【試奏動画連動】島紀史が最新マーシャルをチェック!!

近年は、デジタル・アンプであるCODE(コード)シリーズなど、時代のニーズに合わせたモデルを発表してきたロック・アンプの王者、マーシャル。そんなマーシャルが発売したニュー・モデルは、フル・バルブのアナログ・モデル!! 古き良き時代を彷彿とさせるOrigin(オリジン)シリーズを送り出してくれたのだ。そこで、根っからのマーシャル愛好家である島 紀史(コンチェルト・ムーン)に、最新モデルを試奏してもらった。試奏映像とともにお届けしよう!
※WeROCK 066の掲載記事より。

オリジン・シリーズ。後列左から、50C、20C、そしてOrigin5。前列はヘッドで、50Hと20Hだ

Origin試奏レポート

——オリジンというネーミングもそうですが、マーシャル愛好家として、島さんも期待していたモデルが発売されましたね?
:もちろん時代の流れもありますから、マーシャルでもデジタル・アンプを出したり時代のニーズにマッチしたものを発売するのは当たり前のことですけど、やっぱりマーシャルですからね(笑)。昔からマーシャルが好きな人間にとっては、今回のようなモデルがないと、と。そこに、昔のままだと現代に合わないのがわかってるので、時代にマッチするような機能を付けてくれているんです。
——出力レベルを下げられるアウトプット・スイッチですね?
:昔ながらのマーシャルは、パワー・アンプまで出力を伝えて使わないといい音がしないと言われていました。それを保ったまま出力が下げられるというのは、正しい方法だと思う。それに、ティルトというツマミもおもしろいですね。4インプット・マーシャルをリンクさせたようなトーンが出せる。僕は、ふだんメジャーという200wのマーシャルを使ってるので、充分にローも出るからリンクさせずにハイ・インプットだけで弾いてますけど、50wとかであればリンクして少しローの成分を足したほうがよかったりすることもありますよね。そういう意味でも、このティルト・ツマミはおもしろい。
——オリジンは、1959に代表されるヴィンテージ・マーシャルを、より身近で実用的にアップ・デートしたものとのことですが、島さんはヴィンテージ・マーシャルにどういうイメージを持たれていますか?
:出力が上がっていくにしたがってクリアになっていくんですよ。50wがよく歪むと言われますが、あれは歪むというよりも出力の関係上、コンプレッションが早めにかかるからゲインがあるように感じる。それが100wになればヘッド・ルームが大きくなるのでクリアになる。ちなみに、メジャーにいたっては、もともとPA用のアンプだったので、ぜんぜん歪まないんです。だから、オリジンを試した時、僕のマーシャルよりも、はるかに歪むと思った。それに、試奏した機種はまだ新しいからか、少しトレブリーなトーンだったので、少しコモらせ気味のトーン・セッティングにしても充分にハイがある。そのあたりは現代的かなって思いました。1987とかの50wモデルだとミドル・レンジに寄ったトーンになるけど、そう考えるとオリジンは50wでも100wの1959のトーンに近い感じがする。
——その時代のマーシャルを知っているギタリストからすると、JCMシリーズ以前のマーシャルは歪まないイメージがありますが、オリジンはどうなんでしょう?
:もちろんアンプ直で現代的な歪みが得られるというようなハイ・ゲインではないけど、ブースターひとつでもあれば充分なゲインを持ってるし、アンプでこれ以上に歪まないからこそプレイの明瞭度が上がると思うんです。あまりに歪んでくれるアンプというのは、どんどんプレイの明瞭度が下がる。そういう意味では、極端にいうとオリジンは誰にでも優しいモデルとは思わないんです。でも、こういうアンプをちゃんと弾きこなせるようになるのが、昔は目標だったんですよね。マーシャルに鍛えられる部分というのは、プレイヤーとしてぜったいにある。と言いつつ、昔のマーシャルに比べたらずいぶんと優しい。マーシャルも、ユーザーにフレンドリーになってきたんだなって感じる(笑)。必要充分なゲインはあるし、これぐらいのゲインだからこそ、トーンもクリアだし濁ったニュアンスがなく自分の弾いた音がそのままダイレクトに出てくる。それに、なによりもうれしいのは、しっかりマーシャルの音がしてることですね。マーシャルらしいローがあります。
