https://www.kellysimonz.com/
アルバム
『OVERTURE OF DESTRUCTION』
キングレコード KICS-3457 ¥3,000+税