——今回、いきなり50wのヘッドから試奏していただきましたが、50wはどんな印象でした?
:これは、まさに“昔のマーシャルの現代版”という感じですね。弾く時のコントロールもしやすいし、不必要にハウリングもしてこない。昔の50wといえば、かなり音量を上げないとゲインを稼げなかったんですが、そこまで上げなくてもゲインはあります。あとは、アンプのヴォリュームで音量を下げた時に、音がコモっていかないのもいい。
——マスター・ヴォリュームの使い方が、近年のアンプのような使い方ではないですよね?
:違いますね。最終的な音量を調整するというよりも、マスター・ヴォリュームを上げた時にいい音がするんです。だけど、それを下げていっても妙にコモった感じはしない。よく、マスターを下げていくとフィルターかかったみたいにトーンが変わっていくアンプがあるけど、そういう感じがしないのはオリジンならではなのかなって。自分がふだん使ってるモデルに、ニュアンスが近いですよ。
——そうは言っても、やはりマスターは上げて使いたい音になってますよね(笑)?
:もちろん、そうなんですよ(笑)。そういう人は、アウトプット・スイッチで出力を下げればいいんじゃないかな。
——ゲインのツマミは、引っ張るとブーストされます。
:これは、引きましょう(笑)。引くことで、クリーン・ブースターを通したぐらいの差があると思います。現代的な歪みがほしくてブースターやオーバードライブ・エフェクターが1個では足らないと思う人なら、ぜったい引くべき。そういえば、こういうスイッチをオンにすると急にキャラクターが変わるアンプってあるじゃないですか? それが、オリジンはしなかったです。オリジンは入力感度が上がった感じ。
——引いた時のゲインは、オールド・マーシャルよりもはるかにありますか?
:はるかに……というのは言いすぎかもだけど、かなりあります。ここまでは歪まなかった。
——そして、もうひとつの特徴としてあるのが、ティルト・ツマミですね。
:これは、往年のマーシャルの4インプット……ノーマル・チャンネルとハイ・トレブル・チャンネルのサウンド・キャラクターをブレンドできるコントローラーですね。0でインプット2に接続した時の音(4インプットの右上に接続した時のサウンド)、フルでインプット1に接続した時の音(4インプットの左上)、それをリンクするという方法を1959とかではやっていたんだけど、オリジンではそのブレンド具合が調整できる。0だと少しモコモコして、フルだとキンキンするトーンでした。僕は50Hの時はセンターで、コンボが1時〜2時あたりにしてました。以前、ヴィンテージ・モダンというモデルがあったんですが、あれはふたつのヴォリュームでそのブレンド具合を調整できたんです。それを、もっとやりやすくした感じ。
——4インプットのモデルを使ったことがないギタリストだと、なんのことかなっていう(笑)。
:でも、これこそ、今回のモデルを新世代の方々にわかってもらいたいところなんですよね。インプットで音が違うアンプなんて、今はないでしょ? それがツマミでコントロールできてブレンドできるというのは画期的なシステムだと思うんです。わかりやすくいうと、マスター・トーンだと考えればいいかと。たとえば、ハムバッキングのギターとシングルコイルのギターを使い分けるギタリストならば、ティルト・ツマミを少し回すだけで、アンプのセッティングを極端に変えないで対処できたりするかもしれないですね。
——トーンといえば、ヴィンテージ・マーシャルのEQというと、回してもたいして変わりませんでした(笑)。オリジンは、どうですか?
:よく効きますね。そこは、現代のアンプですね。昔の間隔でベースを回したら、大きく変わりすぎました(笑)。昔のものとは比べものにならないぐらい効きますよ。
——昔のマーシャルというと、EQなんかはフルからのスタートでした。最近のアンプは5(12時の位置)から音作りをしていくパターンが多いですが、オリジンはどうでした?
:僕も昔のクセで、基本的に引き算で考えるんですが、オリジンは5からでも大丈夫ですね。でも、マーシャルをじょうずに使おうと思うのなら引き算で考えたほうがいいとは思います。

Origin50H ¥オープン

〈仕様〉 ●出力:High=50w/Mid=約10w/Low=約5w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2 ●コントロール:マスター、プレゼンス、トレブル、ミドル、ベース、ティルト、ゲイン(プル・ブースト) ●入出力端子:インプット、フットスイッチ・イン、1/4″スピーカー・アウト、DI出力、センド/リターン ●外形寸法:577(幅)×228(高さ)×225(奥行き)mm ●重量:11.8kg

これが、出力レベルを変更できるアウトプット・スイッチ。トーンを保ったまま小音量に変えられる

上はJTM45の4インプット。インプットの場所でトーンを変えていたのがヴィンテージ・マーシャルだが、これをコントローラーで再現したのが、オリジンに搭載されたティルト・ツマミだ(写真下)。1と2にケーブルを接続してリンクしていたトーンも再現!?

ゲインを引っ張るとブースト機能が作動する。これは、フットスイッチでの切り替えも可能だ

島 紀史’s セッティング

島が使うなら、このセッティング! ミドルの10がポイントか!?

 

——続いて50wのコンボはどうでした?
:今回、試奏した中では、50Cがいちばん好きですね。コンボ・アンプって、ヘッドとはぜんぜん違う。コンボは後ろが開いてるじゃないですか。だから、音が抜けるニュアンスが弾き手に返ってきて、ヘッドよりウォームに感じるんです。そのウォームさがすごくよかったし、ヴォリュームを上げた時にコンボのよさみたいなのも感じました。それに、出力レベルを下げた時のサウンドも、ヘッドよりコンボのほうが好みですね。やっぱりボディが鳴ってくれるので、出力を下げてもいいんですよ。そのぶんローをじゃっかん削って、トレブルを少し足すと、うまい音作りができるし、ティルトもやや上げ目にしたら気分よく弾けました。

Origin50C ¥オープン

〈仕様〉 ●出力:High=50w/Mid=約10w/Low=約5w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2 ●コントロール:マスター、プレゼンス、トレブル、ミドル、ベース、ティルト、ゲイン(プル・ブースト) ●入出力端子:インプット、フットスイッチ・イン、1/4″スピーカー・アウト、DI出力、センド/リターン ●スピーカー:セレッション製G12N-60 Midnight 60(12インチ) ●外形寸法:580(幅)×480(高さ)×245(奥行き)mm ●重量:18.2kg

 

——20Cは、いかがでした?
:このモデルは、50Cと同じノリで触れます。僕なら、少しローを足して、ティルトはあまり上げない感じでセッティングして使います。そのほうが、低域をコントロールしやすいですね。最近、前に飛んでくるトレブリーな音をイヤがるギタリストもいるじゃないですか。そういう方なら、コンボのほうがコントロールしやすいと思います。あとは、コンボだとフレットクロスの色がいい(笑)。それに、ヘッドもそうなんですけど、ヴィジュアル的には金のパイピングが重要です。JCMになると白いですからね。そして、ロゴの大きさもいい(笑)。

Origin20C ¥オープン

〈仕様〉 ●出力:High=20w/Mid=約3w/Low=約0.5w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2 ●コントロール:マスター、プレゼンス、トレブル、ミドル、ベース、ティルト、ゲイン(プル・ブースト) ●入出力端子:インプット、フットスイッチ・イン、1/4″スピーカー・アウト、DI出力、センド/リターン ●スピーカー:セレッション製Vタイプ(10インチ) ●外形寸法:520(幅)×420(高さ)×240(奥行き)mm ●重量:13.9kg

 

——最後に試奏していただいたのは、5wのモデルですね。
:もちろん自宅用という感じはしますけど、このモデルにもマーシャルならではのトーンがキッチリとあるんです。もちろん出力が大きいモデルと同じだとは言わないですが、たとえば家でマイクを立ててレコーディングすることだって可能なアンプだと思いますよ。このモデルのみマスター・ヴォリュームが付いてないから、パワー管に負荷がかけられないためか、じゃっかん他の機種よりはゲインも低めに感じました。だからといって歪まないわけではないので、オーバードライブとか使えば充分ですよ。

Origin5 ¥オープン

〈仕様〉 ●出力:High=5w/Low=約0.5w ●真空管:ECC83(プリ管)×2、EL84(パワー管)×1 ●コントロール:ヴォリューム(プル・ブースト)、ティルト、ベース、ミドル、トレブル ●入出力端子:インプット、フットスイッチ・イン、1/4″スピーカー・アウト、センド/リターン ●スピーカー:セレッション製Eight-15(8インチ) ●外形寸法:466(幅)×369(高さ)×191(奥行き)mm ●重量:9.4kg


——今回、マーシャルが発表したモデルがデジタルではない、完全アナログ仕様というのは、どう思いますか?
:現代のニーズに合わせていかないといけないから、コードのようなデジタル・アンプも正しいとは思いますが、昔ながらのモデルをアップ・デートすることも必要だと思うんです。オリジンは昔のモデルほどユーザーに厳しくないですし(笑)、そこがいいと思うんです。“音のコントロールがしづらくて、音もでかいんでしょ?”って思う人は、ぜひ試したほうがいいと思う。CDで聴こえてくる音が、すぐに出せるようなアンプも素晴らしいことだけど、こういうアンプこそ使ってみるべきなんです。トーンの微妙な違いだとかを知ってるか知っていないかで、プレイヤーとして大きな差になってくる。それは、たとえばデジタル・アンプを使うにしても、こういうアンプを知ってるか知ってないかによってセッティングがぜんぜん変わる。不必要なゲインというのが、どれほど自分のトーンを殺してるか、自分の磨いた技術を埋もらせているかというのがわかるんですよ。本物を使わずしてモデリング・アンプを使っても、そのアンプのシステムが持ってるよさは10%も引き出せない。さすがの僕も、若い世代にいきなり1959を使えとは言いませんが、オリジンの50Hならライヴも充分できるし、古いマーシャルを知らなくてそれを弾く機会もないだろうけど、それが身近に感じられるうえに現代的に使いやすくもなってる。それが、オリジンだと思います。

 

20wのヘッド・モデルもラインナップ

Origin20H ¥オープン

〈仕様〉 ●出力:High=20w/Mid=約3w/Low=約0.5w ●真空管:ECC83(プリ管)×3、EL34(パワー管)×2 ●コントロール:マスター、プレゼンス、トレブル、ミドル、ベース、ティルト、ゲイン(プル・ブースト) ●入出力端子:インプット、フットスイッチ・イン、1/4″スピーカー・アウト、DI出力、センド/リターン ●外形寸法:520(幅)×225(高さ)×220(奥行き)mm ●重量:9.4kg

Origin試奏動画

そして、島紀史によるオリジンの試奏動画をYouTubeのWeROCK TVで公開!!

問:株式会社ヤマハミュージックジャパン
http://www.marshallamps.jp

 

◎島紀史(しま・のりふみ):96年にコンチェルト・ムーンを結成し、日本のハード・ロック・シーンに君臨するネオ・クラシカル系ギタリスト。リッチー・ブラックモアを敬愛し、イングヴェイ・マルムスティーンにも通じる正確無比なプレイ・スタイルは、多くのプロ・ギタリストからも一目置かれている。コンチェルト・ムーンは、新ヴォーカリストに芳賀 亘を迎えた新体制で10月に東名阪ツアーを行なう。